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「魅力ある大学院教育」イニシアティブ 取組実施責任者から
                立命館大学大学院先端総合学術研究科教授 渡辺公三
渡辺公三教授
 立命館大学大学院先端総合学術研究科は2003年4月に発足しました。この新しい考え方にもとづく研究科は既存の研究科とはことなり、 学部教育の延長線上での既存専門分野の習得を通じて専門研究者の養成をめざすというものではありません。研究科専任の担当教授が、 学内研究所との連携のもとに4つの大きなテーマにしたがってプロジェクト研究を立ち上げ、研究科内外の多様な分野の第一線で活動を 展開する研究者と共同研究を行いながら、その研究の現場に院生諸君も参加してもらって研究者としての完成をめざしてゆくという考え方に もとづいています。
 このプロジェクトを基礎とした研究者養成大学院の理念を現実的なものとするために、さまざまな新しい考え方と試みが必要となりました。 そして何と言っても、この新しい理念の要点は、既存のディシプリンにとらわれないプロジェクトを基礎とすることで、 今の時代の提起する諸問題に取り組むために何をどう考えるかを真剣に追求している院生自身の問題意識を汲み取り、プロジェクトのテーマに もりこんでゆくことが可能となるという点にあります。
 ディシプリンにとらわれず院生諸君の問題意識を重視することは、既存のディシプリンをまったく無視していいことにはなりません。 そこでわれわれはプロジェクトを基礎とする研究者養成を、今日、研究者として必要な研究の技法、各分野の方法論、多様な研究手法、 研究成果の公開の技法の養成と結合したコースワークとして設計することにしました。 (カリキュラム構成は http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/c/t-2003.htm をご参照ください。)
 研究科開設3年目の2005年、文部科学省が今後の大学院教育のモデル構築を目標に公募した 「魅力ある大学院教育」イニシアティブ に、われわれは、「プロジェクトを基礎とした人社系研究者養成」として応募し、評価をえて採択されました。 (プロジェクト型大学院の考え方については http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/p5/index.htmをご参照ください。 また、日本学術振興会による審査結果は、 http://www.jsps.go.jp/j-initiative/data/sinsa_hum/a034.pdfをご参照ください。)
 われわれは、採択された理由の要点は2つあったと理解しています。すなわち、 1)この研究科のかかげる理念そのものが評価され、2)その理念のいっそうの高度化を実現するために われわれが提案したプログラムが適切なものと評価されたという、2つの点です。

1)われわれ自身が考える、理念の面での評価点は以下のようなものです。
・人文社会科学と自然科学とを切り離さず関連する領域を重視する
・諸分野を統合する「倫理」の視点を重視する
・プロジェクトへの参加の準備期教育を重視する
・とりわけ新鮮な問題意識を明快な論文で表現する力を重視する
・プロジェクトへの参加に向けてプロジェクト運営能力の養成を重視する
・ディシプリンの習得の重要な場として学会、研究会への参加を促進する

2) こうした研究科の理念のいっそうの高度化実現のために以下の5点を 「魅力ある大学院教育」イニシアティブにおける目標として提起しました。

①論文構築の基礎能力を強化する
②「スキル系科目」を強化する
③国際シンポジウム、プロジェクト研究における協働実践を強化する
④プロジェクト・マネジメント体制を整備する
⑤人的ネットワークをいっそう拡大強化する

 こうした理念のもとに採択された、立命館大学先端総合学術研究科による「プロジェクトを基礎とした人社系研究者養成」プログラムの 実施状況の詳細を上記の5点にしたがって紹介し、皆様に情報提供するとともに忌憚のないご意見、ご感想をいただきたく思います。 (人社系の採択例として「大学と学生」平成17年12月号に紹介の文章を掲載いただきました。ご参照ください。 http://www.jasso.go.jp/gakusei_plan/dtog0512.html

新時代の大学院教育

論文構築の基礎能力の強化
 2005年12月以降、英語・日本語論文指導スタッフを雇用し、論文指導の基礎能力の育成に努めてきました (ただし、現日本語論文指導スタッフは2006年4月から雇用しています)。また、それとともに論文指導室を確保・開室し、 院生に日常的に指導を行う体制を構築しました。院生のニーズは高く、順調に推移しています。 日・英それぞれの論文指導に専念して担当できるスタッフが在室し、担当教員と密接な連携をとることで、 以前より論文指導体制は強化できました。また、論文作成のための関連図書、消耗品、機器備品を購入することで、 より充実した体制が構築されました。2006年度も長期的視点から日英両方の論文作成マニュアルの作成を進めるなど引き続き強化しています。


