Ritsumeikan 立命館大学大学院 先端総合学術研究科
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Graduate School of CoreEthics and Frontier Sciences
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WORKS 松原洋子

著書学術論文その他

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著書、学術論文等の名称 単著、共著の別 発行又は発表の年月 発行所、発表雑誌等又は発表学会等の名称 概 要
(著書)
1.生物の科学 共著 平成3年1月 関東出版社 性差論と脳の性分化研究の関係、性分化の生物学的意味、ヒトの性分化の過程、性ホルモン分泌と脳の性、性周期と脳の性分化、性行動と脳の性分化について、ジェンダーとセックスの関係に顧慮しながら論述したもの。生物学的性差の研究には、ジェンダー・システムが顕著に反映する傾向があるため、心理や行動に関する生物学的研究については慎重に検討する必要があることを主張した。(総頁119頁)
共著者:溝口 元、新妻昭夫
本人担当部分:「脳の性分化」(pp.44〜63)
2.ブリタニカ現代用語 共著 平成5年3月 ディビー・エス・ブリタニカ 現代社会において重要な用語を集めた事典で、生命倫理および科学技術社会論にかかわる問題のうち、性と生殖やジェンダーに関係の深い概念についても扱ったもの。(総頁1049頁)
編者:フランソワ・B・ギブニー
本人担当部分:「体外受精」、「人工妊娠中絶合法化運動」、「人工妊娠中絶禁止運動」、「代理出産」、「男女産み分け」、「リプロダクティブ・フリーダム」、「家族計画」、「優生保護法」、「人口政策」(pp.671、pp.674〜678)
3.性と生殖の人権問題資料集成 解説・総目次・索引 共著 平成12年6月 不二出版 19世紀末から1953年までの性と生殖に関連する日本の資料を復刻した『性と生殖の人権問題資料集成』全35巻のうち、松原が編集を監修した第15巻〜第26巻「優生問題・人口政策編」について、収載資料の解説および日本の優生政策史を論述したもの。1900年代の優生学の日本への導入、1920年代からの優生学的言説の流行と優生運動の開始、1930年代における優生立法化運動の本格化と政府の「民族優生方策」の策定、敗戦後の人口政策と優生保護法制定の経緯について解説した。
共著者:荻野美穂、斎藤光
本人担当分:「解説 優生問題・人口政策編」(pp.17-28)
4.優生学と人間社会 共著 平成12年7月 講談社 優生保護法の成立と社会的影響を中心に、第二次世界大戦中から現在に至る日本の優生学概念と優生政策の展開を論述したもの。優生政策の基本は戦時中に形成されたが十分機能せず、敗戦後に民族衰亡の危機感から優生学的断種規定が強化され強制断種が実施されたことを指摘し、戦後の優生政策の存在を明らかにした。また、古典的優生思想にもとづく優生保護法に胎児条項を導入しようとした70年代の政府の動きが、障害者運動に出生前診断と優生思想の結合を欧米に先立ち先駆的に発見させたことを示すとともに、生殖の自己決定を建前とした「自発的優生学」を克服するために優生学史にもとづく生殖の権利概念の再構築が必要であると主張した。
共著者:米本昌平、_島次郎、市野川容孝
本人担当部分:「日本―戦後の優生保護法という名の断種法」          (pp.169〜236)
