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『立命館大学大学院先端総合学術研究科パートナーシップ委員会2010-2011年度報告書』

立命館大学大学院先端総合学術研究科パートナーシップ委員会 20120331

last update:20120720

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目次

1.立命館大学ハラスメント防止委員会の活動と大学院のハラスメント
2.パートナーシップ委員会の設計思想とその歩み
3.立命館大学大学院先端総合学術研究科
  キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン(2006年3月制定)

パートナーシップ委員会活動記録年表
関連リンク
奥付


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1.立命館大学ハラスメント防止委員会の活動と大学院のハラスメント

■概要

日時: 2011年2月2日(水)13:30−16:00
会場: 立命館大学衣笠キャンパス 創思館401・402
ゲストスピーカー: 志磨慶子氏(立命館大学ハラスメント防止委員会事務局長)
司会: 吉田寛(パートナーシップ委員/先端総合学術研究科准教授)
主催: 立命館大学大学院先端総合学術研究科パートナーシップ委員会

■講演者紹介

吉田:本日は皆様、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。これから、立命館大学大学院先端総合学術研究科パートナーシップ委員会の2010年度の企画を始めます。私は本日司会を務めます、先端総合学術研究科パートナーシップ委員の吉田と申します。よろしくお願いします。本日は志磨慶子さんにゲストスピーカーとしていらしていただきました。まず初めに、この委員会の成り立ちや位置づけを私の方からお話しさせていただきまして、その後、志磨さんのお話に移らせていただきたいと思っております。
  本委員会は2006年に発足しまして、毎年一回ずつ企画を行っております。また二年に一度、報告書を出しておりまして、各年度の企画の記録もそこに収録されています。また年に何度か、院生の委員と教員の委員とで委員会を開催しまして、企画のための打ち合わせもそこで行っております。毎年一度の企画では学外から識者をお呼びしたり、学内の関係部署から担当者をお招きしたりして、大学院におけるアカデミック・ハラスメント、キャンパス・ハラスメントについて皆で考える場にしております。昨年2009年度は大阪大学から牟田和恵さんをお招きしまして、ジェンダー研究の視点から見た大学院という場について、お話を伺いました。その前年の2008年度はNPO「アカデミック・ハラスメントを無くすネットワーク」の理事である御輿久美子さんをお招きしまして、その活動についてお話しいただきました。今年度は立命館大学ハラスメント防止委員会事務局長である志磨さんにお越しいただきまして、この委員会の沿革と現状、課題などについてお話しいただこうと考えています。学内の組織の活動は、案外、学生や教員に伝わってこないものですから、本日はまずそれを理解し、その上で、学生、教員、職員それぞれの立場で皆で考え、議論する場にしたいと思います。
  なお私は現在、委員の立場でこの委員会に関わっておりますが、二年の任期で、今年がその二年目になります。今日お見えの中には、先端総合学術研究科の教員の方もおられますし、本委員会について私よりもお詳しい方々がおられると思いますので、皆さんからも随時補足等をいただければ幸いです。

■講演

発言者(敬称略、順不同)
吉田寛天田城介松原洋子石田智恵近藤宏櫻井悟史

1.イントロダクション

志磨:今ご紹介に預かりました、ハラスメント防止委員会の事務局長の志磨です。よろしくお願いいたします。私は2009年の4月からこのハラスメントの事務局長をしておりますので、ちょうどこの3月で丸2年ということになります。従いまして、ハラスメントの研究者でもありませんので、事務局はハラスメント案件を解決するにはどうしていくかということを一番主眼においてやらせていただいております。事務局を任されている人間としましては、学外での様々なハラスメントに関する研修会に可能な限り、参加しています。その結果を本学のハラスメントの規程やガイドライン、リーフレットの見直しにつなげていっている次第です。
 まず[今日の]資料ですけれども、「取り組みについて」という冊子がひとつですね。それからもうひとつ皆さんに、研究関係の規程を綴じたものをワンセットお配りしております。研究関係の規程をどうしてつけさせていただいたのかと言いますと、大学の履修要綱や「学生生活の手引き」等に記載されている規程は、学則でありますとか、それから履修規定ですとか、そういうものしか載せてないわけですね。ところが、院生の権利を保障していかないといけないということになりますと、これは当然ながら院生の皆さんも現状でどういう規程があって、自分達はどういうもので守られているのか、研究のところは非常に最近重要になってきておりますので、今日改めて刷新してこちらからお配りをさせていただきました。それからもうひとつは、「回収」と書いているものです。これは2010年度の分は入れておりませんけれども、それ以前のところで、大学院関係のところで特徴的だったものを個別の事例として、今日やはり皆さんにお示ししたほうがよかろうと思って出させていただきました。ただし、これは現在在学してらっしゃる方や休学中の方もいらっしゃいますので、回収ということにさせていただきたいと思います。以上3つが資料であります。
 それでは最初に、立命館のハラスメント防止委員会、その規程が出来ましたのがちょうど2007年の7月であります。それまでは、セクシャル・ハラスメントの対策ということで、学生センターの中にそういう窓口がありましたけれども、2007年7月以降のところで、大きく改善され、ハラスメント防止に関する規程・ガイドラインが出来ました。他大学でも大体この時期にハラスメントを全学的に取り扱う部署ですとかそういうものが出来てきたということであります。規程のほうは基本的なことしか書いておりませんので、頻繁に変えるということはしておりませんけれども、この規程の下にガイドラインというものを作っておりまして、現実に起こっている問題を具体的に解決するために、実態を踏まえながら改訂をしていっております。このようなやりかたをすすめるにあたって、学外の弁護士の方や他大学の専門家の方々に相談をさせていただきながらやっております。新しい課題を解決するためにはこういうやり方のほうがよかろうということと合わせて、「回収」資料の中にありますように、最終的にハラスメントとして認定され、最終的にいわゆる懲戒処分になった時に、ガイドラインでは法的根拠にならないのではないかといった心配もありましたが、ガイドラインであっても当然、法的根拠になりうるということでありますので、私達が具体的に何に基づいてハラスメントの判断をしていくのかということは、このガイドラインに大体沿ってやらせていただいて?るということであります。

2.ハラスメントの定義・立命館の規定
  
それじゃまず、ハラスメントの規程・定義についてですが、立命の場合には、ハラスメントに防止に関する第2条にありますように、ハラスメントは人権侵害の言動という形で定義しています。次にハラスメントにはどういう種類があるのかということですが、これも立命の場合は、セクシャル・ハラスメント(以下、セクハラという)とアカデミック・ハラスメント(以下、アカハラという)、この二つにカテゴライズしているわけです。他大学の例なんかを見ますと、セクハラ、アカハラにプラスして、いわゆる就労上の問題については、パワハラ(パワー・ハラスメント)というものを設けているところもありますけれども、立命館の場合はこの就労上のハラスメントについてもアカハラの中に入れています。
セクハラについては、相手の意に反すということが一番重要でありますので、「相手の意に反し、不利益や不快を与える性的な人権侵害」と言っていますけれども、アカハラの場合には、相手の意に反すということではなく、その教育研究上の力関係ですとか、それから上下関係等、優越的な地位を利用して行う言動によって相手を不快にし、相手の教育研究上、就労上、または修学上の利益や権利を侵害するということであります。アカハラの場合は「相手の意に反し」とは言えない場合がいろいろあろうかと思います。例えば、研究指導上の問題であったり、それから、業務命令というような場合にではですね、これは相手の意に反する場合もあるわけですので、そこのところはセクハラとアカハラで定義を変えているということであります。
 それから、ハラスメントとしてどういうものが具体的に示されるかといいますと、これも第2条第5項のところにありますように、働いている者にとっては働いている環境がよろしくないということ、不快なものになるですとか、それから、学生、院生の場合でしたら当然ながら学業に専念出来なくなるということになります。それではどういう人達にこの規程が適用されるのかということですけれども、教職員、学生、関係者、これらは全て立命館大学の中で働いている人、働いていた人で、専任、非専任の区別はまったくありません。それから、学生も、学生、院生、これも学んでいた人、学んでいる人ですので、聴講生の方ですとか科目等履修生の方ですね、そういうことも全部含んでおります。それから関係者は、保護者の方ですとか、出入りの業者の方ですとか、こういう方を関係者という形で入れております。
ハラスメントの起きたこの案件が、働いていたとき、それから学んでいたときのことであれば、時効を設けているわけじゃありませんので、今ハラスメントの防止委員会のところで扱っております案件も、卒業、退学されてからもう10数年前のことでありますけれども、それでもまあ訴えることは可能であります。ですからそれは、ハラスメントをされたという案件が本学に在学されていたときのこと、働いていたときのことであれば訴えることが可能であるということであります。
それから当然ながら、教職員、学生の責務としてはハラスメントをしてはならないというのが当たり前の話でありますけれども、これもあらためて規程に書いています。
  これは立命館大学の規程でありますので、学長の責務というものを入れています。学長は新任の教職員や管理監督者に対しては必ず研修をしなければならないということになっていますので、後ろに一覧表を載せておりますけれども、新任の職員、それから新任の職制、それから新任の教員、それから新任の学部長ですね、管理監督ですから、そういう方には必ずハラスメントの防止委員会として研修をしています。これは学長の責務ということでやっております。監督者の責務の監督者とは、例えば学部・研究科でしたら学部長・研究科長、それから各職場においては課長ということになろうかと思います。ハラスメントに起因する問題が生じた場合は必ず、本人、相手方、加害者に対して例えば厳重注意をしたり処分したりとすることと合わせて、最終的に監督者の責務も必ず問うということですね。ハラスメント防止のための研修の実施についても、監督者の責務としてやってもらっています。

3.ハラスメント防止委員会の任務

  委員会の一番大事な任務はやはり、ハラスメントが起きたときにどういう処分をするかということではなくて、ハラスメント防止委員会でありますので、防止に関する啓発、研修が第一であります。後でも申し上げますけれども2009年度に非常に重いセクハラの案件がありました。まとめにも書いていますけれども、大半が教員によって行われるという、事実がありますので、2009年度、2010年度は、いわゆる教授会でありますとか、研究科委員会での研修を主に、前・後期各1回ずつをめどに実施してきました。
  次にハラスメント事案の調査。これは、「調査をしてどうしても白黒をつけてほしい」、それから「懲戒処分をしてほしい」と言われる案件がありますので、こういう場合は調査をきっちりしないといけませんので、調査というのが任務の2つ目であります。
  それから任務の3つ目はハラスメント問題の解決及び措置の勧告。ハラスメント防止委員会が最終的に懲戒の量刑を決めたり、処分を決めるわけにはいかないわけですね。と言いますのは、立命館の法人の寄付行為や各学部の教授会の規程のところで明確に、大学教員の処分については教授会で審議をすることとなっています。したがって、ハラスメント防止委員会は、懲戒相当であるということを委員長から学長に勧告し、学長が該当教員の所属学部長に対し懲戒処分について検討をしてほしい旨の要請がされるということであります。ですから、この勧告の中には懲戒処分と合わせて先程言いましたように、管理監督責任者に対しては、たとえば研修の実施や調査の過程で――まあ最近アカデミック・ハラスメントが非常に多いものですから――、教学上の問題でありますとか、研究指導上の問題――それはルールでありますとか規定の不備の場合もありますが――、そういうことが明確になってきた場合は、加害者である人を処分するだけではなく、研究部ですとか、教学部ですとか、学部以外に対してもルールの改善等の要請を行うということであります。
  それから4番目の任務は、ハラスメントの再発防止に関する指導。こういうことを明確に規定に書いている大学の例は殆どなくて、以前、新聞社からのヒヤリングがあったわけですけれども、防止委員会の現時点での大きな課題であります。と言いますのは、例えば先生方で、明らかにハラスメントだということで、懲戒処分になった場合、退職や解雇ということになれば、そういう方はもうこの大学の中で教えたり、研究指導する機会が無いわけですから、再発防止に関わって本人を指導する必要はもう全く無いわけです。けれども大半はそういうことではなくて、厳重注意とか、不適切な言動の指摘なのですがその場合、管理監督責任ということで、学部長ですとかそういう方に再発防止に関する指導をお願いしておりますが、それだけではやはり済まないであろうという案件があります。いわゆるハラスメント加害者研修を、学外の機関にお願いするのか、学内で実施するのかということを、防止委員会の先生方にもお聞きしますと、学内でというのは、学内の教員が学内の行為者である教員を指導するっていうのはやはりなかなか困難だと言われておりますので、目下プログラム等を検討している最中であります。
 それから、ハラスメントの防止に関する取り組みをまとめて公表することも防止委員会の任務です。数字だけでしたら現時点でもまとめを出すことは可能ですが、個別の案件を外に出すということはやはりなかなか難しいということもあり、現在公表しているのは、例えば、教授会や常任理事会の研修の際、公表してきています。ただ公表という場合には、これは学内だけではなくて、学外にも公表するのかということですので、数字だけでもこれから公表した方がいいのかどうか、委員会で検討していかないといけないと思っております。
  その他ハラスメントの防止に関して必要な事項というのは、その都度出てくればそれは委員会の中で審議をするということであります。

4.ハラスメント防止委員会の構成

[前述のように]防止委員会は学長に対して勧告まで実施していきますので、委員長は教学を代表する副学長となっています。今は法務研究科の上田先生が委員長であります。副委員長は、ひとりは総務担当の常務理事。もうひとりが委員長補佐ということで、委員長の指名で元の国際関係学部長の小木先生という方が副委員長です。日常的には事務局長の私と副委員長の小木先生との間で調整しながら対応しています。防止委員は「若干名」とありますが15名おります。といいますのも、衣笠、朱雀、BKC、それぞれに案件が出てきますので15名。但し、たとえば理工学部でハラスメントの案件が起きましたら理工学部の関係者は調査委員に入ることは出来ません。バランスは教員10名、職員5名という構成であります。男女比は、男性が9名、女性が6名という構成で防止委員会を構成しております。ただ調査が始まりますと、その分野の教員が防止委員の中にいない場合があったりしますので、その場合は特別委員ということで別に委員を任命しています。
それから、案件によりましては、弁護士の方に調査の段階から入っていただいております。立命館大学の場合は、顧問弁護士制度をとっておりませんので、京都市内でハラスメントの案件を比較的多く扱っている弁護士の方に調査の段階から入っていただくという形にしています。調査委員会の段階から入らない場合においても、最終的な調査委員会の判断が妥当なものであるかどうか、弁護士の方と相談しながら最終防止委員会にかけていくという形にしております。
  2010年度の場合ですと、研究に関わる申し立てが一挙に増えました。特に、例えば著作権の問題でありますとか、それからファースト・オーサー、セカンド・オーサーの問題でありますとか。我々の事務局の中にそのような専門家がいるわけではありませんので、委員の教員中にそういう専門家もいらっしゃいますので、事務局では学習会を開いたり、専門としている弁護士の方の話を聞いたりして対応しています。

5.相談への対応

  次に、立命の場合はどういう形でハラスメントの相談がとり上げられていくのか。大学によっては、例えば、私達がよく研修をお願いしております東北大ですとか、広島大学ですとか、中央大学、そういうところは大学の中にハラスメントの相談室というものがきちんと位置づけられていて、そこに専門の教員や職員の方が常駐されてるわけです。けれども立命館の場合はそういう相談室というものを設けているわけではなく、相談員を全キャンパスに80数名配置しております。後ろにリストを載せさせていただいていますが、教員のハラスメント相談員、職員のハラスメント相談員が全キャンパスにいるわけです。以前パートナーシップ委員会でも指摘されていたかと思いますが、独立研究科にも当然ながら相談員が必要だということで、現在では全ての研究科に相談員が配置されています。相談員の方は解決の行為者ではありませんので、立命の場合は相談が来たときには、どんな相談であるにせよ相談者に沿うて話しをきいてもらっています。相談員の研修は、新人相談員の研修以外に前・後期各1回実施しており相談対応マニュアル、それに基づいて対応していただいております。最近ですと、今日の[資料の]相談事例にもありますように、相談のみで終わる場合もあります。その中には相談員のアドバイスで終わるという場合もあります。基本的には相談者の言うことをきちんと聞き取っていただくというのが相談員の役割ですので、そこで相談員が「これはハラスメントではありませんよ」とか、「これはまあ、訴えても無駄ですよ」とか、そういう判断は一切しないでほしいということをお願いしております。次に、相談案件は全てまず事務局のところに第一報という形で入ってくるという流れにしています。その後、相談で終るのか、調整にするのか、調査にするのか、相談員には相談者の意を汲み取りながら決めてもらっています。したがって事務局が直接相談者のところに連絡を入れるということもしておりません。
 
6.相談員の責務規定

  相談員の責務でありますけれども、当然ながらガイドライン、規程にそって相談業務をやっていただくわけでありますから、相談・ハラスメントの調整や調査の申し立てがされた事案については速やかに委員長、事務局に報告をしてほしいということをお願いしています。
   秘密の厳守は大変重要で、相談の過程で知り得た秘密は相談員は当然ながら厳守しなければなりません。もちろんその他ハラスメントに関わる人間も厳守しなければなりません。
  ハラスメントを訴えたことによる不利益取り扱いの禁止は当然なことであります。
  これは立命館大学のハラスメント防止委員会の規程でありますので、APUでありますとか、一貫教育(小・中・高)、ここには別の規程があります。ハラスメント行為に対する基本的な考えは同じでありますけれども。それじゃあ、立命館大学ではなくて法人の役員がハラスメントを起こした場合はどうなんだ、ということを教授会できかれたりするわけですけれども、それは第14条にありますように、この学校法人の役員、それから法人本部に勤務する職員についても、立命館大学のこの規程を準用するということになっています。
  以上がハラスメント防止に関する規程の骨格です。2007年7月に規程と同様に制定されたガイドラインは実態に応じてこの間ずっと改訂をしてきています。制定後5回改訂を重ねてきておりまして、2010年6月4日に改訂されたものが一番最近のものです。この間の最も大きな改訂は、後で申し上げますけれども、2009年度の、特に教員と院生、学生との間の恋愛関係を基にしたハラスメント、こういうことについてどうなのかということを議論してきましたので、そのことをガイドラインに明確に書かせていただいたということであります。
ガイドラインの基本姿勢は、人材育成を目的とする大学、教育機関である大学において、人権侵害の言動であるハラスメントを決して発生させてはいけないということであります。特に大学においては権利的関係が生じやすい、したがってハラスメントも発生しやすい。成績評価権のある教員と学生・院生の間では常に上下関係があるわけですから、そういう意味では権利関係が生じやすい。それから、個人研究室や、研究室の密室化について最近よく言われていますが、そのような環境はハラスメントが発生しやすい環境であるということは深く認識してほしいということをガイドラインに書いているわけです。この間の取り組みの経過は「教員と学生・大学院生間の恋愛関係について」を読んで下さい。このようにガイドラインを改訂したのは、速やかにこのガイドラインに沿ってハラスメントの解決をしていかなければならないというのが我々の任務でありますので、このようにガイドラインを改訂してできるだけ速やかに解決を図っていきたいからです。


7.相談と対応の内容・実態

特に最近アカデミック・ハラスメントが増えてきています。2009年度の場合ですと50件くらいのハラスメント相談件数がありました。週に1件ぐらいの割合だったわけです。そのうちの7割ぐらいがアカデミック・ハラスメントの相談でした。教員の立場からすれば、あくまで研究指導なんだということなんですよね。学生・院生の側からすれば、これは研究指導じゃなくて自尊心、プライドまで傷つけられて、とてもじゃないけどこのような研究室で引き続いて研究なんかしたくない、というのが正直なところですね。したがってどこまでが研究指導でどこまでがアカデミック・ハラスメントかという判断は非常に難しくなってきていると感じています。これは、職員の場合も同じで、業務命令として、上司は「ここまでは命令しても当たり前だろう」と。でも言われた方からすれば、とんでもないような出来もしないことを要求されて、「それはもうパワハラです」と訴えたりされるわけですけれども。こういう境目の問題は研究指導の場合と同じ。セクハラの場合と違いアカハラの場合はそういう意味では非常に判断が難しいというところが、最近あります。
  それから適応範囲と対象は、先程ありましたように、その案件が立命館で働いていた・働いている時、学んでいた・学んでいる時のことであれば、ハラスメントの防止委員会のところに訴えることができます。
  当然ながら立命に現に働いている方が加害者で、相手、被害者はもう辞めておられても立命館の懲戒処分の対象となる方であれば、それは当然懲戒処分になります。学んでいる時や働いている時はなかなか訴えることができない。ですから辞めてから訴えに来られるという場合もありました。こういうときも我々は対応していかなければならないということですね。
  それから、これは学生、院生にもホームページで出していることですが、ガイドラインの中に「ハラスメントを行わないための基本的心構え」というのも書いています。最近非常に難しいと思いますのは、ここにも書かれていますように、個人や立場によって感じ方が異なるということですね。ハラスメント行為にあたるかどうかの判断がつきにくい。例えば、これは学部学生の場合でしたけれども、アカハラで訴えてきてハラスメントと認定し、加害者の教員には学長から厳重注意をしていただいた案件でしたが、「40年間教員をしてきてこういうことを訴えられたというのは全く初めてだ」ということで、教員は「すごく心外だ」と言われたことがありました。我々からすれば、そういうことは多分無いと思うんですね。つまり、最近の学生や院生は、教員自身が学生、院生であったときと比べればずいぶん様変わりしていると私は思います。そういう具合に同じような形で指導を続けるというようなことに問題がある。大講義で学生ひとりひとりを把握してくださいということは申し上げませんけれども、ゼミや研究指導ではひとりひとりの学生・院生の顔を見ながら指導してやっていただかないとハラスメント問題になることも多いにありうる話だと思います。ですから、教員は、指導する際学生・院生の色んな性格、パーソナリティですとかそういうもの知っていて配慮をしないということは、具合が悪いということですね。
セクハラの場合でしたら、自分の親しい人に向かって同様のことをやった場合にはどうなのか、ということですし、それから、アカハラ、パワハラの場合なら、その立場を入れ替えたらどう感ずるかということですよね。たとえその行為があまり許される行為じゃなくても、人前で大きく叱責された場合に、それはどうなのかというようなことをあわせて、自分と立場を入れ替えて考えていただくというのは、非常に重要なことだろうと思います。
それと、性に関する言動についてですが、ガイドラインにも書いているように、「親しいからこの程度のことは言ったってどうってことないだろう」と思われる場合がありますが、それは全く勝手な思い込みでですね、上下関係がある中で学生、院生が同意しているかというと、それは決してそうじゃないということも認識しといていただかないといけないということです。ですから、拒否の意思表示が無ければそれは合意だ、と思われると、それはとんでもないことですよということですね。
それから「基本的心構え」のCに書いているケースも結構あります。コンパや飲み会、宴会の場合ですが、これがゼミだとかそういうところの人間関係がそのまま引き続いて行われている、引き続いているところで行われた場合は、その場でとてもリラックスしてしまって、叩いたりさわったりいろんな言動が無礼講で行われるのですが、それは決して許される言動ではなくて、そういう場であってもハラスメントにあたる行為というのはじゅうぶん考えられますので、注意をしていただきたいということです。
  2010年度に1ヶ月ぐらいかけて学部長会議等で議論していただいたのが、このDの「教員と学生・大学院生間の恋愛関係」についてであります。これは教員と学生、大学院生間の恋愛関係についてです。「恋愛関係のようなプライベートなことをこういうところに書く必要があるのか」とも言われましたけれども、これはやはり書かざるをえなかったという状況があったわけで。といいますのも、学生・院生を被害者としたセクハラ案件が実際起きているわけですから、それはやはり書かざるをえないということですね。先程から何度も言っていますが、教員と学生、院生っていうのは決して対等、平等な関係ではないわけですね。同じ共同研究をしているからと言って、それじゃあ学費を払っている院生と、教員が対等、平等かと言ったら決してそれはそういわないわけです。ですから、一見そういう具合に見えたとしても、それはそうじゃないと。もうひとつ、教員のほうは成績評価権があるわけですから、絶対的なパワーは教員のほうにあるということです。特に大学院の場合は指導教員の力というのはさらに強いものになっていくわけで、上に進めば進む程、教員と院生の距離というのはだんだんだんだん短くなっていきます。そうなってい?ますと、立命の場合は、研究指導の教員と論文――修論ですとか博論ですとか――の主査っていうのはたぶん同じ教員だろうと思います。そういう意味においては、パワーはもうますます絶大なるものになっていきます。ですから、決定的に教員の影響力が院生に直接及ぶということですので、そういうことを常に教員のほうに認識してほしいということです。
恋愛関係そのものはプライベートなことでありますが、これはアカハラでもそうだと思うんですが、お互いにウィンウィンの関係だったら、絶対に誰もそれをハラスメントだと言って相談にはきません。当たり前の話ですけれども。それが一旦双方の関係性が崩れたときに、と言いますか、破綻したときに、深刻なセクハラ――セクハラだけでは無いわけですね、こういう場合はアカハラも含んできますので――、アカハラを含む問題に移行しやすいということであります。したがって、やはり先生方のところで特別な力関係について常に自覚をしていただき、学生・院生と不適切な関係に陥らないように配慮していただきたいということですね。教員は万一、自分の指導下で学生・院生と恋愛関係になった場合は、評価の公平性でありますとか、教育・研究上の健全な環境を維持するために、学部長や研究科長にその旨を申し出てくださいということです。つまり、教育・研究の健全な環境といいますのは、訴えた申し立て人と教員は一対一の関係でありますけれども、周りのゼミ生は2人の関係を見ていて非常に不愉快だと思いますね。それは当たり前なことです。えこひいきされてるとか、寵愛されてるとか、そういう具合に言っ?りします。そのような状況の下では決して教育・研究上、良い環境を維持することにはなりませんので、そのためにその旨を申し出てくださいと言ってるわけです。申し出られた学部長や研究科長は、当然ながらその私的関係と指導関係が並存することの無いように配慮して、措置をとってくださいということであります。たとえば指導をはずすとか、主査から副査に変えるとか、そういう措置をとってほしいということをここで言っているわけです。