『スキル系科目』の強化
 スキル系科目をより高度化した内容にするために、2005年度担当スタッフの協力を得て、基礎的な調査を行いました。 2006年度は引き続き議論を重ね、出来るだけ早期にスキル系科目をより精緻化した内容にし、それとともに必要に応じて システム開発も進めていきたいと考えています。また、ライティングセンターの調査については、2006年2月に担当教員による アメリカのライティングセンター視察を行い、情報収集とアメリカの大学における現状も把握しました。それに加えて、 同月早稲田大学で実施されたシンポジウム”Waseda Symposium on Teaching and Research in Academic Writing”に参加し、 日本国内におけるライティングセンターの実情も把握しました。英語ライティングセンターの調査をしていく中で、 英語ライティングとは資料収集から分析、構成、実際の論文の執筆、そして要旨の提示という一連の作業全体を英語で 行う構想の過程であり、英語ライティングの方法の模索は、言語を別にすると、それ以外は日本語論文の構築の方法の研究に ほかならないということを再認識しました。2006年度はこれらの出張報告書を元に将来のあるべきライティングセンターの在り方を展望にいれ、研究科内で議論を重ねているところです。

☆アメリカ出張で調査したライティングセンター
1)Pennsylvania Sate University (Center of Excellence in Writing)
http://www.psu.edu/dept/cew/
2)Pennsylvania Sate University (Student Center)
http://www.ems.psu.edu/students/studentcenter.html
3)American University (Academic Support Center)
http://www.american.edu/ocl/asc/writingsupport/Aboutus.html
4)American University (Department of Literature)
http://www.american.edu/cas/lit/writing_center/
5)University of Maryland (English Department)
http://www.english.umd.edu/programs/WritingCenterWebsite/
6)University of Maryland (Graduate School)
http://www.english.umd.edu/programs/WritingCenterWebsite/EEIGSPage.htm
7)Duke University (University Writing Program)
http://fds.duke.edu/db/aas/UWP/faculty

国際シンポジウム、プロジェクト研究における協働実践の強化
① 第2回先端国際コンファレンス (2005年10月28日~30日)
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/krc/etconference.htm
 本コンファレンスの前身は、2003年6月本学で開催された国際コンファレンス「21世紀の公共性に向けて――セン理論の理論的・実践的展開」を 含むプロジェクト「知の潮流シリーズ」(先端総合学術研究科開設記念事業)に求められます。本コンファレンスは、 これまで多角的に提起された数多くの論点を受けて、既存の学問の方法的枠組みを刷新し、新たに「規範的法経済学」を 構築していくための第一歩として位置づけられます。本コンファレンスの参加者は、 アマルティア・セン(米・ハーバード大学教授・立命館大学名誉博士)、フィリップ・ペティット(米・プリンストン大学教授)、 マルセル・エナフ(米・カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)、渡辺公三(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)、 後藤玲子(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)、ジョン・ブルーム(英・オックスフォード大学教授)、 マーサ・ヌスバウム(米・シカゴ大学教授)、ポール・デュムシェル(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)、 鈴村興太郎(一橋大学経済学研究科教授)、プレザンタ・パタナイク(米・カリフォルニア大学リバーサイド校教授)、 マルセル・エナフ(米・カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)、フィリップ・ペティット(米・プリンストン大学教授)、 デイヴィッド・エストルンド(米・ブラウン大学教授)、ジャン・リュック・デュボワ(仏・ベルサイユ大学教授)、 アンドレア・ブランドリニ(イタリア銀行)、エンリカ・キアペッロ・マルティネッティ(伊・パヴィア大学教授)、 アナンタ・デュライアッパ(サステイナブル・ディベロプメント研究所研究員)、サビナ・アルカイア(米・ハーバード大学研究員)、 バスデーブ・チョードリ(仏・カーン大学教授)各氏でした。本コンファレンスの準備・実施・成果・まとめの過程において、 われわれは院生の積極的な協力・参画を得ました。院生は、特に、準備過程における翻訳、実施過程における討論、成果・まとめの過程に おける報告書作成のためのペーパーの集約・構成の過程において積極的に取り組んでくれました。 また、このコンファレンスの成果発表(平成18年度製本予定)に向けても院生が参加して、準備中です。

セン教授の基調講演

2005年10月末に行われました「第2回先端国際コンファレンス- 倫理・経済・法 不正義に抗して」の報告書(英語版・日本語版) が完成しました。ご希望の方は無料で発送致しますので、下記まで ご連絡ください。※無料発送は終了しました。
立命館大学 独立研究科事務室
TEL075-465-8375
FAX075-465-8364
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②先端総合学術研究科「知の潮流を創る」パート6 ~新しい思考の形をもとめて~
国際学術講演会  (2006年4月19日)
フランスの哲学者ジャン=リュック・ナンシー(仏・ストラスブール大学名誉教授)
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/2006/0419.htm
ナンシー講演会チラシ
 本講演会は先端総合学術研究科の連続講座「知の潮流を創る」パート6として開催され、 フランスの哲学者ジャン=リュック・ナンシー(仏・ストラスブール大学名誉教授)を招き、 「一神論と無神論」をテーマにした講演と討論会を開催しました。 プロジェクト・マネージャーと教員3名が本講演会の実施委員として準備・実施の責任者となり、 この講演会の開催を準備しました。事前の広報活動の成果もあり、定員が140名の会場に219名の方々が来場し、 活気にあふれた講演会となりました。また、院生も事前に勉強会を行い、実施当日には開催のサポートを行うなど、 積極的に準備・実施の過程に参加しました。

