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宮本太郎編,20060930,『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部.


宮本太郎編,20060930,『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略(比較政治叢書2)』早稲田大学出版部.xiii+260p ¥ 3,360 ISBN-10: 4657068202 [amazon]

「福祉国家の新しいかたち 転換期を迎えた福祉国家はどこへ向かうのか 先進工業国の情勢を分析して福祉政治の展開を明らかにする」(帯より)


◆宮本太郎,20060930,「はじめに」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,i-vii.
◆近藤康史,20060930,「「第三の道」以後の社会民主主義と福祉国家――英独の福祉国家改革から」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,3-25.
◆野田昌吾,20060930,「ポスト新保守主義時代の保守政治」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,26-43.
◆眞柄秀子,20060930,「政治的党派性とサプライサイドの福祉政策――OECD諸国における公的教育投資の予備的分析」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,44-67.
◆宮本太郎,20060930,「福祉国家の再編と言説政治――新しい分析枠組み」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,68-88.
◆田村哲樹,20060930,「ジェンダー平等・言説戦略・制度改革――日本の「男女共同参画社会」政策の展開を事例として」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,91-114.
◆篠田徹,20060930,「労働運動の変容――研究視点再考の観点から」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,115-33.
◆畑山敏夫,20060930,「フランスにおける新しい右翼――ヨーロッパでの「新しい右翼」現象を考える」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,134-54.
◆渡辺博明,20060930,「福祉国家レジームの変容――「三つの世界」のその後」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,157-74.
◆井戸正伸,20060930,「コーポラティズムの復権?」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,175-205.
◆水島治郎,20060930,「福祉国家と移民――再定義されるシティズンシップ」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,206-26.
◆小舘尚文,20060930,「イギリス福祉国家の変容と多層的ガヴァナンス――国民保健サービス改革の政治」宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版部,227-52.


■目次

はじめに

I 戦略の刷新

第1章 「第三の道」以後の社会民主主義と福祉国家――英独の福祉国家改革から
1 社会民主主義と政党戦略
2 「第三の道」と福祉国家改革
3 イギリス・ブレア労働党政府の福祉国家改革
4 「第三の道」の波及と多様な道
5 ドイツ・シュレーダー赤緑連立政府の福祉国家改革
6 「第三の道」の収斂と分岐

第2章 ポスト新保守主義時代の保守政治
1 「社民の危機」「保守の危機」
2 ポスト新保守主義の時代
3 保守政治の変容と危機
4 保守政治混迷の諸相――ドイツとイギリス
5 戦後政治の終焉と保守政党の現在

第3章 政治的党派性とサプライサイドの福祉政策――OECD諸国における公的教育投資の予備的分析
1 政党政治と福祉国家の現在
2 成長戦略としてのサプライサイドの福祉政策と各国教育政策の現状
3 何が各国福祉政策の違いを生んでいるのか
4 対立仮説の検証
5 暫定的結論

第4章 福祉国家の再編と言説政治――新しい分析枠組み
1 福祉政治の変遷
2 三つの分析枠組み
3 言説政治論の系譜
4 福祉再編の政治過程と言説政治
5 言説政治論のさらなる発展へ

II アクターの変容

第5章 ジェンダー平等・言説戦略・制度改革――日本の「男女共同参画社会」政策の展開を事例として
1 課題――どのようにジェンダー平等政策の展開を説明するか?
2 理論枠組み I――比較福祉国家研究とジェンダー平等
3 理論枠組み II――言説戦略と制度変化
4 事例分析――日本における「男女共同参画社会」政策の展開と諸言説の配置状況

第6章 労働運動の変容――研究視点再考の観点から
1 呪縛からの開放
2 生産体制のグローバル化とローカルの再発見
3 東欧労働政治の多元的再興
4 米国における組織再編と人種・階級交叉連合の悲劇的再現
5 教員政治の活性化と赤・青連合の復興
6 インター原風景の再現
7 伝統と革新

第7章 フランスにおける新しい右翼――ヨーロッパでの「新しい右翼」現象を考える
1 新しい右翼の台頭
2 フランスにおける極右の再生――「右翼権威主義政党」への脱皮
3 「ナショナル・ポピュリズム」政党としてのFN
4 ヨーロッパでの「新しい右翼」現象を考える
5 変化へのリアクションとしての「新しい右翼」現象