8.院生・若手研究者の案件の特徴

  次にハラスメントの被害に遭った場合はどうするかということでありますが、この間の大学院生や助教の方、PDの方からのハラスメントの相談というのは、相談で終わる例が結構あります。と言いますのはやはり自分の将来のことを考えると、指導教員を訴えるということは、はなかなか難しく相談まで来るのが精一杯です。我々相談員が聞いたら、それはもう本当に、明らかにハラスメントだと思うような事件であっても。相談者も匿名であったり、相手方の教員の名前も匿名であったりするわけです。ただし、我々は警察でも何でもありませんので、それから先の対応はなかなかできません。例えば教学上の問題や研究上の問題を含んでいることがあれば一般的な事としてなんらかの場で注意を促すことは出来ても、匿名では具体的な対応ができません。そういう場合、相談員の方は、「立命をお辞めになられてから訴えることも可能ですので、それでどうでしょう」っていうことを申し上げるわけです。ただ研究者希望の方は、学会という組織がもうひとつありますので、専門的な分野、組織である学会、その中で自分が村八分にされたりするということは、それだけで将来性が無くなるということもあるので、なかなかそ?も訴えにくいということをおっしゃったりするわけです。ハラスメントの被害に会ったら先ず相談に来ていただきたいのですが、相談までは来られてもそれから先、全てが解決出来るかと言ったら決してそうではなくて、非常に重たい案件であっても匿名の場合は、我々からすればなんとかしたいと思いますが、それは申立人の意向に沿う形でしか出来ませんので、なかなか難しいということであります。

9.立命館大学ハラスメント防止委員の機能

 ハラスメントの相談員に相談をしていただいて、そして相談員は――ハラスメントかどうかという判断をするわけではありませんので――、守秘義務を保ちながら、相談で終るのか調整か調査か、どのような形で進めていくのか相談者の意向を聞きながら進めていくということであります。解決方法をこの「調整」と「調査」の2つの方法に分けているやり方というのは第三者からも評価されています。
ハラスメントの案件であって、どうしても被害者の方が「白黒つけてほしい」、「もうこれは絶対許せないので、懲戒処分にしてほしい」、「辞めさせてほしい」と言ってこられる場合があります。こういう場合は当然ながら事実関係の公正な調査をしないといけませんので、時間がかかります。弁護士の方に入っていただいても、それは申立人からのヒアリングだけで終わるわけではなくて、やはり双方の言い分を中立公正な立場で調査をしないといけませんので時間がかかるわけです。
ただ、そうではなくて、大学院の場合に多いのですが、自分の研究室や研究指導教員を変えてくれという訴えが一番多いです。これは相手方を処分するということではなく、いわゆる教学措置と言いますか、そういうもので対応するということでありますので、ハラスメントの防止委員長からそれぞれの研究科長、学部長との間で調整をしていただいて、本人の申し立て通りの措置をとっていただくということであります。当然その調査の場合でもその過程で、教学的措置を先ずとっていかないといけない場合があります。重いハラスメントの案件の場合でしたら、当然ながら調査結果が終わるまでに時間がかかりますので、加害者からの被害を少なくするということも含めてですがこの間やってきた例でいいますと、先にゼミを変える、授業も担当させない、外国留学が決まっている人ですと留学を差し控えていただくとか、そういう措置を調査をしている途中であっても判断していただきます。調整の場合ですと、教学的措置が大半ですので、問題解決を早くするという点においては、白黒をつけずにやるという意味では調整のほうが双方にとっていいと思っております。ですから他大学でこういう調整という手続きの無いところは?変だと思いますが、立命館の場合は、無理やり「調整でやってください」ということではなくて、相談員のところで調整、調査の区別などを説明しながら本人に選んでいただくということになっています。ですから、調査の申し立てもないのに白黒つけることはしませんし、例えば「早くもうなんとか卒業もしたいし」というようなことであるならば、それは当然ながら調整ということでやらせていただくということです。
  ハラスメント防止委員会の機能は、クラスやゼミの変更、メンバーアカウントの停止等、こういう措置を今までやってきました。最終的に、懲戒の処分、ハラスメントと認定し懲戒相当という判断をした場合は、副学長、つまり委員長から学長に勧告を行います。次に、教員の場合でしたら、懲戒処分を検討する審査委員会を教授会の中に立ち上げ、懲戒処分であれば最終的に理事会で承認するということになっています。認められるということであります。ただ、現行の立命館の就業規則は非常に古く、現在のハラスメントの様々な案件対応に応じたような形にはなっておりませんので、懲戒手続も含めて改定が検討されています。
 ハラスメントの加害者に研修を課すということも今検討しています。ハラスメントの加害者に認定されても先生方には引き続き研究指導や授業を担当していただかないといけませんので、どのような研修をしていただくかということも大きな課題になっています。
  次にプライバシーの保護と懲戒処分の公表です。懲戒処分になった場合、学内での公示は当然でありますけれども、ハラスメントの場合は全て公表しております。この公表の基準はガイドラインに書いてある通りでありますが、申立人に関わる守秘義務というのは一番厳格に守らないといけません。申立人が「それを出されたら自分が被害を受けたことがわかってしまう」ということであれば、それは公表するわけにはいきませんけれども、申立人が「守秘義務を保ちながら公表してもかまいません」ということであるならば、ハラスメントの懲戒処分については全て、この間公表をしてきています。
我々は「ハラスメント防止委員会」ですので、第一の任務は啓発、防止ですから、当然ながら啓発のために、研修活動をやります。今までは主に加害者側のほうの研修を主としてやってきましたので、これからは学生や院生の皆さんのハラスメント防止のための取り組みをどうするかというのが非常に重要だと今思っております。
  以上が、「立命館大学ハラスメント防止のためのガイドライン」の大まかな内容です。

10.2009・10年度の相談案件のまとめ

次に私が事務局長になってから以降の相談案件のまとめについてお話しします。2010年度分はこれからですので、2009年度までのところで、どれだけ我々のところでハラスメントの対応をしてきたかということについてお話しします。2009年度は、大きなハラスメントの案件があって、公表もしてきましたので、相談も非常に増え、50件近くの相談件数があり、そのうちで調整・調査の申し立てをされたのが23件ありました。月別に見ると、前期の試験の前や後期の成績評価後といったような時期に増えてきているというような状況があります。
  相談員は全キャンパスで80数名が配置されておりますけれども、全員のところに同じように相談があるということではなくて、衣笠・BKCともに学生オフィスが多く担当しています。学生オフィスは、普段から学生の様々な問題の相談の窓口になっていますので、学生達も行きやすいと思われます。特にBKCによく現われておりますが、理工系の場合、将来のことを考えたりすると、自分のいるところでなかなか相談しにくいというようなことがありまして、それで別のキャンパスや学生オフィス等に行ったりします。教員の場合は、BKCに属していても、朱雀や衣笠に相談に来られたりします。相談を受けた教員の方が、その申立人と直接接触がない場合もあります。自分の指導している学生でもないようだし、全然関わりのない他学部の学生・院生がどうして相談に来るのかなと思って、相談のときに聞いてみたら、「先生の授業を受けていて、先生だったらわかってもらえるだろうと思って相談に来ました」というようなこともあったりします。そういう意味では、きちんと窓口体制を採っている大学の、そういうやり方もいいでしょうが、立命館における現行の相談体制で特に問題は無かろうと思っております。
  当事者の所属別でありますけれども、文学部が多いのは、卒論があったり、専攻単位が非常に小さかったり、そのような教学システムをとっているところは相談が多いですね。大学院でしたら当然、講座制ではないですけれども、ピラミッド型の研究室の体制をとってる理工系の相談が多いです。2009年度までの学部生・院生の割合で言えばですね、学部生からの相談が約65%、院生が訳25%程度だったのですが、院生と学部生の総数で言えば1:13ぐらいの比率だったと思いますので、院生の相談件数が多いということになります。
次、当事者間の関係を見てください。教員と教員と、という例もあります。何といっても多いのは、加害者が教員の場合。これはざっと見ていただいたらおわかりになるかと思うんですが、加害者が教員であるというのはだいたい67%ぐらい、33名。67%ぐらいの割合で必ず加害者が教員ということでありますので、この間、教授会や研究科教授会で研修を必ずにやっていただいているということです。
特に新任教員については丁寧にやらせていただいてますのと、先日も――1月29日でしたけれども――、副委員長と一緒にBKCで1時間半ほど、新任教員の1年間を振り返ってのハラスメントの研修を行いました。そこで出てくる教員の方の意見というのは、今の学生に対してどう接したらいいのか、ある意味で言ったらFD[注:Faculty Development]の課題でもあるんですね。私語が多い授業ではどういう叱り方をしたらいいのかとか、そういう質疑応答だったのですが、教育開発推進機構では今、大学院生に対する指導をどうするかということもFDの大きなテーマとして検討し始めたと聞いております。ハラスメントの研修は、他大学等で先進的な取り組みをされている、広大の北仲先生ですとか、弁護士の若林先生、京大の矢野事件を取り扱われた井口先生や、東北大の吉武先生などに来ていただいてハラスメント防止委員会でもテーマに毎に研修を実施しています。我々のところも非常に難しい相談事例が多くなってきていますので、学外で行われているアカハラ・ネットワークの研修やそれから東北大は毎年夏、熱心に全国の大学関係者を集めて研修してくれますので、可能な限り事務局は参加しています。
 2009年度は数多くの様々な案件がありましたので、2010年度いろんな意味で改善に取り組んできました。ひとつは、大学院の場合、入学ガイダンスでハラスメント防止ガイダンスを行ない、それから学習要綱にもハラスメントのことを書かせていただきました。学部の新入生に全員配布する『未来を拓く』という冊子が出来ましたので、その中にハラスメントの項目を入れたということ。新任教員の方にハラスメントの問題について認識をしていただきたいということで、その実践的FD プログラム、オンデマンド授業をやっていますが、リスクマネジメントのひとつとして、キャンパスハラスメントについて、井口先生に講師として担当していただいております。
2010年度にはハラスメント防止委員会のガイドラインをかなり改訂してきました。参考資料としてつけていますが、教職員の行動指針ですが、これも新たに立命館大学のハラスメントのガイドラインを改訂したのとほぼ同時期7月に制定されました。これは2009年度の重たいハラスメント問題が大きく影響しています。
  2009年度に、残念ながら個人研究室の中で、継続的な性的関係が問題になったということ。さらに、個人研究室の中で、指導ではなくて尋問ととられるようなことが行なわれていたこと。つまり、個人研究室というものが、かなり密室化して、研究や指導とは違う使われ方をしているのではないか。立命の場合、朱雀キャンパンスの個人研究室にはドアにはスリットがありますが、だからと言って不適切な使われ方が無くなる、というようなことではないかもわかりませんけれども、2010年度中に全個人研究室にスリットをつけていきましょうということを、財務で判断したと聞いています。
  以上が2009年度から起きてきたハラスメントの様々な案件に対し大学として判断をし実施してきた内容であります。

11.参考資料

T.内田論文
  次に、参考資料としてつけさせていただいておりますのが、2007年東京大学の内田貴先生の論文であります。2009年度は本学でもセクハラ案件で非常に深刻なものがあったわけですが、内田先生が論文の中で指摘されていることとほぼ同様な現れ方をしたものですから、これを学部・研究科に、こういう現れ方もひとつは考えられるということを資料として配布したものです。これは何回も申し上げていますように、同意の問題で、つまり「強いられた同意」というものがあるということです。「強いられた同意」型においては、同意があるように見えて実は、拒絶の自由が保障された中での真実の同意ではない。その認定は権力関係の存在に加えて、被害者の性格をも考慮に入れてなされる必要があって、通常の意思の存否は、認定に尽きない困難さがあるということですね。同時に、「同意があったと信じた」という加害者からの主張の扱いも問題となるということであります。立命の場合もそういう意味では、加害者である教員は最後まで恋愛関係であったとずっと主張はされてましたけれども、いわゆる教員と院生、教員と学生という上下関係の中ではそれは無いというのがハラスメントの防止委員会の基本的なスタンスでありました。関係者と被害者の側の関係性について理解するということと、それから、密度の濃い上下関係、人間関係?中では拒絶できないという、そういう中ではそれは擬似恋愛でありますし、それは強いられた同意でしかないということについて、理解をしてほしい。だいたいこの間の教員の研修会ですとかそういうときにはこの論文を示しながら、立命の事例を説明しています。

U.他大学の事例紹介
 次に、東北大学では、院生の論文指導を巡って大学院で自殺がありましたが、高等教育開発推進センターの吉武先生は東北大学学生相談所の副所長もされてらっしゃるわけですが、本学にハラスメント研修の講師として来られたときに「要注意の教員行動」をいただきましたので、参考までに資料として配布しました。いわゆる「べきではない」ということをあまり言われたくないという教員の方もいらっしゃるわけですが、実態からすればやはりこういうことは注意してほしいというのが正直なところであります。特に大学院の関係では、立命でもこの間、同様な相談が増えてきています。例えば「指導のたびに言うことが思いつきでグルグル変わる」だとか、「プレッシャーをかけてデータを捏造させる」だとか、よくあるのが、「存在否定の言動(修士はやらないぞ)」とか、こういうことですね。それから進路について。これは、立命の場合であったケース。「大学院で研究しているテーマと関連のある企業に行かないんだったらもう推薦状は書かないです」とか、「他の大学院に進学するんだったらそれもうこれ以上指導しないです」とか、こういったことは本学でも起きてるわけですね。適切な説明や同意を欠落させた指?っていうのは――これは研究関係のハラスメントで以前取り扱ったのですが――、相手方の教員は「私は全て院生のためを思ってやりました」と弁明されるわけですが、院生にそのことを何も説明してなければ院生のためかどうかわかりませんよね。それと、先生にはわかってても院生がそのことを納得していなければそれは院生のためでも何でもないわけです。こういった説明・同意を欠落させた指導上のトラブルというのもハラスメントとして扱っています。
最近は、先生方においては研究室の運営もリスクマネジメントのひとつとして責任を持たなければならないわけです。研究室の中で様々なトラブルが起きたらそれはやはり、そこの研究室の教授が一番トップにいらっしゃるんでしたら、その教員に責任があるということです。ですから、教員はただ研究してたらいいですとか、教えてたらいいということじゃなくって、研究室があるんでしたらその研究室のリスクマネジメントも先生のひとつの重要な任務ですよということであります。リスクマネジメントの視点から、こういうものを東北大学は用意をされてるということでしたので、参考につけさせていただきました。

V.立命館大学の過去の事例紹介
回収資料の立命館大学の事例の説明に入らせていただきます。
  これは、2010年度に起きている案件は省いてます。2009年度迄に起きた案件であります。Mと書いてるのは修士ですね。それから括弧の中のmは男性、fは女性です。
事例1:このゼミというのは、複数の教員が担当している大学院のゼミであります。ゼミの年輩の教員から相談者がゼミで発表したり色々すると執拗な批判を受けたり、その年配の教員が相談者の発表途中で席を立つなど、「他の院生と比較しても集中的に自分が不当な扱いを受けてるような気がする」と。そのことを直接自分の指導教員に――その指導教員は若手の准教授なんですけれども――訴えたわけですけれども、その年輩の教員に気を使って、全然相談者に配慮してくれない。ということで、学部時代に講義を受けて非常に暖かいと感じた教員相談員に2回程度相談にきましたが調査や調整の申立をするときには相手方教員の名前を匿名にするというわけにはいかず、最終的には今、まだ休学をされているという状況です。
  事例2:これは研究生で、満期退学をした元国費留学生です。女性です。相手方の教員は男性です。元国費留学生であった申立人、日本語は堪能ではありません。博士論文を提出した後の口頭試問で修正を要求され、修正後一旦帰国をしました。その後4回も来日をして口頭試問を受けましたが、その都度違う修正点を指摘される。で、「博士論文の審査体制、審査プロセスに疑義があるし、その結果その論文指導も不十分で、論文についても正等に評価されていない」と。したがって副査の変更と再入学を認めて欲しいということで調査の申立てをしてきました。これはどちらかといえば研究科内で調整する内容であり、調査というよりも教学的措置が先であろうということで、防止委員長から研究科長に調整をお伝えしたわけです。それでもなかなか申立人のほうはやっぱり十分な対応をしてもらってないということで、再度調査の申し立てをしてきたわけです。ですから、結構調査には、日本語の問題もあり、長い時間かかりました。とはいってもやはり最終的には研究指導上の問題なんですね。その研究科の博士の学位審査にあたってのルールに不明確なところがあったりしておりましたので、それは改善課題として研究科に預けて、申立人の対応は研究科に再度依頼しています。
  事例3:次は修士の女性です。相手はポスドク、男性のポスドクであります。申立人はその同じ研究室のポスドクである相手方に研究指導や就職活動の支援を受けてきたが、相手方から誕生日にバラを送られたり、妻子がいるにも関わらず結婚話をされたりしたため、そういうことは止めてほしい旨を伝えていたと。しかしながら、相手方はその研究室内で指導教授から絶対的な信頼を得ていて、学生・院生に大きな影響力を持っていて、相手方から嫌われると研究室に居づらくなるという雰囲気があったということです。そのような状況の中で、修士の1回生の終わりのときに、「就職活動のアドバイスをするから」といって、相手方の家に――相手方の家が彼女の家と割に近いということのようでありましたけれども――呼び出されて、強姦寸前までの行為を受けたということであります。それ以降、申立人はメンタル面で支障をきたし、大学に通えず、就職活動も出来ない。「相手方が同じ研究室にいる状態では大学に通える自信が無い、従って相手方を辞めさせてほしい」というのが、ハラスメントの申し立てでありました。当然ながら辞めさせてほしいということでありますので、早急に調査委員会を立ち上げて、調査をして進めたわけです。調査結果、事実であったわけですが、ただ、有期雇用のこういうポスドクの方ですとか、客員の人ですとかそういうこともそうなんですが、立命館の就業規則というのは、専任の(期限のない雇用の)教職員の就業規則ですので、こういう有期限雇用の方の就業規則というのではありません。就業規則が無いところで処分というのはできませんので、普通解雇、もしくは次年度の契約更新をしないかのどちらかなんですが、この場合は普通解雇という判断をした。この申立人は非常に精神的にダメージを受けていて、ヒヤリングの際や認定?の対応のときにも、保護者(母親)やカウンセラーに同席してもらっていました。ただ、前期でかなり回復していって、後で聞きましたら就職も決まり、無事修了していかれたということでありましたので、我々としてもほっとしました。
  事例4:相談者は修士の男性で、相手方も男性です。これは大学院に入学してすぐのことなんですが、ゼミでの課題発表のときに、指導教員に頭ごなしに「それは間違ってる」とみんなの前で言われたと。さらに同じ研究室の成績優秀な院生がミスをしたときに、相手方が一斉メールで「成績がよくってもそんな研究が出来てない人がいる」という内容を流したと。申立人は自発的に研究をしていきたいので、こういう状態を我慢してこの研究室でやっていく自信が無い、研究室を変更してほしいということで、相談に来ました。ハラスメント相談委員からアドバイスをされて、「自分で解決します」ということになり、自分が教員と話し合いを持って、教室・研究室の変更が了承されたということであります。こういう形になれば一番いいということですね。
  事例5:次は学部4回生の案件ですが、どうして学部4回生のケースを取り上げたのかといいますと、これは他大学院に進学するという理由で研究成果や努力が評価されないで、強い口調で注意され、必要な指導がなされずに嫌がらせのように感じて、「ゼミに行くのが憂鬱でこのままでは卒業できないんじゃないか」と、「心配だ」と言ってきたわけです。このことをハラスメント相談員に話すということで大分気が楽になって、あとは「具体的に何かそういうことが起きれば再度相談に来て欲しい」と相談員が伝えたわけですが、その後相談は無かったということですので多分、無事卒業できたということでしょう。
  事例6:これも匿名希望の院生からで、相手方教員も不明です。相談者の指導教員はゼミでの指導のときに、自分の気に障ることが起きると他のゼミ生の前で我を忘れたかのように激高して机を叩く等の威圧的な行動をたびたび行なってきたと。相手のこのような言動が常軌を逸しているように思えて、恐怖感すら覚えて萎縮してしまって、このまま相手方の指導を受けることは困難なように思うと。他方、他の教員と比べると面倒見がよくて、熱心に研究指導してくれて、研究も進んできてると。しかし、今の状態でその相手の指導を受け続けるということは、あきらめざるを得ないのではないかというまでに気持ちが追い込まれているということで、相談してきた。相談員は、「申し立てを行なって、調整か調査をしたらどうですか」と言ったのですが、申し立てを行なうことでそのゼミの存続が不可能になれば、他の院生に迷惑をかけることになってしまうので、かなり悩んでいる様子だった。したがって「それだったら他の院生達もやはり同じような思いであるだろうから、他の院生と話し合いをして、それから再度相談に来てください」と伝えた。その後相談が無いということは、匿名では我々のところでそれ以上追跡できませんの?、ある意味で若干は改善されてるんじゃないかという気がいたします。
  事例7:これは、非常に時間もかかって重たい案件でしたが、申立人は後期課程の女性の院生です。相手方は男性教員です。申立人は他大学出身者で、M1からずっと継続して相手方の指導を受けていました。M2のころから相手方は指導という名目で、個人研究室で頻繁に申立人と性的関係を持ちました。「関係を終わらせたい」と申立人が言いますと、相手方は「それだったら指導を継続することはできない」と言うわけです。ところがその分野で教えてもらえる教員というのは相手方しかいないものですから、彼女にしてみたら、それはそれで自分の将来の無くなる話でもあります。博士後期課程まで進んで研究者になろうとしていたわけですから。そういう脅迫的発言を受け続けていたので、「後期課程はもう他大学に進学したい」と言ったところ、これも「他大学に進学するんだったらもうすぐにゼミを辞めろ」と言われ続けて、博論の中間構想のテーマですとか構想発表のときも独断で事務室に提出をしていたということであります。さらにその2年間ずっと、申立て人は科研費でもらっていた相手方の研究活動を手伝ってきたわけですけれども、その成果は全部相手方のものになっていて、自分への還元は全然無かったということも併せて訴えてきていました。申立人は懲戒処分と、謝罪文の提出と、指導教員の変更を希望してきました。この事件は申立があって直ぐに調査に入るわけですが、その調査には専門委員として弁護士も入っていただいておりました。調査中の教学的な措置として、中間構想発表の中止でありますとか、指導教員の変更ですね、これを防止委員長から研究科委員会に依頼して、ハラスメントの認定をする前にそれは実行されたということであります。ハラスメント防止委員会は、調査の上でこれをハラスメント――これはセクハラ、アカハラ両方ですね――と認定し、学部は、就業規則の懲戒処分に則って、諭旨解職と判断しました。
  事例8:修士の同じ研究室の4名の男性院生がひとりの教員を――これは若い30代半ばぐらいの男性教員でしたけれども――訴えてきた件ですね。この申立人4人は同じ研究室でこの相手方教員の研究指導を受けており、4人とも、後期課程には進まずに前期で就職するつもりでした。M1の後期、当然ながら就職活動の一番忙しい時期に、相手方から、学会発表をするよう強要されていると。4名とも就職希望であるので、学会参加は就職活動が終わった秋ごろ、M2の秋ごろさせてほしいと要望したわけですが、春の学会に出るのは院生の義務なのだから毎日実験と就職活動をしろとかなり高圧的に言われた。彼らは学部時代から熱心に研究活動に取り組んでいて、就職活動を自由に出来ない状況とか、身体の自由を制限するような発言というのはハラスメントであるということで、防止委員会に調整をしてくださいということで申し立てを行なってきました。相手の処分を望むのではなく、「3月の学会発表は教員の強制ではなく申立人達の自主性を尊重したものにしてほしい」というものであったわけです。ハラスメント防止委員会に申し立てするのと同時に、やはり研究科の中の指導の問題でありますので――彼らは研究指導はその教員から引き続き受けたいということですので――、研究科に対しても解決に向けて働きかけてほしいということで要望を行なっていたということでありました。これも防止委員長からやはり研究科長に対して、学生指導のあり方について、相手方である教員の方について注意をしていただくのと同時に、アドバイスを行っていただき、十分反省をしていただいて、申立人達からも納得を得たということであります。

