>HOME >DATABASE

小杉礼子編 『自由の代償/フリーター 現代若者の就業意識と行動』 日本労働研究機構


小杉 礼子 編 20021203 『自由の代償/フリーター 現代若者の就業意識と行動』,日本労働研究機構,196p. 2200 [bk1]
*この本の基礎情報はファイルの一番下にあります。

目次
はしがき
序 若者の就業行動は問題か−研究の意味と範囲 小杉礼子
 1.調査研究の背景と本書の位置づけ
 2.若者の就業行動とフリーター
 3.近年の若者の就業行動についての研究動向
 4.本書の構成と各章のねらい
第1章 若者の労働市場の変化とフリーター 小杉礼子・堀有喜衣
 1.若者をめぐる雇用・失業情勢の変化
 2.新規高卒労働市場の変化
 3.高等教育卒業者の労働市場の変化
 4.若者の就業行動の変化−『就業構造基本調査』の再分析より
 5.「フリーター」の動向−『就業構造基本調査』の再分析より
 6.まとめ
第2章 学校から職業への移行の現状と問題 小杉礼子
 1.「職業への移行」と就職
 2.学校から職業への移行の実態
 3.正社員以外の就業を経験する移行
 4.問題点の整理と必要な対応策
第3章 フリーターという働き方 上西充子
 1.はじめに
 2.はぜフリーターになるのか
 3.フリーターの就業の実情
 4.不透明な将来展望
 5.フリーターからの離脱
 6.まとめ
第4章 フリーターの職業意識とその形成過程−「やりたいこと」志向の虚実 下村英雄
 1.フリーターの職業意識の問題
 2.フリーターが語るフリーターの職業意識
 3.フリーターの職業意識の特徴
 4.フリーターの職業意識形成過程
 5.まとめ
第5章 1990年代における高校の職業紹介機能の変容−初回就職形態に見る高校から職業への移行の多様化  中島史明
 1.高校の職業紹介について
 2.高校の職業紹介力の低下と高卒無業者の急増
 3.『若者のワークスタイル調査』データに見る高校職業紹介の変容
 4.まとめ
第6章 高校生とフリーター 堀有喜衣
 1.はじめに
 2.高校進路指導の現在
 3.高校生文化の変容
 4.おわりに
第7章 誰がフリーターになるのか−社会階層的背景の検討− 耳塚寛明
 1.問題の設定
 2.学卒直後の就業と社会階層
 3.年齢コーホート別分析
 4.年齢コーホート別、学歴(本人)別分析
 5.まとめ
第8章 ジェンダーという観点から見たフリーター 本田由紀
 1.はじめに −フリーター現象をジェンダーという観点から見ることの意味
 2.フリーターの客観的条件のジェンダー差異
 3.フリーターの主観的過程のジェンダー差異
 4.ジェンダー状況へのフリーターのインパクト
 5.まとめと社会的課題
第9章 日本経済の変貌と若年者雇用政策の課題 高梨昌
 1.はじめに
 2.新規学卒者等若年層の労働市場問題の論点
 3.追加労働需要総量と追加労働供給総量の推計結果
 4.1990年代の労働需要の構造変動
 5.1990年代の労働供給の構造変動の特徴
 6.新卒者労働市場での職業別・産業別需給ギャップの拡大
 7.若年就職者の定着と移動の特徴
 8.若年者雇用対策の課題



序 若者の就業行動は問題か−研究の意味と範囲

1.調査研究の背景と本書の位置づけ
 増える失業と正社員以外の働き方
「本書でも、就業行動の変化の背景をいくつかの側面から追っていく。特徴は、独自に行ってきたいくつかの実態調査と統計分析に基づくこと、そして、 原因探しというより、現状を正確に捉え対応すべき問題を整理するとともに、その対応策の提案にウェイトを置いていることである。」(p.1)

◇本書の性格
本ができるまでに行った調査などの説明
「本書は、日本労働研究機構が1999年度から設けた「若者の就業行動研究会」の現在までの研究成果を、研究会に参加した各研究者の視点からとりまとめた ものである。」(p.1)

◇自由の代償
「本書の表題「自由の代償」は、この共有する現状認識である。」
「ただし、「代償」は個人としての若者以上に、社会の側が払うことになる。」
「彼らを職業社会の中に吸収する回路を再構成しない限り、社会は再生産されなくなる。だからこそ、就業行動の変化を個人の問題と切り捨てることはできず、 社会的な対応が今必要なのである。」(p.3)
「なお、本研究会ではこれまでの各調査研究を別途とりまとめ、すでに刊行している。刊行物は以下のとおりである。」(p.3)
日本労働研究機構『若年者の就業行動の変化を考える−文献サーベイ及び先行研究ヒアリングより』(2000年、資料シリーズNo.102)
同『フリーターの意識と実態−97人へのヒアリング結果より』(2000年、調査研究報告書No.136)
同『進路指導決定をめぐる高校生の意識と行動−高卒「フリーター」増加の実態と背景』(2000年、調査研究報告書No.138)
同『大都市の若者の就業行動と意識−広がるフリーター経験と共感』(2001年、調査研究報告書No.146)

2.若者の就業行動とフリーター
◇フリーターは今の若者の典型?
フリーターに注目した理由
1 フリーターは80年代末に登場し90年代に急激に増加したことから、まさに現代の問題であること
2 その急増は著しく多くの若者がフリーターになっていること
3 他の就業行動の変化を示す事態、すなわち学校卒業時に就職しないものが増加したり、就職しても短期で自己都合で辞めるなどの事態と密接に絡む事象だと 思われ、 フリーターの分析からそうした行動にも迫れること
4 フリーターの増加の背景と問題について理解が進んでいないこと

◇フリーターの定義
1980年代後半、アルバイト情報誌による造語として誕生
「リクルート・フロムエー『若者しごとデータマガジン』(1987)では、<フリーアルバイター=学校を卒業した後も、自分の生活を楽しむために定職に就 かず、 アルバイト生活を送る若者達>、また、同『フリーアルバイター白書』(1988)では、<フリーアルバイター=学校を卒業後、定職を持たずにアルバイトを している 若者のうち「現在正社員になることを希望しない」者>、同『フリーター白書』(1990)では、<フリーター=学生でも正社員でも主婦でもなく、「アルバ イト」 「契約・派遣社員」として働いている若者のうち、「現在正社員になることを希望しない」者>としている」(p.4、注の5)より)
その後、多様な使われ方や定義をされている

◇自称フリーターの増加に注目
「この言葉が作られたとき「あえて正社員を選ばず」という意味が込められていたように、この言葉は、単に就業形態の一つを示すのでなく、意識状況を含めた 言葉として使われているのではないか。そこで、この研究ではフリーターを自称する人をフリーターとすることとし、むしろその背後に込められた意味のうち多 くの 人に共通している部分を取り出していこうと考えた。フリーターを自称するものの増加はある種の社会意識の増大であり、これを捉えることが重要だと考えたの である。」 (p.5)
  ヒアリング調査
このインタビューの結果からフリーターになる時の意識に注目して、大きくは「夢追求型」「モラトリアム型」「やむを得ず型」の3類型、細かくは7類型に類 型化 することを提案した。」(p.5)

◇フリーターの8割がアルバイター
「続く大量観察調査(「都内若者調査」)では、この類型分布を量的に把握することを試み、また、「フリーター」と「フリーター以外」の比較を柱として フリーターとは何かを就業状況や意識状況から明らかにしていった。」(p.5)
→「表序−1 フリーターの現在(最近1週間)の就業状況と就業形態別フリーター自認率」(p.6)

3.近年の若者の就業行動についての研究動向
◇フリーターの就労実態
『平成12年版 労働白書』←総務省「就業構造基本調査」、リクルート・リサーチ(2000)
リクルート・フロムエー『フリーター白書2000』
日本労働研究機構(2001)『大都市の若者の就業行動と意識−広がるフリーター経験と共感』(調査研究報告書No.146)

◇フリーター・学卒無業へのプロセス
刈谷剛彦ら(1997)「進路未決定の構造−高卒進路未決定者の析出メカニズムに関する実証的研究−」『東京大学大学院教育学研究科学紀要』37号
日本労働研究機構(2000)『進路指導決定をめぐる高校生の意識と行動−高卒「フリーター」増加の実態と背景』(調査研究報告書No.138)
耳塚寛明ら(2000)『高卒無業者の教育社会学的研究』平成11年度・12年度科学研究費補助金報告書

◇高卒者への労働力需要減と就職斡旋システム
日本労働研究機構(1998)『新規高卒労働市場の変化と職業への意向の支援』調査研究報告書No.114
日本経営者団体連盟・東京経営者協会(2000)『高卒新卒者の採用に関するアンケート調査』
高梨昌・村上龍(2001)「新春対談・雇用と教育−日本型システムの危機と希望」『週間労働ニュース』1月1日号
石田浩(2000)「就職機会の高校間格差−就職指導と就職実績の関連」日本教育社会学会第52回大会発表資料
高校生の就職問題に関する検討会議(2001)『高校生の就職問題に関する研究会報告』文部科学省
高卒者の職業生活の意向に関する調査研究会『報告』厚生労働省、文部科学省

◇無業卒業者の職業への意向・初期キャリア形成
日本労働研究機構(1996)『高卒者の初期キャリア形成と高校教育』(調査研究報告No.89)
高校生の就職問題に関する検討会議(2001)『高校生の就職問題に関する研究会報告』文部科学省
日本労働研究機構(2001)『日欧の大学と職業−高等教育と職業に関する12カ国比較調査より』(調査研究報告書No.143)
日本労働研究機構(2001)『大都市の若者の就業行動と意識−広がるフリーター経験と共感』(調査研究報告書No.146)

◇若者の職業意識と失業・離転職・フリーター
『平成12年版 労働白書』(2000)
日経連(2000)
高校生の就職問題に関する検討会議(2001)『高校生の就職問題に関する研究会報告』文部科学省
高梨昌・天野郁夫(1999)「対談・就職したくない若者の増加と進路指導の課題」『季刊教育法』121号
山田昌弘(1999)『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書
自由時間デザイン協会(2002)『次世代型ライフ&ワークスタイルに関する調査研究』
日本労働研究機構(2001)『大都市の若者の就業行動と意識−広がるフリーター経験と共感』(調査研究報告書No.146)
工藤定次・斉藤環(2001)『激論!ひきこもり』ポット出版

◇家計・社会階層の要因
宮本みち子(2000)「社会変動下の『青年と家族』研究の展開と方法−ヨーロッパ青年社会学を中心として」日本労働研究機構『若年者の就業行動の変化を 考える −文献サーベイ及び先行研究ヒアリングより』(資料シリーズNo.102)
日本労働研究機構(2000)『進路指導決定をめぐる高校生の意識と行動−高卒「フリーター」増加の実態と背景』(調査研究報告書No.138)
耳塚寛明(日本労働研究機構(2001)『大都市の若者の就業行動と意識−広がるフリーター経験と共感』(調査研究報告書No.146)

◇就業機会の質の低下
玄田有史(1999)「失業問題と雇用創出」学習院大学経済経営研究所年報第13巻
太田聰一(1999)「景気循環と転職行動−1965〜94」中村二郎・中村恵編『日本経済の構造調整と労働市場』日本評論社
山田昌弘(2001)「フリーター200万人に明日はないさ」『文芸春秋』7月号

◇ジェンダーの視点からの分析
小杉礼子(2001)「増加する若年非正規雇用の問題」『日本労働研究雑誌』No.490
本田由紀(日本労働研究機構(2001)『大都市の若者の就業行動と意識−広がるフリーター経験と共感』(調査研究報告書No.146)
日本労働研究機構(2001)『日欧の大学と職業−高等教育と職業に関する12カ国比較調査より』(調査研究報告書No.143)