III 制度の転換

第8章 福祉国家レジームの変容――「三つの世界」のその後
1 「レジーム」という視点
2 福祉国家レジームと環境変化
3 「三つの世界」における変化
4 比較政治学への含意

第9章 コーポラティズムの復権?
1 20年後のコーポラティズム――衰退かルネッサンスか?
2 コーポラティズムの復権――1990年代以降の先進国の政策決定様式
3 1990年代における団体交渉制度の変化
4 データに関する議論
5 発見の要約と残された課題

第10章 福祉国家と移民――再定義されるシティズンシップ
1 「移民政治」の顕在化と福祉国家
2 福祉国家改革と移民
3 オランダにおける移民
4 移民・難民政策の転換

第11章 イギリス福祉国家の変容と多層的ガヴァナンス――国民保健サービス改革の政治
1 重層化する福祉国家とレジームの多様化
2 問題の所在と分析視角
3 EUと医療ラヴァナンス――「ヨーロッパ社会モデル」への収斂?
4 ブレア労働党政権と「市場型」改革の継承
5 スコットランド権限委譲と「非市場型」地方レジームの形成
6 多層的ガヴァナンスと福祉レジームのハイブリッド化


索引
執筆者紹介
「比較政治叢書」刊行にあたって



■メモ

第4章 福祉国家の再編と言説政治――新しい分析枠組み
1 福祉政治の変遷
2 三つの分析枠組み
 福祉国家削減の政治/福祉国家形成の権力とその持続性/福祉国家再編とアイデア・言説
3 言説政治論の系譜
 言説政治のミクロ理論/言説政治のマクロ理論
4 福祉再編の政治過程と言説政治
 三つの枠組みの継起的連関/言説政治の条件/アクター・言説関係の流動化
5 言説政治論のさらなる発展へ


1 福祉政治の変遷

1940〜70 諸集団の権力が制度を形成する局面 ← 「福祉国家形成の政治」モデル:権力資源動員論(80年だの終わりから主流)
1970〜90 福祉国家の制度が諸集団の利益や政治戦略を決める局面 ← 「福祉国家削減の政治」モデル:新制度論(90年代の半ばから影響力)
1990〜  雇用と家族の揺らぎによる新しい社会的リスク > 既存の制度の対応力 ⇒ 制度自体の改革と転換が争点=制度改革をめぐるアイデアと言説の分析が課題 ← 「福祉国家再編の政治」モデル:言説政治論(・社会的学習論・アイデアの政治論)

★三つの分析枠組みは、問題とする次元が異なり、必ずしも相互に背反的ではない

2 三つの分析枠組み

福祉国家再編とアイデア・言説

・「今日の福祉政治は、グローバル化がもたらしていわば外的な要因を背景に、制度改革のための多様なアイデアと言説が行き交うなかで、脱経路依存的発展の可能性も含めて展開されている。」(74)
・再編の政治の特徴:「特定の政治アクター間のみならず、有権者と利益集団を巻き込むかたちで、改革の方向をめぐる新しいアイデアや言説が提起され、広範な合意形成が図られる」(74)
・福祉国家再編の政治:「変容がすすむ社会構造と既存の制度・政策のギャップが問われ、そのズレを埋める学習、アイデア、言説が浮上して、制度改革をめぐる政治過程が展開する。その際、部分的な福祉拡大もオプションとなる。こうした局面の福祉政治分析には、制度を独立変数とみなす福祉国家削減の政治モデルとは異なった分析枠組みが求められている。」(75)

3 言説政治論の系譜

言説政治のミクロ理論

・一般的:ムッフェ〜ポスト構造主義あるいはポスト・マルクス主義的なイデオロギー分析の理論


・本稿:主体とインタレストの関係を可塑的にみる点で無関係ではない。だが、「系譜としては比較政治経済学の流れに属するもので、政治過程における知識や言説の役割を強調する諸理論を指す。」

■起点:ヘクロの準古典的な研究
Heclo, Hugh, 1974, Modern Social Politics in Britain and Sweden: From Relief to Income Maintenance, Yale University Press.