  以上が、この間の特徴的な大学院関係のハラスメントの相談事例であります。将来のことを考えると、これは院生だけではなくて、助教の方ですとかポスドクの方ですとか、そういう方でもやっぱり訴えることできないんですね。そういう意味では、我々ハラスメント防止委員会としても歯がゆいところではあるんですね。これは、広島大学の北仲先生に来ていただいたときに北仲先生も言ってらしたんですけれども、広大には医学部ありますが、医学部から――看護師の方とか病棟のところは別として――は一切ハラスメントの案件があがってこないと言っておられるんですね。それは無いということではなくて、医者の世界でそういうことを訴えたら先にどうなるかっていうことはもう目に見えてるので、訴えてこないということなんだそうです。立命館の場合はそこまではないですけれども、ただやはりそういう「先のことを考えると」というのが大きなプレッシャーであることは事実であります。
それからもうひとつは、被害者だと申立ててくる学生・院生のなかには自分の教学条件を有利にしたいための取引に使う場合があるんですね。ハラスメント防止委員会は申立人の学生・院生のために一生懸命調査をしていく過程でゼミ担当者の変更など様々な教学措置を学部長や研究科長に要望したりするわけですが、案件が解決した後に不快感が残るときも正直あります。「ああ、これはハラスメントの調査より有利な教学措置を得るために使われたんだなあ」というような気がする場合もあるわけですね。例えば有名な先生から厳しく言われてもですね、自分の将来のことやポストを考えたら、それはハラスメント相談員には相談しないですよね。逆に相談してきた場合でも、相談者にとって何か有利なことしか言ってこなかったり…。調査している間にそういうことがわかってくると、ハラスメントの調査委員は何か利用されてるのではないのかなあというように思われるときもあります。だからと言って我々は中立、公正に調査していかないといけませんので、最終的にはそれが立命館大学のハラスメントのガイドライン、セクハラのガイドライン、アカハラのガイドラインに則って、その行為がハラスメントかどうかというこ?を認定しているということであります。

W.立命館の研究倫理指針
 研究関係の資料をまとめて載せてお配りしているのは、院生の皆さん方も自分達を守ってくれる規程や制度がどうなっているのか、ハラスメントを受けないためにどうするべきかということも知っておいてもらわないといけないと思います。研究倫理指針の中の「研究者の責務およびその行動規範」にありますように、ここで言う研究者というのは、教員だけじゃないわけですね。大学で研究活動に従事する学部学生大学院院生、及び研究員、客員研究員を全部総称してここで研究者と言ってるわけですね。研究者としてどういうことを守っていただかないといけないかという基本的事項が書かれているわけです。当然ながら、基本的人権の尊重でありますとか、国内の法令だとか、それから学部・大学内の諸規程も遵守してもらうと。それから「研究活動に加わる場合は」と書いてありますように――その6番ですね――、これは教員に対して書かれていることですが、「学生が不利益を蒙らないように配慮する」こと。それから7番のところですね。ここには「ハラスメントの無い良好な人間関係を築くよう努める」と。そして「ハラスメントに関する事項はガイドラインに基づき対応する」ということですね。それから、インフォームド・コンセントについてもきちんと書かれておりますし、個人情報の保護、それから研究成果の発信について。
それじゃあ逆に立命館大学としてはどういうことに責務をもっているかということですが――括弧3のところであります――、研究倫理指針に反する行為等への対応ですが、本指針に反する行為が発見された場合は、学長が事実関係を調査して、必要な措置を行うというのがひとつあります。それからもうひとつは、内部通報ですね。通報処理に基づいて、不正行為による通報、内部通報ができることになっていますので、通報者の通報内容に基づいて処理することになっています。たとえば院生や学生が発明した場合、立命館の発明規定は、いわゆる雇用関係にあるものしか取り扱っていません。だから院生が発明した場合は、権限委譲をしてもらうなど、きちんとした対応が必要なわけですが、そういうルールも知らずに、院生に何の説明もせずに教員が勝手に処理してしまうと、後でその院生・学生は、自分にとって非常に不利益を蒙ったということでハラスメントで訴えてきますよね。ですから、やはり自分達が一体大学の中でどのような――ハラスメントは個人の問題ではありますけれども、それ以前の問題として――ルール等で守られてるのか、逆にどんなルールが無いために自分達は損してるのだとかを知らねばならないと思います。研究実態は多方面に進んでいるのに、立命館の場合には必要なルールが無かったり不十?です。ですから、そういうことについて院生の方々には留意していただきたいと思い、これ等の研究関係に関わる規程等の資料をつけさせていただきました。

X.新聞報道に見るハラスメント事例
 先程は立命館大学の事例を説明させていただきましたけれども、次に、新聞報道に見る最近のハラスメント事例について特徴的なものについて説明します。これは事務局で、ハラスメント案件が新聞に出たときにこれを貯めておいて、ハラスメントの調査をする際のおおまかな基準ですとか、世間の相場のようなものとして参考にしているわけです。
見ておいていただきたいうちのひとつは、岐阜大の例です。「「社会のクズ」とアカハラ訴訟で岐阜大と教員賠償命令」と書かれているわけですが、これは指導教員側の問題はあるにしても、指導教員の変更などの措置を講じなかったという大学側の責任は大きいと思います。大学に対して債務不履行だということで責任があることを認めたということであります。先程紹介した本学の重いハラスメント案件の場合でも、被害に遭った人が、使用者責任ですとか、債務不履行だということで大学を訴えるということも十分考えられるということです。
次に41ページ、大阪市大の「アカハラ放置で提訴」と書いてありますが、これは大阪市大の元教員がアカハラの救済を申し立てたのにもかかわらず、放置していたということで提訴されている事例です。大阪市大は、「その教員がすでに大学に所属してない」ことを理由に調査を拒否して、調査依頼にも応じてないということなんですが、先程から何回も言ってますように、立命の場合でしたらこのアカハラの起きた案件が、その教員が在職中のことであれば当然訴えることができますので、こういうことにはならないということです。
次に東海学院大学の事例は、学生が自殺した案件です。これは遺族の方の代理人の弁護士が、「大学は謝罪だけじゃなく、やはり学生・院生の修学・研修といった環境を整える義務があり、整えるべきだった」として、法人とその教員の両方を訴えているということです。
次は42ページですね。「無断で映像を使用し講義で学生を中傷して…」という九州国際大学の事例です。講師の契約が打ち切りになった案件で。先程言いましたように立命の場合も、非常勤の場合でしたら懲戒処分等の手続規程がありませんので、重い案件であればその時点でもう契約を打ち切るか、来年度以降契約更新しないかのどちらかだと思います。
立命の場合も学部で教育経験の全く無い、若い教員の事例がありました。最近の女子学生の服装は夏なんかですと下着姿のような女子学生を見かけますが、この教員は非常に少ない人数の授業のなかで、目に余って、ちょっと注意をしたところが、保護者からハラスメントの事務局に直接電話がかかりました。セクハラだということで。「学生のそういうことをずっと見てるんじゃないか」とかかなり苦情を言われました。この若手教員には、「学生の服装や化粧については、批判しないでください」と伝えました。ある意味で言うとFDのひとつだと思いますので、先輩教員の方からも伝えておいていただきたいということです。
それから、43ページ。龍大の、割と新しい事例ですが、他大学の女子大学院生に――加害教員前任校の女子大学院生なんですけれども――、セクハラ行為をしたとして、転任先の龍大に訴えて懲戒解雇にしたということです。
次は千葉大の事例。これは、ゼミなどの人間関係が継続するような食事とか宴会に院生を連れまわしたり、それから長時間の説教を連日行うというようなことがあって、戒告処分にした例です。処分の理由は学生・院生が安心して学び研究できる環境を侵害した、ということです。
  他大学のハラスメント事例は枚挙にいとまが無いくらいいっぱいあるわけですが、裁判にまで至った事例とAPUの事例について紹介させていただきます。一つは、京大教授のアカハラで、元学生に共著の投稿をせまるということで、アカハラの訴えがあったという件です。被害者である60代の女性が文学研究科で学んでいた2002年、助教授から「修士論文を担当教授との共著として学術雑誌に投稿してほしい」と繰り返し求められ、その女性が断り続けると、同じ研究室の博士課程でこの女性と知り合いだった30代女性が、担当教授とは異なる被告の教授から研究室への理解が不十分として留年させられたなどと主張していたということです。判決は、「論文を教授との共著にするかどうかは教員の方に決定権があるのではなく学生に決定権がある」ということでした。30代女性の留年の件は、共著問題にからんだ措置ではないとして、研究の理解の程度も裁判所としては判断できないということになりましたが、当時の京大のその博士課程には留年の規程が無いので、手続きが違法だったという判断をされたということであります。我々はこのような様々な係争を想定してハラスメントの解決をしてるわけではありませんが、やはりルールが無ければ最終的には何も判断できないということになりかねませんので、不適切性であったり、実態に合わないルールや規程については、やはり解決していく必要があるだろうということになります。
次に、2010年7月16日の佐賀大の件。学生へのセクハラで停職4ヶ月の懲戒処分を教授会ではなくて、その運営会議で決めたということで、裁判所が違法と認定した事例です。その後、控訴審で逆に佐賀大が逆転勝利しているんです。「判決によると」というところなんですが、准教授はセクハラで停職4ヶ月の懲戒処分を受けて、一審では、学部の運営会議では懲戒処分を決める権限は無いということになったわけですが、福岡高裁のほうでは、准教授は停職処分後もハラスメントの再発防止を否定する発言をずっとしていたということもあって、「大学が再発の危険性があると判断してその授業を持たせないとかそういう判断しても不合理ということは出来ない」という結論づけで、一審では大学のほうが退けられたものが、結局控訴審のところでは認められたというような事例であります。
次はAPUの事例ですが、指導教員が、女子の大学院生と夜遅くに自宅で長時間過ごすという不適切な行為があったということで、指導教員である副学長の50代男性教授を降格処分にしたということで、副学長の職を解かれたというものです。教員の住まいで大学院生と二人きりで過ごしたということですが、院生は、副学長から身体を触られたりしたということで、APUのハラスメント防止委員会ではなくて別府署に相談をしたということなんです。それから、APUハラスメント防止委員会に被害の申し立てをしてきました。委員会は事情聴取をしたところ、被害者の院生はその指導教官である副学長が――副学長にももちろんヒアリングしてるわけですが――、「自宅で相談に乗るから」と言うので、出向いたわけですが、副学長のほうは、「院生から自宅に来たので、室内に入れざるを得なかった」と。「身体も触っていない」という具合に反論してるわけてすが、こういう、密室の中で何が起きたかっていうのは、非常に判断が難しいです。双方の証言はもちろん食い違っているわけですが、ただ深夜に「室内に入れざるを得なかった」ということは室内に入っていたわけですので、事実として室内に二人いたということは確認できたということで、大学は「これはやはり不適切ではないか」と判断したわけです。「たとえ院生のほうから訪ねて来たとしても、教員としてはやはり自宅に入れるべきではないでしょう」ということです。明くる日にでも相談すればいいということですから、教員のとった行動は不適切だったということで、処分になった事例です。
その他にも他大学の事例が数多く載ってますので見ておいて下さい。こういうものを見ながら――立命の場合は教員の懲戒処分の量刑を決めるのは学部ではありますけれども――、社会の中でどういう事件がどう対応されているのか、ハラスメントの対応であればどういう処分なのかということについて、ハラスメントの判断をする際のひとつの材料になればと思います。立命の専任教職員に対する懲戒処分は、一番軽くてけん責、二番目が減給1カ月、三番目が1カ月の停職、それから次が諭旨解職、それから懲戒解雇ですので、1ヶ月の停職と諭旨解職の間が何も無いわけですね。ですから非常に難しいですね。他大学の事例で言えば、6カ月の懲戒や停職だとか色々あるわけですが、立命の場合はありませんので、現在、懲戒規程、それから就業規則の見直しを行なっています。現行の就業規則は昭和30年代の、いわゆる大学が善意で成り立ってたような時代の就業規則ですので、時代に即した見直しを行っています。
  最後にハラスメントに関連する新聞記事を載せています。例えば中央大学は、相談室が設けられてまして、付属の中高のハラスメントも法人として全部取り扱っているので、年間約80件ぐらいのハラスメントの相談数があるそうです。アカデミック・ハラスメントのネットワークの御輿先生のところでアカハラの加害者研修を始められましたので、ちょっと私共も――さっき言っていたように加害者研修をどうするかっていうのは大きな課題になっておりますので――、色々ご相談に伺ってるところであります。それから、最後のページの「アカハラこじれて裁判に」という記事は、他大学の一例を申し上げましたように、すんなり解決とはなかなかいかなくてですね、こじれた場合には当然裁判になって、案件が長い間終わらない場合があるということでもありますので、これも載せさせていただきました。以上です。ちょっと時間オーバーしましたけれども。

(休憩)


ディスカッション

吉田:それでは後半を始めたいと思います。ディスカッションに入る前に、司会であり現委員である私から、昨年度のパートナーシップ委員会企画との連続性を明確にしつつ、少し感想のようなことを述べさせていただきます。
 今回のお話しは、昨年度、大阪大学の牟田さんにお話しいただいた内容と、かなりつながる点が多いものでした。昨年いらしていない方も多いと思いますので、要点だけ繰り返しますと、牟田さんは「ハラスメント」に関する常識を少し見直すべきではないか、という提案をされたわけです。ポイントは三つありまして、一点目は、ハラスメント対策の目的は何かをもう一度考え直そう、二点目は、ハラスメントの定義を考え直そう、そして三点目が、恋愛とセクシャル・ハラスメントの関係を考え直そう、ということでした。
まず一点目ですが、ハラスメント対策の目的は「事実認定」ではなく、状況の改善や救済であるべきだ、というのが牟田さんの主張のポイントでした。ハラスメントがあったかどうかという事実認定、これは膨大な時間がかかることで、それに拘っていると、結局本質的な問題解決は導かれないのです。ですから、まずは被害者の救済を急ぐべきであり、それは事実認定とは切り離して、別個にそしてより迅速に進めるべきだろう、ということです。その上で今回のお話をお伺いしますと、立命館のハラスメント防止委員会では「調整」と「調査」を分けている。つまり「調査」とは別立てで、「調整」を迅速にやっていこう、というのが今日のお話の重要なポイントであったと思います。これは昨年度の牟田さんの主張がさっそく取り入れられた、ということでは必ずしもなく、ハラスメント対策における最近の潮流または新たな認識なのだろうと私は理解しますが、いずれにせよ昨年の議論とつながる点です。
次に二点目のハラスメントの定義に関してです。昨年度牟田さんは「ハラスメントの定義は、単なる快・不快とは無関係であるべきだ」と仰っていました。快/不快の感じ方はその人ごとに違うわけですから、ある事柄が相手にとって不快かどうか、嫌か嫌ではないか、というのは被害者にとっても加害者にとっても分からないわけです。ですからハラスメントを定義する際、そこに焦点を合わせるのではなく、むしろ一種の人権侵害の問題として、つまり労働環境や研究環境を損なわせない、という部分に焦点を合わせて対策を取らなくてはいけない。そう仰っていたわけです。この点についても、今回見た立命館大学の規定は、ハラスメントを人権侵害として、つまり教育上、就労上、修学上の利益や権利の侵害として、一歩踏み込んで定義している、という印象を受けました。
最後に三点目、恋愛とセクシャル・ハラスメントの関係です。セクシャル・ハラスメントの案件はほとんどが男性が加害者で女性が被害者のケースなのですが、それは牟田さんによれば、大学という場に特有の性別・年齢による人間関係の構成と結びついています。つまり男性が中年以上で、女性が二十代、三十代くらいの若い人であるというケースが多いのです。牟田さんは「おじさんはすぐに勘違いするからね」と半ば冗談で仰っていましたが(笑)、私も身につまされる部分が無くはないです(笑)。例えば、昨年牟田さんが挙げられた例ですと、教員が女性の大学院生と一緒にドライブをした、と。それでその大学院生が、サンダルを脱いで川か何かに入るときに、スカートの裾をちょっとたくし上げた、と。それでその教員は「これは俺にアピールをしてるな」と思ったと言うんですね(笑)。「おじさんはすぐ勘違いするよね」というのはそういう意味なのですが、ただ牟田さんのポイントは、それがもし恋愛であったとしても、それは認められないということなのです。
どういうことか。つまり教員にとってそれが本当に「恋愛」であったとしても、学生の研究を妨げていることには変わりがない、ということです。教員は学生に研究させることが社会的使命であり、恋愛のために時間を割かせるべきではないわけですね。そこにはもちろん──本日も出た話ですが──当該の学生以外の、周囲の学生が受ける不利益もあります。恋愛であれば不快感はないから問題ないだろう、というのは通用しない、というわけです。恋愛であったとしても、あるいは恋愛だからこそと言ってもいいかもしれませんが、その学生の研究の時間を奪い、研究活動を明らかに阻害しているわけですから。この点でも、今の立命館の対応や方法は、私の中で昨年の議論ととてもスムースにつながりました。
さて私のコメントは以上にしまして、皆さんの方で質問やコメントがございましたら、どうぞご自由にご発言下さい。

志磨:先程のその、おじさんの話の関連で、学部学生の事例ですけれども、「世の中に出たらこういうことはたぶんたくさんあると思うので、変なおじさんだと思って我慢します」と言われたんですね。それで、「それは我慢するなんていうことはだめですよ」とこちらは言ったんです。そういう具合に、我慢するなんていう教育は絶対よろしくないと私達は思っているんですけれども。

A:すみません、それは相談に来た学生がそういうふうに[言ったのですか]?

志磨:ええ、そうですね、セクハラの相談の際です。だから、「セクハラなんだから調査だとか調整だとか、そういう申立もありますよ」って言ったら、「いやもう、この件はもう…」。そういう具合に言われたんですね。そこまで、相談だけで。「世の中に出たらそういうことはあると思うので、もう変なおじさんだと思って我慢します」という。

吉田:それが、相談を受ける側として印象的な発言だったと言うことですね。

志磨:そうですね。ええ。

吉田:では私から幾つかお尋ねします。まず、調査や調整にかかる時間のことなのですが、例えばこの資料にある、PDを解雇したケースですね。これは、窓口で相談を受けてからこの処分が出るまでに大体どれぐらいの期間がかかってるいるのですか。

志磨:これはもうすごく早かったですね。2カ月くらいでした。

吉田:2カ月ですか。予想したよりも早いですね。

志磨:はい。早く解決しないといけないだろうと思ったのは、この彼女がもう修士の2回生で、就職活動をしてもらおうと思ったら本当に早く対応しないと留年のようなことになっても困りますし、それから研究室の中に相手方がいる以上この彼女は登校できないという状況もありましたので、研究室の、ヘッドの教授と相談しながらでありますけれども、2カ月ぐらいで解決できました。

吉田:昨年の牟田さんのご指摘にもありましたが、大学というのは制度の壁が厚く、やれ会議だ何だと、何をするにも時間がかかる場所で、ハラスメントの事実認定をするだけで、何年も時間がかかってしまう。でもそれでは被害者の救済、つまり学びの場の回復にはならないので、結局それはハラスメント対策とはいえない、というご指摘でした。それを考えると、このケースは調査ということですが、2ヶ月ぐらいで処分が出たわけですね。するとそういう案件が発生していから、かなりのハイペースで当事者や関係者が動くことになりますよね。

志磨:これはたまたま春休みだったんですね。ですから先生方も調査委員の先生方も、まあ授業が無かったということもあって早く解決できたということです。

吉田:なるほど。

志磨:頻繁に調査委員会を持つことが出来たのと、この人は専任教員じゃありませんでしたので、就業規則が無いわけです。もしこれが専任教員でしたら、教授会事項なんですよね。教授会に持っていって、また教授会が審査委員会を立ち上げて、そしてそこで処分の量刑を考えられるわけですから、それはすごく時間がかかりますよね。

吉田:では同じ資料にあるこの[別の]ケースはいかがでしょうか。これは確か新聞報道もされたケースですよね。

志磨:ええ、そうです。

吉田:これは調査は早い段階で開始されたということですが、処分に至るまでにはどれぐらいかかったんですか。

志磨:処分に至るのは夏休み前でしたので、4ヶ月ぐらいでしょうかね。

吉田:4ヶ月ぐらい。長くても4ヶ月ぐらいっていうことになるわけですか。

志磨:夏休みをはさんでましたからね。処分の決まった理事会が11月ぐらいでしたので。本人が申し立てに来たのは7月ぐらいだったと思います。相手方は諭旨解職という結果になってますけれども結局申立人のほうはこの結果に納得はしていないですね。

吉田:まずは教授会で審査委員会を立ち上げて、と。そういう過程も含めてですよね。

志磨:はい。でも当然ながら、ハラスメントの調査はそういう具合に弁護士が入ったり、それから中立公正な立場でやりますので、防止委員会の調査結果は教授会のところでももちろん尊重はしていただきます。再度そこで処分、――厳重注意の場合でもそうなんですけれども――ハラスメントの認定をする場合は、最終認定をする前に加害者から一度、弁明の機会を与えています。ハラスメント認定の前に加害者に弁明の機会を与え、処分ということになりますと当然ながら教授会で処分を決める前にもう一度弁明の機会を与えるという形をとりますので、結構その間時間がかかりますね。この間の先生方の弁明を見てみますと、だいたい先生方が弁明されるのは、言い訳に近く、もう一度客観的に調査をし直さなければならないというようなことは今までのところありませんでした。調査し直さないといけないというのは、もう一度ハラスメントの調査委員会で調査をし直すということなんですが。今までのところではそういったことは無かったっていうことです。