4.本書の構成と各章のねらい


 
第1章 若者の労働市場の変化とフリーター

1.若者をめぐる雇用・失業情勢の変化
「若者の労働市場は90年代に大きく変わり、若者の働き方も大きく変わった。この章ではその変化がどこでどう起こったのか、統計的な把握を試みる。なかで も、 「フリーター」と呼ばれるアルバイト・パートで働く若者に焦点を当てよう。」(p.15)
「若者の労働市場を概観するにあたって、最初に、基本的な変化として次の3つを指摘しておきたい。」(p.15)
(1)労働力人口とその学歴構成の変化
15〜29歳の労働力人口は1996年までは増加し、その後減少に転じている
(「表1-1 若年労働人口の推移」、p.15)
90年代を通じて高卒者が減り大卒者が増えるという変化が起こっており、最近では専門学校卒業者を含む高等教育卒業者が新規学卒就職者の3分の2を占める までに なっている
 (「図1-1 新規学卒就職者の学歴別比率」、p.16)
(2)完全失業率の大幅な上昇
90年代を通して全体の完全失業率が上昇。特に、より若く学歴の低い者ほど失業率が高くなっている(「表1-2 学歴別失業率の推移」、p.16)
しかし、この層の労働力人口は減少している
つまり、最も失業率が高いのはむしろ労働力人口の減少が多い層であった
したがって、労働力供給過剰という供給側の要因よりも、全体に労働力需要が低下する中で、より若い者、より学歴が低い者に対する需要が著しく低下している と いう需要側の要因に注目する必要がある
(3)就業形態の変化
正社員以外の雇用形態で働く者の比率は、90年の19.1%から2001年の27.1%へと高まった
(総務省『労働力調査特別調査』)
=正社員以外の雇用者の増加は、企業の雇用管理の変化を表すものである
例)(日経連 1995)
若年のアルバイト・パート就業者はとりわけ著しく増加した (「図1-2 アルバイト・パート比率の推移」、p.17)
                      男性       女性 (90年→2001年)
15〜24歳(在学中の者を除く) 6.0%→18.1%  9.8%→24.9%
25〜34歳              2.0%→5.4%  23.9%→27.3%

もともと、アルバイト・パート比率は35歳以上の女性で高く、この年齢層では40〜50%程度を占めているのだが、ここに25歳未満の男女が加わる形で、 非正社員が 増加している
非正社員比率は若年者でも女性の方が高く、若年者失業率は男性の方が高い
女性では非正社員の雇用形態で就業するものが多いために失業率が低くとどまっているということだろう

2.新規高卒労働市場の変化
新規学卒労働市場=「就職」市場=一般労働市場とは違い、若者にとって良好な就業機会の用意された市場

◇求人数の大幅減少と質的変化
若く、また、学歴の低い高卒者への労働力需要の激減
新規高卒者への求人 167万人(1992年)→24万人(2002年)
(厚生労働省職業安定局『新規学卒者の労働市場』)
大企業からの求人が減少、事務職、販売職の求人も激減(労働省『新規学卒者の労働市場』)
        (91年→2001年)
 事務職   29.4%→13.0%
 サービス業 11.1%→18.1%
 生産工程等 33.6%→43.9%  (「表1-3 新規高卒者の就職先の規模と職種」、p.18)

◇景気要因プラス構造的要因
求人激減の理由
経営環境の悪化(48%)、専修学校卒・短大卒・大卒の各学卒が当該職務を代替して充当(42%)、職務の高度化(20%)、該当業務を非正規従業員に移 行(19%)、 応募者の質の低下(17%)(日経連・東京経営者協会 2000)
景気要因は景気がよくなれば解消される可能性は高い
構造的な要因は景気回復によっては戻らない
1.高学歴者への代替   2.非正社員への移行   3.生産拠点の海外への移転

◇独立の市場ではなくなった新規高卒市場
「高卒未就職者の増加の背景にある最も大きな要因は、この労働力需要の大きな変化である。ただし、こうした労働市場の構造的な変容にもかかわらず、就職慣 行や 学校における進路指導が変わっていないこと、あるいは、高校生の側の職業能力や就業意識の形成上の問題も大きい(日本労働研究機構 1998 2000b、小杉2001b)」 (p.19)

3.高等教育卒業者の労働市場の変化
大学卒業者数 40万人(90年)から54万人(2001年)(「図1-3 4年制大学卒業者数と卒業後の進路」、p.19)
供給過剰の側面が色濃い大卒の就職難
民間企業への就職を希望する卒業予定者 29万人(91年卒業者)→42万人(2001年卒)
求人数の推計 84万人(91年)→46万人(2001年) (リクルートリサーチ 2001)
就職者数 35万人(92年)→31万人(2001年3月卒) (「図1-3」)

◇職種構成の変化が少ない大卒者
大企業の採用抑制から中小規模に就職先の比重は傾いている
職業別には、大卒者では専門技術職、事務、販売の比率が一貫して高い
事務や販売職での学歴の代替が起こり、新規学卒者への需要は学歴と職種との対応を明確化しつつある

◇異なる就職環境
「高卒者での未就職者の増加とは別の構造であり、また、今後は高等教育卒業者でも労働力供給量は減少することが予想されるので、高等教育卒業者の場合は景 気回復に よって就職環境が改善される可能性は高いと思われる。」(p.20)
学生の職業能力、職業意識の形成、大学の就職指導の体制の問題が重要
 (日本労働研究機構 2001a、小杉2001c)

4.若者の就業行動の変化−『就業構造基本調査』の再分析より
 若者の就労をめぐる全体状況の変化
使うデータ 『就業構造基本調査』(総務庁)、『労働調査特別調査(2001年8月調査)』(総務省)

◇有業者の就業形態の変化
「アルバイト・パートなどほかの雇用形態での就業者の増加は80年代から始まっていて、90年代に入って特に増加が著しくなっている。減っているのは80 年代は自営や 家業従事で、90年代に入ってからは正社員の構成比も減少に転じた。性別では女性の変化のほうが著しいが、傾向は男女で変わらない。」(p.22)
 (「図1-4 有業者(15歳〜34歳で在学中を除く)の就業形態別構成比の推移」、p.21)

◇変化の大きい若年、低学歴層
「もともと自営や家業の少ない年齢の若い層で大幅に増えているのがアルバイト・パートで、より若い層が正社員ではなくアルバイト・パートに吸収され、より 年長層 では自営や家業に転じなくなって正社員で雇用される者が増えている。」(p.22)
10代や20代前半の若い層ではアルバイト・パートが増加
  15〜19歳・男性 7.6%→22.4% 女性 7.4%→28.2%(82年→97年)
20代後半層では自営・家業が大きく減り、アルバイト・パート層の増加幅は小さい
  男性 9.4%→5.4% 女性 18.0%→5.5%

「もともと正社員が多くて自営・家業もアルバイト・パートも少なかった大卒男女の就業形態はあまり変化がなく、自営・家業もアルバイト・パートも相対的に 多かった 高卒者で変化が大きかった。とりわけ、高卒女性は自営・家業が18.3%から7.3%へ、アルバイト・パートが13.7%から26.7%へと大きく変化し ている。」(p.22)

◇大都市の若者で大きい変化
「都市部では、全国レベルで見られた変化、すなわち、若く、また、学歴の低いそうでアルバイト・パート比率が高まるという変化がとりわけ顕著に現れてい る。」 (p.22)
東京都の15〜19歳のアルバイト・パート比率
男性 15.2%→41.3% 女性 8.2%→41.2% (82年→97年)

◇正社員以外の就業形態の質
「90年代以降、大卒以外では「他の雇用形態」と正社員との格差は拡大していると考えられる。相対的に条件の悪い市場に、より若い、より学歴の低い層が吸 収され つつある。」(「図1-5 非正社員の単位時間当たり所得の推移(正社員=100)」、p.23)

◇無業者とその就職希望状況
「大学卒業後、進学も就職もしない者」=無業(文部科学省「学校基本調査」)
  2万人→12万人(90年→2002年、フロー)
「ふだん収入になる仕事をしていない人」=無業(『就業構造基本調査』)
  1997年時点の在学中の者を除く15〜34歳層の無業者数(ストック)
  男性95万人 女性429万人(無配偶…89万人)

若者の無業やフリーターの増加の背景にあるのは、若者の意識以上に労働力需要不足であることがうかがえる。(「図1-6 無業者の就業希望と希望する就業 形態」)

◇増加の大きい大卒男性での無業
「低学歴、低年齢の者では、失業率の上昇やパート・アルバイト比率の上昇が顕著であるのに対して、高学歴、年長層では正社員希望を持った無業者、すなわち 失業者と 潜在的な失業者が増えているということだろう。」(p.25)

5.「フリーター」の動向−『就業構造基本調査』の再分析より
ここでは以下の3点について検討されている
 1.「フリーター」を定義し、その全国的な動向を把握する
 2.世代別に見たときの「フリーター」の動向
 3.「フリーター」の中に新しい働き方の萌芽が見られるかどうか

(1) 研究会定義の「フリーター」−分析のための統一的な変数の作成
あいまいな「フリーター」の定義。今のところ統一された定義は存在していない。

◇『労働白書』での定義 「1991年の『労働白書』」 年齢は15〜34歳
1.現在就業している者については勤め先における呼称が「アルバイト」または「パート」である雇用者で、男子については就業継続年数が5年未満の者、 女子は未婚で 2.現在無業のものについては、家事も通学もしておらず、「アルバイト・パート」の仕事を希望する者(p.25)

◇「2000年の『労働白書』」 年齢は15〜34歳
1.現在就業している者については勤め先における呼称が「アルバイト」または「パート」である雇用者で、男性については就業継続年数が1〜5年未満の者、 女性は 未婚で仕事を主にしている者 2.現在無業の者については、家事も通学もしておらず、「アルバイト・パート」の仕事を希望する者
「特に2000年『労働白書』の『就業構造基本調査』をもとにしたフリーター数の推計は、高い社会的関心を集めた。」(p.26)

「しかしながらこの『労働白書』定義は、これまで研究会が念頭においてきた「フリーター」とはやや異なる点が見られる」(「表1-5 労働白書定義と研究 会定義の 主な相違点」、p.27)
1.在学者の扱いが異なり、『労働白書』の特別集計ではどちらの定義を用いても学生アルバイトが含まれている可能性がある
2.『労働白書』においては、女性は有業者のみ未婚とされているものの、無業者については未婚・既婚が混在している
3.「勤続年数1〜5年未満」という条件をつけているが、勤続年数を理由に「フリーター」というカテゴリーから除く決定的な理由は見いだせない

◇「フリーター」の研究会定義 年齢は15〜34歳 在学しておらず、女性については配偶者のいない者
1.有業者については勤め先における呼称が「パート・アルバイト」である雇用者
2.現在無業者については家事も通学もしておらず「パート・アルバイト」の仕事を希望する者

(2) フリーター数とフリーター率の推移
フリーター数の推移 「図1-7 フリーター数の推計」(p.27)
1982年・53万人→1997年173万人(男女計) 性別で見ると、男性よりも女性のフリーター数が多い

◇フリーター率の推移
 「表1-6 年齢別・学歴別フリーター率」(p.28)
フリーター率は女性のほうがかなり高い。年齢別には、最もフリーター率の上昇が著しいのは10代である
1997年では、男性は10代の4人に1人、女性は3人に1人がフリーターになっている
学歴の低い層においてフリーター率が特に高くなっており、1997年の女性の「小学・中学」学歴の者などは4割がフリーターになっている
「表1-7 地域別フリーター率」
地域を問わずフリーター率が高くなっているが、大都市部で高く、それ以外の地域でやや低い

◇増加する年長フリーター
 「表1-8 フリーターの年齢・学歴・地域構成」
男女を問わず、20〜24歳層が最も多数を占めており、その構成比は上昇傾向にある
10代は在学者が多いため、フリーター率は高いものの、フリーターの構成比はそれほど高くなっていない
次第に年齢構成に占める年長世代の割合が高くなってきていることがわかる
学歴構成を見てみると、最も多数を占めるのは高卒者であり、半数を占めている
これに加えて、男性は「小学・中学」学歴が、女性は「短大・高専」学歴が多くなっている

(3) フリーターのコーホート分析
擬似パネルデータの作成 世代に関する関心
日本のように、新規学卒者の一括採用が主流である労働市場においては、学校を卒業して初めて労働市場に入っていく時の労働市場の状態が、その後の就業行動 に 影響を与える(大竹・猪木 1997、玄田 1997)
「そこで本章では、年齢・性別によるフリーターの擬似パネルデータを作成し、同一世代内でのフリーター数の推移から、フリーターの離脱が世代別・年齢別に どのように変化しているのかを浮き彫りにする。」(p.29)

◇若い世代ほど進まない離脱
「図1-8-1 フリーターの世代別分析(男性)」「図1-8-2 フリーターの世代別分析(男性)」(p.30)
「若いときに「フリーター」を一時的に経験しても離脱できるという図式は若い世代になるほど当てはまらなくなっている可能性が高い」

◇正社員志向、独立志向の推移
「図1-9 フリーターの正社員志向」「図1-10 フリーターの独立志向」(p.31)
「正社員志向が若い世代で弱いという傾向は見いだされないにもかかわらず、若い世代では実際の離脱はあまり進んでいない。このままだと職業能力形成の上で 重要な時期に、希望してもチャンスを得られない若者が増加する可能性が指摘される。」