5.健康とジェンダー 共著 平成12年11月 明石書店 健康とジェンダーの関係を検討する一環として、生殖への人為的介入を通じて健康で優秀な子孫の出生を奨励し、病気や障害をもつ子孫の出生を防止することを目指した優生学概念の変容について、1930年代から現代に至る「優生学批判の枠組みの変化」という観点から検討したもの。1960年代まで科学者は優生学を支持していたが、70年代以降、疑似科学および生殖の自律性の侵害であるとして優生学が全否定され、出生前診断の普及と遺伝医療の進展を背景に、90年代以降は、自己決定にもとづく新優生学を容認する風潮が生じてきたことを述べ、先端医療の推進において優生学概念が恣意的に利用されることを指摘した。「『健康』と『ジェンダー』―『ジェンダーと健康』研究プロジェクト(平成8年度〜11年度)報告書」の論文を一部修正加筆。
編者:原ひろ子、根村直美
分担執筆者:根村直美、宮原忍、大井玄、松原洋子、柘植あづみ、芦野由利子、兵藤智佳、中山まき子、高橋都、浮ケ谷幸代、戈木クレイグヒル滋子、東優子、田澤薫
本人担当部分:「優生学批判の枠組みの検討」(pp.69〜88)
6.『人性』解説・総目次・索引 単著 平成13年6月 不二出版 富士川游主宰の雑誌『人性』(1905-1918)の復刻版全17巻の解説。医学史の大家であり科学思想啓蒙家であった富士川は、世紀転換期のドイツで一元論運動や性科学、社会衛生学、犯罪人類学などの医学・生物学的人間理解にもとづく新興分野の台頭をはじめとする知的変動を経験し、この新しい思想潮流を総体としてリアルタイムで紹介する窓口として『人性』を創刊した。19世紀末の社会ダーウィニズムの普及と1920年代の産児制限運動や優生運動の本格化の間の時期にあって、これらの思想運動の理論的支柱となる海外情報と、これら思想の日本での受容のありかたを模索する場を提供したことを述べた。
本人担当分:「富士川游と雑誌『人性』」(pp.5〜9)
7.母体保護法とわたしたち 共著 平成14年7月(刊行予定) 明石書店 リプロダクティブ・ヘルス/ライツと生殖技術の進展を背景に、妊娠中絶と不妊手術を規制する母体保護法の再検討が議論されており、中絶の法的規制の歴史について知る必要があることから、前身である優生保護法、国民優生法の歴史を述べたもの。事実上の中絶禁止法として知られる国民優生法だが、法案段階では優生学的理由の中絶を認める規定があり、また優生保護法では中絶合法化と優生保護は不可分であったこと指摘し、母体保護法以降についても中絶と優生思想の関係を注視する必要があることを述べた。(総頁252頁予定)
編者:斎藤友紀子
分担執筆者:岡田靖雄、市野川容孝、甲斐克則、加藤真規子、佐藤孝道、大久保美保、中込さと子、玉井真理子、根津八紘、加部一彦、堀田久美、三輪和恵、米津知子、立岩真也
本人担当部分:「母体保護法の歴史的背景」(総頁14頁)
8.生命倫理とは何か 共著 平成14年8月(刊行予定) 平凡社 生命倫理問題のうち、ゲノムに関連する項目として「遺伝子診断と遺伝子治療」と「優生学」について解説した。前者については発症前診断・出生前診断・生殖系列細胞の遺伝子治療の倫理的問題点、遺伝子医療の産業化と南北問題等について論じ、後者については優生学の歴史と優生学概念の変容と新優生学の浮上について論じた。(総頁224頁予定)
編者:市野川容孝
分担執筆者:市野川容孝、石井美智子、唄孝一、濱六郎、柘植あづみ、玉井真理子、小松義彦、松原洋子
本人担当部分:「遺伝子診断と遺伝子治療」(総頁8頁)、「優生学」(総頁6頁)
9.日本の優生政策 単著 平成14年12年(刊行予定) 勁草書房 博士論文を一部修正加筆し、1940年の国民優生法と1948年の優生保護法の成立過程について、明治末期からの優生学的言説の普及、社会改革運動と優生思想の結合、1938年に創設された厚生省の優生政策、断種法の是非をめぐる論争、戦後の中絶規制緩和と優生政策強化をめぐる政治家、官僚、GHQの動向などを詳細に検討し、戦前戦後を通じての優生政策の変容について体系的に論じたもの。(総頁280頁)