天田:天田です。ちょっとお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか。

志磨:はい。

天田:たとえば、一つの組織として懲戒処分する場合、厳重注意、減給、停職、あるいは諭旨解雇なども含めて様々な形があると思うんですけども、なかなか難しいのは先ほどご説明していただいたように、加害者と被害者が同じ学会等に所属している場合などがあるかと思います。例えば、ある大学にてアカデミック・ハラスメントとして何らかの処分をされた教員とその被害者である大学院生が同じ学会に所属していることなどがあるかと思うのです。その場合、基本的には、学会としては当該会員の所属する大学の処分に準じて判断するという形で決定せざるを得ないかと思うのです。というのも、近年では、学会においてもようやく倫理綱領や倫理規程などが整備されてきてはいますが、まだまだ不十分であり、かつそもそも学会それ自体には調査する能力も権限もありませんので、かりに上記のような事態が生じた場合には、所属大学の判断と処分に準じて判断せざるを得ないと思います。
これもご説明していただいたことですが、かりに当該大学にて被害者が大学院を修了するまで加害者の教員に接近禁止を命じたとすれば、学会倫理綱領やそうした所属大学の処分内容を踏まえて学会としての判断を決めることになるかと思います。具体的には、学会として同じ研究会には顔を合わせないような配慮をするとか、あるいは被害者が学会報告を希望する場合には加害者には学会に参加してもらわないようお願いをするといった形になるかと思うのです。しかしながら、そうした判断は学会等によって異なると思うのです。
そういう意味では、大学における判断・処分が、広義の意味での「被害者の救済」っていうことにうまくつながらないことがあります。要するに、大学の判断・処分・対応が学会などの範囲に及ばないことがあるのだと思うのです。つまり、大学の「外」における「被害者救済」の範囲をどのように考えるかで、大学の判断・処分・対応も自ずと変わってくるだろうと思うんですね。たとえば、これまでの立命館の前例の中で、ある処分をした時に、そのような「被害者の救済」という観点から数年間の接近禁止とか、あるいは学会等の活動を数年間禁止するといった判断・処分をどういう形で行ったのかということについて、教えていただければと思います。

志磨:立命館大学外の組織における活動について立命館大学ハラスメント防止委員会から制限をかけるわけにはいきませんが、相手方には「この間は申立人には接近はしてもらったら困ります」ということを伝えています。

天田:たとえばそれはどれぐらいの期間っていうのは。ケースバイケースでしょうけども。

志磨:はい。ケースバイケースです。明らかに処分になった場合はですね、院生に対するセクハラで1カ月の停職になった例がありましたが、被害者が大学院を修了するまでは一切接触禁止というようなことがありましたね。

天田:そうすると、原則的に同じ学会に所属している場合などは、加害者の学会等への参加もそれに準じての判断・処分になりますか。

志磨:いや、それは特に大学としてはこちらは言えませんよね。それは学会で判断されることだと思います。

天田:大学では修了までの接近禁止とすると。でも、被害者が学会等に参加していって、学会等において二次被害が起こっていくっていうことはあるかと思うのですが。

志磨:ただ、その場合は、「二次被害が起きたときには申し出てくださいよ」ということしか言えないんですよね。

天田:そうですか。

志磨:というのは、加害者の教員に対して、授業を持たせないだとか、そういうことについて立命館はガイドラインの中に教学的措置のひとつとして書いてますが、ただ、他大学の事例でもわかるように、何年間も授業を持たせないっていうのは、教員のいわゆる教育をする権利を奪うということで、大学が訴えられたりする場合もあります。だから、学会の活動までも大学が制限できるかって言うと、そこのところはひとつの判断がいると思います。

天田:難しいところかと思いますが、学内の環境設定ということに関して言えば、減給、停職、諭旨解雇などの懲戒処分をするが、学会等の部分については、基本的に「注意勧告」という形で、あくまでこちらの及ぶ範囲ではないけど、接近禁止や学会等の活動を控えるように促すことは可能かと思います。その際、もちろん、その形では何らかの強制力を持つわけではないのですが、少なくとも所属機関においてそうした判断がくだっていると、おそらくそれぞれの学会などでもそうした所属機関判断をもとに何らかの対応を考えるということが可能であると思うのです。被害者救済という観点からも環境設定がしやすいのだと思うのです。逆に言えば、その判断がないと学外にて二次被害が起こったりすることもあります。

志磨:それは確かにそうですね。そういう事例も確かにありました。他大学でそこまで処分しているかというとなかなかそういう事例が無いもんですから…。ご意見頂戴したので、それを持って帰って他の大学にどう対応しているのか一度聞いてみます。

天田:了解しました。どこまでの範囲を「被害者の救済」として設定するかによって――原理・原則としては立命館大学としてという境界設定が生じざるを得ないんでしょうが――、その判断・処分・対応の仕方は違ってきます。幅広い被害者の権利の回復という観点からしても、学会等のほうが重要な環境であることもあるので。

志磨:はい、そうですね。

天田:それこそ学会の組織がどう取り組むかということとあわせて、大学での細かな調整が必要かなあと思ったところです。

志磨:ご指摘ありがとうございます。

天田:こちらこそ、ありがとうございます。

志磨:立命の場合ですが、これは院生じゃないんですけども、非常勤講師の人がアカハラで専任教員を訴えた事例では、申立人・相手方の所属している学会での申立人の名誉回復だとかそういうこともひとつ挙げてらっしゃいましたので、確かに今先生がそういう具合におっしゃったこととつながる話かなと思います。

天田:多くの場合は所属の教員と指導をしている院生等は……。

志磨:同じ学会ですから。

天田:同じ学会で、しかも直接的な利害関係が生じるところがありますので、多くの場合、加害者の教員のほうが学会の中で高い地位を得ていたり、力があったりしますので。

志磨:すると、余計にですよね。

天田:そこで被害はものすごく大きくなることも少なくないです。

石田:ひとつ質問があります。前年度から、2009年度からのパートナーシップ委員の石田と申します。私が前任の委員の方からこの仕事を引き継ぐときに、その方がかなり重点を置いて話されていたことのひとつなんですが、相談を受ける立場も調査する立場も、当事者とは関係が無いほうがいい、というか関係があってはならないと。このことが解決のためにはとても重要なので、相談員も調査員も、第三者が望ましいということをお聞きしたんですね。以前にハラスメント防止委員会の前田さんをお呼びしたときにも、前田さんにもそういうことをお伝えしたと聞いてるんです。去年2009年度に立命館で問題があったということを受けて、――院協(院生協議会)のほうからもそういう話があったと思うんですけれども――、今日お話の中で、今、相談室だったか調査委員だったかを外部に委託する話が検討中である、とおっしゃったと思うんですけど、具体的にどういう話になってるでしょう。

志磨:具体的に…、まだ検討中ということより、立命の場合はハラスメント案件は、第三者に持っていっても、教育上や研究上の問題というのは学部や研究科によって異なりますし、教学の仕組みも違いますよね。だから、第三者に持っていっても結果的に判断が出来ないわけですよね。だから学内のあちこちに相談員がいるほうがいいだろうという、今のところはそういう判断をしています。

石田:ああ、そうでしたか。

志磨:はい。東北大学は一時外に持って行ってらしたようですけれども、あまり効果が無かったということも聞いてますし。本学でも内部通報の窓口を外の弁護士事務所にも置いてるんですが、実際、ほとんど相談が無いと聞いてます。立命館大学の場合ですと、ハラスメントとして調査の申立があった後、防止委員の中から調査委員会の構成メンバーを決めるとき、相手方と関係する防止委員は調査委員会メンバーには絶対入らないですよね。例えば、理工学部で起きた問題でしたら、そこに調査委員として、理工学部所属の防止委員は一切入らないわけですね。そうでないと、中立公正な立場で調査が出来ませんので。それから立命には、早く解決する方法として調整という解決方法があります。この調整という解決方法は第三者の弁護士が行えるものではなくて、あくまでも教学問題として、例えばクラスを変更したり、ゼミ教員を変更したりしてもらうわけですから、ハラスメントの防止委員長から学部長や研究科長にきちんとお話しを通して、教授会等で承認してもらうという、こういう流れでやって行かないと、早く進まないですよね。

石田:だから結局は、外部に委託してしまうと話が進まないと。

志磨:ええ、そうです。

石田:さっきそのメモ見たんですけど、規程の第7条のところでハラスメントの再発防止に関する指導に関しては……

志磨:それは今外部で検討しています。大半は教員の方が加害者ですから、その加害者の教員の方に、再発防止に向けての加害者研修を行うわけですよね。授業をこれから先もまた持ってもらわないといけないわけですから、学内でその対応をお願いしていましたが、いくら専門分野だからといって、やはり同じ学内で教員が教員を指導するというのは非常に難しいと言われましたので、学外で受け入れてくれる機関を調査をしてるところです。

石田:じゃあこれは当事者との関係が成立するとかいう問題ではなくて、ということですか。

志磨:ええ、そういうことですね。

石田:ひとつ気になるのは。統計をみるとBKCの学生が多いんですけれども、相談者が。BKCの人が多いっていうことについて、やっぱり自分の学部でこれだけの相談が出てると思うんですけれども、それはやっぱり、どの学生にも迷いはあると思うんで――相談を受けるだけだったら、聞くだけだからまあいいとも確かに思うんですけれども――、相談をしにくいっていう気持ちはあると思うんです。もしからしたら、相談をしに行く相手が――学内ですから――、加害者とつながってるかもしれないと思って相談に行けないということもあると思うので。それと、相談は、話を聞くだけだから誰でもいいっていう判断は私はどうかと思います。

志磨:誰でもいいということではなくて、誰の所に相談に行っても対応ができるような相談員研修を実施しています。

石田:ああ、はい。

志磨:ええ、そういう意味で、自分のキャンパスで言いにくければ、それは朱雀でも衣笠でもいいし、それこそ他の学部の先生に相談に行かれてもいいという、そういう意味です。

石田:相談に関しては、学内のほうがうまくいくという考え方ですね。

志磨:ええ、そうです、はい。

石田:わかりました。

志磨:というのは、相談があったらすぐ事務局に[その情報が]来るわけですよね。非常に深刻な案件だったらすぐ調査・調整に入らないといけませんし、ただそれもやはり申立人が、「どうしても匿名でやってもらわないと」となったら、調査・調整できないんですよね。匿名で相手方の教員に調整に行くわけにいかないわけだし。だからそこはすごく丁寧に、理解してもらうように何度もお願いするわけです。「それを解決しようと思ったら匿名では出来ませんよ」ということを、かなり言うんですが、最後のところで自分の将来のことを思うと、例えば「修論出してからじゃないと申し立て出来ません」、そしたら「それじゃそれまで待ちましょうか」とか、「辞めてからじゃないと、次の職が決まってからじゃないと」、「それじゃ、決まってから来て下さい」という、そういう形ですよね。

近藤:すみません。

志磨:はい。

近藤:例の6のところで、相談に来た人が、「ただ自分が申し立てをするとゼミの存続が不可能になってしまい、他のゼミ生に迷惑がかかる」っていうことで悩んでいたって書いてあるんですけど、ハラスメントの事例で例えば、指導教官が訴えられて、その時に同じ指導教員が担当してる院生で、訴えてなくて、十分に研究環境に満足してる人もいるじゃないですか。いる可能性もありますよね。

志磨:ええ、ええ。

近藤:それで仮にその指導教官にあたる人が訴えられて停職とかになった場合に、そうすると、訴えてない人は、同時にまた指導教官を失うことになりますね。

志磨:そうなんです。

近藤:その間の、こう、停職であれば代わりの指導のやり方をどうするのかとか、補償ではないですけどその開いた穴をどう埋めるのかっていうことに関しては、もうハラスメント問題とは全然別の問題だということですか。

志磨:そう、そうですよね。だけれども実際は、先程紹介したようにある研究科で、処分は1ヶ月の停職でしたけれども、大学院の授業を一切持たせないということになったわけですよね。博士の後期過程になると研究分野は非常に狭まってきますから、ほぼ一対一にみたいな感じですよね。そしたら、今迄指導してもらっていた教員が突然もう指導ができなくなってしまってですね、代わりの指導教員が最終的には自分の専門分野とは、自分がやりたいと思っていた分野とはかなり違ったわけですね。それで、ハラスメントとしての訴えは無かったですけれども、研究科のほうに訴えてきてましたね。研究指導が不十分だと言って。そういうことで、1人の問題でなくなってしまうわけですよね。

近藤:じゃあ今、立命館の中だと確か停職は1ヶ月しかなくて、あとは懲戒だから……

志磨:はい、そうです。

近藤:懲戒になったら他の人を雇うと思うんですけど、先程、懲戒じゃなくて停職の期間のもうちょっと長いのが欲しいっていうことを言ってたと思うんですよね。仮に6ヶ月とかになった場合は、普通はどうするんですか。6ヶ月間人を雇って……

志磨:そういうことですよね。たぶん、他の教員の方が見られるか非常勤の方をお願いするかということだと思うんですね。

近藤:そうですか。

志磨:幸いといいますか、この31日の産経新聞を見てると、文科省のいわゆる大学院の改革のところで――今日その資料はつけてませんけれども――、徒弟制の廃止と、それから博士課程前期過程・後期課程のある大学院の場合は修論の廃止ですとか、そういうことが答申として出てるんですよね。ひとつには、一対一の指導つまり、指導教員をひとりのものとして固定するんじゃなくって、修士の段階ぐらいでは、色んな教員の指導を受けに回りなさいというような、そういう答申。そういうことも含めて、これからは徒弟制のような指導のありかたというのは改善されていくんじゃないでしょうかね。

石田:ここに挙げられている資料、今日持って来られてるもので「回収」にしている理由は、学内にまだ当事者が残っている可能性があるということですね。

志磨:そうです。

石田:もしその後何年か経って、当事者がもう学内にいないってなったときに、これを例えばハラスメント防止委員会のホームページに……

志磨:はい、事例として挙げていきたいと思ってるんですけども。

石田:あ、そうですか。

志磨:ええ。そうしないと、たぶん皆さんは自分の大学の中で具体的にどんなことが起きてるのかについてあんまりよくご存知ないということもありますから。この[回収資料の]中の事例では大半の方がまだ残ったりしておられます。休学中ということはそういうことです。ですから、事例についてはもう少し抽象的に書いて類型化していけばいいのかなと思っています。

石田:はい。ハラスメントになるかならないかは、本当にその人によるし、事例ごとに違うと思うんですね。

志磨:そうですね。

石田:同じことを言っても、人が変われば問題無かったり。

志磨:ええ、そうなんですよね。

石田:だからこそ、事例は多いほうがいいと思うので。

志磨:私達もそう思ってるんです。事例はね、やっぱり積み重ねていかないと、なかなか判断したりすることは難しいですし、それは確かにそうなんですね。

石田:はい。今日ここで紹介されている分、この新聞記事とかは……。

志磨:色々な新聞に掲載されたものを事務局で集めたものですから――これをコピーして他のところに配られたら困りますが――、研修がある度にお配りしてるんですね。東北大の吉武先生から提供いただいた資料は[転載]OKもらってますので、これも研修のときに使わせていただいています。

石田:ここのパワーポイントですね。

志磨:ええ、はい。で、「立命の事例が無いじゃないか」とか言われますから、そのうちそれは何らかの形で載せる予定です。来年のところで言えば、「ハラスメントの相談手引き」のなかに典型的なものぐらいは事例として載せましょうかということで検討してます。

B:ひとつお聞きしていいですか。

志磨:はい、どうぞ。

B:権利を保障するという観念でいくと、たとえば研究所のデータの特許の問題なんかは、もしかしたら、現行では無いルールのものがあると思うんです。で、ルールが無ければハラスメントにはならない、何か起こった場合にハラスメントの認定を受けられないと思うんですけれども。そういった場合、現行ルールが無いというものを表面化させて、ルールが無いっていうことを顕在化させてテーブルに乗せて、そしてそれをルール化に反映させてもらいたいと思った場合、どんなステップがとれるんでしょうか。

志磨:ひとつには、ルールが無くてもですね、教員は、ルールが無かったらルールが無いということを学生・院生に説明しとかないといけないわけです。「ルールが無いからこういう場合はあなたにとってメリットにはなるけれども、逆にルールが無いことでこういうデメリットがありますよ」ということをきちんと教員は説明しておかないといけないわけですよね。

B:それはでも、みんな認識があいまいになってる部分もあると思うので。

志磨:ただこの間関連する教員の話を聞いてると、「自分は全て院生のためにやりました、院生のためにやりました」ということだけなんです。「院生のためというだけだったと、あなたがそう思ってらっしゃる。あなたはそう言ったかもしれないけれども、院生の人は何も説明されてないと言ってるわけですから、そこはやっぱりきちんと説明する責任はあるでしょう」と。ルールが無いことについて、ハラスメントで認定するにしろしないにしろ調査の中で顕在化してきたものについては、それぞれの、教学部なら教学部、研究部なら研究部、学部なら学部に、検討してくださいという形で問題点として返すわけです。そうしないとハラスメントだけを認定するのではなく、我々はハラスメントを防止するということが目的ですから、防止のためには、もしルールが無くてそういう院生の人達が不利益を蒙ってるんだったら、これからハラスメントを防止するためにそれはやっぱりルールを作ってもらうことも必要なことですから、それをお願いするということですよね。

B:お願いされた後、そのフィードバック……

志磨:検証しますよね、それは。

B:検証がそこで確かになされて、それに対して、「検証した結果、こういう結果になりました」っていうのは、どういった段階で[伝えられるのか]。

志磨:ルールだったらきちんとまたみなさんに周知徹底していくということでしょうね。それはいくらルールがあってもですね、みなさんのところへの周知徹底がなければ、いくらでもハラスメントは起きますよね。そういうことだと思うんですね。だから院生のみなさんも、例えば特許の話なんかもそうなんですけれども、理工系だと教員は外部資金取ってきて共同研究などをやられますよね。その時に、院生が特許の申請を教員と共同でしたとしますよね。そうすると特許ですから、博論の口頭発表とか、そういうときには結局できないですよね。特許の申請のほうを先やっちゃったらもう。

B:されてしまったら。

志磨:口頭発表の時に公表してしまったら、特許の申請は無理でしょうね。そういうことも含めてね、事前に知っておかないと、最終的に何か不利になったりしますよね。

B:こう、色んな価値観って変わっていくと思うので、学生はこんなこと言えないって感じられるってこともあるだろうし、なかなかそういう問題点って顕在化しにくいと思うので。言っていいのか悪いのかもわからないというような学生も多いと思うので。そういうのがもう少し、うまく制度として働くようなものがあればいいのになと思います。

C:それは、研究倫理に関することでいいですか。

B:研究倫理にもありますし、もっと普通に研究倫理の他にもあると思うんです。もっと他に学内にあるルール?

C:だから、それは健全な教員と院生の間の関係があれば、まずその教員に言って方法を探るのが我々の仕事だろうと思うんです。それが上手く行かない場合に別の窓口が必要になるっていう話だと思うね。

志磨:それとやっぱり院生の人達も、自分達がどういう[ルールに守られているのか]、この大学の中にどういうルールがあるのかっていうことは、やっぱり知っとかれたほうがいいだろうなと思います。履修要項を見たら、研究関係のところが殆ど載ってなかったので、今日規程をつけさせていただいたんですけれども。

D:ひとついいですか。回収資料の例えば事例1のところでは、申立人の人は相談に来ただけで、その後休学していたり、事例5と6ではその何とか相談には来たから、その後相談無しっていうことで、今継続中だったり、休学してしまっていたりっていう事例があると思います。こういう場合っていうのは、委員会のほうから、「最近相談来られてないんですけれども、その後どうなりましたか」とか、そういうようなものは……

志磨:相談員や事務局から連絡をとります。で、5番はもう無事卒業されてます。6番はそもそも匿名希望なので、こちらから連絡するというのは難しいですね。ただ、相談員の人からは何回も連絡してもらうんですね。だから、例えば1番の案件なんかは、[相談員の]先生が1年間ぐらい対応されてたと思います。

D:この1番のやつは匿名希望になってるんですけども、電話番号とかは控えてあって…、それで「ハラスメント後休学」って書いてあるんで、どういうふうに。

志磨:これは、先生のほうから、連絡があったケースです。

D:これは匿名希望にはなってるけども、実際は誰か顔見てわかっていたっていうケースになる……

志磨:そうですね。で教員のほうもだいたい想像はつくんですけれどもね。それはたぶん聞いてられて。その相談の案件の中身からすれば。ただ、だからと言って本人が「相談以上のことはできない」と言う場合にはそれ以上は私達が何かをするというわけにはいけませんよね、それは。

松原:お話をありがとうございました。先端総合学術研究科の教員の松原と申します。2点伺いたいのですが、1点目はPDに対する「新人研修」のご予定があるかどうか。それからもう1点は恋愛のケースですが、ガイドラインには「教員が申し出る」となっていますね。普通はなかなか申し出ないのではないかと思うのですが、もし正直に申し出た場合に相手の学生はどうなるのか。もし十分にこのガイドラインを知らなかったら、「プライバシーを明かされた」ということで、逆に学生から「ガイドラインはおかしい」と大学が訴えられるかもしれません。
仮にガイドラインを学生たちに十分に周知したとしても、やはり疑問が残ります。なぜ教師と学生の恋愛が好ましくないのかについて、「強いられた同意」という見方をしていますね。そうすると、学生など立場が弱い人にとっては、本心からの恋愛も教員から「強いられた恋愛」だとされてしまう。去年の牟田先生の講演の際、全く同じような事例が紹介されましたが、やはり同様の定義に基づき、教師と学生の恋愛はご法度とされていました。そのときに申し上げたのは、「強いられた同意」という概念を使わなくとも、単に利益相反であるとしてすませればよいのではないか、ということです。ほかの学生と比較して「ひいき」になる、あるいは過剰に厳しくなるといった懸念がひとつあります。また、当事者の間だけとっても、個人的に親密な関係を保持しようとするお互いのインセンティブと、師弟関係における適切な判断が矛盾する可能性があるわけですよね。例えば学生は学外の大学院に進学したいが、教員は引き留めるといったことが起こりやすくなる。「強いられた同意」は、ハラスメント対応を工夫するなかでの一つの答えなのかもしれませんが、「あなたの恋愛は強いられたニセモノです」という意味づけをあえ?しなくても、利益相反ですませればよいのではないでしょうか。

志磨:ありがとうございます。ガイドラインに「教員と学生・院生間の恋愛関係について」書かせていただいたのは、2009年度のときに色んな事例があったからです。要は、やはり先生がおっしゃったようにこれは全くプライベートなことですから、双方がウィンウィンで終わってれば、我々は何も知りませんから、師弟関係で結婚されてもなんでもそれはかまわないんですよね。ところが、一旦破綻をきたすとですね、これが他の学生・院生にも非常に迷惑にもなりますし、それから被害者本人も、大学の中で色んな将来の夢を持ってきたのに、それも全然だめになってしまうということもありましたから、「最低限これぐらいは」ということで議論して。
最初はハラスメントの防止委員会のほうはですね、「申し出をしなければならない」というような結構厳しめのものを提起させていただいてたんですが、それはやっぱり違うだろうという議論がかなりありまして、「申し出ることとする」というように本人の自主的なことにさせていただいたんですね。今先生がおっしゃったような、その利益相反の視点だとか、そういうところまでは我々は考えが及びませんでしたので、今日、そういうご意見もあったということをうかがわせていただきます。

松原:[1点目の質問だった]PD研修については?