政治過程における学習の役割を強調:「政治は、どの要求を満たすかという決断だけではなく、誰が何を要求しうるか、何が要求されるべきか、あるいは達成された合意をいかに実行に移していくかを学習するという側面を含む。つまり政治は権力であると同時にパズルであり、政策の一貫性を維持しつつ、一連の問題に解を与えていく過程なのである(Heclo, 1974: 305)。」(75-6)

◆社会的学習の第一要素
「媒介者middleman」:「労組や政党など特定の組織的ホストとの関係をもちつつも、同時にホストのインタレストから相対的に自立して、問題解決と合意形成のために、新しいアプローチとアイデアを提供していた人々である。」(76)例:英〜ブース、ベヴァリッジ、ティトマス スウェーデン〜レーン、ヴィグフォシュ
「スウェーデンの福祉政策が、…、先駆的な政策革新を実現してきた背景には、こうした媒介者の活動とそのアイデアを受け入れた党、労組の学習能力がある。」(76)

◆第二要素
政治制度:「媒介者がどれだけ効果的な役割を果たしうるか、新しいアイデアがどれだけ実現可能性を得るかを決定する要因」(76)
例:スウェーデン〜コーポラティズム的な委員会制度⇔英:政策過程における党派的対立の演出

◆第三要素
当該国家において先行する政策体系(政策遺制):「政策学習は、先行する政策に対して環境の変化をふまえて働きかけるなかで進行する。一方の極には、既存の政策体系が想定した枠組みのなかでの主体の反応(古典的条件づけ)があり、他方の極には、学習によって反応のパターンそれ自体が変化するケース(オペラント条件づけ)がある。社会的学習は、政策転換を惹起する後者の過程でもっとも効果を発揮することになる(Heclo, 1974: 315-6)。」(76-7)

・ヘクロはマクロの意義を否定しない:「選挙の結果や政権交代、利益集団の動員などは、社会的学習を促すトリガーとなる。あるいは政策をめぐる合意形成が失敗したときは、権力の動員が帰趨を決する(Heclo, 1974: 7-8, 306)。」(77)

権力資源動員論とも接点を有し、制度や先行する政策体系を重視する点で歴史的制度論とも強く連関

言説政治のマクロ理論

■ホールのアイデアの政治論:ヘクロをふまえつつ、制度論や政治過程の動態に結合
Hall, Peter, 1993, "Policy Paradigm, Social Learning, and the State: The Case of Economic Policymaking in Britain," Comparative Politics, 25(3).

・社会的学習が政策にむすびつくパターン
@政策目標も政策技術も変わらないままで微調整がおこなわれる場合
A政策目標は大きく変わらないままに、新しい政策手段やアプローチが、政策エキスパートが主導性を発揮するなかで発展するかたち
B政策目標そのものに関してパラダイムシフトが生じるパターン:「既存のパラダイムの内部で解決できない事例が増大するなかで、制度内部での権威関係が何らかのかたちで変化をきたし、さらには選挙などの外部の政治的な圧力やメディアが深くかかわる。そしてこのこととも関連して、政策エキスパートのみならず政治家の影響力が大きくなってくる(Hall, 1993: 281-7)。」(78)

Bの例(Hall, 1993: 287):英における1979年の選挙を頂点として進行した経済政策のパラダイム転換
スタグフレーションの進展→財務省の権威<イングランド銀行の政策判断+金融界で代替パラダムを求める議論の高まり
⇒マネタリズムの浮上:メディアや経済ジャーナリスト
サッチャーは79年の総選挙で新パラダイムを前面に押し出して勝利 → 制度改革 → 82年までには政策運営のルーティンのレベルでマネタリズムへの以降を完了

★「ホールによれば、このような政策パラダイム転換にかかわる社会的学習は、権力の政治と一体化してすすみ、国家と社会の相互浸透のなかで展開される」

■シュミットの体系的な分析枠組み
Schmidt, V. A., 2000, "Values and Discourse in the Politics of Adjustment," F. W. Scharpf and V. A. Schmidt eds., Welfare and Work in the Open Economy, vol. 1, From Vulnerability to Competitiveness, Oxford University.
――――, 2002, "Does Politics Matter in the Politics of Welfare State Adjustment?," Comparative Political Studies, 35(2).
――――, 2003, "How, Where, and When does Discourse Matter in Small States' Welfare State Adjustment?," New Political Economy, 8(1).

