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小玉徹・中村健吾・都留民子・平川茂編著『欧米のホームレ ス問題(上) ―実態と政策―』



小玉徹・中村健吾・都留民子・平川茂編著20030210『欧米のホームレス問題(上) ―実態と政策―』法律文化社,p.361,¥4500(税別), ISDN : 4-589-02619-8 [amazon]

■目次


第T編 EU
はじめに――本格化する,社会的排除とホームレス問題へのEUの取り組み
第1章 市場・通貨統合から政治・社会統合へ
 1 拡大するEUの影響力
 2 「貧困と社会的排除に抗するナショナル・アクション・プラン」の背景
第2章 社会的排除
 1 「社会的排除」の含意
 2 「社会的排除」に関する統計上の指標
 3 「社会的排除」概念の二面性
第3章 ホームレス問題の輪郭
 1 「ホームレス状態」とは何か
 2 「ホームレス状態」の指標を作成する試み
 3 「ホームレス状態」の現実
第4章 「ナショナル・アクション・プラン」におけるホームレス問題
 1 欧州委員会による評価
 2 FEANTSAによる評価
 〈補遺〉欧州社会基金
注・参考文献

第U編 イギリス
はじめに――住宅政策への包摂から社会的排除の克服へ
第1章 ホームレス生活者支援策の変遷
 1 1977年ホームレス法の成立とその意義
 2 公営住宅売却によるホームレス問題の深刻化
 3 「物への助成」から「人への助成」へ
 4 増大する単身ホームレス生活者と住宅給付
 5 社会的排除の克服と就労支援
第2章 ホームレス生活者の現状とその支援制度
 1 ホームレス生活者の像
    区分  ホームレス生活者の規模および地域的分布 ホームレス生活者の属性
 2 ホームレス状態の原因
 3 政策上の課題
    制度の課題  住宅政策の課題  居住にかかわるさまざまな課題
 4 現在のホームレス生活者支援政策
 5 ホームレス生活者支援制度の構造
    階層構造  ホームレス生活者支援策の構成  ホームレス生活者支援策の概要
第3章 野宿者の現状と野宿者支援策
 1 野宿者の具体的様相
 2 ホームレス生活者に対する社会保障と就労支援
    ホームレス生活者と社会保障給付  ホームレス生活者と就労支援
 3 政府の野宿者支援策
    野宿者優先プログラムの支援策とその評価  野宿者対策室の野宿者支援戦略
第4章 社会への再参入のための「ナショナル・アクション・プラン」
注・参考文献

第V編 ドイツ
はじめに――公的扶助をベースに,NPOと自治体による多方面の支援システムを展開するドイツ
    ドイツにおける社会扶助法(公的扶助制度)の役割  雇用政策と公的扶助の交錯
    貧困ならびに社会的排除と闘うためのナショナル・アクション・プラン
第1章 ホームレスをめぐるいくつかの概念
 1 ホームレス生活者 Wohnungslose
 2 住宅難 Wohnungsnotfalle
 3 無宿者 Obdachlose
 4 非定住者 NichtseBhafte
第2章 ホームレス生活者支援の歴史
 1 1945〜60年:戦前からの連続性
 2 1960年代:過渡期
 3 1970年代以降:収容から「社会への再参入」へ
 4 まとめ
第3章 ホームレス生活者の現状
第4章 今日のホームレス生活者支援の諸制度
 1 秩序法ないし警察法にもとづくホームレス生活者対策
 2 社会扶助法によるホームレス生活者支援策
    連邦社会扶助法の概要  家賃肩代わり措置による予防施策:「特別な場合の生活扶助」(15a条)
    現に住宅を失っている人のための諸施策:敷居の低い扶助  住居獲得後のソーシャルワーク援助     「特別な社会的困難を克服するための扶助」(72条)
 3 住宅政策
 4 就労支援策
    就労支援策を支える法制度  民間のホームレス生活者支援施設による就労支援策
    就労支援策が抱える問題点
第5章 「ナショナル・アクション・プラン」とホームレス生活者支援策の将来
 1 全般的な戦略
 2 ホームレス生活者への言及
 3 ホームレス生活者にかかわるその他の措置
 4 言及されざる人々
注・参考文献