志磨:PD研修はですね…、嘱託講師の研修を2010年度からやり始めましたので、PDとそれから大学院生もきちんと研修をしなければいけないので、ひとつ大きな課題だと思っています。

松原:PDは本当に立場が弱いし……

志磨:そうですね。

松原:任期が短期ですし雇用形態も多様です。隙間に入りがちな存在だと思いますので、是非ご検討ください。

志磨:はい、わかりました。PDの方と、それから助教の方も今非常に弱い立場に置かれていると思うんですね。研究優先と言っておきながら――立命の中でその助手制度が、一号助手の制度がなくなりましたから――、ある意味でいったら指導教員の研究室の雑務的なこともさせられて、「とてもじゃないけど5年間に自分の研究実績を積むっていうのは非常に辛い」という具合に訴えてこられる方がやっぱり数人いらっしゃったんですね。そういうことからすると、やはりPDの方ですとか助教の方ですとかそういう立場の弱い人達については、本当に我々としても何とかしないといけないと思っています。

E:そんなに難しい話じゃないんですけども、先程拝見した、いくつかご紹介いただいた中で、早い対応をとられているのは優先事項にあたるものがあると思うんですけども、何と言っても件数が多いような印象を受けたんですけれども、当事者にとっては、みなさんすごく深刻な悩みとして持って来られてると思うんですが、どのぐらいのタイミングで何らかの回答があるのかは恐らく全く見えない状態で相談をかけてられると思うんです。そういったことに関して、優先順位が低いからこうなるのですっていうことは絶対答えられないと思うんですけれども、だいたいいつぐらいの解決というか…。申し立てに対して何らかのアクションとして返答、何らかの形の返答をしますっていう、そういったタイムスケジュールのようなものは実際には学生さん、学生さんだけではないですね、みなさんに示しておられるんでしょうか。

志磨:もう相談のすぐその場で、相談員に調整・調査の申立を行ってもらったほうがいい、という場合もあります。ゼミの教員を変えてほしいですとかね、クラス変更してほしいっていうような場合は、これは調整のための手続をしないといけませんので、できたら相談の場でもう調整・調査の申し込みをしてもらうということです。

E:手続き。

志磨:手続き、ええ。

E:そこから、その後のステップがあるんだと思うんですけれども。

志磨:それから後は何かを優先するのではなく、事務局は同時進行で対応しています。そのために、それは事務局にとってもハードな仕事です。ただ、防止委員の調査してもらう先生方っていうのは、さっき言ったように、教職員含めて16名ですので、学部が重なったりするとその学部の先生には調査委員に入っていただけませんので、かなり調査委員会の構成が難しいという場合もありますけれども、それでも順番をつけてやるということはしないですね。

E:その回答が、2ヶ月先にあるのか、4ヶ月先にあるのかっていうのはこう……

志磨:措置の場合は、そんなに時間かけてたら、たとえば卒業できなくなってしまったりしたら困りますから、すぐ対応してもらいますよね。ただ調査の場合はさっきから何回も言うように、申し立ててこられる人もですね、正直言ってこういう内容で先生を辞めさせろと言われたら先生もたまったもんじゃないだろうっていうようなのもあるわけですよね。しかしながら、私達はやはり双方からきちんと状況を聞いて、客観的な事実で判断をしていくのです。防止委員会は警察じゃありませんからそれ以上のことは判断できませんので、たとえば第三者のヒアリングを数多く実施して事実を積み上げていくのでして、それは時間がかかります。

E:先がいつになるのかというのは全く相談者のほうからはわからない。

志磨:相談員は、相談を受け付けた段階でその案件を全部事務局のほうに伝えることになっています。調査・調整は相談員は全く関係ありませんので。ただ相談員の方に今どのぐらいのところで進んでますということはお伝えはしますけれども、調査、調整の申立があったとき相談員が引き続き関わっていくということはありません。

E:相談者というのは、相談してきた人…相談員じゃなくって?

志磨:相談してきた人は、申立人である被害者は、「次のヒアリングはいつですか」、「遅いですね」って言ってこられることはあります。ただその遅い理由は、事務局側も配慮しないといけないときもあるんですね。申立人が、たとえば非常に精神的にダメージを受けている場合なんかですと、たとえば本人がかかっている精神科の先生とも相談しながらですね、「今まずは論文――修論なら修論――を書いてもらうことが一番、第一にやってもらわないといけませんから」って言われれば、調査を早く実施するということはしないですね。やはり申立人にとって何を優先すべきかということを考えながらやりますよね。そうなりますと、3カ月、4カ月ではすまなくって、結論はもう出てるんですが、それを本人に伝えるっていうことはまだまだしないで、最終的に修論を出して口頭試問が終わった頃、今年度の終わり頃きちんとお伝えしましょう、とかね。その前に教学的措置は実施しておくわけですね。いわゆる指導教員を変えたりだとか、そういうことは、やっておかないといけないということですね。

吉田:今お話に出た点で、調査委員にその当該関係学部の教員は入らないということなのですが、それは明文化された規程があるのですか?

志磨:ガイドラインに記載してあります。ハラスメントの調査は中立公正にやらないといけないので、そういうことです。

吉田:分かりました。その上で、それは、申立人にも明示されてる、つまり常に広く認知されているかたちになってるのですか?

志磨:はい。調査委員についてもHPに掲載されています。ただ、最終的に、懲戒処分の場合になると、加害者の所属学部が判断を行ないますので、ちがいますけれども。ハラスメント防止委員会の調査そのものは、加害者の学部の教員だとか関係者が入るっていうことは一切しないということです。

J:ちょっとよろしいですか?

志磨:はい。

J:今の話の続きでちょっと思いついたんですけども。やはりセクハラの延長にはレイプっていうか、いわゆる犯罪がありますよね。そういう場合に、例えばいただいた資料では46ページにあるようなケースで、被害者がレイプを受けたということを警察ではなくて大学の何らかの機関に申し出てくるっていうようなことがありうるわけですね。警察は警察で信頼をちゃんと受けてないということがあって――それは警察の問題かもしれませんけれども――、やはりそれは警察案件だというふうに判断をされる場合もありうると思うんです。

志磨:ありえます、はい。

J:その辺は何かルールは。

志磨:それはもう、レイプだったら、それは警察に行って下さいということですね。

J:そこでシャットアウトしちゃうわけですか。そういうわけにはいかないでしょう。

志磨:シャットアウトはしないですね、それはそれで。刑事事件としてそれは扱うということになりますよね。

吉田:その相談員が警察まで同行する、と確か書いてありましたよね。

志磨:そうです、はい。例えば――これは大学院生ではありませんでしたけれども――、契約職員の方で辞めざるをえなかった人が、どうして、どういう理由で辞めたかというのは我々は全然[知らずに]、辞めてから後、セクハラで申し立てて来られたケースが2年ぐらい前にありました。それは、いわゆる研修の時の夜にレイプを受けたということを訴えてこられたんですね。非常に時間がかかったというのは、密室の中で起きたことを、私達警察でもありませんので、それを証明するっていうのは非常に難しかったのとですね、それと周りの人達が口をつぐむんですね。最終的にはその後に相手方がとった行為だとかそういうものを総合的に判断してハラスメントとして認定したのですが、相手方も有期限雇用の人でしたので、再雇用しないという判断をした例もありました。それからこの3番の例もそうですね。強姦寸前までという訴えでしたが、かなり異様なことをされたわけですが、それも密室の中でのことですので、誰か第三者がいたということではありませんでした。しかし、これは、相手方が認めました。このケースは、相手方が認めなかったらハラスメントとして認定するのは難しいようにも思います。7番については、レイプを受けたという具合に申立人は思ってるところがありまして、相手方を、別に刑事事件で訴えているということであります。ですから、私たちは警察じゃありませんので、密室の中で色んな暴力を受けたということはなかなか証明ができないといってるということですね。

櫻井:先端総合学術研究科4回生の櫻井と申します。

志磨:はい。

櫻井:パートナーシップ委員会の企画には2008年、2009年度のものにも出ておりまして、ハラスメントとはどういうものかということについて、ある程度、勉強してきたつもりなんですが、たまに、この事例は果たしてハラスメントなのかどうかといったような、境界線にある事例に接することがあります。そこで、ひとつ事例を紹介させていただきまして、それについてご意見いただければと思うのですが、よろしいでしょうか。

志磨:はい、どうぞ。

櫻井:ある大学のある授業に出たときのことです。その授業は、シラバスに則った講義が行なわれていました。教員も生徒の意見や発表をきちんときかれる公正な方だったんですが、あるとき受講者のひとりが「この授業でしていることは、オタクの集まりの会話だ」というようなことを言って、「単位のために自分は出ているのであって、資格のために仕方なく出ているだけだ」と、述べたことがありました。

志磨:受講生の人が?

櫻井:受講生の方が。それで、その教員が「君にはちょっと授業には出て欲しくない」というようなことを述べて、それに対してその受講生が「それはハラスメントだ」と激高するというようなことが実際にありました。ですが、見ていた僕は――生徒として参加していたんですけど――、これはハラスメントではないような印象を持ったんです。というのは、授業はもう普通に、正当に行なわれていたと思いますし、その正当に行なわれていた授業に対して言いがかりのようなことを言って、さらに、それに対して教員はまっとうな対応というか、普通に対応されたように思ったからです。でもやっぱり「ハラスメントだ」と言われてしまったということがあって、これをどう考えていいのかっていうのがいまだによくわからないのです。

志磨:「君には受けて欲しくない」と言われたのは、みんなの前で言われたんですか、先生は。

櫻井:そうですね。その授業では、「この発表に対してどういった感想を持ちましたか」みたいなことを全員に一応聞くことになっていて、そのときにその受講者がそういった発言をし、それに対して教員が応答したということです。

志磨:そういうことは、立命でもあります。もしその教員がきちんと授業をされていたにもかかわらず学生が何か言ったときでも、受講生全体の中で注意をすると、必ず注意された学生は「プライドを傷つけられた」だとか色んなことを言ってくるんですね。だから先生としては、後で、「授業が終わったときに話し合いしましょうか」とか、そういう具合に言っていただいたらよかったんじゃないかと思います。というのは、立命の場合、「不快だ」と一度言われたからと言って、私達がハラスメントだと認定するようなことはありませんが、学生や院生だけでなく教員も同じで、例えば教授会の席でみんなの前で怒鳴られたりしたということでハラスメントだと言って来られたりするので、全体の前で何か言われるということについては、特に神経質、ナイーブな人だとかそういう人は、それはもう「非常に侮辱された」という具合に言ってきますね。

吉田:しかし「後で個別に」というのは、それこそ「密室」になるのではないですか。

志磨:個別にっていうのは一対一じゃなくってですね。「話しましょうか」って言ったときに、学部なんかでしたら例えば、教学担当、副学部長とかもいるわけですね。

吉田:なるほど。一対一ではなく、第三者として他の人達も含めて、ということですね。

志磨:他の教員と一緒に。オープンなスペースで話を聞いたらいいわけですね。個人研究室に連れて行って一対一でやりあうんじゃなくて。
それともうひとつ注意してほしいのは、メールで絶対やりとりしないということですね。メールでのやりとりは、顔が見えませんから、学生もかなり強く言いますので、それにつられて先生も学生がそんなえらそうなこと言って来るんだったら先生も同じようにきつく言い返したりするんですね。そうすると、学生の方は証拠がありますからね、「教員がこんなことを言ってきました」と言ってくるんですよ。「でも前後の状況を考えたらこれだけでハラスメントというのはちょっと無理」って相談員は言いますよね、それは。
これは去年の夏でしたけれども、単位制のインターシップに行く前には事前研修としてマナー研修とかやってもらうんですよね。夏場でしたが、マナー研修であってもインターシップですから、学生はスーツを着て受講しているんだけども、その学生はまあいい加減な格好で来て一番前に座って靴を脱いで足を掻いたりで、もう四六時中いい加減な態度で受講をしてたようなんですね。で、マナー研修の講師は非常勤の人ですから、やっぱり注意しにくかったんだと思うんですが、主担当の専任教員が講義の最後に、あまりにも態度がひどいものですから注意をしたわけです。それは注意をされて当たり前なんですけれどもね、みんなの前で大声で注意したわけですよね。それもインターシップに行くのになんという態度だと。本人はその時は納得したような顔をして帰ったんですが、その後、長い長い文章がハラスメント事務局に来て、名誉毀損で訴えるっていうようなことを言ってきたわけです。自分がやったことなんか棚に上げるんですよね。みんなの前で侮辱されたという、それしか残ってないんですよ。それは相談員のところにもそう言って来たので、その相談員に「社会常識上それは無い」ということを、もう一度本人に伝?てくれと言ったのですが、本人はその後、反省もして申し立てを取り下げました。何日か経って自分の気分も収まったんだと思うんですけれども。ですがそのことは、担当教員に伝えました。その教員を呼んで事務局と、副委員長と一緒に、「最近の事例から見て、このように、本人に非があっても、学生に注意するときの仕方を、教員のほうは学んでください」ということをお願いしました。

櫻井:みんなの前でっていうときのみんなっていうのは、学生とか含めて、顔がよくわからない人達の前で言うのではなくて、副学長とか、そういったある程度顔がわかる方の前で言うっていうことですね。

志磨:まあ別にそれは、他の教員でもいいと思うんですよ。

櫻井:他の教員、例えば副学長とかでも、やっぱりみんなの前で言われることにはなるのかなと。

志磨:だからその、別にね、信頼関係があればあれでしょうから、もし一対一で言うんだったらオープンなスペースでやられたらいいと思うんですよ、それはどういうことですかって言って、指導の一環としてやられたらいいと思うし。

櫻井:オープンなスペースといいますと例えばその……

志磨:教員ラウンジとかありますよね、ここだったら。とにかくそれは、先生でも同じですよ。教授会で何か言われたことを、非常にけしからんと言ってこられる場合もありますし。

松原:今の櫻井さんが出した例ですが、もし私がその教員だったら、やはり「他の学生に失礼だろ君」と思いますね。授業のときに私語する学生がいるとき、私は名指しで注意します。すると静かになる。全員に向けて一般的な注意をしても、私語はなかなか収まりませんね。私は、授業に集中して聞いている学生を尊重しているという姿勢を明確にするために、あえて厳しく出ます。その場で適切にきちんと指導するのが大切だと思います。学生から問題の発言があったとき放置しておいて、「じゃあ君後で話しましょう」というのは、私は授業のあり方というか、その場のあり方としてはあまりよくないなと思うのです。結局のところ、ハウツーに終わらず、高度な指導力を要請されるわけです。

志磨:ええ、そういうことです。

松原:これは結構大変です。例えば「学会発表をしなさい」と指導したとき、学生が「嫌だ」と言ったとして、「はい、わかりました」では、長期的に見たらむしろ「不作為、指導しなかった、ネグレクトだ」って言われかねません。その時は本人にやる気がなくても、長い目で見るとしておいたほうがいいっていうことがいくらでもある。それが指導なんですよね。しかし、もし裁判になったときに、大学が訴え返されかねないっていうところまで考えたときに、本当の意味での指導力をどうやって上げていくかというのが、結局のところ課題になると思います。

志磨:ええ、そうです。

松原:そのあたりは、ハラスメント問題に携わっている方の間ではどのように理解されているのでしょう。

志磨:私達は、FDの課題だという具合に思ってますね。

石田:FD って何ですか?

志磨:ファカルティ・ディベロプメントのことです。学部とか研究科全体で、教育の仕方だとかそういうものをレベルアップしていきましょうということです。そういうものが無いと、個々の教員の対応ではもう追いつかないんですよね。今言われたように、私語のときなんかはまさしくそうで、その他の学生の学習権を侵害してるんだということをきちっと先生が言わなかったらだめです。それはやっぱりそういうもんだということを学生に認識してもらわないといけない。だから一番最初に約束事として「自分は絶対私語は許しません。私語があった場合は教室から出て行ってもらいます」とか、最初から学生との約束事としてやるべきだろうというようなことも含めて、FDのひとつかなというように思います。だからこの間、教育開発支援センターの新人教育研修ではFDと絡めてハラスメント研修を実施しています。
それと、高校まででしたらね、教員は教免を持っていて「教科教育法」を学んでいるのですが、大学の教員には教免が無いので、特にこの間見てますと、実務家ですぐ教員として来られた方は、自分が実務家でいたときに社会人に要求してたことと同じことを学生・院生に要求されたりするんですね。それはやはり自分の立場をきちんと変えてもらわないといけません。
そういうことも含めて、それぞれの学部や研究科でそういう事例を挙げて、先生方が集まって話し合いしていただければ。今松原先生が言われたようなことも含めて、ひとつの解決法でもありますので、FDとして教授会などでそういう研修をやっていただけると非常にありがたいなあというのが正直なところです。

吉田:話題は尽きませんが、そろそろ予定時刻が参りましたので、この辺りで閉会とさせていただきます。本日はとても有意義な議論ができました。志磨さん、そしてお集まりいただきました皆さん、どうもありがとうございました。

志磨:どうもご清聴ありがとうございました。

(拍手)



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2.パートナーシップ委員会の設計思想とその歩み

■概要

日時: 2011年11月04日(金)13:00〜16:00
場所: 立命館大学衣笠キャンパス 創思館303・304
報告者:渡辺公三(立命館大学大学院先端総合学術研究科教員)
     小宅理沙(IPU環太平洋大学 非常勤講師)
     橋口昌治(立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー)
     箱田徹(立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー)
     青木千帆子(立命館大学立命館グローバルイノベーション研究機構研究員)
司 会:濱本真男(パートナーシップ委員/立命館大学大学院先端総合学術研究科院生)
     岩田京子(パートナーシップ委員/立命館大学大学院先端総合学術研究科院生)
主催: 立命館大学大学院先端総合学術研究科パートナーシップ委員会

■開催趣旨

  先端総合学術研究科は学部を持たない独立研究科であり、そこでの学生・教員・職員の関係のあり方は、通常の大学(学部)組織におけるそれとは必ずしも同じではない。そのためいわゆるキャンパス・ハラスメントも複雑、特殊、多様なかたちで生じる可能性があり、これに対する独自の問題認識が、私たち関係者個々人に必要であると考えられる。そこで先端総合学術研究科では、研究と教育が一体である大学院に特有のハラスメントに対する問題意識を高め、共有し、よりよい学究の場を創造するための啓発活動を行うことを目的とし、2006年3月、学生と教員の代表からなる「パートナーシップ委員会」を発足させた。
 具体的な活動として、2006年10月に江原由美子氏(首都大学東京)、2009年2月に御輿久美子氏(奈良県立医科大学、NPOアカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク(NAAH)代表理事)、2010年2月に牟田和恵氏(大阪大学大学院)を外部の専門家としてお招きし、講演会を開催してきた(肩書きはいずれも当時)。また2007年12月には、同年7月に発足した立命館大学ハラスメント防止委員会の事務局長(当時)、前田秀敏氏、2011年2月には、発足から4年を経た同委員会事務局長(当時)の志磨慶子氏をお招きし、学内における実際のハラスメントへの対応・対策のご経験を踏まえて、特に大学院に関連するハラスメントについてお話しいただき、議論を行なった。
 以上のように、パートナーシップ委員会はこれまでに様々な研修によって、大学院におけるハラスメントがなぜ、いかにして起こり、そこにどのような問題が横たわっており、ハラスメント防止のためにいかなる対策が求められているのかといった点について、先端総合学術研究科に限らずひろく学内院生・教員・職員の間で情報の共有を促してきた。代々の研究科構成員によって、パートナーシップ委員会報告書は読み継がれている。一方、パートナーシップ委員会の設計当時と現在とでは、社会的、あるいは大学院の制度的文脈において、院生をとりまく状況が変化している。そのため、今日的視点から大学院における「パートナーシップ」のあり方を再検討する必要があるのかもしれない。
 そこで今回は、パートナーシップ委員会の原点を確認するために、委員会設立の経緯を振り返る。パートナーシップ委員会が発足した際に委員を務めた、当時の院生、小宅理沙氏と橋口昌治氏、教員の渡辺公三氏をお迎えして、パートナーシップ委員会を設計した背景、当時の関係者間のやりとり、当時と現在の問題意識の異同等についてお話しいただく。また、箱田徹氏と青木千帆子氏に、神戸大学や大阪大学でのハラスメント防止体制がどのようなものであったのか、立命館大学生存学研究センターPD等々に就任されていくなかで現在の制度の運用状況をどのように感じてきたのかをお話しいただく。これらを踏まえて、今後のパートナーシップ委員会の改善点、大学院における「パートナーシップ」のあり方について、議論を深めることを目指す。

■座談会

発言者(敬称略、順不同)
渡辺公三小宅理沙橋口昌治箱田徹青木千帆子天田城介(パートナーシップ委員)、西成彦(パートナーシップ委員)、松原洋子永田貴聖北村健太郎吉野靫本岡大和濱本真男岩田京子

※以下、外部に公開するために内容を圧縮しています。

1.イントロダクション

岩田: 2011年度立命館大学大学院先端総合学術研究科(以下、先端研と略す)のパートナーシップ委員会企画「パートナーシップ委員の設計思想とその歩み」を始めさせていただきます。皆さん、本日はお忙しい中お集まり頂きまして本当にありがとうございます。毎年1回行っておりますパートナーシップ委員会の企画として、「座談会」の形で発足6年目にあたるパートナーシップ委員会の過去を振り返ってみようというのが今日の企画です。私は本日司会を務めさせていただきます院生委員の岩田と申します。よろしくお願いいたします。

濱本: 同じく、院生委員の濱本です。よろしくお願いいたします。

岩田: 今日は、今回の企画の趣旨文と、2006年度に作られた「キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン」(以下、「ガイドライン」と略)を印刷して配布しております。どちらも、ホームページ(「立命館大学大学院 先端総合学術研究科 パートナーシップ委員会」http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/ps/index.htm)で公開しています。趣旨には、パートナーシップ委員会の紹介とこれまでどのような活動をしてきたかということが書いてありますので参考になさってください。
では、さっそくですが、企画の趣旨の説明に入らせていただきます。パートナーシップ委員会は、立命館大学大学院先端総合学術研究科の中で、主にこの研究科を中心にハラスメント問題に関する啓発を目的として、教員と院生の代表から構成されています。組織としては、教授会や院生会から独立したものとなっております。委員は2年の任期で交代してきており、現在の体制は、我々岩田濱本と教員側の委員として西先生、それから副研究科長の天田先生が務めてくださっています。今回の企画もこの4人で準備した次第です。このような、パートナーシップ委員会の形ができあがったのは、いまから5年あまり前のことです。2006年3月に第1回パートナーシップ委員会が開催され、それとほぼ同時に「ガイドライン」も策定されました。これは、立命館大学にハラスメント防止体制ができあがり、「ハラスメント防止のためのガイドライン」が確定され、「ハラスメント防止委員会」が発足するのは、2007年7月のことですから、そうした全学規模での制度化が行なわれる前の段階でした。初年度のパートナーシップ委員会では、江原先生をお招きした研修会を行なうなどいたしました。
そして、2007年度には「ハラスメント防止委員会」の前田さんへのインタビューを行ない、大学生が相談室に気軽に相談に行くということができない現状があるということをそのとき確認させていただきました。そして、大学院は確実に手薄であるということがわかりました。また、2008年度にお招きした御輿先生からは、大学院特有の問題とは何であるかということ、そして研修が必要であるということをお聞きしました。そして、なぜ大学院、とりわけプロジェクト型の大学院で問題が生じているのかということの背景に、大学院という場における力関係、権力関係があるということがわかり、その翌年の牟田先生の講演では、そのような権力関係が上げ底であるということ、上げ底の権力関係が大学院の中にはあるということを学ばせて頂きました。そして、2010年度は再び「ハラスメント防止委員会」の志磨さんをお呼びして、現在の大学院にとってのハラスメント防止委員会の取り組みがどうなっているのかをお聞きしました。
こうして研修を積み重ねてまいりましたが、では、2011年現在の先端研を取り巻く環境と考えた時に、いくつか新しいこれまでにない状況があるといえます。たとえばポスト・グローバルCOEのこと、立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー(PD)ではない修了生の方のポジションの問題といったことが大きなこととしてあげられます。これは、たとえば2005年、2006年の時点で喫緊の課題として意識されていたものとはかなり違った種類のものだと思います。
それからもう一つ最近の状況のとしてあげられるのが、「プロジェクト型研究」と「日本学術振興会特別研究員」という二つの方向性の一見矛盾ともとれるような状況です。これは、過去の院生会でも問題にされてきたことです。本研究科の「ガイドライン」をざっと拝見いたしますと、1のガイドライン制定の趣旨の中に、院生は教員のプロジェクトパートナーであるということ、プロジェクトの推進のために、院生と教員は職員と協力すべしということが書かれています。この文言には、おそらくこのガイドライン発布当時の「プロジェクト型大学院」としての先端研が院生にとってよりよい環境のものになるようにという思いが、そういったことが一番大きな柱として念頭にあった時期の事情を反映しているものであると私には、読み取れます。しかし、現在の先端研では、学振によって、個人で研究予算を持つことができる人が急速に増えています。学振の採用による学費の免除、バイトができなくなるということ、こういったことが、良いとか悪いとかいうわけではなく、こういった状況の下で、めざすパートナーシップというのは何かということを、今ちょっと立ち止まって考えてもいい時期にさしかかっているのかもしれ?いというのが、我々の提案です。また、そのためには、一度過去をきっちり振り返る必要があるというのが、今回の企画に至った理由です。
具体的には、今回お集まりいただいた、委員会の草創期をご存じの方々に、自由に過去を振り返っていただく形で、委員会設立の背景をお話しいただきたいと思っております。そこで、委員会発足当時に院生委員をお務めになられた、小宅理沙さん、橋口昌治さんにお越しいただきました。過去にどういうやり取りがあって、その当時どんな問題意識のもとでパートナーシップ委員会の設立に携わられたのかといったことをお話しいただき、それを踏まえた時に、先端研の現状をどのようにお考えか、たとえば教員と院生との関係、院生のキャリアアップなどについて思うところをお話いただければと思っております。
そして、教員側を代表して渡辺公三先生にお越しいただきました。委員会が検討、準備されていた当時に研究科長の職にあって、教員側の中心になってご活動された先生は、パートナーシップ委員会設立に至る経緯を最もよくご存じの方のお一人だと思います。当時、そして現在お考えになっていることのあいだで、なにが共通しているか、あるいはどのように違った部分が出てきたかということをお伺いしたい。皆様には今更昔の、5年も前の話を言われてもちょっと困ってしまうということもあるかもしれませんが、ぜひ、ほかの皆さんの記憶をひき出していただくような形でお話し頂ければと思います。
さらに、今日は、先端研出身者ではなく、外部から先端研にいらっしゃった元・生存学PD(現在、立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー)の箱田徹さん、青木千帆子さんにもお越しいただきました。大学院におけるハラスメント問題の取り組みについては過去に在籍していた大学での状況をお話していただき、先端研と他大学との比較検討ができればと考えております。
このようなことを踏まえて、本日はパートナーシップ委員会の改善点について議論するとともに、現在の視点から今日お配りした「ガイドライン」を点検しなおすということもできればと考えております。前置きがだいぶ長くなりましたが、以上です。これから座談会の方どうぞよろしくお願いいたします。

2.パートナーシップ委員会設立の経緯――2003-2005年

濱本: 最初に、過去の話をしたいと思います。

渡辺: 「ガイドライン」を決めた時に、経緯についてまとめて院生側と教員側とで確認して記録を残しているものがありませんでしたか?