(学術論文)
1.江戸時代の博物学的文献におけるカブトガニ 単著 昭和58年4月 『生物学史研究』 41号 日本における近代自然科学の受容に関する予備的なケーススタディとして、本草書を中心とする江戸時代の博物学関係の文献におけるカブトガニの記載を比較分析した。中国と日本の本草書の対応関係を確認したうえで、日本の博物学的文献におけるカブトガニの記載を分析したところ、過去の典籍からの抄出を主とする「抄出中心型」と、観察にもとづく「経験中心型」の二種類に分類された。その結果、西欧科学導入以前の日本の動物学研究は、実用性を重視しつつも近代科学の方法に通じる分析的観察を発展させていたことを明らかになった。(pp.24〜35)
2.20世紀初頭のイギリスにおける優生運動の形成 単著 昭和62年3月 東京大学(理学系研究科) (修士学位論文) 生殖コントロールにより、「優秀な子孫」の出生を促し「劣悪な子孫」の出生を防止するための基礎研究と応用を目指した優生学について、その成立を可能にした背景を、優生学誕生の地であり優生運動が盛んであったイギリスのケースで検討し、統計学への社会的信頼が関係していることに注目した。具体的には「アルコール中毒」の遺伝性の有無をめぐる生物測定学派の専門家と経済学者・優生運動家の論争を分析し、統計手法の技術的妥当性に関する議論が、アルコール中毒とモラルや遺伝概念をめぐる先入観に大きく影響されていたことを指摘した。       
3.優生学とセクシュアリティ 単著 平成2年12月 『生物学史研究』 53号 ハヴェロック・エリスの『社会衛生の課題」(1911年)のテクストを分析し、優生思想と性解放思想の関係について検討した。セクソロジーの先駆者であるエリスはダーウィンの性選択概念を拡大解釈して、女性の性的自由にもとづく結婚相手の主体的選択が、人種改良によって不可欠の条件であるとみなしていた。近代家族形成の背景となる自由恋愛やロマンティック・ラブという概念が、生物学化され優生思想に深く関係していたことを明らかにし、政策的強制を伴う全体主義的な優生学というステレオタイプ化された優生学イメージとは異なる「自主的優生学」の存在を提示した。(pp.33〜44)
4.明治末期における性教育論争 単著 平成5年3月 『お茶の水女子大学人間文化研究年報』17号 日本性教育史上、あまり知られていない明治末期の性教育論の様相を、新聞や雑誌を舞台に展開された医者と教育者の論争を通して分析した。保守的な教育者たちは性教育に懐疑的であり、性知識の獲得と性道徳は矛盾すると主張した。それに対して、富士川游や吉岡弥生などの医者たちは、性知識が性道徳と補い合って性病の流行や精神衛生上の問題を解決するものとみなし、医学的生物学的知識にもとづく性教育を奨励した。大正期以降の優生思想普及の背景には、後者の性知識教育推進派の論理の拡大が考えられることを指摘した。(pp.231〜239)
5.明治末から大正期における社会問題と「遺伝」 単著 平成9年3月 『日本文化研究所紀要』3号 「変質」という概念に注目しながら、明治末から大正期における社会改革運動と優生学の関係について論じた。モレルによって子孫に伝達される人類の正常型からの病的逸脱とされた「変質」はダーウィン進化論の洗礼を受け、19世紀末の精神医学に継承された。日本でドイツ精神医学と共に導入された変質概念は、明治20年前半から法医学系の雑誌でしばしば紹介され、犯罪者問題に結び付けられていった。西欧で変質概念と密接に関係する優生学も明治30年代以降受容されて大正期以降広まり、性病、アルコール中毒、精神病等の問題解決をめざす社会改革運動の言説に浸透していたことを明らかにした。(pp.155〜169)