(4) フリーターの中の「新しい」働き方
 「フリーター」を一枚岩的なイメージで語ることはできない→フリーターになった理由や契機の違いによる類型化

◇「新しい」働き方としてのフリーター
フリーターは単純労働・低賃金で発展性はない?
  就業時間(週) 職種(仕事内容)
1.43時間以上  専門・技術・管理職
2.43時間以上  専門・技術・管理職以外
3.22〜42時間以内
4.21時間以内
1.はこれまでの「フリーター」イメージとは異なる、「新しい」働き方といえよう。「新しい」働き方の萌芽?
「図1-11 フリーター類型と就業希望意識」
 1.はおよそ1%だが、所得は高く、継続就業希望者、独立志向の者が他より多い
 1.のような働き方は「新しい」働き方の萌芽ともいえるが、それはごくわずかであり、フリーターの仕事の大半は低技能で、近いうちに正社員へ変わりたい と 希望させるような一時的な働き方に過ぎない

6.まとめ
低学歴・年少層での非正社員の増加と格差の拡大
高学歴・年長層での正社員希望無業者の増加
フリーターからの離脱は困難化


 
第2章 学校から職業への移行の現状と問題

1.「職業への移行」と就職
◇就職で済んだ移行
「学生・生徒として一日の大半を学習に当てている状態から職業社会で一人前の職業人として生計を立てる状態に変わることを「学校から職業への移行」と捉え ると、 わが国では「就職」という接点でこの移行の問題は片づいてきた。」(p.37)
1990年代初めの不況以降の変化

◇就職の枠組みでの移行
「図2-1 新規学卒就職枠外者比率と中学卒業者数」(p.38)
「現代の若者たちが職業社会へうまく移行できていないとするなら、次の社会の担い手はうまく育っていない。社会のシステムに大きな問題が生じてきたという ことで ある。」(p.38)

2.学校から職業への移行の実態
◇東京の若者の移行
卒業時と同時に就職して社会人としてのスタートを切るのは3分の2で、3分の1の若者は違う形で社会に入っている。(日本労働研究機構「都内若者調査」)
正社員・定着は3分の1 「表2-1 東京の若者のキャリアのパターン化」(p.39)
卒業と同時に就職して定着というキャリアを歩んだ若者は全体の3分の1に過ぎない。
特段定義を与えずに「フリーターを経験したことがあるか」という質問をしているが、これには3分の1以上のものが肯定の答えをしている。

◇「都内若者調査」のデータ
「どういう若者が正社員定着型のキャリアを歩み、どういう若者がそのほかの就業形態を経験しているのか。」
「表2-2 東京の若者(25〜29歳)のキャリアパターンと現在正社員比率(性・学歴別)」(p.40)
「正社員定着型」…男性37%、女性23%。学歴では大学・大学院卒業者で多く、中退者、高校卒業者で少ない
「正社員転職」…男性の中途退学者や短大・専各卒で多い
「他形態から正社員」…男性の中途退学者で多い
「正社員から他形態」…女性の高等教育中退者や短大・専各卒、高校卒で多い
「他形態一貫」…男女ともに中途退学者に多く、また、男性高卒者でも比較的多い

学卒直後では男女ともに学歴の差がはっきりしているが、20代後半になると、正社員への移行が大幅に進む男性と学歴によって差が出る女性というふうに分か れて くる

3.正社員以外の就業を経験する移行
男性では20代後半には8割以上が正社員になっている
→ これまでより若干時間を多く費やす新しい移行の形態か?

◇正社員以外の就業を経由した移行の問題点
アルバイト・パートに就く若者は数が多く増加も著しいので、アルバイト・パート経験を経ての移行に注目する

◇新規学卒就職の枠外でのキャリアの4つの問題
 1.就業内容の正社員との違い←職業能力の獲得の差
 2.正社員以外の就業期間がキャリア探索のために有効であったかどうか
 3.正社員以外の就業形態から正社員になった場合と当初から正社員であった場合との労働条件などの面での差異の有無はあるか
 4.性別以外に移行の有無を分ける条件はあるのだろうか

(1) 仕事を通じての能力開発
◇難しくなりつつある非正社員の雇用機会を通じての能力獲得
就いている仕事が要求する職業能力水準の違いが、能力獲得機会としての優劣を表し、さらに、その職業能力水準は支払われる賃金に現れるという仮設に立つ
92年までは、性別・学歴別を問わず、正社員以外の雇用者の単位時間当たり所得は、正社員との格差が縮まる方向で変化してきたが、それ以後は、高卒や専門 学校・ 短大卒では格差が拡大する方向に転じている。(「図1-5」)
90年代に入り非正社員方雇用は急激に拡大したが、その中で、非正社員の雇用機会を通じての能力獲得は難しくなりつつあるのではないか。

「表2-3 東京の若者の就業形態と収入、労働時間」(p.43)
「図2-2 アルバイト・パートの単位時間当たり年収(正社員=100)」(p.44)
「表2-4 東京の若者の就業形態と現職への意識、満足等」(p.44)
「こうした点からも、アルバイト・パートでの仕事は低賃金の技能を要求されない仕事が多く、就業経験を通じた能力開発には限界があると思われる。若年期に こうした 形態で就業することが、職業能力獲得の上での一定のリスクにつながることは確かだろう。」(p.45)

(2) 非正社員・フリーター期間とキャリア探索
◇現在と3年後では違う最も望ましい就業形態
「図2-3 東京の若者にとって望ましい就業形態(現在と3年後)」(p.45)
アルバイト・パート雇用者の約半数近くは、正社員になりたいという気持ちが強いのだが、一方、現在最も望ましいのがアルバイトだというものも半数近くい る。 なぜ、今はよくて3年後は違うのか? 若者に自営は正社員と並んで望ましい就業形態だと考えられているが、自営・家業従事の若者の比率は低下し続けてい る。 これは別途考える必要のある問題である。

◇キャリア探索期間として有効とは言い難いフリーター経験
「都内若者調査」
「フリーターになるのは、不利な働き方だと認識しながらも<やりたいこと>のためには仕方ないという意識であり、また、そのための一時的なあり方だと考え られて いるのである。すなわち、キャリア探索期間としての認識が強い。」「実態としては、フリーター経験がキャリア探索期間として有効だったといえないケースの ほうが 多いと考えられる(堀 2001)。」

(3) 枠外移行の後の正社員の質
◇労働時間も長い「他形態から正社員」
「表2-5 キャリアパターンと正社員の状況(25〜29歳)」(p.47)
「正社員定着」と比べると、「他形態から正社員」「正社員一時他形態」は学歴が低い
就業先企業は29人以下の小規模企業が多く、サービス職種の比率は高い
平均年収は1割以上低く、「他形態から正社員」では労働時間も長い

◇年収差にもつながる可能性
「表2-6 <年収>を目的変数にした重回帰分析」(p.47)
「性別や学歴に関わりなく、最初にアルバイトに就くと、後で正社員になったとしても、年収の差につながる可能性があることは示唆される。」

◇職場への主観的評価
「(「表2-5」で)年収に見られる差にもかかわらず「他形態から正社員」で職場を高く評価している点は興味深い。アルバイト・パートの場合、男性で特に 現職 への不満や将来への不安感が強かったが、そこから離脱したことが、職場生活への満足感を強くしている可能性もあろう。」

(4) 枠外移行の障壁と対応
◇学歴別、年齢別の両パターンの比率
「表2-7 他形態からの移行と本人の属性」(p.48)
男性、年長層ほど明らかに正社員に移行している
年少層で移行していないのは、年齢が若いくいずれ正社員になるか、年少世代で正社員になるものが減りいずれ正社員になることもないか、のどちらかの可能性 が ある
学歴別の違いはほとんど見られない
成果の豊かさとの関係は明らかではない

◇男性と女性で異なる傾向
「比較的正社員への移動が起こっている男性の場合、むしろ積極的にフリーターを選ぶ層が他形態を続けている可能性がある。一方、女性では、正社員就職が男 性 より難しいことからフリーターに肯定的なものが多く、フリーターへの意見によって他形態のままを続けるかどうかが分かれるわけではないということだろ う。」

◇フリーター離脱を左右する本人の意識
「表2-8 フリーター離脱の有無を判別するためのロジステック回帰分析結果 −投入変数を順次追加した12のモデルの当てはまりを示す係数 (NegelkerkewkR2乗)の 変化−」(p.50)「ここから読みとれるのは経済的な問題等で何としてもフリーターを脱しなければならない状況である。離脱しようという意志の強さが離 脱の成否に かかってくる。」

◇現実認識に規定される若者の職業意識
若い時代とは、職業意識の形成期であり、それは現実認識に大きく規定される
本人の意思決定は何より尊重する必要があるが、それは、より正確な事実認識のもとにされなければならない

◇若年世代にフリーターとして残り続ける傾向



第3章 フリーターという働き方

1.はじめに
◇「フリーター」という言葉はなぜ普及したか
「フリーター」1980年代、道下裕史氏が作った言葉
「まじめに夢に向かってチャレンジしている若者への応援メッセージとして、彼らに送った称号だった」(道下裕史『エグゼクティブフリーター』2001、ワ ニ ブックス)→制作者の意図を離れて広く使われるようになる
「自分は「何者でもない」わけではなく、(フリーターとして:引用者注)労働市場から求められている存在であり、アルバイトまたはパートとして社会と つながっている存在なのだ、と」

◇移行過程の一形態としての「フリーター」
「しかしながら、「フリーター」はやはり一時的な状態を指す言葉である。」
ある程度の年齢までの「若者」に対して用いられる
「フリーター」自身もいつまでも「フリーター」であろうとは思っていない
「フリーター」は、これまでの日本では一般的ではなかった、一定の時間的な幅を持った「学校から職業への移行」過程である
「フリーター」になる過程、「フリーター」である現在、「フリーター」ではない将来という3つの時点にまたがる視点が必要(p.56)

2.なぜフリーターになるのか
◇労働市場の中で不利な立場にある者がフリーターになりやすい
長引く不況で企業が新卒の採用を抑制し、若者にとって良好な雇用機会が減少している
◇労働市場において不利な立場にある者がフリーターになりやすい
 男性より女性
 学歴が高い者より低い者
 卒業者より中退者
 生家が豊かであると自己認識している者よりも生家が豊かではないと自己認識している者
 高校在学中の「広義の成績」が良い者よりも悪い者

◇フリーターへの「経路」とフリーター類型
「図3-1 フリーターになる前の経験」(p.58)
いったん就職した後にフリーター…36%
就職経験のないままフリーター…63%(うち「中退後」が2割弱)

◇「表3-1 フリーターの類型」(p.58)
モラトリアム型  (1)離学モラトリアム型
           (2)離職モラトリアム型
夢追求型     (3)芸能志向型
          (4)職人・フリーランス型
やむを得ず型  (5)正規雇用志向型
          (6)期間限定型
          (7)プライベート・トラブル型
移行過程におけるつまずきの結果としてフリーターとなった「モラトリアム型」「やむを得ず型」、あえて不確かな移行の過程を選んだ「夢追求型」

◇フリーターであることの「リスク」
「(一部の類型を除いて)フリーターであることは移行過程を乗り切る上での着実なステップであるとは位置づけられず、むしろ先が見えず、リスクの高いあり 方 だと考えられる。」

3.フリーターの就業の実情
「ここでは主に、総務庁統計局による平成9年就業構造基本調査についてわれわれが行った再分析結果から、フリーターの就業の実情を捉える。」(p.61)

フリーター=15〜34歳で在学しておらず、女性は未婚の者で、勤め先における呼称がパート・アルバイトである雇用者
正規雇用者=15〜34歳で在学しておらず、女性は未婚の者で、勤め先における呼称が「正規の職員・従業員」である者


◇この定義によると…
男性正規雇用者=約1,007万人、男性フリーター=約67万人
女性正規雇用者=約447万人、女性フリーター=約90万人

◇フリーターの仕事
◇男性

業種別では「製造業」の割合が低く、「卸売業・小売業、飲食店」の割合が高い(「表3-2 男性正規雇用者と男性フリーターの業種分布」、p.61) 職種では「専門・技術」「事務」「販売」の割合が低く、「サービス」および「技能工・採掘・製造・建設作業および労務」の割合が高い。 (「表3-3 男性正規雇用者と男性フリーターの職種分布」、p.61)
 (1)「卸売業・小売業、飲食店」における技能・労務職やサービス職、販売職を中心とした各種職務に3割強
 =ピザの配達、居酒屋店員、コンビニエンス・ストア店員、ガソリンスタンド店員など
 (2)「建設業」「製造業」「運輸・通信業」にわたる技能・労務職に3割強
 =製本、建設資材運搬、引っ越し作業など
 (3)「サービス業」におけるサービスや技能・労務職を中心とした各種職に2割強
 =イベント会場設営、ポストへのチラシ投函など