天田: パートナーシップ委員会として引き継いだ資料にメモのような形で幾つかファイルが残ってはいるんですが、公開された形で残っているものはない。残っているものから、何月何日どういう会合があったかまでは確認できますが、どういう経緯かまでは明記されてないものが多々あるので、そこをぜひ今日確認したいと思っています。

橋口: 院生会と教員、執行部の先生方とで、当時存在した助手制度のこととか、いろいろ話し合っていたんですよ。そうしているときに、アカハラのことも取り上げたらどうだろうかという話になったんです。率直に言って、何もないところから出てきたのではなくて、それらしき話があったと言うことですね。はじめは、具体的な問題は具体的に解決していくしかないという流れだったんですが、これらは繊細に扱わなければならないということで、引っ込めた。こうした問題をどう扱うか、ある種の制度、受け皿という次元から話をしていった方がいいんじゃないかということで、この話(委員会設立及び「ガイドライン」制定)が始まった、というふうに記憶しています。

渡辺: 大きな流れで言うと、いわゆる研究科懇談会、そういう正規の院生と執行部との定期的な意見交換の場があって――その場では研究科の研究教育全般についていろんな問題を検討して、議事録は未定稿という形で残していこうというしきたりになっている――その中でしばしばハラスメントとその周辺にかかわるような問題提起があったのだと思います。また、僕が研究科発足の2003年から3年間研究科長をやってきた間に、ハラスメントに関わる問題がさまざまな形で研究科長に報告されるという事態があったと思います。
2005年・2006年がたしか大学院GPの実施の年でした。その当時は、発足2年で3年時入学がなかったんです。学部卒の院生たちがメインで、そこそこ定員も充足していて、そういう点では、スムーズな発足をしたんですね。けれども、3年目になって大学院GPが採択されて、大学からの予算以外のエクストラの予算も使えるということになり、学卒で入ってきた人たちも今度3年になるという時点で当然いろんな意見、不満も蓄積してきていて、いつどこで何がおこっても不思議ではないようなテンションというのがなんとなく充満しているという状況に思えた。それで、いろんな意味でこのまま放置しておくわけにはいかないというのが、2005年の前期のことだった。年をまたいで2006年、かなりあたふたと準備をすすめた。その中で、院生側の要求の最大のポイントであり、争点の一つだったのは、外部にきちんと対応できる窓口をおけということだったと思います。

橋口: 院生会としての最初の問題提起は、2005年前期の研究科懇談会だった。院生会では、先端研教授会に9月に回答を希望したけど叶わず、協議が秋に入って、頻繁に議論したのは年度末が近付いてきて、翌年4月1日から「ガイドライン」と委員会を発足させるためにはどうすればいいか。具体的には、教授会に対する提案内容の検討と提案されたものを返す検討の往復作業で、来年度から実施するにはこのテンポでやっていかないといけない、と話しながらやっていた記憶があります。

渡辺: かなり詰めた議論は、年が明けてから始めたと思います。つまり具体的にガイドラインみたいなものを作ろうと、そのために参考になるのは何だろうとか、そういうレベルでの詰めを始めた。

橋口: それまでは、調査をされていました。京大でハラスメントの具体的なケースに関わって、関連する委員もやられた方にインタビューしたり。

永田: 京大は実際に社会学研究室で事件があったんです(2000年10月に京都大学文学研究科教授のセクシュアル・ハラスメント疑惑がセクシュアル・ハラスメント相談窓口に訴えられた。これを受けて2001年1月11日に設置された「文学部・文学研究科人権問題調査委員会」による調査の結果、2001年6月19日に懲戒処分が決定された)。

渡辺: たとえば具体的に「ガイドライン」を見ますと、「ガイドラインの対象」っていうところから、「禁止される行為」あたりまでは、京大のケースとかを聞いて、あちらに当時すでにあったガイドラインなども資料として集めて、それで、結構ああだこうだ議論をした経緯からできあがったものだという記憶があります。

3.「パートナーシップ」という言葉がなぜ選ばれたか

岩田: パートナーシップ委員という名前は先生の側から出たんですか、それとも院生の側から提案があったんですか?

渡辺: どっちか覚えてないけど院生のあいだでは「パートナーシップ」という名前は欺瞞的だっていう意見がかなり強かったような記憶があります。

橋口: 確かに、委員会の名称について、「ハラスメント」という言葉が良いか、「パートナーシップ」では一連の問題を覆い隠すのではないかと議論になった。最終的に「パートナーシップ」という言葉が使われるようになった理由はいくつかあると思います。一つめは、先端研のありかた、プロジェクト型というところにより適合するものとして。他方で、当初あった具体的なものを括弧に入れて話をしながらも、いつかその括弧を外せるような状況を作っていこうという考えがあったと思います。そういうことを話し合える場、あるいはそういうことを安全に訴えられる場のような体制を作ろうと。しかし、それを話し合うためには、具体的なものを脇に置いて話さないといけないという状況だった。
もう一つは、一研究科の中にとどめて話すのか、大学全体として全体を変えるようなものをめざすのか、だけど後者は難しいようだという話が出ていた。最終的には、現状のように、まずは先端研でということになりましたが、そういった流れのなかで「パートナーシップ」という言葉が選ばれた、と記憶しています。

小宅: 「パートナーシップ」という名前自体については、たぶん、渡辺先生が委員会の話し合いに来て、「わかりました。教授会で言ってきます。また、報告します」という感じで、その後、「教授会でパートナーシップっていうそういう提案があったのでどうですか?」というぐあいに進んだような感じでした。

渡辺: そうでしたっけね。

小宅: 院生も複数参加し、関わっていたので、一人一人いろいろな思いを抱えていると思うのですが、確か私その場で、ちょっと気持ち悪いネーミングじゃないですか、と言いった記憶があります。それに対しては、ちょっと気持ち悪いとは思うんですけど…、というような答えが返ってきた。その時、ネーミングとか組織のことについてはその後の課題になったんですが、細かいところは後から修正するような形で、とにかく始めてみようというところで合意したような。

西: 委員会の名前を付けるにあたって、「ハラスメント委員会」とすると懲罰にまで関わってしまうおそれがあるから、委員会名としては「ハラスメント」という加害者・被害者がはっきりしたような、そういう対立関係ではない別の名前が必要だという空気が、教授会あたりであったように記憶しています。

4.2006年パートナーシップ委員会の最初期の活動――全国的、全学的なセクハラ問題への対応を背景に

渡辺: 某、衣笠の学部の事務長から、――僕の解釈ですけど、なんでこんな余計なことするんだみたいな口調で――先端研ではこういうもの(パートナーシップ委員会)を設けたそうですがいったい意図は何ですか、という連絡を受けたことを覚えています。まだ、当時はそういう状況でした。参考にしたいと言いたかったのかもしれませんが、そういう口調ではなかったと思います。そのあと全学でこのまま放置できないというので動き始めたのが翌年でした。

橋口: 全学が遅れていたということは、ちょうど先端研のなかで、「ガイドライン」やパートナーシップ委員会を作らなければいけないというふうにやっていた年明けから年度末にかけて、そのあとも院協と大学との話し合いを横目に見ながら感じていたことです。教員の方々は、どうしても、人事権としての懲罰という話になるところが非常に気になったようで。ガイドラインを設置したら、自分たちの身が危うくなるというふうに頭がいっちゃうんですよね。でもその時に、院協で議論の中心となっていた友人と、被害者が求めていることは、元通り普通の研究ができるような状態にしてほしいということであり、加害者を罰してほしいとか、報復したいとか、そういう気持ちよりも、実は研究環境をまともにして、今後も自分がやりたい研究を続けていけるような状況にしていくことがメインであるはずじゃないかという話をした記憶があります。もちろん一般化はできないですけど。加害・被害関係をやり始めると教授は、態度を硬化させるだろうし――とはいえそこをあいまいにしてしまうのも問題だと思うんだけれども――と同時に、被害にあった人にとっても不本意な形で話が進んでいく可能性がある。先端研のパート?ーシップ委員会の話をしていく時にそこまで意識していたかどうかはわからないのですが、そのあとの全学の議論ではそういう話をした記憶があります。

西: 早稲田大学でスーフリ事件(2003年のスーパーフリー事件)っていうのがあって、それのあたりからうちの大学も慌てはじめた。

松原: まず、前身として、セクハラ委員会(セクシュアル・ハラスメント等防止委員会)っていうのがあったんですよね。

西: セクハラ・ガイドライン(1999年に制定された「セクシュアル・ハラスメント等防止のためのガイド・ライン」)っていうのはあって、窓口(セクシュアル・ハラスメント相談室)もあった。

松原: それは、どこの大学でも結構あった。私、先端研から公務出張でパワハラ、セクハラについての東京の研修会に派遣されました。教授会で報告した覚えがあります。私が、副研究科長になった当時の議論では、実はいわゆるセクハラよりもパワハラが多い、みたいな話をしてたんです。セクハラだけでなく、対象を教員と学生から職員にまで広げ、退職後卒業後の申し出も受け付けるというような、早稲田大学の取り組みが紹介されたりしていました。

岩田: 江原先生も講演をされていたように聞いていますが。

松原: 江原先生に声をかけたのは私なんです。江原さんが首都大学東京で実態調査を始められたと聞いて、私が副研究科長としてパートナーシップ委員になった時に、講演をお願いしました。

西: それが、2006年10月でしょう。

松原: たぶん2006年ごろから、セクハラだけじゃ足りないっていう認識が少しずつできてきたんじゃないですかね、全国的に。

天田: 当時、立命館には「セクシュアル・ハラスメント等防止委員会」という制度があったが、そこでたぶんセクハラには含まれない問題が生じており、そこではセクハラ相談とかメンタルヘルス相談などがそれぞれ並列的・並置的に制度設計されていて、バラバラの対応をしていた。ハラスメント全般を網羅するような仕組みにはなっていなかった。たぶん、そういう提起が院生会の方であったんじゃないですか。
その後、しばらく全学的な動きはなかったんですが、2005年6月に院生会からアカデミック・ハラスメントに関する問題提起が出される。2005年7月には前期の研究科懇談会でアカデミック・ハラスメントとセクシュアル・ハラスメント根絶の要求とそのための提言が提出されて、11月には松原さんが東京の全教連ビルでのセミナーに参加するなどして、後期の研究科懇談会で研究科執行部と院生側によるチーム作業班というのが公募されたということだと思う。
その公募をうけて2005年12月に院生会が作業班メンバーを決定。つまり、院生会とメンバーが多少重複しつつも違うというのは、作業チームを公募しているからです。そして、1月から3月に協議会が全8回なされる。その8回のうちに、2月21日に京大の松田素二さんのところで渡辺さんと北村さんがヒアリングしている。なお、当時、京都大学では全学の人権問題委員会があって、そこは人権委員と同和対策委員とカウンセリング委員、評議委員からなっていたけれども、結局のところ、「外部」をどういう形で取り込むのか、「第三者」をどういう形で取り込むのかっていうのが、非常に重要なファクターであるというような提起がなされたことを受けて、院生から「ガイドライン」の素案が提出された。こういう経緯かと思います。
ちなみに、「院生素案」には主として3つの要求があった。第一に、院生と教員の適正な関係を築くための指針をちゃんと作れということ。第二に、外部・第三者をちゃんと組み込むということ。特に、先端研にいる教員と利害関係がなく、カウンセリングが実施できて、アカデミックの諸問題に精通し関連する知識がある、そういう方を第三者として招聘することを求めるというような提起があった。第三に、行動規範に対する院生の意見で、すべきことと、すべきではないことっていうのが十数項目並んで、ちゃんとゼミを開けとか、必要な推薦書を書かないとはとんでもないことだとかそういう具体的な話があって、設計されていると思います。
そのあとの10月に江原さんを呼んで講演企画を行っている。そういう流れです。結局、全学的には1年半後の2007年の6月20日にハラスメント防止に関する規程ができて、2007年7月1日に全学のハラスメント防止委員会が設置された。つまり、1年半前倒しに2005年くらいの全学的な状況を受けて、先端研の教員であればいろんな応答をしてくれるだろうという流れの中で作業チームが編成されてということだと思う。
ただ、当時院生会の中でどういう議論があって、どういうやりとりや認識があって、この問題が提起されたのかっていうのが各種資料から追えなかった。そのあたり、院生の中での問題認識っていう観点からはどうだったのですか。

5.当時の院生の問題意識・その1 セクハラ相談窓口の機能不全、第三者機関の必要性――全学的な院生の問題意識を大学側に通す突破口として期待された先端研教授会

天田: たとえば、その時のセクシュアル・ハラスメント等防止委員会は、セクハラ相談とメンタルヘルス相談が並列的・並置的な位置づけなんですよ。どういう制度設計だったのですか。

橋口: 制度設計について詳しくは覚えてないのですけど、つまり結局、学内者が受けるんですよ。確か、教授だったと思います。その時点で、それじゃ実際にはいけないよねと。

天田: 今も相談を学内教職員が受ける形になっています。

橋口: 第三者を入れる必要があるという問題意識は、その当時もあった。それは、院生会でフォーマルに話した記憶がありますし、その周辺でもインフォーマルな形で問題意識を共有していたという記憶はあります。相談窓口ができたって聞いても、そこは結局通らなかったという印象がありました。先端研の中だけではなく他の研究科でも、問題が起こっているけれども結局相談できずに泣き寝入りしているという話も実際に聞いていたので。

西: 全学での動きっていうのは、先端研がそういうパートナーシップ委員会というのを作ろうと画策している動きというのもあったと思うんですけど、実際に具体的な事例は――これは、公表されていることなので言ってもいいかなという気もするんですけど――2005年あたりにあったんですよ。先端研に関して言うと、どうもそういう危うい事例ことが少しあるらしいということを院生からも聞いて、それで動きだしたんじゃないのかなと思うんです。院生側としては、その枠組みを、たとえば相談窓口を大学に作ってもらうための通過点として、先端研の教授会を動かしたいという、そういう意図があったのではないですか。

小宅: 2003年から2005年にかけて所属していた同じ独立研究科の応用人間学研究科で、何年だったか忘れましたけど、教員の方が確かセクハラでやめておられるんですね。それは2003年入学の私が在籍してる時も問題として結構有名で、実際見聞きもしてたんです。セクハラの相談窓口は機能していなかったですね、結局。機能していなかったからあっても意味がないなというところで。

6.院生の問題意識・その2 研究にとって副次的な「仕事」の受けとめ方

橋口: 院生の仕事の振り方、つまり教員が何かをやる時、たとえばカンファレンスとかシンポジウムとか、その仕事をどう院生がやるかということも、その時期にはすごく議論していた。

西: 僕が研究科長になった2006年度にも、研究科懇談会等で、その話をメインに議論した気がします。謝金を払う払わないとかね。いろんなケースがあるから。

渡辺: そういう問題意識も前からあったと思います。初年度なんか、記念行事が立て続けにあったしね。まず最初、春かな、アマルティア・センさんに来てもらって、全学的な行事ですよね、名誉教授号授与などもあって、そのあとの懇親会に院生も参加するしないということがあったし。秋には、ワイズマン映画の上映会などもあって、ずいぶん手伝っていただいたし。

A: おそらくかつての徒弟制度的な大学教員との、大学院の研究室の中での関係の中ではかなり無償労働的に行われてきたものを見直して、そこにある種の有償的なものをつけていかないといけないんじゃないかという話し合いはしていたと思う。それは、教員の間でもおそらく議論されていたと思うし、院生の間でも議論になっていたんです。今考えると、そういう部分が積もり積もった上でのところももちろんあるという気はします。ただ、今となってはかなり有償化があたりまえになるところまで進んだので、ここ2〜3年のあいだの変化については、私としてはちょっとびっくりしているところなんです。

橋口: お金をつけないなら、つけないでわかりやすいじゃないですか。これも修行なのかなと。つけようという意識を先生ももっておられたけど、自分は無償でいいと思ってやっている人、自分の研究テーマとは関係ないけどお金がつくのならと思ってやる人、いろんな人がいる。そうすると、この額ではちょっと過剰だ、とかいう話がでてくる。研究テーマに関係あるからやっているけれども、やっていることは雑務にすぎないし、発表できないなら業績に反映されることにもならない、というので不満を持つ人もいれば、そんなもんでしょと思ってやる人もいる。いろんな立場があってそれをどう調整するかって問題は、院生会でもそうだったし、研究科のいろんな局面で出てきたと思うんです。そういうことを含めると「パートナーシップ」っていう言い方は妥当かもしれないなという雰囲気はあった。

7.プロジェクト型大学院の制度設計

天田: ガイドラインの行動指針の素案には「教員・研究科の義務」や「教育機会の平等の保障「プロジェクト遂行のための配慮」など、かなり細かく書かれています。もともと、ガイドラインの「院生素案」が提案されていく背景には、プロジェクトを運営する段階におけるお金の問題がある。院生が働く分はきちっとお金をつけろという部分と、同時に指導の部分を要求していくわけですよね。ここは難しい部分を孕んでいます。国際カンファレンスの運営などはお金が出る仕事なのか、それともプロジェクト型大学院での教育の一環なのかといったこともある。この研究科のすごく大きな特徴を反映して、各種のプロジェクトが同時に動いていて、そこに様々な院生が関わっていて、お金がついたり、つかなかったり、あるいは、論文の指導というよりはプロジェクトの遂行が院生からすればメインに映ってしまったりと、そういう認識があったからこそ、こういう「素案」の提案になったのかなと思って聞いていた。2007年にグローバルCOEに「生存学」創成拠点が採択されて以降は、ほとんどのプロジェクトの運営に何らかのお金がつくようになったので、そうしたバラつきのなどは顕在化しないで済んできましたが、本質的にはプロジェクト型固有の難しさがあったようにも思いますが。

橋口: 結局、「プロジェクト型大学院」がどうだったのかという問題はあるわけですね。それは現時点もそうですけど。「オンザジョブ・トレーニング」(以下、「OJT」)の中身と、現に回ってきた企画、プロジェクト、カンファレンスとが微妙に違うと。この場合、カンファレンスとか具体的にあったことを念頭にいれつつ、今後起こるであろうという、こういう研究科の目指すところだったら起こるであろうということの全体が「プロジェクト型」という定義の裏に含意されていた。

西: 2005年の「プロジェクト演習」の開講以外にも先端研ではいくつもの大きなイベントがあったりして、そこに院生たちがいろんな形、つまり、発表するとか、裏方をやるとか、いろんな形で動員されて、それが先端研のキャッチフレーズでもあった「OJT」という形であるかのようにみえるという状況はすでに存在していて。その中で今後起こりうる教員と院生間のトラブルを意識して「プロジェクト推進のための配慮」という文言が書き込まれたのだと思うんです。そのあと、僕と松原さんが執行部を預かるようになった段階で、「プロジェクト演習」の内実についてきちんと整理しろと院生から突き付けられている気が僕はしていたんです。
グローバルCOE〈生存学〉創成拠点はまだ始まっていませんでしたけれども、大学院GPでお金を取っていたりしていましたし、大型科研費をとっている先生もいれば、科研費とっていない先生もいた。そういう様々な外部ファンド、内部ファンドが混在するような状況で、12人の教員が「プロジェクト演習」の4科目を開講するという状況になっていたので、院生の中には、所属する領域によってのアンバランス、ついている先生の懐具合のアンバランスの中でいろんな不安も、「OJT」のJ(ジョブ)というのが有給なのか無給なのか非常に無分明だったという意識もたぶんあったと思う。
そういうところが2006年以降の持ち越しの課題になって、ハラスメントの話は、1年ぐらいの間をおいて全学で動いてくれたので先端研として特に何かしなければという動きではなくなってきた。「プロジェクト演習」の「OJT」の問題は、たぶん今でもまだ引きずっていると思うし、ここ数年では新しい問題として、いろんな形でプロジェクトに関わるはずの人間が、プロジェクトに関らず一人で勉強しろという風な使命を受けて学振の研究員になってしまったりしているという問題が浮上してきた。「プロジェクト演習」をどうにかしろというような追及も、院生会から最近先端研の執行部に向けてはもはやなされていない感じがしますけども。

天田: 2007年以降はグローバルCOEに院生や修了生が関わるようになったし、それこそ青木さんのように立命館大学衣笠総合研究機構の研究員として関わるようなケースもあって、外部から来る人たちも様々関わってくるようになった。「ガイドライン」が書かれるに至った文脈と、今の文脈とはかなり制度的に異なるし、その中のプロジェクト全体のサイズや運用の仕方が変わっているので、新しい設計思想が必要かなと個人的には思います。

松原: 後期課程相当の院生が出てきたばかりの頃で、公募研究会企画とかもなかった。それは、もともとあるべきものだったので、西さんと私が執行部の時に発足させました。それまでは、院生主導のプロジェクトを支援する仕組みがなかったんですよね。働き方についての院生間の受け止め方の違いとかいろいろあったと聞いているので、それについての院生側の落とし所として、「プロジェクト遂行のための配慮」というような項目が入ったと理解しています。その後、グローバルCOEを経て、プロジェクトの構成がいろいろと多様化した今、どう再定義するかという検討は必要でしょう。

(休憩 10分)

8.パートナーシップ委員会は、キャンパス・ハラスメントを根本的になくすことを積極的に考える場にはならないか?