第W編 フランス
はじめに――国家責任の社会諸施策を「公」と「民」の協同体制で実行
    一般的貧困対策に位置づけられたホームレス支援策  貧困者支援
  アソシエーションのイニシアティブ,そして「公」と「民」の協同
  「反排除法」そしてナショナル・アクション・プラン
第1章 ホームレス生活者支援策の歴史と現状
 1 前史
 2 第2次世界大戦・高度成長期(1945〜75年)のホームレス問題
    「救済地」のない人々への宿泊社会扶助  刑法による浮浪者対策
    ビドンヴィルなどの極貧ホームレス家族
 3 「貧困の発見」とホームレス問題
 4 大量失業時代のホームレス問題
    1980年代の「新しい貧困」とホームレス問題  「排除」とホームレス問題
    好況期のホームレス問題  最後に
第2章 緊急施策――アウトリーチ・緊急受け入れから宿泊施設
 1 アウトリーチ・緊急受け入れ
 2 宿泊施設 he(´)bergement
    多様な施設形態:長期滞在の社会扶助宿泊施設(CHRS)  緊急施設(シェルター)
    社会再参入宿泊施設(CHRS)の現状と課題
第3章 社会福祉・社会保障政策――RMIと医療保障
 1 参入最低限所得保障(RMI)制度
 2 医療保障の措置
    「個人保険」と医療扶助  普遍的疾病保障(CMU)制度
第4章 雇用確保への支援策
 1 雇用政策の概要と特徴
    職業養成策  民間企業での雇用誘導策  公的雇用
「困難層」への補助雇用―「経済的活動による参入」支援策
 2 個別的な援助体制
 3 雇用政策(補助雇用・参入就労)の効用
第5章 住宅政策と住宅困窮者支援施策
 1 住宅政策と「特定層」対策
    1977年以前の住宅困窮者対策  1977年の住宅融資制度改革と「特定層」対策
    ベソン法制定の背景  ベソン法の特徴
 2 住宅事情と貧困世帯の居住状況
    住宅事情  貧困世帯の居住状況
 3 「恵まれない者」施策の両義性
    社会住宅への優先入居  反排除法の方針
 4 困窮者に向けられた住宅施策の現状と課題
    施策の現状  施策の評価  社会住宅政策の方向性と課題
 5 「恵まれない者」施策の意義
第6章 「反排除法」から「ナショナル・アクション・プラン」,そして今後の課題
 1 制定の経緯
 2 諸施策の特徴
    雇用諸施策  住宅および居住保障策  その他
 3 「ナショナル・アクション・プラン」など今後の「貧困・排除との闘い」の課題
注・参考文献

第X編 アメリカ
はじめに―マキニー法のもとでのホームレス生活者対策
第1章 ホームレス生活者の歴史と現在
 1 スキッド・ロウのホームレス生活者
 2 今日のホームレス生活者
    ホームレス生活者の定義  性別  エスニシティ  年齢 居住(滞在)地域
    退役軍人  結婚の有無  子どもの有無  学歴  身体的病気(身体障害を含む)
    アルコール・薬物・精神障害  調査日の滞在場所  ホームレス状態の経験回数
    現在のホームレス状態の継続期間  地域移動  収入  収入源
    ホームレス生活者人口
第2章 連邦政府のホームレス生活者対策
     ―マキニー法の成立・展開を軸に
 1 ホームレス支援立法の前提
    ホームレス生活者の諸相  貧困対策の切り詰め
 2 マキニー・ホームレス支援法の成立
    マキニー法成立以前の政府動向  マキニー・ホームレス支援法の成立
 3 1990年代における連邦ホームレス政策の展開
    「ケアの継続」という戦略  連邦ホームレス生活者対策の政策含意
 4 小括
注・参考文献