◇女性
業種では「製造業」「サービス業」の割合が低く、半数近くが「卸売業・小売業、飲食店」に集中している。(「表3-4 女性正規雇用者と女性フリーターの 業種分布」、 p.62)職種では「専門・技術」「事務」の割合が低く、「販売」「サービス」「技能工・採掘・製造・建設作業および労務」の割合が高くなっている。 (「表3-5 女性正規雇用者と女性フリーターの職種分布」、p.62)
 (1)「卸売業・小売業、飲食店」における販売職およびサービス職に3割強
 =ファーストフード店員、スーパー店員、レストランや喫茶店などのウェイトレス、バーのホステスなど
 (2)「卸売業・小売業、飲食店」や「サービス業」を中心としたさまざまな業種における事務職に3割強
 =テレフォン・アポインター、ゴルフ場フロント、一般事務など

29人以下の小規模企業に勤務する者が男性フリーターで約5割、女性フリーターで約4割を占めている
一方、1,000人以上規模も1割以上を占め、大企業における多様な雇用形態の一部を構成している
(「図3-2 就業先の従業員規模」、p.63)

◇正規雇用者並に働いても年収は低いフリーター
「表3-6 年間就業日数 (1)年間就業日数 (2)就業の規則性」(p.63)
「図3-3 1週間の就業時間」「表3-7 就業継続期間」「図3-4 年収分布(20〜24歳・年間200〜249日就業)」(p.64)
「こう見てくると、フリーターの多くは「従順で安価な低技能労働者」として活用されているといえるのではないだろうか。フリーターの中には週に数日間しか 働かず、離転職を繰り返す者もいるが、半数弱の者は正規雇用並みに毎日長時間働き、定着性も比較的高い。それにもかかわらず、彼らは比較的低技能の仕事に 従事 していることもあって、年収は正規雇用者よりかなり低いのである。」(p.65)

4.不透明な将来展望
◇「とりあえず」今の仕事を続ける
 「表3-8 就業継続・転職希望」(p.65)
「なぜ、このように正規雇用を目指す者の割合が低いのか。まず考えられるのは、「とりあえず」今の仕事を続けよう、という志向である。」

「表3-9 転職希望者の割合」(p.66)
高学歴者ほど「ほかの仕事に変わりたい」とする者の割合が高い
男性では20〜24歳層を境に、女性では年齢層が上がるにつれて、「ほかの仕事に変わりたい」とするものの割合が減っている

◇フリーターで「やりたいこと」を探すのは難しい
「表3-10 正社員になろうとしたきっかけ(複数回答、%)」(p.67)
「フリーターになった理由」=「自分に合う仕事を見つけるため」…38%
「正社員になろうとしたきっかけ」=「正社員のほうがトク」…53.7%
                     「年齢的に落ち着いたほうがいい」…41.0%
                     「やりたいことが見つかった」…19.0%

◇離脱への志向
「今までのようにはアルバイトの仕事を続けられない、という事情がない場合でも、年齢を重ねるにつれて、ほとんどの者は何とかしなくては、と思い始める」 (p.67)

◇年齢の障害 年齢差別
年齢を重ねている割に専門技能が身に付いていないことが、さらに引け目を感じさせる
◇専門技能の欠如
 例)パソコンリテラシーを身に付ける機会が少ない → 専門学校に入り直す
「しかし、勉強し直すことを考えても、「お金がない」とあきらめる者も少なくない」
◇支援・情報からの孤立
「こうした状況を打開するためには、彼らの固有の問題に対して適切な支援が行われることが必要だろう」
例)平成13年に大阪にオープンしたヤングサポートプラザ

5.フリーターからの離脱
◇離脱の道は開かれている
「表3-11 フリーターからの離脱状況」(p.70)
フリーターを経験した者のうち63%が正社員になろうとしたことがあり、そのうち63%が実際に正社員になって離脱に成功している
男性では正社員になろうとしたことがある者の割合が高く、そのうち4人に3人は離脱に成功
女性の場合は正社員になろうとしたことがあるものの割合が比較的低く、またそのうち半数弱しか離脱に成功していない

◇早期の離脱がポイント
「図3-5 フリーター通算期間」(p.71)
フリーターを離脱して正社員になっている者(「離脱成功者」)の3割はフリーター通算期間が半数以内の離脱者であり、1年以内の離脱者は半数強である。
正社員になろうとしたことがあるが正社員になっていない「離脱模索者」や正社員になろうとしたことがない「正社員試みなし」グループでは、フリーター通算 期間が 2年を越えている者が半数弱に達している

「表3-12 「離脱成功者」の現在の仕事への就職経路」(p.71)
「なお、フリーターを離脱して正社員となっている者の現在の仕事(必ずしも離脱直後の仕事と同一ではない)への就職経路を見ると(表3-12)、「親族や 知人の 紹介」「パートや契約社員からの正社員登用」という、一般の求人への応募ではないルートで就職している者が4割強を占めている点が注目される」

◇離職後の職場と労働条件
「表3-13 現在の仕事の労働条件」(p.72)
「フリーターを経験した上で離脱して正社員となった「離脱成功者」は就職の経路や職種、企業規模などの点では、「正社員継続者」と異なっている点が多い が、 労働時間や年収の面では少なくとも現時点では(若いうちは)大きな差が無く、フリーターを経験したことによるハンディは小さい(少なくとも顕在化していな い) ことがわかる」

6.まとめ
 1.新規学卒就職というシステムにはおさまらずに、幅のある移行過程を必要とするものは存在するし、無視できない
 2.彼らをフリーターとして受け入れる労働市場がある
 3.フリーターというあり方は、移行過程における一形態としてはリスクの大きいあり方であると考えられる

*社会が過渡期にあるとしても、現在フリーターである若者達は、過渡期における早すぎるアクターとして登場してしまったのだという危機意識が必要であり、 社会的 にも彼らに対する支援が必要であると考える。(p.74)



第4章 フリーターの職業意識とその形成過程― 「やりたいこと」志向の虚実

1.フリーターの職業意識の問題
◇フリーターの職業意識の特徴
1.フリーターの職業意識の特徴とは要するにどういうものなのかに焦点を当てたい

◇非フリーターとの職業意識格差
2.フリーターの職業意識を少し詳しく考えた場合には、「いわゆるフリーターの職業意 識はフリーターでないものの職業意識とどう違うのだろうか」という疑問が 生じてくる

◇フリーターの職業意識の形成過程
3.フリーターの職業意識がどのようにして形成されたのか

2.フリーターが語るフリーターの職業意識
(1)フリーターのメリット・デメリット
◇メリット
自由、時間の融通が利く、休みが取りやすい…約4割弱(p.76)
いろいろな経験…約1割(p.77)
働いた分だけ給料が貰える、気楽である
◇デメリット
収入が少ない…最も多い(p.77)
不安定
不安(p.78)

(2)フリーターが語る「世間のフリーター観」
世間の視線は厳しい…約8割(p.78)
厳しい視線は甘受するか、気にしない、反発を感じない…約7割(p.79)
「フリーターが、必ずしも世間から認められていないのを重々承知していながら、それでも何ら後ろめたさも反発も感じないのはなぜか。」(p.79)

(3)フリーターの「正社員観」
給料、給与、お金、金銭、収入…最も頻出(p.79)
安定…頻繁
拘束…メリットを相殺(p.80)
フリーターは必ずしも「フリーター−正社員」という軸で考えている訳ではない。(p.81)

(4)フリーターのフリーター観
「世間のフリーター観」と対応する形でかなりネガティブな発言をする場合がある(p.81)
一方、本人の「やりたいこと」「目的」があり、そのためにネガティブな「フリーター観」が相殺される
「良いフリーター」「悪いフリーター」の二分法←基準は「やりたいこと」があるか否か(p.82)

◇正当化の根拠は「やりたいこと」
「フリーターに対する世間の厳しい視線を甘受し、正社員との比較を些末な問題だとする背景には、おおそよ、フリーター独特の上のような捉え方があると言え る。」 (p.83)

(5)「やりたいこと」にこだわるフリーター
◇主観的な合理性
「やりたいこと」にエネルギーを傾け、満足感を得られる
社会の変化が激しいので、今「やりたいこと」に力を注ぐ
→フリーターを問題視する社会の方こそ変わるべき

◇隠れ蓑としても機能することも
「フリーターの「やりたいこと」志向とは、ポジティブに評価できる面を多分に含んでいるがために、本人が自覚しているか否かにかかわらず、現実の職業生活 と 自分との接点を見いだせない場合の隠れ蓑として機能してしまうことがある」
「なぜ「やりたいこと」志向は上記のような意味で「隠れ蓑」として機能してしまうのだろうか」(p.84)

3.フリーターの職業意識の特徴
(1)フリーターと非フリーターの職業意識の違い
◇若者の専門的知識・技術、資格に対する志向性
 「表4-1 フリーターと非フリーターの職業意識の違い」(p.85)
専門的知識・技術、資格に対する志向性は現在の若者にはある程度一般的
差が最も大きいのは「やりたい仕事なら正社員でもフリーターでもこだわらない」
  フリーター…7割  非フリーター…5割強
フリーターが肯定するような考え方は、非フリーターにとっても必ずしも理解できない考え方ではない

(2)職業意識の主成分の分析
◇15項目主成分分析結果
「表4-2 職業意識についての主成分分析結果」(p.86)
第一主成分=フリーター共感
第二主成分=能力向上志向
第三主成分=栄達志向
第四主成分=仕事離れ・迷い

(3)キャリアパターン別の職業意識の特徴
◇4つのキャリアパターン別結果
「図4-1 フリーター経験別の職業意識」
「図4-2 キャリアパターン別の「フリーター共感」意識」(p.88)
「フリーター共感」は現役の「フリーター」、「フリーター離脱」、「正社員」、「正社員転職」の順で低くなる
「フリーターからフリーター離脱、正社員へ」という順で考えるなら、それは「やりたいこと志向」が沈静化していく過程としても捉えられる

フリーターとは対照的な正社員転職経験者の職業意識

(4)フリーターを支える職業意識に影響を与える要因
3つの要因:「学校卒業直後に進路を決めずに無業で卒業したか否か」「フリーター経験があるか否か」「現時点でフリーターであるか否か」

◇3つの要因分析結果
「表4-3 職業意識に影響を与える要因の分析」(p.89)
「年齢や性別、大卒か否かなどがフリーターに共感的な意識に影響を与えているのだが、それ以上に、フリーターの経験があり、現在もフリーターであること が、 より「フリーター共感」の意識に影響すると言える。」

(5) 小括:フリーターと非フリーターの職業意識の特徴
「やりたいこと」志向はフリーターの独特意識
フリーターを支える意識は若者に広く共有されている
立場と意識、どちらが先か?
「図4-3 キャリアパターン別の「自分の生活」「進路選択」についての自己評価」(p.91)
「正社員定着」「正社員転職」に比べ「フリーター離脱」「フリーター」の自己評価は低い

4.フリーターの職業意識形成過程
(1) 予定進路別の進路意識の違い
「表4-4 高校3年生1月時点の予定進路別進路意識」(p.92)
高校卒業時点でフリーターを予定している者は、すでに、フリーターの職業意識と共通する考え方を持っている

「表4-5 高校3年生1月時点の進路意識の主成分」(p.93)
第一成分=仕事以外にいろいろな経験をしたい
第二成分=専門意識を磨いて人の役に立ちたい
第三成分=有名になって高収入を得たい
第四成分=安定した生活を送りたい

◇現代若者の職業意識と重なり合う高校生の意識
「やりたいこと」志向、「フリーター共感」「仕事以外にいろいろな経験がしたいか否か」は、現在の若者の職業意識を貫く一つの中心的な価値観であるとも 言えるだろう

「図4-4 予定進路別の進路意識の特徴」(p.94)
フリーターを予定している者の職業意識は、その他の進路を予定している者の意識と比べてやはり極端な側面を持っている

(2) 卒業直前にフリーターを志望する確率に影響を与える要因
「表4-6 卒業直前にフリーターになる確率確率に影響を与える要因(ロジスティック回帰分析)」(p.95)
◇フリーターになりやすい場合
「女子」「1〜2年時に専門学校進学を希望した場合」
「3年生春の段階で“就職”か“その他”の進路を希望した場合」
「3年生春後に進路変更を行った場合」
「進学・就職で迷わなかった場合」
「生徒自身に進路選択が任せられていない場合」
「先生に相談しにくい場合」
「欠席日数が多い場合」
「学業成績が悪い場合」

◇2年生春の段階(製作者:「3年生春」の間違い?)
卒業後の進路を決めるために本格的に進路選択行動を行う3年生春に進路変更を行った場合はフリーターになりやすい

◇進学・就職で迷わなかった場合
「進学・就職で迷わなかった場合」にはかえってフリーターになりやすい
フリーターになるとは、迷いなど生じる余地のないプロセスである可能性がある