③フィリップ・ヴァン・パライス教授ワークショップ (ベルギー・Catholic University of Louvain (UCL)教授、アメリカ・ハーバード大学客員教授)
  7月7日(金)午後1時~6時(場所)アートリサーチセンター 多目的ルーム
テーマ「すべての人に実質的自由を(Real Freedom for All)!」
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/2006/0707.htm
パライス氏ワークショップチラシ
 本ワークショップは北海道大学、立命館大学人文科学研究所と共催で、基本所得の提唱者として、 またリアル・リバタリアンの旗手として知られているフィリップ・ヴァン・パライス(ベルギー・Catholic University of Louvain (UCL)教授、アメリカ・ハーバード大学客員教授)を招き開催されました。 プロジェクト・マネージャー、事務局、教員1名と人文科学研究所が協働して本ワークショップの準備・実施を担当しました。 研究所と連携した広報活動の成果もあり、学内外の院生を中心に約80名の方々が来場し、活気のある質疑応答が行われるなど 有意義なワークショップになりました。また、院生は事前の広報活動、ワークショップでのパライス氏に対しての 積極的なコメントなどワークショップの成功に関わる準備・実施の過程にコミットしました。

パライス教授の基調講演

質疑応答

☆ ワークショップのDVD貸出について
詳細は以下のURLをご覧ください。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/x/8/20060712.htm

④アラン・コルバン氏招聘プロジェクト
 本プロジェクトは、世界水準の知名度を持つフランスの歴史家アラン・コルバン氏を是非外国人客員教授として 招聘したいという院生のイニシアティブで始まったプロジェクトです。2007年1月22日(月)~26日(金)に本学で集中講義が開催され、26日にはシンポジウムも開催しました。その準備段階として、院生が主体となって事前研究会を3回開催しました。また、本プロジェクト実施過程で多数の院生のコミットがありました。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/w/acip/index.htm

アラン・コルバン教授シンポジウム→http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/2007/0126.htm

コルバン教授講演会


「近現代史の問い-アラン・コルバン教授を迎えて」開催
http: //www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/koho/headline/pickup/2007/01/aransymp.htm

プロジェクト・マネジメント体制の整備
 国際機関などでプロジェクト運営の経験のあるプロジェクト・マネージャーを2005年12月から雇用しました。 定期的に研究科長・テーマ領域責任者と集団・個別にミーティング・ヒアリングなどを行うことで、 プロジェクトのマネジメント体制は以前よりも整備されてきています。2006年度も引き続き密に連携をとり、 プロジェクト・マネージャー統括の元でプロジェクトを進行することにより、プロジェクトをより高度化すると共に、 院生の参加を有効なものにしたいと考えています。

則包氏写真

<プロジェクト運営に関わる文献>
 2006年度GP予算で購入した文献 購入リスト*MSエクセル版(20KB)

人的ネットワークのより一層の拡大
 2005年開催した第2回先端国際コンファレンスにより、人的ネットワークの拡大という目標は達成できました。 特に、このコンファレンスの成果の1つとしてあげることが出来るのは国際リサーチフェロー受入れの打診があったことです。 今後研究科内で前向きに検討していきたいと考えています。また、2006年度へ向け、講師招聘準備を積極的に進めました。 その結果、集中講義、講演会、共同研究会の開催などを2006年度実施しているところです(詳細は③国際シンポジウム、 プロジェクト研究における協働実践を強化をご参照ください)。 海外他大学との交流協定としては、2006年3月に台湾の佛光人文社会学院と研究交流協定を締結しました。 今後は双方で話し合いを持って、具体的な取り組みを行っていく予定です。また、現在イタリア・フランスの大学研究機関との提携も 視野に入れ準備を進めています。国際的ネットワークの形成は、大学全体としての「研究高度化」方針とも関わっていて、 先端総合学術研究科としては国際共同研究や共同学位授与制度等の展開に向けた枠組み作りを現在検討中です。 国内では2006年度官民シンクタンク・研究所との将来的な連携をにらんだ訪問・インタビューならびに研究会を行っています。

横江公美氏研究会 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/2007/0202.htm

横江公美氏研究会

UP:20060725 REV:2007.01.29, 1208,13,20110831


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