濱本: 先ほどまでは過去の話をしましたが、これからは青木さん、箱田さんにも議論に加わっていただいて、他大学での取り組みとも関連づけながら、これからの話をしたいと思っています。

箱田: 京都大学にいた時にいわゆる「矢野事件」(1993)がクローズアップされていました。この事件をきっかけに、京大ではセクシュアル・ハラスメントについていろいろな取り組みがなされていました。主体は学生と教職員有志ですね。
江原さんの2006年の講演にも出てきますが、当時上野千鶴子さんたちが『キャンパス性差別事情』(1997)を出した。表紙の赤い本です。その中では矢野事件ももちろんですが、具体的に大学名があがってハラスメントの例が出ていた。学部生だったから、今ほどにリアリティはなかったけど、紹介された事例についての記憶は鮮明にあります。先端研のガイドラインでは、セクシュアル・ハラスメントとアカデミック・ハラスメントとを足して、全部でキャンパス・ハラスメントと定義されていますけれども、当時の印象では、セクシュアル・ハラスメントとアカデミック・ハラスメントは一体という感じがあった。アカデミック・ハラスメントはそもそも、大学の中の構造が性差別的だという話から来ていたという理解です。関連して、こちらでも講演をされた御輿久美子さんが奈良県立医大で裁判闘争をしていたときのことも思い出しました。僕は支援側で裁判を見ていたのですが、やはり御輿さんは女性だから被害に遭ったのだと感じましたので。もちろんそこには、教授を頂点とする講座制の問題もあったし、医学部独自の問題――基礎系の研究者と医者の研究者との間の差別――もありました。江原さんの講演にも何回も出てきますが、問題解決にはとても時間も労力も掛かる。提訴したからといっていやがらせが止まるとは限?ません。また提訴することで「敵」も増えます。御輿さんはよく最後まで裁判をされたなと思いました。
自分が神戸大にいたときのことですが、全学の話には関わっていないし、院生会もあまり機能してはいなかった。ただ個人的に相談というか話を聞くことは複数ありました。その中で思ったのは、内部だけで問題を解決するのがすごく難しいということでした。たとえばある教員について僕が持つ印象と、話をしてくれる相手が、その教員に応対されたときの持つ印象がまったく違うといったことです。
次に先端研についてです。「プロジェクト型」というスタイルは、僕は院生としてここにいなかったから評価が難しいのだけれども、教員が院生に対してテーマを指定する、博士論文の研究はこういう風にやった方がいいのではという形で方針を示すことの難しさはあると思いました。仮にある院生がいて、その人には客観的に見て、研究能力も語学能力もあるとする。その院生のやりたいことをうまく勘案してテーマを設定するとはできそうなのに、それをしない教員がいる。少なくとも、していないというふうに僕らには見える。だけれども、教員からすればそれは配慮があってのことだと。だけどその「意図」がわからない。なにか違うというズレを感じたときにどうすればよいのか――それは、ハラスメントではないけれども、すごく難しい問題だなと思いました。
関連して「キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン」についてです。「防止」するとありますが、起こらないようにするためには、そもそもどうしたらいいのかを積極的に考えた方がいいと思います。ガイドラインには、順に研究科の「義務」、「保障」、「配慮」という形でポジティブに書いてありますけども、その実現のためにどういうことが必要かということを、具体的に話し合う場が――それがパートナーシップ委員会なのかもしれませんが――ある方がいいのではという印象を受けます。禁止される行為が13項目ありますが、ガイドラインを作ることが懲罰的な意味にしかならないのなら、意味がないと感じます。

青木: 問題の発生を防止するというふうにおっしゃるけど、一般的な観点からすると、問題として構築されるから問題なんですよね。だから、問題として構築されるプロセスをどう考えるのかというところを論点にしていかないと、これから厳しくなるのではないかと思います。私自身も阪大に小さい子供を抱えて入ったので随分いろんな思いをしたのですが、やはり学問の何を守ろうとしているのかということを明らかにしておかなければいけないかなと思うんですよ。そもそも日本で学問とされているものが輸入された枠組みで、どう考えても男性中心主義的な枠組みで作られていて、それでうまく回っているものもあるし、高水準で維持されるものもあると思うんですけど、少なくとも先端研はそういうのを崩そうとしているように見える。でもそうすると、学問的慣習が崩れていってしまう部分で、たぶん――そこから何を想定するか、何をあるべきものとするかということの掛け違えから――いろんなことが問題として語られはじめてしまうと思う。これは先端研に限らず、阪大にいるときから、障害学生支援室で学べなかった人が学べる環境を作ろうとしてきた中で思っていたことですけど、学問はどこに行くのか、何を?れから学問の水準にしていくのかというところは、ぜひ、いま学問を支えている先生方のご意見を聞いてみたいなと思いました。

9.阪大と立命のハラスメント対策に係るそれぞれの状況にみる異同――委員会設立の発想/教員と学生の対話

青木: 私がいた大阪大学は講座制を守っているところだったので、院生に「人権がない」のは当然のことでした。大阪大学には、就職相談室と生活相談室と障害学生支援室という3つの相談窓口があったけれど、アカハラ相談室は去年やっと出来たところです。私がいる間は、周りでだいぶせっぱつまった人もいたけれど、そこのところは仲間内で苦労を共有するしかないという状況でしたね。セクハラ相談担当の人が生活相談室のところに週に1回ぐらいは来ていたのですけど、アカハラ窓口はなかった。私は、相談窓口3つのうち、障害学生支援室でスタッフをしていたので、ハラスメント対策に関しては内部の委員会に入る中でいろいろ聞いてはいました。
これはあくまでも私の印象ですが、阪大では、学生の権利を守るというよりは、大阪大学という組織にとってのリスクをどうマネジメントするのかという文脈で語られているように感じていました。たとえば、発達障害のある学生が裁判を起こすということが起きた。発達障害だということがわからなくて指導教官の先生も本人としては努力しておられたんですけど、こじれにこじれて学生が外部の相談機関に相談して、結局裁判を起こすということがあって、そういうことがあったので、障害学生支援室はちゃんとやってくださいということで、お金も大分つくことになったと思う。阪大では障害学生に予算がたくさんついているという話を聞いた方もいらっしゃるかも知れないけれども、背景にはそういう経緯もあったと思います。
ところで、立命館の場合は先生と学生さんとの間の対話が成立しているところがすごいですよね。たとえば、阪大では障害学生と教員の間で対話が成立するように仲裁するような役割を支援室が負っていたけれど、去年ここにきて、特に先端研の先生が学生の側について支援室と喧嘩しているのをみて、すごく先進的な取り組みをしていらっしゃるなと思いました。

松原: 立命の場合もハラスメント防止委員会発足の経緯にはリスク・マネジメントという発想があった。大型研究ファンドの不正使用が内部告発のリークという形で出てきたという大きな出来事をきっかけに、そのようなことを、事前に学内でキャッチしておこうということだったと思います。私が執行部の時に全学的なハラスメント委員会を作るにあたって、いろいろな原案が出たんだけれども、最初はあまりにも通報窓口的な性格付けが強かったので、それを牽制する意見を言ったような覚えがあります。

10.パートナーシップ委員会の設計がもっていた特有の文脈/お金の問題――院生のニーズとそれへの教員による関わり方の形の調整

青木: 院生の「仕事」にお金が出るか出ないかという話については、ずいぶん贅沢な悩みを問題にしているんだなと思った。お金がつくのはいいことですし、それでちゃんと動くならいいですけど。この5年間はCOEでお金があって、お金があったから問題じゃなかったことが、来年から問題になってくるかもしれないと思うと怖いなと思ったりしました。

天田: パートナーシップ委員会の設計というのはある特有の文脈をもっていたわけですよ。先端研が始まり、プロジェクト型教育をやろうとしていたとき、院生ごとに各種の企画で働く/働かないや、ある科研費等からバイトをもらえる/もらえないといったばらつきがあって、かつ全学的な文脈の中でハラスメントが問題化され、その中でこうしたパートナーシップ委員会ができたわけですよね。それ以降、グローバルCOEが走り出したので、その資金をあてがうことで、大小様々なプロジェクトの運営に関わるお金の部分の問題は、あまり顕在化してこなかったともいえる。

箱田: 全部お金の配分の問題になっている気がして、違和感がないわけではない。例えば僕は、人類学のように遠隔地に何度も調査に行くようなことなかったから、そういう意味ではどこかの先生の科研の関係でお金をもらう必要はありませんでした。もらう人がいたらもらったらいいと思いますけど、調査・研究のスタイルによって、一人一人のニーズは違ってきます。その中での「平等」をどう考えておられるのかがよくわかりません。

天田: その人の研究に必要な、そこそこ研究が出来て、そこそこ生活が出来てっていうところで現実的には運用してきたと思います。それは、それでいいんですよ。

11.議論が手薄になっていた、PDの立場

天田: 現在の生存学PDや衣笠総合研究機構PDの方々は、教育・研究の上で密接に先端研の教員・院生に関わりながらも、雇用の形では衣笠総合研究機構に所属しており、先端研のパートナーシップ委員会に参加することもないし、かといって研究科懇談会のような形で意見集約する場にもコミットできないわけですよね。個々の間で対話があるといっても、院生と教員の中での対話の流儀に従わざるを得ない形がために、ある種の不安定なというか、立場上どうコミットしていいのかわからないような中で関わっていくことの難しさみたいなのがあるのかと思ったんです。これは、先端研修了生が研究指導助手になる場合にも言えるかも知れない。ただし、彼らの場合、プロジェクトの関わりとか今までの文脈がわかっているから、このあたりでアルバイト代も出るし、本人たちも矛を納めるだろうなみたいな勘が働くけれど、そうじゃない人たちにとっては、結構ヘビーな場面もあるのかなと思っています。そういう意味では、パートナーシップ委員会っていうのは個別の研究科レベルでの仕組みとしては有効なんだけれども、2007年以降のプロジェクト型大学院 の、先端研出身者でない外部の人を巻き込む大きな枠組みへの展開に即す形での、制度の再設計が必要なのかなというふうに思っています。

西: PDってほんと不思議な位置ですよね。受け入れ教員からすれば、学生・院生の延長だし、他の院生に対しては準教員的な、あるいは、事務スタッフみたいな扱いになるから微妙だろうなと思う。

天田: 特に他のところの研究員やPDの場合、指導教員とたまに顔をあわせてとか、ちょっと先生の企画にコミットしてみたいなことですめば、それはそれでまだわかりやすい設計なんですけれども、先端研のようにプロジェクト型大学院で運用せざるを得ない場合は、教員とPDとの関係というよりは、その教員の指導している院生などとも関わらざるを得なかったりする。そこは全学的なスキームでは、ある意味では、何かあったらお二人も立命館学園の構成員ですから、ハラスメント防止委員会にいけという話になりますけれども。ただ、中間の――いわゆる教育システムの中で教員とうまく折り合いをつけることによって調整をするとか――仕掛けというか仕組みが現在のPDなどの人たちには働きにくくなっている、そういう環境にあるんだろうなと思います。

西: 10年前だったらいわゆる助手がそれに近い立場にあって、助手は助手でどこの大学でもそうだったと思うけれども、助手会みたいなのを作ってましたよ。

天田: 3年ないしは5年そこそこの安定した任期の助手の人たちの雇用というのは、助手会を作って意見も言えて、直接、各学部に対して主張したりすると同時に、全学にも助手会として要求できた。PDって、そういう意味ではいろんなところから集まってきていて、組織的な結集力もないし、非常に大変だろうなと思う。

橋口: 環境配慮義務みたいな、雇用主が働いている人に関しての就労環境をきちんとしないといけない義務みたいなのが、PDに対しても当てはまる可能性がある。だけど、院生の場合はそういう関係性がない。裁判にしても難しい場合が結構ある。指導の中で教員が与えるテーマが自分の思惑と違ったときに、それで何か不利益が生じたということで訴えられるかといったらそれは難しい。そういう意味でPDと院生とは違うと思う。だけども、もともとのパートナーシップ委員会の「ガイドライン」としては、アクターとしてPDというのは入ってなかったのでそれをどう組み込んでいくか、先々のことを話し合う流れじゃなかったのかなと思う。

天田: 環境配慮義務は当然立命館大学が法人としてやらなければいけないけれども、その中身にみる細かな部分でPDというのは、――受け入れ教員との指導と雇用の関係が重複するじゃないですか――微妙な立場にいるんですよ。たとえば、受け入れ教員が、指導上何らかのプロジェクトに関わるのは必要であるという判断をした時に、単に雇用関係における環境配慮義務以上の環境設定を当然求められるわけじゃないですか。それについて、PDはなかなか主張しにくい、あるいは交渉の場所にたちにくい、構造的な形になっているかなと思います。

橋口: 単純に雇用関係ではなく、実的な枠組みの中にPDなり、修了生として入っていくこと。その周辺にいる人たちもアクターとして想定しておいたほうがいい、という方向性は理解できる。

永田: 基本的に「ガイドライン」を作った時って、PDとかそういう中間的な立場は想定されていなかったと思うんです。今のパートナーシップ委員会の方々は、院生の立場から、そのことについてどういうふうな問題意識を持ってるかを知りたい。パートナーシップ委員会を最初にやらせてもらった人間からすると、現役で入った院生が少なくて院生会を回すのも大変だという現状もよくわかるんですけど、ハラスメントという問題に対しても外野から見ている限りでは、そこまで頭が回っていないのかなという印象を最近受けるんですよ。僕は、生存学PDを2009年にやって、その後に2010年と今年度は研究指導助手っていうポジションにいるんですけれども、この間、院生に対する発言はかなり抑えているんです。訴えられるかもしれへんし、正直言ってびくびくしているんです。その辺をシステムに入れていただいた方がこちらとしてもいろいろやりやすいというのはあります。そしてまた、大学のキャンパス・ハラスメント委員会の方に、PDの存在を想定していて欲しいと思っている。

松原: PDは全学的な枠組みの中に入っている。その枠組みは職員とか退職した人までも含めたような想定で作っている。また、そもそも最初のスキャンダルが卒業生に対する研究費・給与の支払いの関係で起こったのだから。それと先端研のパートナーシップ体制がどうかは、別の話です。

吉野: TAの働く権利の保障、安全に仕事をする保証というのは、PDを積極的に置いておく形での言及にまでは踏み込んでいなかったと思いますし。PDのおかれている状況で、そこにまつわる固有の問題は全学的には、まだまだきちんと位置づけられていないということはご心配される通りというか。全学のハラスメントガイドラインも、2007年の7月の段階で隠せなくって停職者がでてしまってバタバタしたし、TAのガイドラインだって、暴行事件があったからバタバタして作った訳だし。さっき箱田さんがおっしゃったように、予防するという観点はない。事が起こってからじゃないと変わらないと思う。

箱田: たしかにPDは院生に対して気を遣いますね。着任したばかりの時のことでしたが、たしか天田先生でしたか、PDに研究指導はできないから、できるのは研究指導上の助言であるとおっしゃっていたと思います。

天田: ある意味では、研究科としてPDとか研究指導助手をプロテクトする必要があるよね。指導責任は基本的に教員が負うというイメージのために伝えたんです。

西: PDに関しては受け入れ教員によって全く扱いが違うんですよね。そこが、問題を難しくしていて、PDがお互い同士で話し合うと、あまりに自分たちの置かれている立場が違うので、愕然とするでしょう。それは、解決すべきなのか、このままほっとくべきなのかというのは、この場で話す議論じゃないけれども、やっぱり考えておく必要がある。

天田: 先端研に先鋭的に現われている現実ですよね。先生の細々としたプロジェクトだけで運用しているところに入っていくPDと、やや大きめのファンドをとって運用しているところのPDとでは、全然、働き方、動き方、院生との関係形成の仕方、配慮の仕方が違ってきます。

12.パートナーシップ委員会の位置づけの再設定――院生と教員のチャンネルの担保/ハラスメントの予防

岩田: パートナーシップ委員会にどういう可能性があると思われますか。

箱田: パートナーシップ委員会はあった方がいいと思います。院生会と教員という1個のチャンネルしかないよりは、複数のチャンネルで見方を変えて協議した方がよい。PDなどもパートナーシップ委員会に加わるべきではないでしょうか。

天田: より重要なこととして、研究科懇談会とか各種のパブリックな場以外でもいろんな集約ができるわけですよ。そうすると、この院生とこのPDは険悪な雰囲気だとかいうと、なんとなく教員も察知してそこで何らかの予防的介入ができるわけです。だけど、それ以外のカードを衣笠PDは持っていない。研究指導助手も持ってないんだと思う。そうすると、最悪の事態になった時に、何らかの対応(限定された最終手段)――それは、構成員だからできるんだけど――しかない。そういう意味ではチャンネルとしてのパートナーシップ委員会の位置づけを、正確に言うと、2006年以降のプロジェクト型大学院の展開 以降の設計に即して再設定する必要がある。もうひとつ、それを教育システムの中にどうビルトインするか、予防的な側面も含めてどう組み込むのか問われているというふうに思います。いままでは、特に複数指導体制でやってきているのでそのあたりの隙間みたいなものを、教員・PD・院生がそれなりに相互に信頼しあってうまくやってきた側面もありますけれども、制度にうまく反映される形の方が望ましいと思います。

橋口: こういうことをしてはいけません、というのを無視する人もいるんだよね。そんなの知ったこっちゃないと。自分の指導であり、そこは聖域だと言う風に、思う人はいる。そういう意味では、予防にはつながらない。ただ、研究科が公式に発表していることであれば、責任を問いやすくなると思うんですよね。ここにこう書いてあるじゃないかと、それを守らない人をなんで雇うんだと。そういう意味では、一定の予防にはなると思います。

13.パートナーシップ委員会はハラスメント問題の予防のために機能しきてきたといえるか否か

橋口: 起こってしまってからでは遅いという言い方は、違うと思います。というのも、たいていの場合、起こった後の対応の仕方から問題が深まって行くから。たとえば、隠蔽するとか、リスクマネジメント的に振る舞ってしまう、相談を受けた人が二次的な加害をしてしまう、など。もちろん、起こってからその人が起こったと認識されるまでの問題もいっぱいあると思う。とはいえ、起こってしまったあとの対応という意味での第三者が必要であることに変わりはない。起こらないようにするということと、起こった後によりよい対応ができること、両方が必要だと思います。

箱田: 起こってからこういう風に対応するという部分は、現実的に問題が起こった時にあまり役に立たないという印象があります。第三者をいれることは重要で、しなければいけないと思うけれども、それと同じくらい、普段の状況がどうあるべきかという理想があるということも重要なのではないでしょうか。

橋口: そんなに違わないと思うんですが、理想は必要なくて普通であればいいわけです。

渡辺: 予防と、何か起こった時の対処の制度と、その二つが必要で、外部の委員会というのは何か起こった時に必要だってこと?

箱田: 第三者であればきちんと判断できるとは限りません。ひとつの選択肢というか、可能性として、ましになるのではということですよね。

渡辺: 2006年の3月までに作った「ガイドライン」は、はっきりいって先生を抑圧するために作った、予防的なものです。ここに、「するな」と書いてあるから。それで、「する」ことについては、こういう義務があるし、こういう保証をしなければいけないし、こうしなさいと書いてあるんです。ここまでやった上で何か起こるんであれば、それは外部に委員会を設定して、そこに行った時点で内部からのコントロールがきかない形になってないとだめだと思う。
だけど、これを作った目的は、可能な限りはそこまで行かないようにしたいということ。そのために何が今できるかと言ったら、――例えば院生の権利を保障するとかそういうポジティブな言い方をしても実態を伴わないことの方が多いと思うんですね、大学の枠の中で言えば――先生方にこういうことやっちゃいけないよ、やったら問題だよというのが、おそらく一番ポジティブで、実効行的なやりかただろうと考えざるを得なかったわけです。そういう点は、教授会でも多くの先生方がなんでこんなことをするのかという疑問はあったように思うんですけどね。

B: そのような意味で予防的な物を作って、実際に予防できたといえるのですか。

渡辺: 僕は、ある程度は機能したというふうに個人的に思っています。

B: 顕在化した事案はなかったんですか?

渡辺: 少なくともパートナーシップ委員会は定期的にやっていて、院生の側から、明示的にこういう問題が有る、「ガイドライン」に則して解決してやってくれという提起は、僕が聞いている範囲ではなかった。最後に書いてありますけれども、この「ガイドライン」は「教授会承認およびパートナーシップ委員会の発足を条件として発効し」と書いてありますね。その時のパートナーシップ委員会の役割、この「ガイドライン」の実施状況のチェック機関という位置づけは書いてたと思うんで、さっきの答えになるかと。

北村: 当時の文脈としては、まず、先生たちに「これをしてはいけませんよね?」という「共通認識」を確認してもらうことを目的に「ガイドライン」を作った。ぎりぎりまで、「第三者機関の設置」を目指して話し合いを進めてきたので「ガイドライン」に「7.相談室の開設に向けて」があるが、現在も提起された地点まで到達していない。

橋口: 一つには、予算の問題がある。先端研が独自に弁護士とかと契約を結ぶことができない。そういう予算が確保出来ないことがあった。

渡辺: 言われてみればGPの予算を使えないかと検討したこともあったかな。

北村: その点は、当時の限られた状況のなかで、かなり真剣に検討した。

橋口: 厳密な意味でいうと、立命に雇われた弁護士に何か出来るのかとか、そういう話もしたと思う。

14.教員・PD・院生などの間のパートナーシップ構築のための各々の見立てににギャップがあったこと、依然として第三者機関の要請はあること

永田: キャンパス・ハラスメントの全学的な取り組みも、独自の相談室を設置して、そこに相談員を置くところまで行っていないんですよ。結局、相談を受け付けるのは事務の方だったりするんですよね。これが次の懸念なんですが、事務の方も最近は仕事が多いので、その上相談をちゃんと受けられるのかなと思う。守秘義務も発生するし、相談内容は基本的にヘビーじゃないですか。

松原: 全学のハラスメントの委員会というのは、仕組みとしては、各学部に教員と職員の相談窓口がいて、それでどこにいってもいいという名目になっている。だから、ヘビーな物事というのは一般的にはあるんだけど、先端研にいる当事者が先端研の窓口へ相談に行かなければいけないというのはない。それがいいとか悪いとかじゃなく。

吉野: 基本的に、立命の全学のハラスメントガイドラインとしては、いまだに第三者機関を置いてない。こないだ全学協(全学協議会)をごらんになった方はわかるかも知れないけれども、過去の反省を十分に活かして、専任の第三者機関の設置を求めるだとか、研究者の任用を求めるというのが論点として上がってはいるんですけども、大学側は検討すると答えるばかりなので、全学的な動きとしては期待できない。

C: さっきの予算問題も、この前の全学協に出させて頂いて、大学側にたてばそういう懸念は出るだろうなって思った。PS委員会の話へと戻せば、さきの渡辺先生の語り方には、「ガイドライン」で抑止しておいて、第三者機関が必要かどうかを一定期間見定めるというか、そこまでの案件が出たところで具体的に話さなきゃいけないというような想定があったように聞こえた。でも一方で、第三者機関が必要だという話も、これまで出ていることを踏まえれば、院生側の要望としては、「ガイドライン」の実施をチェックする機関というよりも、2006年の時点ですぐに第三者機関を設置しないと、抑止も含めて効果がないんじゃないかという見立てだったのではないか。その両方の見立ての間のギャップを踏まえて今後どうして行くのかを論点にしないといけないのかなと思います。

北村: 院生8名の作業班メンバー内では、「第三者機関は絶対必要」という院生側の譲れない一線を繰り返し確認した。ただ、雇用の問題で実現するのか、微妙だった。GP予算も検討したけど無理だった。あくまでも「第三者機関設置」にこだわると継続協議になり、「ガイドライン」がいつまでも発効できない。院生側としては、「ガイドライン」が発効されないのも困る。そこで「7.相談室の開設に向けて」のなかに「研究科とは利害関係のない、人権擁護に精通した専門家を相談員として配置する」と明記して、2006年3月28日発効でハラスメント防止の第一歩とした。だから、ガイドライン作成に深く関わったメンバーからすれば、現在の「ガイドライン」は第一歩であって、未完成と考えているのでは? また、「ガイドラインの見直しを継続的に検討する」の一文は、まさに今回の「座談会」の成果などを生かしていくことを想定したもの。

天田: 全学的な窓口に対して、先端研としては、第三者機関、第三者がコミットすることの必要性は伝えている。ハラスメント防止委員会にも第三者を入れるように申し入れをしてきています。院生会の方でも要求していると聞いています。あと、例えば、依然、ハラスメント防止委員会からの情報公開の側面が弱い。例えば、毎年度ハラスメントが各研究科ごとで何件あったかとかそういうことは、全然院生には伝わっていない。実は、院生会からその点について要望があるとも聞いています。