◇進路指導の問題
進路指導の問題もフリーターになる要因の1つだと考えられる

(3) フリーターの進路意思決定過程
◇二大指標「学業成績」と「欠席日数」
苅谷剛彦著『学校・職業・選抜の社会学』東京大学出版会、1991
高校進路指導では「学業成績」と「欠席日数」が自分の進路の可能性を示すかなり情報価の高い二大指標になっている

「図4-5 予定進路別の学業成績の主観的5段階評定と11日以上欠席した者の割合」(p.97)
高校卒業直前にフリーターを予定している者は、自分の「学業成績」に対する評定が悪く、「欠席日数」が多い

『フリーターの職業意識の特徴は「やりたいことをやる」という価値観であり、そうした価値観のある部分は、自分にとって可能は進路選択肢を弁別できなく なってしまったために、内的な志望や希望を過度に強調せざるを得ないことに起因している』(p.97)

5.まとめ
◇結論
1.フリーターの職業意識の背景にあるのは、「やりたいこと」に対する強い志向性である
2.フリーターは独特の職業意識を持っているが、それは必ずしもフリーター以外の若者に理解されていないわけではない
3.フリーターの職業意識は、自分がいわゆる「良い」進路を目指すことができないと悟った時、それでも積極的に進路選択をしようとした結果、主観的な選択 基準を 過度に強調せざるを得なくなったことに起因する。

◇われわれの社会に若者を導くために
「やりたいこと」をやることが前提になっている現在であるからこそ、若者に訴えかけるべき職業選択の社会性や公共性について、アナクロニズムに陥ることな く 議論する素地が整ったと言える

◇フリーターの職業意識のポジティブ面
フリーターにとっては労働の対価として賃金を得るような合理的な経済行動はそれほど問題ではない
われわれは、日々の生活でそうしたものに密かな憧憬を感じているのであって、おそらくはそうであるからこそ、フリーターは「自由」「経験」「出会い」を 切り札とするのだといえるだろう



第5章 1990年代における高校の職業紹介機 能の変容―初回就職形態に見る高校から職業への移行の多様化


1.高校の職業紹介について
◇新規高卒労働市場の推移
不可欠だった高校側の職業紹介
「新規高卒」市場←高校側の職業紹介(職業安定法:1947年→1949年→1991年)

「図5-1 「新規高卒労働市場」の推移(構成比)」(p.101)
高校の職業紹介は、その機能の強力さと効率のよさを長く誇ってきた
1972年3月卒群から1993年3月卒群に至るまでの20年間以上にわたって、新規高卒者の就職決定率は99%台の天井値を維持し続けている

◇旺盛だった企業の新規高卒者需要
「図5-2 新規高卒求人倍率と一般有効求人倍率」(p.102)1972年から2001年まで一貫して一般有効求人倍率より新規高卒求人倍率の方が高い
高校の職業紹介は、需要サイドの変動に直接連動することなく、毎年安定して就職希望の生徒に就職先を斡旋し続けてきた

◇10年以上にわたり拡大し続ける機能不全
1990年代に入り高校の職業紹介も機能不全が拡大してきている

◇1990年代に入るまでの高校職業紹介の仕組み
企業と学校の仲介の仕組み

1990年代の初頭に至るまで、高校の職業紹介がかくも安定して機能してきたのはなぜだろうか。それはどのようにして成し遂げられていたのだろうか。
1990年代に入ってからの機能不全の原因はどこにあるのだろうか。「図5-3 高校を通じた新規高等学校卒業者の就職に関する仕組み」(p.103)

「指定校」制
どの高校に求人票を配るかは、ここの企業の任意な選択に任されている
「一人一社」制
一人の生徒に対して学校は常に一時点につき一社だけ斡旋する
“第一次採用選考”
企業の採用選考が集中する選考開始が認められてから1週間から10日間ほどの時期
「校内選考」
成績や生活態度などから学校側があらかじめ求人に応募する生徒を絞り込んでおくこと

◇高校職業紹介を制約する暗黙の規範
認められていない「就職浪人」「進学浪人」は認められるが「就職浪人」という社会的地位は認められていない
 =高校生は在学中に就職先を確定させるもの(最近、「公務員」志望者の「就職浪人」は認められている)

◇前提となっていた「正社員」雇用
求人企業にとって、新規学卒者を採用できることは“地域社会で一定の地歩を占めたことの証”と見なされてきた
高校での進路指導も卒業時の進路として「不安定雇用」や「無業」を想定してこなかった
 →高校の職業紹介は、卒業までに就職希望の生徒全員に「正社員」としての就職先の内定を得させねばならないという、極めて重い制約を暗黙の内に課せられ ている のである

◇精緻に組織化された高校の職業紹介
 効率性・安定性=拘束・抑圧

◇「正社員」就職によって完成する高卒就職者の職業指導
企業によるOJTを基本とした職業教育訓練
企業は若者をOJTを通して一人前の職業人に育てる
若者は最初に雇用された企業に長く定着して働き続けることも期待されている

◇わが国の職業指導の実態
わが国の若者に対する職業指導は、新規学卒労働市場経由の就職というプロセスを経ることで完結する
→ 早期離職が問題視される根拠

◇新規高卒市場と「若年失業」
西欧社会とわが国の違い。西欧社会『若者の学校から職業への移行を、(失業を経験させずに)いかに円滑に成し遂げさせるか』が問題。
→ 日本の高校職業紹介システムの検討

2.高校の職業紹介力の低下と高卒無業者の急増
◇バブル経済崩壊の影響
大学・短大・専門学校等への進学率の持続的上昇
高卒就職率の持続的低下に伴う高卒就職者の労働力としての質の低下
サービス産業化
情報化
グローバライゼーションの進展と産業構造の変化
→ 高校職業紹介システム

◇「つるべ落とし」の求人減少傾向
「図5-4 新規高卒労働市場の推移」(p.108)
新規高卒就職者に対する求人数
1980年代からすでに減少傾向
バブル経済の到来で一旦は回復
1990年代に激減
2000年代には求人総数が就職希望者数とあまり変わらないほどの低水準となる
→ 高卒無業者の急増

◇市民権を得た「フリーター」
「フリーター」の多くは、学校職業紹介に依ることなく、新規高卒労働市場とは異なったパート・アルバイト市場や一般の転職(中途採用)市場で自身の職業 キャリアを スタートさせることになる。
選択の自由度が増す分、責任が伴う
「若者の学校から職業への円滑な移行をいかに円滑に推進させるか」という西欧社会と同じ問題を抱えることになるであろう

3.『若者のワークスタイル調査』データに見る高校職業紹介の変容
◇「閉じたシステム」の限界
「閉じたシステム」=高校職業紹介システムは各高校宛に個別に届けられる求人を生徒に斡旋することで完結
=質量ともに豊富な求人が必要

◇都下在住2000人の若者の意識調査結果
日本労働研究機構『若者のワークスタイル調査』のデータを用いた分析
1990年代における高卒就職者の初回就職の実態を把握することで、わが国における「高校から職業への円滑な移行」に今後どのような支援が必要とされるよ うになる のかについて、いかなる手がかりが得られるであろうか。
「分析対象者の属性と分析枠」(p.110)

◇分析対象者の初回就職形態の類型化
4類型に抽出
「学校紹介・正社員」型=「標準型」
「学外経由・正規就業」型=「亜・標準型」
「非学校紹介・非正規雇用」型=「学卒無業者」の1つのタイプ
「就業遅延」型=純粋の「学卒無業者」

◇フリーターと見なされる一群
「非学校紹介・非正規雇用」型と「就業遅延」型は移行の仕方に違いはあるもののしばしば“フリーター”と見なされうる一群を構成する

◇男性の「就業遅延」型は8%
「図5-5a 高卒就職者(男性)の移行類型」
「図5-5b 高卒就職者(女性)の移行類型」(p.113)
男性
「学校紹介・正社員」型…34%
「非学校紹介・非正規雇用」型…32%
「学外経由・正規就業」型…26%
「就業遅延」型…8%

◇男性とは異なる女性の構成比
「学校紹介・正社員」型…52%
「非学校紹介・非正規雇用」型…26%
「学外経由・正規就業」型…13%
「就業遅延」型…10%

高校から仕事への移行形態は1990年代を通じてかなり多様化していることは明らかで、とりわけ男性においてそれが顕著である

◇男女差が激しい普通科
「図5-6 高校在籍学科と移行類型の構成」(p.114)
普通科・男性              普通科・女性
「非学校紹介・非正規雇用」型…41%   「学校紹介・正社員」型…50%
「学外経由・正規就業」型…29%     「非学校紹介・非正規雇用」型…28%
「学校紹介・正社員」型…22%      「学外経由・正規就業」型…12%
「就業遅延」型…8%          「就業遅延」型…10%

◇職業科では標準型が全体の2/3
工業科・男性              商業科・女性
「学校紹介・正社員」型…63%      「学校紹介・正社員」型…68%
「学外経由・正規就業」型…20%     「非学校紹介・非正規雇用」型…13%
「非学校紹介・非正規雇用」型…9%   「学外経由・正規就業」型…11%
「就業遅延」型…8%          「就業遅延」型…8%

普通科のみならず職業科でも高校から仕事への移行形態は多様化している

◇一般的な移行スタイルとなった「学卒無業」型(男性)
「図5-7a 高校卒業年と移行類型(男性)」(p.115)
             1989〜1992年卒群 1993〜1996年卒 1997〜2000年卒
「学校紹介・正社員」型    39.0%      37.5%     21.4%
「学外経由・正規就業」型   33.5%      23.4%     20.8%
「非学校紹介・非正規雇用」型 22.4%      30.4%     46.4%
「就業遅延」型        5.1%       8.7%     11.3%

「図5-7b 高校卒業と移行類型(女性)」(p.115)
              1989〜1992年卒群 1993〜1996年卒 1997〜2000年卒
 「学校紹介・正社員」型    56.8%      52.0%     43.1%
 「学外経由・正規就業」型   19.5%      5.3%      8.1%
 「非学校紹介・非正規雇用」型 19.5%      30.9%     30.9%
 「就業遅延」型        4.2%       11.8%     17.8%

4.まとめ
 急速に弱まりつつある“暗黙の規範”
1990年代を通じて新規高卒労働市場への参入経路は急激に多様化し、高校の職業紹介に依らない「学卒無業」型移行が次第に大きなシェアを占めるように なっている

◇さまざまな打開策
転職市場における一般成人に対する求人を新規高卒就職者向けに転用する
企業訪問して求人開拓を図る
「指定校」制の枠を取り払い求人情報を共有する
「ジョブフェアー」の開催

◇変質を余儀なくされる高校職業紹介システム
個々の学校内の閉じた空間内で完結する仕組みである高校職業紹介の基盤が揺り動かされる

◇再構築が迫られる支援システム
「高校職業紹介システムは今、労働市場の変化に即した、「学卒無業」型の移行支援をも視野に入れた、新たな支援体制モデルとそれに基づく支援システムの早 急な 再構築が迫られているのである。」(p.117)

◇求められる柔軟で広範な支援システム
学校が行う進路指導や職業紹介の守備範囲から外れてしまった若者に向けて、専門的 ・組織的に進路支援を支援・指導するシステムをほとんど整備してこな かった
学校教育から離れた後の若者の進路選択の支援を視野に含んだ、あるいは学校と学校外との垣根が低く両者の間の出入りが容易な、柔軟で広範な支援システムで ある ことが必要



第6章 高校生とフリーター


1.はじめに
◇高卒以下の者に集中する「フリーター」現象
<高卒以下>…およそ半数がフリーター経験者
<高卒を超える学歴>…フリーター経験者は3割以下

昭和57年        平成9年
高卒フリーター率  2.4%(男) 6.5%(女)  7.2%(男) 20.0%(女)
中卒の場合はさらにフリーター率の伸びが顕著

若者の就業行動の変化と呼ばれる現象はおもに高卒者をめぐって起こっているのである

◇例外だった日本の低い若年失業率
多くの先進国はかなり前から高等教育に進学しない若者の失業問題に苦しんできた
それに対して日本では低い若年失業率を維持してきた
日本の高校の役割が大きい
しかしそうした状況の変化している

◇「日本の高校」に今何が起こっているのか?
本章では、高卒労働市場のマクロな変化を捉えた第5章をうけて、高校および高校生に特に焦点を当てる
第2節では高校生の進路形成に大きな影響を与える高校進路指導の現状について、第3節では無業者予備軍である大都市進路多様校の高校生の実態に検討を加え る

2.高校進路指導の現在
◇進路分化装置としての高校進路指導
進学市場と高卒労働市場の大きな変化は高校生を取り巻く重要な環境の一つではあるものの、そうした構造のみが直接高校生の進路を決定づけているわけではな い