■作成者による引用

◆「貧困や社会的排除に対する各国の取り組みをEUレベルでのイニシアティブによって活性化しようという試みは,単一通貨「ユーロ」を導入するための制度 面での準備が整った1990年代の後半から本格化したといってよいであろう。
 1997年10月に調印されたアムステルダム条約は,マーストリヒト条約では付属議定書扱いになっていた「社会政策協定」をほぼ全面的に条約本体に取り 込んだ(EC設立条約第11編第1章)。その結果,条約136条には「高水準の雇用の継続と社会的排除の撲滅のための人的資源の開発」がEUおよび加盟国 の目標として掲げられた。さらに137条によれば,「労働市場から排除された人々を労働市場へ統合する」ために,加盟国の関係閣僚からなる閣僚理事会は次 の2種類の措置をとることができる。すなわち,第1に「最低基準」を特定多数決にもとづく「命令directive」によって採択することである。「命 令」が閣僚理事会での全会一致ではなく特定多数決によって採択可能となったことは,排除に抗するEUレベルでの立法を迅速にするうえで効果的である。第2 に「知識の改善,情報および優れた慣行の交換の促進,社会的排除を撲滅するための革新的な手法の開発と経験の評価を目的とする発議を通じて,加盟国間の協 力を促進する」ことである。この第2の措置が,加盟国政府による「貧困と社会的排除に抗するナショナル・アクション・プラン」の作成とその検証というかた ちで具体化されていくのである。」(p.6〜7)

◆「結局,欧州委員会は,――以下で述べるように「社会的排除」の度合いを測るためのEU共通の指標を策定する努力を続けているとはいえ――「社会的排 除」に明確な定義を与えることを今日まで回避している。それにもかかわらず,欧州委員会が使用する「社会的排除」の概念は上でみたように,経済のグローバ リゼーションと情報社会化に対応して欧州経済の競争力を強化するというEUの全般的な戦略にみごとに合致する仕方で組み立てられている。すなわち,これま で加盟国が整備してきたような「受動的な」所得再分配政策や社会的保護のシステムでは経済と社会の変化に対応できないので,人々の「雇用確保力」や「適応 能力」を高める「能動的な福祉国家」(リスボンでの欧州理事会における議長総括)に切り替えていくことをめざすEUの戦略にとって,「所得の再分配」に視 野を限定せず「先を見越した」アプローチを要求する「社会的排除」の概念の構成は,実に適合的である。なぜなら,「社会的排除」が示唆する「先を見越した アプローチ」とは,可能なかぎり社会的保護に頼らなくてもすむように労働力としての人々の資質――労働市場における個々人の競争力――を強化することを指 向しているからである。それは,マクロ経済政策を通して完全雇用を達成しようとするようなアプローチではない。そうではなくて,供給サイドのミクロな次元 における競争力の強化を目指しているのである。[Silver, 1994, p.540]が示唆しているように「社会的排除」の概念は,欧州委員会と加盟国政府のみならず経営者団体をも含む,「欧州の福祉国家を改革しようとする新 しい広範な連合」を形成するうえで,キー・コンセプトとしての機能を果たしうる。
 「社会的排除」の概念を以上のような文脈の中においてみると,皮肉なことに,本来は多次元的であるはずのこの概念は,もっぱら「変化の激しい労働市場か ら排除された人々」に適用される概念となり,したがって「社会への包摂」が「労働市場への包摂」へと切り詰められかねない危険性をともなっているといわざ るをえない。そうなると,そもそも労働市場に再参入する以前にさまざまな問題を抱えているホームレス生活者のような人々は,「社会的包摂」のための施策か ら除外されかねないのである。「先を見越した」就労支援策と事後的な生活保障政策は,いわば車の両輪なのであって,前者のみの一面的強調は,人々に自立を 強制するような圧力を生み出し,後者のみの一面的強調は,自立への道を閉ざすことにつながる。」(p.14〜15)



製作:橋口昌治 UP:20051114
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労働  

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