「シュミットは、福祉、経済政策をめぐる政治過程における理念やアイデアの役割を重視し、ここから言説に焦点を当てた政治分析を試みる。ここで言説とは、公共性にかかわるアイデアと、こうしたアイデアをめぐる政治的アクター間および政治的アクターと一般公衆との相互交渉プロセスの双方を指す(Schmidt, 2002)。」(79)

・各国の言説の政治の比較分析:「言説の政治は、一面において制度に拘束されている。だが他方においては、人々が自らのインタレストと考えるものを変化させ、その帰結によっては福祉国家レジームの制度転換にもつながっていくのである(Schmidt, 2000: 230)。」(79)

・言説のあり方の区分
@「調整的言説coordinative discourse」:「政治家、専門家などの政治的アクターが政策ネットワークのなかで相互にとりかわす」言説
A「コミュニケーション的言説communicative discourse」:「こうしたアクターが一般公衆を対象に、スピンドクターなどの介在も経て展開する」言説
「いずれの言説も規範的要素と認知的な要素を含むが、調整的言説はヘクロのいう社会的学習能力の性格を併せもつのに対して、コミュニケーション的言説は送り出された規定政策の正当化を目指すものであり、その意味では、ホールが政策パラダイム転換期に見いだしたメディア政治にもつながる。」(79)

・「言説の素材となる価値規範の構造は、福祉国家レジームごとに大きく異なる。また、選挙制度を軸とした政治制度のあり方が、言説の政治のかたちを決める。権力が政権与党リーダーに集中する小選挙区制のもとでは、コミュニケーション的言説が前面に出る傾向がある。これに対して、政治エリート間で権力が分散される比例代表制のもとでは、調整的言説の役割が相対的に大きく、コミュニケーション的言説は、エリート間の調整が失敗して選挙によって新しい調整枠組みを組み直す、といったケースで役割を増す(Schmidt, 2000: 232-3; 2002)。」(80)

・同じレジームの内部であっても福祉改革の帰結が異なる場合の説明
例:「自由主義的なレジームには、もともと規範構造において市場主義的言説が優位であるが、そのなかでもイギリスでは、ウェストミンスター型の政治制度のもとで、上からのリーダーシップが貫徹し、サッチャー政権においてもニューレーバーのもとでも、公衆に対するコミュニケーション的言説が浸透した。これに対して、たとえばニュージーランドもまた労働党が市場主義的改革を主導したが、選挙時を除けばコミュニケーション的言説や調整的言説は欠落したまま改革が推しすすめられた。したがってイギリスとは異なり、やがて労働党内部や支持層からの反発は、小選挙区制度そのものの改革につながり、市場主義的改革は頓挫してく(Schmidt, 2000: 238-50)。」(80)

4 福祉再編の政治過程と言説政治

三つの枠組みの継起的連関

・三つの理論は、「たとえば主体とインタレストの関係などをめぐって異なった方法論的立場に立つが、それぞれの視点はむしろ相補的なもの」(81)
★重要なのは、「三つの理論が福祉国家体制の形成、削減、再編のそれぞれの分析を主な課題としながら、継起的に登場してきた意味」(81)
・問い「制度のドラスティックな再編が課題となり、その方向を示すアイデアや言説が焦点となったというのは福祉国家の形成期も同様であった。今日すすむ福祉国家の再編にかんしても、その形成期同様に、多様な権力対抗が展開しているはずである。しかし、今日の再編過程が、政治的アクターによる権力資源動員としてよりも、当面、アイデアの政治、言説の政治として浮かび上がり、しかも一見類似したアイデアが流通する要因は何であろうか。」(82)

言説政治の条件

◆言説の政治が浮上する背景:「グローバル化と脱工業化の結果として、各国に共通する社会構造変容」〜雇用と家族の揺らぎ→「新しい社会的リスク」

・こうしたなかで現れているのが、社会的包摂、ワークフェア、アクティベーションなどの新しいアイデア、言説:「その含意は一様ではないが、福祉政策の目標を、所得保障それ自体から、人々の就労自立あるいはより広い意味での生活自立を促進することに置き換える、という点で共通」(82-3)