吉野: 京都産業大学がすごい専門性の高い第三者機関 (「人権センター・専門相談員」?)を置いています。実際訪れて、連絡方法とかいろいろ聞いたことがあり、今後の検討の材料になるかなと思いました。パートナーシップ委員会、先端研独自の「ガイドライン」があるというのは、ものすごく正しいことだなと思っており、普通の院生で、これやらんでも生きていける人がやってくれたことに敬意をもっています。でも「パートナーシップ」というところで教員との関係が入ってくる先端研の「ガイドライン」ならではの特質とかもあるわけですから、教員の意識、モチベーションとかそういうのもすごく左右してくると思う。

15.「パートナーシップ」はフィクションであるということを踏まえて、今後の課題

渡辺: 「パートナーシップ」という言い方はある種フィクションだったんですね、はっきり言えば。プロジェクト研究では、プロジェクトリーダーと参加する院生は対等だと、だから「パートナー」だと。だからパートナーシップ委員会なんだという、そういうフィクション。そういう考え方に対して、さっきの問題提起というのは、現実にどうやって指導するのかという問題であったし、それからある意味ですごく対照的かもしれないけど、学振の院生が増えてくると予算ももって独立した研究者としてやっていく側面が強くなるわけですから。「パートナー」だというフィクションを用いる必要性もなくなっちゃう。そういうことで今日は問題提起があったのかなと理解しています。

D: 今問題を勘違いしていたのかもしれないので、話をもどしますけれど、「プロジェクト型大学院」だから「パートナーシップ」が必要という話だったんですか。

渡辺: 一般の研究科を想定すれば、まだ基本は、指導教員と指導される院生という論理が前面にでますよね。それを否定しなくても済むというかね。それを否定する上で、――さっきのフィクションという言い方はちょっと強すぎるかもしれないけれども――プロジェクトがベースなのでそのプロジェクトを推進するというレベルでは対等だという論理は成立しやすい。補足すると、研究科を設置するときに、「プロジェクト型」を謳った時に、そうした意味合いを最初から込めていたかというと、別にそうじゃないんですよ。むしろ後付けでね。GPも取っちゃったし、GPのタイトルがね、「プロジェクトを基礎とした人社系研究者養成」というふうに決まったわけで、この論理は使えるんじゃないかという頭が働いたのではないかと、今にすれば思います。

西: GPのお金を使ってこの「ガイドライン」作ったという一面がありますね。

北村: 2005年当時、全国の状況を調べたところ、大分大・院の「イコール・パートナーシップ推進宣言」(「国立大学法人大分大学 イコールパートナーシップ推進宣言」http://www.oita-u.ac.jp/equal-p.html)に基づく「イコール・パートナーシップの推進に関するガイドライン」、「イコール・パートナーシップ委員会」を知った。この委員会は立命館のハラスメント防止委員会に近い。そこから「パートナーシップ」という言葉のヒントを得た。個人的には「パートナーシップ」という言葉にハラスメントを防止するだけでなく、さらに「プロジェクト型大学院」の良いありかた、箱田さんが指摘されたような、単に懲罰的というのではない、もっと積極的なありかたの模索という期待を込めたつもり。それが具体的にどのようなものかは難しいですけど。だからこそ、問題が起こったときの受け皿も必要だということで、最後まで「第三者機関設置」にこだわった。院生8名の作業班メンバーは、常にいろいろな意味での「二正面作戦」を考えていたと思う。

西: 「パートナーシップ」という概念自体虚構だという点については、他にも説明の仕方がある。例えばね、特に博士課程に入るとみなさん学会に入りますよね。学会に入ると、院生であろうが、教員であろうが対等なんです。ただ、学会の場に指導教員として、あるいは指導される院生として行った場合に、「この子」をよろしくお願いしますということもあると思うし、また、学会の中での行動に対してもある程度指導責任を負っているという部分もあって、強制介入というのは、起こりうることとして、教員は常に意識してなきゃいけないわけですね。それはしかし、逆に「パートナーシップ」である以上、教員に対して院生が介入するということも当然ありうると思うんですよ。その介入そのものを最初からすべきでない、「パートナー」である以上口出ししない、なんてこと言ってたら家庭生活なんて営めないわけで、「パートナー」というものと介入可能性というものをね、両立させるような雰囲気を作るということは、すごく重要だと思うので、それは今後の課題にしてもらいたいなという気がします。

天田: 細かなことが絶対起こるんですよ。院生からも教員に言って欲しいし、我々も院生に言いますけれど、他者のリスペクトなくして問題は大きくなるだけです。そうすると最後のカードしか切れなくなる。最終的にどうしようもない事態になって防止委員会にかけつけるみたいな話になってしまうわけです。そしたら、教育なんか困難を余儀なくされますよ。だからこそ、お互いの手前のところでの信頼関係――同僚として教員間、院生間、院生と教員、その他職員も含めて――を前提にした制度設計を考えなきゃいけないし、PDの問題も巻き込んだ新しい展開になってきているというのは、確かだと思います。PS委員会は、それを考えていける場にしたらいいんじゃないですかね。

E: パートナーシップ委員会はここ何年か続いてるんですけども、院生会として、委員会をどうしていきたいというのがあるのかな。濱本君とか岩田さんとかあるのかなと、ちょっと難しい質問かもしれないですけど、お伺いしたいと思っていた。

本岡: このお二人の以前にパートナーシップ委員会を前年度までさせていただいていた本岡です。僕が担当になっていた期間の中で、院生会で議論になった話としては、「ガイドライン」のなかでも、さきほどから話題になっていた、外部機関の設置ですね。これは常々議論にはなっていたんですけれども、パートナーシップ委員会の中身についての議論は、正直、院生会の中で話題になることはなかったというのがぼくの印象です。

濱本: 今年も今のところはない。

F: PDや修了生の枠を作るとか、そういうことについては、今日のお話を伺った中で出てきた課題ということで今後院生会のほうにフィードバックしていきたい。

岩田: まだまだ話は尽きませんが、時間も定刻を過ぎていますので、そろそろパートナーシップ委員会企画「パートナーシップ委員の設計思想とその歩み」を終了させていただきます。皆さん、本日はお忙しい中お集まり頂きまして本当にありがとうございました。また近いうちにどこかでパートナーシップ委員会企画として今回のような「座談会」の形で過去を総括していきたいと思っています。皆さん、長時間にわたり、どうもありがとうございました。



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3.立命館大学大学院先端総合学術研究科
キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン(2006年3月制定)

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/hg/index.htm

0.はじめに
 大学の研究の力量が、大学院に結集した若手研究者、大学院生の鋭い問題意識と多様で自由な発想やそれらの能力にかかっていることは、大学内外の研究者、教育関係者の共通理解である。特に大学院生が研究者として成長していく途上でハラスメント等の人権侵害に煩わされることなく、活き活きと研究に専念できる真に「魅力ある大学院」を構築しえた大学こそが研究の力量を伸ばすことができる。
 立命館大学のセクシュアル・ハラスメントやアカデミック・ハラスメント(以下、キャンパス・ハラスメント)への対策は、全国あるいは世界の標準から見て立ち後れていたが、ようやく全学的なハラスメント対策に向けた制度的な改革の機運が芽生えつつある。
 立命館大学大学院先端総合学術研究科(以下、本研究科)では、本研究科院生会からの問題提起を受け、キャンパス・ハラスメントを議題とする協議会において率直な議論を重ねた。協議会での検討を踏まえ、本研究科はキャンパス・ハラスメント防止ガイドラインを制定する。ハラスメント防止のガイドラインが内実を持つためには、ハラスメントを受けた被害者に対して迅速に対応する相談窓口などの実効性のある機能が必要であり、時には調停あるいは処分等を検討し実行する権限を備えた全学的な組織が確立されなければならない。研究者養成を目指す本研究科は、事の重要さと迅速な制度化の必要性を鑑み、個別研究科レベルでの相談窓口の設立への模索を継続すると同時に、全学的な組織の設置についても提起していく。当面、本ガイドライン作成の場となった協議会の意志を継承する役割も含めて「パートナーシップ委員会」(6.参照)を発足させる。

1.ガイドライン制定の趣旨
 本研究科のすべての構成員は、安全、平等かつ快適な状態で研究、教育、就労ができる権利を有する。すべての構成員とは、教員・職員(いずれも常勤・非常勤を問わない)・院生(本研究科のプロジェクト等に関わりのあるすべての者。以下、「院生」という)である。本研究科はセクシュアル・ハラスメントやアカデミック・ハラスメント等の人権を侵害し、個人の尊厳を損ねる行為を決して容認しない。様々なハラスメントの防止に留まらず、プロジェクトを円滑に推進するための信頼関係の構築を励行する。ここでいうプロジェクトとは、本研究科の研究教育活動の基本形態を指し、狭義の「プロジェクト研究」および、共同で開催されるシンポジウム等の活動を含む。こうした研究教育活動において万一、ハラスメント等が発生した場合に備え、このガイドラインを定める。
 院生には何らかの独創的な視点が認められ、既に教員を含む他者を凌ぐ何かを有するプロジェクト・パートナーである。教員は院生の可能性を謙虚に受け止め、そこから学び、それをより伸ばすという姿勢を保持せねばならない。また、大学職員と良好な関係を形成することは、プロジェクトの推進にとって不可欠であり、院生・教員は大学職員と協力し、本研究科全体が新たな領域を切り開く有機的な教育研究システムとなるよう努力する。
 本研究科は、人文科学と社会科学の刷新と総合を倫理的な原点「核心としての倫理」から、自然科学の成果を受け止め、人文科学と社会科学の刷新と総合をはかり、よりよく生きるための知の再構築を推進することを使命と考えている。それにふさわしい研究環境を整えるために、他人の人格を傷つける言動を行わない決意を表明するとともに、そのような言動を防止するための万全の配慮と不断の努力を行うことを宣言する。

2.研究科の責任と構成員の義務
 本研究科のすべての構成員は、相手の立場を尊重することに努めるとともに、信頼関係を損ない、人としての尊厳を傷つけるハラスメント等を起こさないこと、防止することに努める。本研究科教授会は、ハラスメント等の人権侵害に対して厳しい態度で臨み、快適な研究・教育・職場環境を作る努力を行う。研究科の教学全般に責任を負う研究科長は、ハラスメント等の防止と対策に関する研究科全体の施策全般についても責任を負い、また各テーマ領域責任者等は、具体的な施策や措置の実施について責任を負う。

3.ガイドラインの対象
 1) このガイドラインは、本研究科の構成員のすべてを対象とする。ただし、教員・職員については離職後、院生については、研究科を卒業・退学などで学籍を失った後においても、在職中もしくは在学中にうけた被害についての訴えを申し出ることができる。
 2) このガイドラインは、ハラスメントが本研究科の構成員相互間において問題となる場合には、学内・外、授業中・外、課外活動中・外、勤務時間内・外など、それが起こった場所・時間帯を問わず、適用される。
 3) ハラスメントが、本研究科の構成員と本研究科の構成員以外の者との間において問題となる場合には、当事者間に職務上の利害関係のあるときに限り、このガイドラインを適用する。したがって、教員が大学等の外において行う講演・講義、あるいは、院生のアルバイト先での問題等についても、このガイドラインを適用する。ただし、加害者が研究科の構成員以外の者であるときには、このガイドラインの手続きを準用し、研究科として解決のために必要かつ適当な措置をとるよう努力する。

4.ハラスメントの定義
 ハラスメントとは、性別、社会的身分、人種、国籍、信条、年齢、職業、身体的特徴等の属性あるいは広く人格等に対する言動によって、相手に不利益や不快感を与え、あるいはその尊厳を損なう人権侵害である。アカデミック・ハラスメントおよびセクシュアル・ハラスメントとは、教育上の優越的地位にある者が継続的関係において行う不適切な言動・指導・待遇によって、相手の研究意欲・研究環境を阻害し、あるいはその後の人生においても悪影響を残す人権侵害である。この場合、意に反する他者の人権を侵害する性的言動を伴うものを特にセクシュアル・ハラスメントと言う。これらは、その生起する状況や内容に違いはあるが、何らかの優越的地位に依拠し、権力関係の中で生じるものであり、広義にはパワー・ハラスメントと言える。ハラスメントの認定は、被害者の判断を基準とする。

5.パートナーシップの基礎となる信頼関係
 プロジェクト・パートナーである院生とプロジェクト・リーダーである教員の適正な関係は信頼関係の上に構築される。とりわけ研究活動開始の初期は、信頼関係の構築が重要である。その前提として、ハラスメントの防止とその根絶のための環境づくりが行われなければならない。教員は、院生の言葉を注意深く傾聴し、院生の主題の核心を十分に理解し、発展の可能性及び行き詰まっている点を慎重に判断する。必要に応じて、院生とともに探求を進める姿勢を明確に示すことが基本姿勢となる。具体的に守るべき行動規範は、信頼関係の構築、維持、発展を促す規範である。大別すると、教員・研究科が積極的にすべき義務と絶対にしてはならない禁止行為がある。

 1)教員・研究科の義務
院生の能力向上への寄与
 1.必要に応じた院生への助言指導を行う。
 2.適切な文献、学会、研究会、雑誌媒体等の紹介をする。
 3.院生に必要な推薦書の作成をする。
 4.院生が研究成果を発表する適切な機会を保障し、その能力向上の支援を行う。

教育機会の平等の保障
 5.日本語を第一言語としない院生には、特にその必要に応じた配慮を行う。
 6.遠隔地に居住する、長時間働いているなどで大学にあまり来ることができない院生には、メールなどの通信手段を使って、充分な指導の機会を保障する。
 7.障害を持つ院生には、必要な配慮のもとに指導を行う。
 8.演習、予備演習、研究科内の良好な人間関係を保つよう寄与する。

プロジェクト遂行のための配慮
 9.プロジェクトの計画実践を通して院生の能力向上に寄与し、そのための必要な配慮を行う。
 10.教員への助言・資料提供、プロジェクトへの貢献をした院生の名前を公的に明示する。
 11.プロジェクト等の遂行には、院生に事前事後の充分な説明を行い、必要に応じて計画を変更する。
 12.万一、プロジェクト等の遂行に何らかの問題を生じた場合には、院生の努力を無駄にしないよう、必要に応じてプロジェクト等の軌道修正を行う。

研究科全体に関わること
 13.論文審査や講義の評価の透明性を保ち、院生からの異議申し立てを真摯に受け付ける。
 14.プロジェクト推進にあたって、研究科に必要な制度やシステムの整備を行う。

 2)禁止される行為
 以下の具体例は「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」資料などを参考にしている。
1.学習・研究活動妨害(研究教育機関における正当な活動を直接的・間接的に妨害すること、何らかの契約不履行)
 例)学会などへの出張を正当な理由無く許可しない/プロジェクト等の遂行に十分な事前事後説明を行わず、結果として研究時間を奪う、など
2.卒業・修了・進級妨害(院生の進級・卒業・修了を正当な理由無く認めない、正当な理由無く単位を与えない)
 例)理由を示さず単位を与えない、など
3.選択権の侵害(就職・進学の妨害、望まない異動の強要など)
 例)本人の希望に反する学習・研究計画や研究テーマを押しつける、など
4.指導義務の放棄、指導上の差別(教員の義務である研究指導や教育を怠ること。また指導下にある院生を差別的に扱うこと)
 例)「放任主義だ」と言いセミナー・ゼミを開かず、研究指導やアドバイスもしない/自分が興味のあるテーマで研究する院生にのみ指導するなどの指導の上で差別がある、など
5.不当な経済的負担の強制(本来研究費から支出すべきものを、院生に負担させる)
6.研究成果の搾取(研究論文の著者を決める国際的なルールを破ること、アイデアの盗用など)
 例)院生のアイデアを使い、こっそり論文・発表をする、など
7.精神的虐待(不適切な発言やメール・相手の主張の不十分な点を揶揄する。本人がその場に居るか否にかかわらず、院生を傷つけるネガティブな言動を行う。発奮させる手段としても不適切)
 例)「ゼミに出る資格がない、出て行け」「厳しく言うのは愛情だ」「女は研究者に向かない」など
8.身体的暴力(殴る・蹴る)
9.誹謗、中傷
 例)職務上知りえた院生の個人情報を他の教員や院生に告げてまわり、結果として大学で当人の居心地を悪くさせる
10.不適切な環境下での指導の強制
 例)指導するからといってホテルの一室に呼びつける
11.優越的地位・権力関係の濫用
 例)日曜に研究室に来ないと留年させるなどの不当な規則の強制/食事に付き合わないと指導しないなどの親密な関係の強要/研究データの捏造・改ざんの強要などの不正・不法行為の強要
12.プライバシー侵害
 例)院生が望んでいないにもかかわらす、恋人のことなど根掘り葉掘り聞く
13.その他
 例)自らの不適切な言動について、言い訳をするだけで改善をしない(被害が深刻になる可能性)/教員同士の個人的な確執による鬱憤を、相手が指導する院生へ不利益を被らせることで晴らそうとする/教員間の権力関係が院生に影響を及ぼす(権力のない教員についた院生への悪影響の可能性)、など

6.パートナーシップ委員会
 1)委員会の設置
 本研究科は、ハラスメントに関する情報の収集および研修、ハラスメントに関する学内外機関との連携、協力等を行うため、「パートナーシップ委員会」(以下「委員会」)を置く。教授会は委員会の意見を尊重する義務を負い、また教授会は委員会の意見について話し合った内容を委員会に対して回答する義務を負う。

 2)委員会の構成
 院生会の代表者2名と教授会の代表者1名および副研究科長の計4名(男女比は1:1となるよう配慮する)が委員会を組織する。なお委員の任期は2年とする
 教授会の代表者は院生の推薦を得た教授会のメンバーを教授会の承認を得て決定する。委員会は必要に応じて大学職員の参加を求める。委員会の判断により必要に応じて外部の専門家への諮問あるいは会議への参加を求めることができる。

 3)委員会の業務
1.人権擁護の意識徹底の活動
 新入生オリエンテーションでの説明(院生会)、リーフレットの作成、研究科構成員すべてを対象とする継続性を持たせた研修(外部専門家の指導)、学生便覧など(必要に応じて大学職員と協力)、カリキュラムの中での人権教育の取り組みの検討(委員会全体)などハラスメントへの問題意識を高める活動を主導する。また全学的な組織および各研究科レベルでの相談窓口の設置へ向けた学内での問題を継続的に行う。
2.ガイドラインの定期的な見直し
 最低半期に1回は、ガイドラインの見直しを継続的に検討する。
3.その他
 院生会の代表者、あるいは教授会の代表者から開催の要請があった場合には、直ちに委員会を開催する。

7.相談室の開設に向けて
 本研究科は、院生が研究を深めうるプロジェクト等への参加を通じた研究者養成を原則とする。プロジェクトの円滑な遂行には、プロジェクト・パートナーである院生とプロジェクト・リーダーである教員との信頼関係の構築、維持、発展が必要である。より良い適正な関係へとしていくために、本研究科はハラスメント等の相談室を設置することを目標とする。相談室の機能の詳細は、今後「パートナーシップ委員会」を中心に詰めの作業を続行する。現時点において、以下を構想している。
 相談室には、研究科とは利害関係のない、人権擁護に精通した専門家を相談員として配置する。相談員はハラスメント等の被害者のすべての過程における主体性、意思を尊重する。守秘義務を遵守し、プライバシーを保護する。また、相談等に関わった人すべてに対する二次被害を防止する。相談員の具体的な業務は、研究科構成員の訴えを聞き受け止めること、被害者の救済方法の整理・確認、被害者のカウンセリング、必要な複数の窓口の照会・選択肢の提示、第三者からの相談の受付等である。相談員以外の教職員も、相談した本人が望んだ場合には受けた相談を相談室に連絡することができる。


 このガイドラインは、2006年3月28日の教授会承認および「パートナーシップ委員会」の発足を条件として発効し、パートナーシップ委員会で継続的な見直しが行われ、その度に更新される。

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活動記録

2005年6月  院生会においてアカデミック・ハラスメントに関する問題提起
2005年7月  前期研究科懇談会において「アカデミック・ハラスメントとセクシャル・ハラスメント
根絶の要求とそのための提言」提出
2005年11月 セミナー「キャンパス風土の構造改革−アカデミック・ハラスメント対策の本格展
開」(東京・全共連ビル会議室)
2005年11月 研究科協議会において研究科執行部と院生側チーム作業班を公募
2005年12月 院生会において作業班メンバー決定
2006年1-3月 ハラスメント問題に関する協議会(全8回)
2006年3月  第1回パートナーシップ委員会(3月29日)
「キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン」作成(2006年3月30日)
2006年10月 06年度パートナーシップ委員会企画
江原由美子氏(東京都立大学・首都大学東京)講演
「キャンパス・ハラスメントとはなにか」(2006年10月27日)
2007年12月 07年度パートナーシップ委員会企画
前田秀敏氏(立命館大学ハラスメント防止委員会事務局長)インタビュー
「立命館大学ハラスメント防止体制について」(2007年12月4日)
2008年3月  2006-07年度パートナーシップ委員会報告書 発行
2009年2月  08年度パートナーシップ委員会企画
御輿久美子氏(奈良県立医科大学医学部教員/
NPO「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」代表理事)
「大学院におけるアカデミック・ハラスメントの現状と対策」(2009年2月27日)
2010年2月  09年度パートナーシップ委員会企画
牟田和恵氏(大阪大学大学院人間科学研究科)
「ジェンダーの視点から見る大学院のハラスメント」(2010年2月25日)
2010年4月  2010年度新入生オリエンテーション
2011年2月  10年度パートナーシップ委員会企画
志磨慶子氏(立命館大学ハラスメント防止委員会事務局長)
「立命館大学ハラスメント防止委員会の活動と大学院のハラスメント」(2011年2月2日)
2011年4月  2011年度新入生オリエンテーション
2011年11月  11年度パートナーシップ委員会企画
渡辺公三氏(立命館大学大学院先端総合学術研究科教員)
小宅理沙氏(IPU環太平洋大学 非常勤講師)
橋口昌治氏(立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー)
箱田徹氏(立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー)
青木千帆子氏(立命館大学立命館グローバルイノベーション研究機構研究員)
「パートナーシップ委員会の設計思想とその歩み」(2011年11月4日)



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関連リンク

■立命館大学ハラスメント防止委員会
  http://www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/jinji/harass/index.html
■立命館大学学外交流倫理基準(1992年3月27日制定)
  http://www.ritsumei.jp/research/pdf/c02-02.pdf
■立命館大学利益相反マネジメント・ポリシー(2004年4月1日適用)
  http://www.ritsumei.jp/research/pdf/c02-03.pdf
■立命館大学研究倫理指針(2007年3月15日制定)
  http://www.ritsumei.jp/research/pdf/c02-01.pdf
■キャンパス・セクシャルハラスメント全国ネットワーク
  http://www.jca.apc.org/shoc/
■国立大学における男女共同参画を推進するために 国立大学協会
  http://www.zendaikyo.or.jp/daigaku/000519kokudaikyo.htm
■セクハラ・パワハラ問題ドットネット
  http://s-p.web.infoseek.co.jp/newpage20.html
■アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク
  http://www.naah.jp/

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奥付

立命館大学大学院 先端総合学術研究科
パートナーシップ委員会 報告書
2010.4-2012.3

立命館大学大学大学院 先端総合学術研究科
パートナーシップ委員会
(2012年3月31日発行)

編集・発行 立命館大学大学院 先端総合学術研究科
パートナーシップ委員会
連絡先   〒603-8577 京都市北区等持院北町56-1
      独立研究科事務室 先端総合学術研究科気付
      立命館大学大学院 先端総合学術研究科
パートナーシップ委員会
      TEL:075-465-8348 FAX:075-465-8364
      E-mail:doku-ken@st.ritsumei.ac.jp(@→@)

*作成:岩田 京子 UP: 20120406 REV: 20120720
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