◇トラッキング
トラッキング=実質的にはどのコース(学校)に入るかによってその後の進路選択の機会と範囲が限定されること
高校進路指導と高校生文化=トラックに「ふさわしい」進路選択に影響

◇高校進路指導の機能不全
 進路の水路付けに失敗
高卒無業者の増加は、バブル崩壊後の就職難や専門学科が進学機会から締め出されただけではなく、むしろ進路指導が進路の水路付けに失敗していることによ る。 ←刈谷ほか(1997)「進路未決定の構造」『東京大学大学院教育学研究科紀要』

高卒無業者を多く生む大都市圏の進路多様校は、積極的に進学するほど成績が良いわけではないが、特に就職したいというわけではない生徒を数多く抱えている ため、 さまざまな進路志望を持つ生徒が混在し、特に普通科の進路指導は就職にも進学にも特化できない。
専門学科は就職というトラックも明確で、実績関係も強い。

◇弱まる傾向を示す水路づけ機能
現状として専門学科の方が普通科よりも水路づけ機能が強い
今後進路指導の枠付けの弱さを要因とする高卒無業者問題は、普通科下位校に加えて専門学科にも広がる可能性が存在する。 (堀有喜衣(2001)「学校・校外生活と無業者」『日本教育社会学会発表資料』未定稿)
「無業者でも目標があればかまわない」「生徒に進路を強制できない」などの教師の論理

◇高卒就職システムの問題点
 小杉礼子(2001)「若者と職業−増加するフリーター・無業者の背景と問題」『勤労よこはま』

3.高校生文化の変容
◇高校へのコミットメントの低下
「講義の成績」で良い成績を獲得
多くの生徒が真面目な学校生活を送ることによって将来より良い職業に就く、という目標をそれなりに持っていたからこそ、生徒は学校に対してコミットし、生 徒の 高いコミットメントを前提として高校進路指導が進路を円滑に分化させるという図式が成り立っていた。そしてこうした仕組みは、結果として質の高い労働力を 生み出す ことにも寄与していたのである

◇高校の「パートタイム」化
高校進路指導の有効性よりもむしろ、進路指導にのらない高校生が増加している
アルバイトに傾倒し高校へのコミットメントが著しく低下
 →「パートタイム」的高校生活

◇<学校を通じた上昇移動>規範を受容しない集団の出現
 「不戦敗者」の出現
低階層出身者が自信を持って競争から降りていく現象が近年になって生じる
←苅谷剛彦(2001)「第7章 <自信>の構造」『階層化日本と教育危機』有信堂
相対的に低い社会背景を持つ者がより高い地位を得たいという目標を初めから持っていない「不戦敗者」になるようになった
←大多和直樹(2001)「『地位欲求不満説』再考」『犯罪社会学研究』26 日本犯罪社会学会

◇共有されなくなった伝統的アスピレーション
近年、高卒無業者率が漸増傾向にあるのは、<学校を通じた上昇移動>という伝統的なアスピレーションを共有しない新しい集団が生まれているためであるとい う 仮説が導かれる

◇パートタイム生徒
パートタイム生徒=高校3年生になってからの欠席日数が21日以上の者

◇フリーター率:成績よりもコミットメント
パートタイム生徒の分布
男性
学校ランク(偏差値)が低い
成績が下位
 であるほど出現率が高い

◇大きく上回るフリーター率
「図6-1 予定進路」(p.125)
パートタイム生徒 非パートタイム生徒
フリーター率   28.4%      9.9%
         32.2%      11.1%  (普通科)
         19.5%      8.0%  (専門学科)

◇就業行動変化の震源地
成績や学校ランクにかかわらず、パートタイム生徒はフリーターになりやすい
学校へのコミットメントの低いパートタイム生徒集団は高校生の就業行動の変化の震源地になっている
「表6-1 予定進路と成績」(p.125)
「表6-2 予定進路と偏差値」(p.126)

◇パートタイム生徒:進路に迷ってフリーター?
パートタイム生徒の校内生活
パートタイム生徒…成績「下のほう」43.1%
部活参加率 パートタイム生徒…26.6% 非パートタイム生徒…45.7%

◇進路活動に参加しないパートタイム生徒
 「進路活動を特に何もしなかった」
           春   夏   秋
 パートタイム生徒  6割  4割  4割
 非パートタイム生徒 46.7% 16.3% 15.1%

◇無業者の高さには他の要因が
「図6-2 進路希望の変化」
 図6-3 進路希望の変化」(p.127)
パートタイム生徒のフリーター率が高いのは、進路に悩んで決められないというよりは他の要因が重要であると考えられる

◇パートタイム生徒:自信を持ってフリーター
 フリーターに積極的な肯定理由
 「図6-4 フリーター理由(M.A)」(p.128)
パートタイム生徒…「正社員より収入がいい」「時間が自由」「人間関係が気楽」「転職しやすい」「他にやりたいことがある」「身近にフリーターがいるか ら」など
非パートタイム生徒…「どういう仕事が自分に向いているかわからない」という「自分探し」タイプの割合が多い

パートタイム生徒の保護者は子供の進路決定に際して放任する傾向が見られる

「他にやりたいことがあるから」
「図6-5 フリーター最大理由」(p.128)
パートタイム生徒…「他にやりたいことがある」
非パートタイム生徒…「どういう仕事が自分に向いているかわからないから」

◇パートタイム生徒の職業意識
「図6-6 パートタイム生徒の野心」(p.129)
パートタイム生徒…「高い収入を得たい」「有名になりたい」
非パートタイム生徒…「安定した職業生活を送りたい」「自分に合わない仕事はしたくない」

「余裕を持ってフリーター」 「〈やりたいこと〉探し」、「自分探し」、<やむを得ず>というより「余裕を持ってフリーター」

◇教員の評価
「お前は食っていける」「世の中との折り合いをつけている感じ」「社会を垣間見ている」「あいつは社会へ出て十分職業の延長でやっていける」

◇学校とは異なる価値体系の中で生きる若者
「こうした若者は以前から存在していたと考えられるが、かつては表面的であっても「学校的」価値観にコミットしていたものの、近年生徒にとっての学校の重 要性が 低下し高卒求人が激減することによって、表面的にさえコミットする意義を見出せなくなったために、パートタイム生徒集団が顕在化したものと推測される。」 (p.130)

4.おわりに
◇仮説と検証
<学校を通じてより高い社会的地位を達成する>というこれまで学校が依拠してきた価値を受け入れない集団が生まれているという仮説を提起し、データで可能 な範囲では あるが検証を試みた。

◇「忘れられた」者としないために
パートタイム生徒はフリーターのほんの一部であるが、不利益を被りやすい集団といえ、援助の手立てについて議論することは重要である。


 
第7章 誰がフリーターになるのか−社会階層的 背景の検討−

1.問題の設定
社会階層=さまざまな社会的資源の保有状況ないしは獲得可能性に関して一定の社会的地位を共有する一群の人々を指す概念

・「人々がどのようにして、職業的地位を含む社会的地位を獲得していくのか。フリーター(パート・アルバイトや無業)に焦点づけて、人々の社会的地位の形 成過程のあり方に探りを入れるのが、目的である。」(p.133)

◇学校教育の進路分化機能
・「学校は、どのような背景を持った若者を、どんな選抜過程によって類別し、誰を上級学校へと進学させ、誰を職業世界へと参入させ、そして誰をフリーター として卒業させていくのだろうか。」(p.133)

◇社会的上昇移動のための乗物
・「「社会的上昇移動のための乗り物」としての教育の利用は、近代社会に共通に見られる行動様式である。」

・属性原理(ascription)=生まれた社会階層

業績原理(achievement)=学歴

・学校=「偉大な平等化装置」

◇平等化装置としての学校に対する懐疑
・近藤博之(2000)「階層研究と教育社会の位相」 近藤博之編『日本の階層システム3 戦後日本の教育社会』 東京大学出版会
・ブルデュー・P、パスロン・J・C(宮島喬訳)(1991)『再生産』 藤原書店
・宮島喬・藤田英典編(1991)『文化と社会 差異化・構造化・再生産』 有信堂 高文社

・誰がフリーターとなって相対的に不安定な位置につくのかは、学校教育の進路分化機能を理解する上で、新たに浮上してきた今日的テーマであるといってよ い。

◇高卒の1割を占めるようになったフリーター
・フリーター≒文部統計上「無業者」
 =高卒時点で上級学校へ進学・入学する者、就職する者、死亡・データ不詳の者「以外」
 =2000年春の卒業生の1割

◇高卒無業者層漸増の背景
・無業者漸増の背景
@高卒労働市場
A高校生文化
B高校進路指導の変容
C階層分化の進展(矢島・耳塚編 2001)

・「威信の高い四大へ進学できるのは、教育費の支弁が可能でかつ学力が高い高校生であり、就職の狭き門を通り抜けることのできるのは、進学希望を持たない 真面目な(欠席や遅刻が少なく学業にも真面目に取り組んだ相対的に成績の良い)生徒たちであると考えられる。」(p.135)
→フリーター問題=社会階層問題(?)

・「表7-1 高校3年生1〜2月時点における進路予定と社会階層」(p.135)
・父職・専門技術、管理職で四年制大学進学予定者が多い
・父職・工員等でフリーター・無業が多い、父学歴が相対的に低い階層でフリーター・無業が多い

2.学卒直後の就業と社会階層
・「表7-2 学卒直後の就業と社会階層」(p.137)
・「ここまでの検討からは、学歴階層、職業階層と学卒直後の状況には関連が見られるとは言えない。経済階層(生家の経済的豊かさ)のみについて、弱い関連 が見られるの留まる。」(p.136)

3.年齢コーホート別分析
・「けれども、ここまでの記述は、年齢コーホートと学歴(本人)による違いを無視して、全体としてみた傾向に過ぎない。次に、年齢コーホートを、 @18〜19歳、A20〜24歳、B25〜29歳の3カテゴリに分けた上で、学卒直後の就業状況を見ることにしよう。」(p.137)

(1) 父学歴別にみた就業状況
・「表7-3 年齢コーホート別、父学歴別に見た学卒直後の就業状況」(p.138)
・学卒直後に正社員として就職した正社員率
 25〜29歳コーホート…71.0%
 20〜24歳コーホート…58.1%
 18〜19歳コーホート…37.5%
・若いコーホートほど着実かつ激しく低下
・「図7-1 年齢コーホート別、父学歴別に見た、正社員率」(p.138)
25〜29歳コーホート    18〜19歳コーホート
父=高等教育卒…75.1%    27.8%
  専各卒…73.0%      83.8%
  中卒…70.9%       2.3%
  高卒…68.3%       46.3%

(2) 母学歴別に見た就業状況
・「表7-4 年齢コーホート別、母学歴別に見た学卒直後の就業状況」
「年齢コーホート別、母学歴別に見た、正社員率」(p.139)
 25〜29歳コーホート    18〜19歳コーホート
母=高等教育卒…72.0%    0.0%
  専各卒…67.9%      73.2%
  中卒…66.5%       2.4%
  高卒…74.6%       43.4%
・「なぜ高等教育卒の子弟で正社員率がこれだけ低いのかは、必ずしも説明できないが、ただし、母=中卒と高等教育卒とでは正社員率は同じく低いものの、高 等教育卒ではパートアルバイト率が高く(母=高等教育卒60.8%、中卒24.4%)、逆に無業率が低い(高等教育卒3.9%、中卒36.6%)という違 いがある。」(p.139)

(3) 父職別にみた就業状況
・「表7-5 年齢コーホート別、父職別に見た学卒直後の就業状況」
 「図7-3 年齢コーホート別、父職別に見た、正社員率」(p.140)
  18〜19歳コーホート
 父=専門・技術…74.7%
   事務・販売・サービス…59.6%
   生産工程・運輸通信…37.2%
   管理…22.5%
   自営…17.4%

(4) 生家の経済的豊かさ別に見た就業状況
・「表7-6 年齢コーホート別、生家の経済的豊かさ別学卒直後の就業状況」
 「図7-4 年齢別コーホート別、生家の経済的豊かさ別に見た、正社員率」(p.141)
  18〜19歳コーホート
 豊かである…65.4%
 やや豊かである…50.9%
 あまり豊かではない…48.5%
 豊かではない…25.0%
・「全体として正社員率が若いコーホートほど低下する過程で、家計の経済的豊かさによる差異も激しく拡大したことをここでも確認できる。」(p.141)