・アイデア、言説が拡大する理由
@「各レジームにおいて雇用と家族の社会的統合機能が減退しつつあるなか、こうしたアイデア、言説は、それを補う政策展開として現れた。」
A新しい社会的リスク→中間層も多くのリスクに直面:「選別主義的な所得保障で周辺層のみの保護を続けることには、そのコスト負担を負う中間層から大きな反発がうまれる。これに対して、周辺層の所得保障ではなく、自立支援を旨とする福祉政策は、比較的中間層の合意を調達することが容易」例:クリントン、ブレアのワークフェア改革〜新保守主義からの政権奪還のため
Bグローバルな市場競争+福祉政策の財源逼迫→福祉政策と経済競争力の接点:支援型福祉

◆政治過程においてアイデア、言説の比重が高まるそのこと自体の背景
@政策トランスファーの拡大:政策コミュニティの国際的連携やEUなどの国際統合の進展
例:「サッチャー政権はニクソン政権以降のアメリカで形成されてきたワークフェアを移入し、ブレア政権はそれに対する対抗策を練り上げるにあたってアメリカ民主党改革派(民主党指導者会議)から影響を受けた。」(84)、「調整のためのオープンメソッド」を通して制度化@EUでの2000年のリスボンサミット
Aメディア政治の台頭

アクター・言説関係の流動化

・「シュミットの言説政治論は福祉国家再編の政治をあくまで福祉国家の市場主義的調整の過程としてみていたが、実際の再編政治は、新しい社会民主主義的言説も含めて、ベクトルを異にする諸言説がせめぎ合う場となっている。しかし、このせめぎ合いは、かつての福祉国家形成の政治のように分かりやすい対抗図式のもとにはない。」(84)

・「福祉国家形成の政治においては、より大きな政府支出をとおしての所得保障の徹底を求める労働運動および社会民主主義政党と、それに抵抗する自由主義勢力、さらには職域、家族秩序の擁護を目指す保守主義政党といったように、それぞれの政治的アクターが重視するセクターが異なり、かつこうした関係を表現する言説も比較的はっきり分化していた。したがって、イニシアティブをとった政治勢力ごとに福祉国家レジームが分立した。これに対して福祉国家再編の政治においては、さまざまな自立支援志向の福祉理念が出現し、言説政治は主にはその支援の内容をめぐって展開している。」(84)

★政治的アクターの組織的輪郭そのものも不明瞭
・保守主義政党:これまで依拠してきた伝統的価値やコミュニティの揺らぎに直面
・社会民主主義政党:相対的に同質的な製造業労働者の減少、公共セクターと民間セクターでの利害対立=支持基盤の流動化←女性、外国人、地域など個別のインタレストも認知され、流動化に拍車
⇒「社会民主主義政党であれ、保守主義政党であれ、新たに中間層からの支持をいかに拡大するかが問われてくる。」

支援型福祉をめぐる言説が選び出される

その結果として、社会民主主義政党の基盤の流動化はさらにすすむ
例:ブレアの「第三の道」〜イギリス労働党の内部で、労組を初めとした伝統的支持基盤との強い緊張関係
cfイギリス労働党内部の社会的包摂をめぐる三つの言説の持続(レヴィタスの研究)

★「もともと政党は政策に対する支持は、有権者のインタレストから自動的に決定されるわけではなく、有権者が自らのインタレストや当該政策の内容についていかなる認知形成をするかによって大きな影響を受ける。この点、とくに福祉国家再編の政治においては、制度の転換と有権者の集団的アイデンティティの揺らぎが共にすすむ。それゆえ、政策トランスファーやメディア政治によって押し出された新しいアイデアや言説が、有権者、市民にとって政治的態度を決定するうえでのフォーカル・ポイントとしての役割を高める。インタレストの「客観的」配置から言説政治が決まるというより、言説政治の具体的な展開のなかで政治的連合関係が形成されていく傾向が強まるのである。」(85-6)

5 言説政治論のさらなる発展へ

福祉再編の政治において言説政治論の枠組みが有用性を発揮する条件:「政治的アクターの権力資源動員は、所与の制度的条件やメディア環境のもとで、福祉再編の方向をめぐる言説の展開、解釈、適用をめぐって展開される。政治的アクターの支持基盤は流動化し、言説政治の帰結が政治的連合を決める。さらに、言説政治の空間は、多国間の政策トランスファーやEUの政策調整手続きなど、一国の枠組みを超えて広がりつつある。」



製作:小林勇人(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
UP:20071005 REV: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db2000/09mt.htm
ワークフェアの普及

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