4.年齢コーホート別、学歴(本人)別分析
◇浮き彫りにされた3つの隠れた関係
・1 新しいコーホートほど正社員率が低下し、非典型労働市場への参入率と無業率が高まったが、この過程で社会階層差は著しく大きなものとなった
・2 新しいコーホート(18〜19歳)では、概して相対的に高い階層出身者の正社員率が高く、非典型労働市場への参入率と無業率は低階層出身者で高い傾 向が現れるようになった
 @学歴階層の点で中卒階層出身者で非典型労働市場への参入率と無業率が高い(父学歴と母学歴の両者で、同一の傾向がある)
 A職業階層(父職)の点で、専門・技術職と事務・販売・サービス職で正社員率が高く、非典型労働市場への参入率、無業率が低い
 B経済階層(家計の経済的豊かさ)の点で、豊かな階層ほど正社員率が高く、非典型労働市場への参入率、無業率が低い
*「相対的に高い階層出身者の正社員率が高く、非典型労働市場への参入率と無業率は低階層出身者で高い傾向が現れるようになった」と言い切るためには、父 母の学歴階層のうち高等教育卒階層、父職のうち管理職階層の2つが例外

◇混在する2つの効果
@学歴(本人)効果 どのような学歴の者が関わる学卒労働市場で生起した現象であるか
A世代(卒業・就職時期)効果 時期的に、どの時点の学卒労働市場で生起した現象であるか
*前項の分析における特定のコーホートの就業状況には、高卒、大卒などの学歴を異にする集団が含まれている

◇学歴効果と世代効果
@世代(卒業・就職時期)効果を除去し、学歴効果のみを浮かび上がらせる分析
 =高卒18〜19歳コーホートと大卒20〜24歳コーホートの比較
A学歴効果を除去し、世代(卒業・就職時期)効果のみを浮かび上がらせる分析
 =高卒グループに限定して各コーホートを比較分析

(1) 学歴効果の抽出
・「表7-7 18〜19歳高卒と20〜24歳大卒の比較 社会階層別学卒直後の就業状況」
 「図7-5 18〜19歳高卒と20〜24歳大卒の比較 父学歴別正社員率」
 「図7-6 18〜19歳高卒と20〜24歳大卒の比較 母学歴別正社員率」(p.144)
・「この結果は、高卒18〜19歳コーホートと大卒20〜24歳コーホートが卒業・就職した時期(1990年代末期)に、社会階層と学卒直後の就業状況の 関連が、新規大卒市場においてよりも、新規高卒労働市場において生じたことを示している。」(p.145)

(2) 世代(卒業・就職時期)効果の抽出
・「表7-8 高卒者の年齢コーホート別比較 社会階層別学卒直後の就業状況」(p.145)
 「図7-7 高卒者年齢コーホート別比較 父学歴別正社員率」
 「図7-8 高卒者年齢コーホート別比較 母学歴別正社員率」(p.146)
・「高卒労働市場においては、25〜29歳コーホートが卒業・就職した時点(1990年代前半)では社会階層による学卒直後の就業状況の差は認められな かった。それが明瞭になるのは、18〜19歳コーホートが卒業・就職した90年代末期である。」(p.146)

◇高卒無業者の多くは相対的に低い社会的背景を持つ
@1990年代を通じて正社員率が低下し、学卒直後に非典型労働市場へと参入する者と無業者が増加した
Aその困難さは、大卒労働市場に比較して、高卒労働市場において顕著だった
B同じ高卒者の中でも、1990年代末期に、一層多く非典型労働市場へ参入したり無業者となったのは、相対的に低い社会階層的背景を持った者たちだった

5.まとめ
◇高等教育拡大は階層間格差を拡大
・「1990年代以降、相対的に低い階層の出身者たちは、進学機会の拡大の恩恵にあずかったわけではなかった。なおかつ彼らは、著しく狭隘化した高卒労働 市場への参入をも拒まれることになったのである。」(p.148)

◇職業社会と教育社会の狭間にさまよい出ていく者たち
・「フリーターとは、進学と就職という伝統的に2大進路を阻まれ、職業社会と教育社会の狭間にさまよい出ていく者たちである。」
・「確かに学校は社会的上昇移動の乗り物ではある。だがそれは、一部の階層出身者たちにとって、より有効な乗り物でしかあり得ない。」(p.148)


 
第8章 ジェンダーという観点から見たフリー ター


1.はじめに−フリーター現象をジェンダーという観点から見ることの意味
◇黙殺されてきたフリーターのジェンダー
・「フリーターに関する調査研究では、男女別の集計はほぼ必ず提示されているにもかかわらず、性別による違いやその背景について踏み込んだ分析や考察は まったくと言っていいほど行われていないのである。」(p.149)
・就業構造基本調査の再集計結果
・1997年時点でのフリーター総数173万人のうち、58%に当たる100万人が女性
・15〜34歳人口全体に占める男性のフリーター率は6.4%、女性では16.3%
・男性のフリーター率は年齢が上がるにつれて減少するが、女性では25歳以上でも14%の高率が維持される

◇フリーターを生み出すジェンダー
・「フリーターになる要因としてのジェンダー」=[ジェンダー→フリーター]
・「一定の構造的制約の下で、若者の中の誰がなぜフリーターになるのかを、特にジェンダーという切り口から探ることは、フリーターの実態を理解し、有効な 支援の糸口をつかむために必要であると考える。」(p.150)

◇ジェンダーを変革するフリーター?
・「従来のジェンダーを変化させる要因としてのフリーター」=[フリーター→ジェンダー]
・「これは、フリーターが性別役割分業や働き方、ひいては人々の生き方までもを変化させる可能性を秘めているのかどうかという問いである。」 (p.150)

2.フリーターの客観的条件のジェンダー差異
・「本節ではフリーターの客観的条件−具体的には出身家庭・教育経験・職業経験−が性別によってどのように異なっているかを検討する。」(p.151)

(1) 出身家庭の階層的特徴
◇フリーターと非フリーターの階層格差
「表8-1 年齢別・性別・フリーター/非フリーター別階層指標」(p.152)
・フリーターよりも非フリーターのほうが相対的に高い階層に属するという事実が、各年齢層・性別を通じて観察される

◇フリーター内部の男女格差
・男性フリーターと女性フリーターの間で階層的指標の差はほどんどないか、あるとすれば女性の方が相対的に上位の階層に属することが現れている

(2) 教育:高校生活と学歴
◇成績要因の男女差
「表8-2 偏差値・成績・性別とフリーター予定との関係」(p.153)
・最上位ランクと最下位ランクの高校においては、成績とフリーター選択率との関係をめぐる男女差は小さい
・偏差値が明らかに高くも低くもない高校の生徒の中でフリーターになろうとする者は、男子では成績が不振なものに集中しているのに対し、女子では成績が比 較的良好なものにまで広く分散しているのである
・「表8-3 性別・フリーター予定と欠席日数・部活動経験・アルバイト経験」(p.154)
 男子→「パートタイム生徒」、女子→「しらけ生徒」という傾向

◇年齢と性別により異なる学歴構成
・「表8-4 年齢別・性別・フリーター/非フリーター別学歴」(p.155)
@最若年層の特に男性における高卒以下への集中
A20代半ばにおける一時的な学歴格差の均等化
B20代後半層のフリーターにおける大卒者率の低さと短期高等教育卒業者率の高さ

(3) 職業:フリーター以前の職歴
◇女性フリーターの方が高い正社員経験率
・「図8-1 性別・年齢別・学歴別フリーター内での正社員経験比率」(p.155)
・「概して女性よりも男性フリーターのほうが、正社員の労働市場との距離が遠いと言えるだろう。」(p.156)

3.フリーターの主観的過程のジェンダー差異
(1) ジェンダー間での共通のフリーター意識
◇「やりたいこと」重視の意識
・「図8-2 性別・年齢別・フリーター/非フリーター別「若いうちは仕事よりも自分のやりたいことを優先させたい」肯定率」(p.156)
・男女共通して、非フリーターに比べフリーターで「やりたいこと」を重視し、かつ年齢が上昇しても高水準を維持 「高すぎる志望」と「容易なあきらめ」
・「やりたいこと」重視以外の男女に共通する意識
@「高すぎる志望」=派手で「カッコいい」イメージを与えられている職業
A「挫折後の容易なあきらめ」
・現実認識の甘さや根気のなさなど若者個々人の問題点よりも、社会に流布している言説や情報の偏りなど、若者のそうした意識傾向を助長している社会的・構 造的要因のほうに批判の目を向けるべき

(2) 高校生フリーター予備軍の意識のジェンダー差異
◇フリーター理由の男女差
・上西充子(2000)「フリーター予定者の実態」『進路決定をめぐる高校生の意識と行動』日本労働研究機構調査研究報告書No.138
 男子に多い類型…目的追求型、適性不明型
 女子に多い類型…就職断念型、進学断念型、自由志向型

◇両極端な男子の意識に通底するもの
・既存の「企業社会」的体制への反発ないし逸脱

◇労働市場におけるジェンダー差別
・就職断念=労働市場におけるジェンダー差別
・進学断念=保護者によるジェンダー差別
・自由志向=本人のジェンダー意識に基づく労働市場からの離脱
・1月時点の就職希望者に占める未内定者の比率(高校3年生調査)
 男子…16% 女子…21%
・2001年3月末現在における高卒者の就職状況
   就職内定率  就職希望者数
 男子 94.8%   10万9千人
 女子 90.5%   9万9千人

◇保護者の期待のジェンダーバイアス
・「保護者は子供が男の子の場合には学費を負担してもできれば進学させようとする傾向が強いのに対して、女子の場合はそうした負担に積極的ではない。」 (p.160)

◇内面化されたジェンダー
・将来形成する家庭における性別役割分業を見越した上で教育達成からも職業達成からも下りてしまう女子が少なくとも一部には明らかに存在し、それが女子フ リーター予定者を生み出す直接的・間接的な要因の1つになっている。

(3) フリーター男性に特徴的な意識
◇男性フリーターの「野心」
・「図8-3 性別・年齢別・フリーター/非フリーター別「有名になりたい」肯定率」
 「図8-4 性別・年齢別・フリーター/非フリーター別「将来は独立して自分の店や会社を持ちたい」肯定率」(p.161)
・男性フリーターには「有名になること」や「独立自営」への志向が強く、特に若年で前者、年齢が高くなるほど後者が際立ってくる

◇「企業社会」への忌避感
・「企業社会」、より一般的には組織に属することへの忌避感
 →攻撃的な嫌悪感
 →消極的な無気力感

◇暗い自己イメージ
・「図8-5 性別・年齢別・フリーター/非フリーター別「これまでの進路選択は順調であった」肯定率」
 「図8-6 性別・年齢別・フリーター/非フリーター別「将来の見通しは明るい」肯定率」(p.163)
・男性フリーターは、フリーターである限り、次代の再生産を担いうる「一人前」の社会成員ではないと自認しているのである。

(4) フリーター女性に特徴的な意識
◇典型的な「パラサイト・シングル」
・比較的富裕な家庭出身の女性の一部

◇女性フリーターの結婚願望
・女性フリーター、特に第1節で見た比較的階層的指標が高い20代半ば以降の女性フリーターは、多かれ少なかれ「結婚を待っている」者がほとんどであると いってよい
・「図8-7 学歴・年齢・フリーター・非フリーター別 3年後に「働かない/専業主婦など」を望む比率」(p.167)
・高卒の女性フリーター、大卒の非フリーターで結婚と主婦化を規定路線とする考えが強い

◇保護者からの結婚圧力
・「保護者は女性の子供に対しては職業達成への圧力をかけない代わりに、結婚して「落ち着く」という「進路」選択への圧力を強烈にかけていることをデータ は明らかに示してしている。」(p.167)

◇フリーター男性とは結婚できない
・「その切り捨て方の冷酷さはあきれるほどである。」(p.168)

(5) 小括
男性フリーターは階層要因、女性フリーターはジェンダー要因

4.ジェンダー状況へのフリーターのインパクト
◇わずかな萌芽
・フリーターのような自由度が高く会社への拘束性が強くない働き方を、積極的に評価する見方が生まれていることは確かである

◇変革の条件
・性別役割分業観、フリーターの就労条件、女性の就労条件がそれぞれ改善される必要があるが、互いに悪循環をなしているのが現状

◇もう1つの希望の芽
・「図8-8 キャリアパターン別・現職への評価」
 「表8-5 「やりがいのある仕事だ」の規定要因(重回帰分析)」(p.171)
・一度フリーターになってから正社員になるというプロセスは、獲得した仕事や自分のたどった道への納得性を高める
*フリーターからの離脱は容易ではなく、かつ近年になるほど困難になっている

5.まとめと社会的課題
・「図8-9 フリーターとジェンダーをめぐる諸要素間の連関」(p.172)
・克服すべき課題
@客観的な階層条件の不利がフリーター(特に男性)を生み出していること
A社会のジェンダー状況がフリーター(おもに女性)を生み出していること
Bフリーター(特に男性)が自他ともに主観的な位置づけが低いこと
C女性フリーターが経済的依存を前提としていること

緊急の政策課題
・フリーターの雇用条件と労働条件の改善
長期的課題
・階層格差、ジェンダー格差を是正すること
・フリーターに対する社会的な見方そのものを変えていく試みの必要性
・「(…)むしろフリーターないし非正規就業という働き方が、永続的に従事されうる、固有の意義を持っているという見方が必要ではないだろうか」 (p.173)


 
第9章 日本経済の変貌と若年者雇用政策の課題


1.はじめに
◇人口変動と技術進歩
・「一国の経済発展は、技術進歩による生産性の上昇を促す資本蓄積と追加的労働供給の量的質的構造に大きく依存している。」(p.175)
・J.M.ケインズ(1937)「人口衰退の若干の経済的効果」
・A.ハンセン(1941)「財政政策と景気循環」
・S.シュタインドル(1952)「アメリカの資本主義の成熟と停滞」

◇高度経済成長の背景
・1950年代から60年代にかけての日本の高度成長の要因
@大量生産技術を中核とする技術進歩
A技術変化への適応能力の高い新規学卒労働力が年々大量に供給され続けたこと
B新規学卒労働力が日本経済をリードする産業へ率先して入職する職業行動をとったこと

◇ME技術適応能力が支えた安定経済成長
・「石油危機」以降、1970年代から80年代にかけての安定経済成長の要因
進学率の上昇によってME技術への適応能力の高い高学歴の新規学卒労働力が大量供給され続けた
大量生産技術
=少品種大量生産によって自動化・効率化する技術であったが資本集約的技術で厖大な投資を必要とし、かつ資源・エネルギーを大量消費する産業技術

ME技術(マイクロエレクトロニクス技術)
=多品種中少量生産を自動化・効率化する技術で、しかも資源・エネルギーの消費が少ない資本節約型技術

◇バブル経済の崩壊と人口減少過程への突入
・実質成長率0〜1%台の1990年代以降の長期停滞過程
 20人に1人の失業
・人口減少過程
 生産年齢人口(15〜64歳)…1995年から減少
 総人口…2006年から減少が確実視

◇少子化・高齢化と技術進歩の停滞
・総人口の減少
 消費購買力の縮小、新規追加住宅需要の減少、地価の下落などの資産価格の低下
→経済成長率の低下

・新技術の適応能力の高い新規学卒労働力の供給の減少によって技術進歩もおきにくくなる

◇経済発展の行き詰まりを克服するために
・「こうした現代の経済発展の行き詰まりを克服するためには、技術進歩を促進することはもちろんのことであるが、新規追加労働力が経済発展をリードする人 材として育成され、しかも経済発展の担い手として日本経済の成長をリードする発展産業へ入職する行動を取るような労働力の配分が円滑に進むかどうかが重要 である。」

2.新規学卒者等若年層の労働市場問題の論点
◇労働市場問題の核心
・「図9-1 労働市場の機構」(p.177)←ポール・M・スウィージー『資本主義発展の理論』

◇資本蓄積量と景気変動に左右される労働需要
・労働需要の総量は経済活動の派生需要であるから、経済活動へ投下される資本蓄積量と景気変動などによって左右される
◇不断に規制される労働力の配分・再配分
・「さらに、上述したように総労働需要の変動は、産業構造や職業構造の変動を伴って進行するが、これは同時に企業間・地域間の配分・再配分という資本移動 を伴って進行する。つまり、この資本移動によって労働力の産業・職業・地域・企業間の配分・再配分も普段に規制されて進行していることになる。」 (p.178)

◇摩擦的失業と構造的失業
・失業の3つの基本的形態
(イ)職業情報の不足や転居を伴う地域移動の困難性から発生する「摩擦的失業」
(ロ)景気変動による不況期に発生する「景気的失業」もしくは「需要不足的失業」
(ハ)産業や職業構造の変化により離職を余儀なくされたが再就職が困難となった不適応者で構成される「構造的失業」
・形態別対策
(イ)職業情報の提供と公的職業紹介政策による再就職援助
(ロ)景気振興策と失業中の生活保障としての失業保険制度による失業手当の支給と再就職援助
(ハ)転職・再就職のための公共的訓練サービスの提供、訓練中の生活手当の支給、再就職に伴う地域移動のための移転手当の支給、また公共的財源による「雇 用機会」の提供
*構造的失業者の再就職は困難を極める

3.追加労働需要総量と追加労働供給総量の推計結果
◇追加労働需要と労働供給の関係を表す推計式
「表9-1 新規追加労働需給の推計式」(p.179)
・追加労働需要(総量)=就業者純増+交替補充需要
         (就業者中の死亡者+老齢、結婚・出産などによる引退者)
・追加労働供給(総量)=新規学卒就職者+非労働力の労働力化
               (専業主婦+病気治癒者+引退した高老齢者)
参照)氏原正次郎・高梨昌『日本労働市場分析』下巻補論2、東京大学出版会、1971

◇推計式算定に用いた統計
「表9-2 追加労働需給の推計」
「表9-3 追加労働需給の推計」(p.180)
・「表9-2」…1955〜60年と60〜65年の推計値
・「表9-3」…1980年代と90年代の推計値

◇逆転した純増加分と交替補充需要の比率
@1990年代には純増加分と交替補充需要の比率は逆転し、交替補充需要がはるかに高まってきている。純増加分が少ないのは不況による労働需要の減退だけ ではない構造的要因も作用し始めている。

◇新規学卒労働者の追加労働供給の減少
A追加供給される新規学卒就職者数は、1980年代後半から90年代前半にかけては第2の団塊の世代の追加供給によって高度経済成長期並の大量供給があっ たが、90年代には急激に減少し、出生率の低下から中長期的に減少傾向が続くことは確実である。

◇非労働力の労働力化に伴う追加労働供給の急増
B女子の年齢別労働力率の「M字型カーブ」の傾向が続く

◇新規学卒者の雇用機会
C「長期雇用システム下に中高年層が解雇されず、この既得権が守られているために若年層への雇用機会が狭められている」わけではない。
・「ここでの問題は、交替補充需要は増加してきたが、非労働力の労働力化に伴う追加労働供給も増加したために、新規学卒者との競合が強まり、新規学卒者の 雇用機会が蚕食されてきていることである。」(p.182)
*高卒就職者と主婦パートの競争

◇「失われた10年」の労働市場の構造変動
・「新規学卒者を中核とする若年層の就職問題の所在を明らかにするためには、「失われた10年」(伊藤光晴)と言われる1990年代の長期不況過程で起 こった日本経済の変貌との関連で、労働市場の構造変動の特徴について触れなければならない。」(p.182)

4.1990年代の労働需要の構造変動
◇労働需要構造変動の5つの特徴
(1)総就業者数は、1991年6,369万人から2001年6,412万人と微増にとどまり、毎年20〜50万人も純減少し始めてきている。雇用者数の 増減もほぼ同様である。
(2)家族主義的自営業就業者の減少が著しい。97〜99年の不況がいっそう深まった時期には雇用者数も1950年代以降では初の純減少を記録した。
(3)農林業、製造業などの「モノづくり産業」がいずれも純減少しているのに対して、サービス業は著しく増加している。
(4)常用雇用者が97年をピークに毎年減少しているのに対して、臨時雇、パートタイマー、派遣労働者などの、いわゆる非正規雇用労働者が急激に増加して いる。
(5)比較的雇用が安定していると見られてきた大企業の雇用労働者が減少している。中小企業は全体で見ると横這いで推移してきているが、増えているのは サービス業で、製造業での雇用者減は著しい。

5.1990年代の労働供給の構造変動の特徴
◇労働供給構造変動の6つの特徴
(1)生産年齢人口(15〜64歳)が1995年をピークに減少過程に入っていて、またその原因である出生率の低下傾向が反転する見通しは現状ではまった くない。
(2)敗戦直後の「多産少子型」の時期に生まれたいわゆる「団塊の世代」が経済の高度成長を支えたが、現在は「少産少死型」の人口変動である。
(3)1960年代から70年代にかけては毎年130〜150万人もの新規学卒者が産業界に参入したが、21世紀には90万人強にまで激減している。
 「表9-4 新規学卒就職者の学校種別構成」(p.184)
(4)新規学卒者の労働市場が高学歴化している。
(5)1960年代以降、職業高校の地盤沈下と普通高校の有名大学への進学状況による序列づけが進んできた。
(6)大学・短大での人文・社会系の学生数のウェイトが高く、理工系の学生数は人文・社会系の3分の1程度である。

6.新卒者労働市場での職業別・産業別需給ギャップの拡大
◇職業別・産業別需給ギャップの拡大
(1)職業別需給ギャップの拡大
・一般事務職の求人減→高卒未就職失業者、フリーター増の原因
・大企業の正規社員の求人減→大卒無業者の増加要因
・「技能工・生産工程従事者」分野の労働力不足問題→外国人労働者への依存、小零細企業の後継者不足

(2)産業別需給ギャップの拡大 ・大手都市銀行、証券会社、流通企業の雇用の縮小傾向→普通高校卒業生と人文・社会系の短大・大学卒業生の雇用に悪影響
*理工系技術職の求人倍率は1倍以上で良好

(3)日本の雇用調整慣行の定着
・不況で企業の業績が悪化した場合、まず超過勤務時間の短縮による労働投入量の調整を行いつつ、中高年の長期勤続者を解雇せずに、新規学卒者の採用抑制を 図る雇用調整策が慣行として定着してきた

7.若年就職者の定着と移動の特徴
◇「終身雇用」とは?
・終身雇用=学卒後最初に勤めた会社に定年まで雇用を継続する慣行
*全体として20〜30%、大企業と公務に限られる

◇転職回数による就職先への満足度
・1〜2回の転職(社)は生涯の適職発見のためのもので、これは望ましい企業間移動と言えるが、これ以上の頻繁な転職は技能習得の絶好の機会を失うという 無益な転職ということになる

◇安易に離転職する若者
・失業率が高いうえに「自己都合退職」が若年層で多い
→能力を身につける機会の喪失

8.若年者雇用対策の課題
◇社会が必要とする人材需要に合わせた学校教育課程の抜本的な見直し
・高校・大学の専攻分野の編成替え、人文・社会系の削減と理工系の増加
・「モノづくり産業」の人材育成ができるように学校教育課程を見直す

◇学校から社会への円滑なトランジション
・機能しなくなっている高校の職業紹介制度や早期化などの問題が見られる大学生の就職など、学校から社会への移行における問題を解決しなければならない

◇早急に求められる新規学卒無業者対策
・1960年代70年代には例外的な存在だった未就職失業者が1980年代から高まり始めていた
・対策
・望ましい労働観や職業観の育成
・社会人としての基礎的能力を伸ばすための職業教育や進路指導の充実
・高校での専門教育の充実をはじめ職場体験機会の提供
・未就職失業者への学生職業センターの活用による企業実習や職業訓練サービスの提供
・青少年雇用対策の立法化


  
*基礎情報
小杉 礼子 編 20021203 『自由の代償/フリーター──現代若者の就業意識と行動』,日本労働研究機構 2200 ※ *

コスギ レイコ 小杉 礼子 20021203
「若者の就業行動は問題か──研究の意味と範囲」
小杉編[2002:001-013]

コスギ レイコ ホリ ユキエ 小杉 礼子・堀 有喜衣 20021203
「若者の労働市場の変化とフリーター」
小杉編[2002:015-035]

コスギ レイコ 小杉 礼子 20021203
「学校から職業への移行の現状と問題」
小杉編[2002:037-054]

ウエニシ ミツコ 上西 充子 20021203
「フリーターという働き方」
小杉編[2002:055-074]

シモムラ ヒデオ 下村 英雄 20021203
「フリーターの職業意識とその形成過程──「やりたいこと」志向の虚実」
小杉編[2002:075-099]

ナカジマ フミアキ 中島 史明 20021203
「1990年代における高校の職業紹介機能の変容──初回就職形態に見る高校から職業への移行の多様化」
小杉編[2002:101-117]

ホリ ユキエ 堀 有喜衣 20021203
「高校生とフリーター」
小杉編[2002:119-132]

ミミヅカ ヒロアキ 耳塚 寛明 20021203
「誰がフリーターになるのか──社会階層的背景の検討」
小杉編[2002:133-148]

ホンダ ユキ 本田 由紀 20021203
「ジェンダーという観点から見たフリーター」
小杉編[2002:149-174]

タカナシ アキラ 高梨 昌 20021203
「日本経済の変貌と若年者雇用政策の課題」
小杉編[2002:175-192]


製作:橋口 昌治立岩真也
UP:20040316, REV:20040520,20051024  http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db2000/0212kr.htm

労働   ◇BIBLIO. 

TOP  HOME(http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/)