6.民族優生保護法案と日本の優生法の系譜 単著 平成9年4月 『科学史研究』第2期34巻 日本の第二次世界大戦以前の帝国議会における優生法立法化運動の展開を分析した。その結果、遺伝性疾患の優生断種に目的を限定するナチス断種法系と、遺伝概念を拡大解釈し感染症、中毒症、犯罪までも対象とする非ナチス断種法系の二つの流れがあることを明らかにした。戦中に制定された国民優生法は、日本民族衛生協会が提案し、厚生省がその路線を継承して成立させたものであった。しかしこの際に排除された拡大主義的遺伝概念は戦後の優生保護法で復活し、ハンセン病の患者の断種の合法化を可能にした。優生保護法のもとで戦後むしろ断種政策が強化された背景には、この二つの断種法の系譜の拮抗が存在することを指摘した。(pp.42〜50)
7.<文化国家>の優生法 単著 平成9年4月 『現代思想』25巻4号 優生保護法と国民優生法は、従来優生学的側面における連続性が強調されてきたが本研究では、両者の断絶面に注目した。戦前の優生法をめぐる二つの背景をふまえて、第二次世界大戦直後の優生保護法成立に至る経緯を詳細に分析し、戦中の人口政策や母子保健政策の関係者がそのまま戦後の人口政策立案を担当するとともに、優生思想をもつ知識人や医者が産児制限や中絶問題に関係したため、産児調節の容認と引き換えに優生政策の強化が主張され、優生保護法の断種規定が国民優生法よりも強化されたことを明らかにした。(pp.8〜21)
8.戦時下の断種法論争 単著 平成10年2月 『現代思想』26巻2号 国民優生法制定前夜の精神科医の批判キャンペーンを詳しく分析した。その結果、断種法の科学性への疑問、精神医療阻害への危惧、ナチス断種政策への疑問が、有力な精神科医の間に存在していたことが明らかになった。彼らの批判キャンペーンは帝国議会審議にも影響し、断種法制定に懐疑的な議員たちを鼓吹した結果、国民優生法は法案よりも断種規定が後退し、優生学的中絶合法化規定が削除されてようやく成立した。原則的には断種政策に賛成だった精神科医が執拗な国民優生法反対キャンペーンを行ったのは、厚生省・日本民族衛生協会連合への反発があったものと考えられる。(pp.286-303)
9.日本における優生政策の形成 単著 平成10年3月 お茶の水女子大学(人間文化研究科) (博士学位論文) 1940年の国民優生法と1948年の優生保護法の成立過程について、明治末期からの優生学的言説の普及、社会改革運動と優生思想の結合、1938年に創設された厚生省の優生政策、断種法の是非をめぐる論争、戦後の中絶規制緩和と優生政策強化をめぐる政治家、官僚、GHQの動向などを詳細に検討し、戦前戦後を通じての優生政策の変容について体系的に論じた。従来はナチス断種法、国民優生法、優生保護法が直線的に関係づけられていたが、日本の優生法には遺伝概念を拡張的に解釈する非ナチス断種法系の系譜も戦前から存在していた。そして、非ナチス断種法系が戦後過剰人口問題への対処のなかで再浮上して、民主化された戦後断種政策が強化されるという逆説的な事態を引き起こしたことが明らかになった。
10.中絶規制緩和と優生政策強化 単著 平成10年4月 『思想』886号 優生保護法の成立とその影響については、従来中絶合法化の側面が注目されてきた。しかし優生保護法は「不良な子孫の出生を防止する」ことをうたった優生法でもあり、しかも戦中の国民優生法より断種規定が強化されるという事実があった。本論文では、優生保護法における中絶規制緩和と優生政策強化が相補的な関係にあったことを検証した。戦中国民優生法のもとで中絶手術の裁量を制限されていた産婦人科医たちは、戦後医系議員を通して医師主導の中絶法制定をめざした。これら産婦人科医や人口政策を立案した有識者、官僚、国会議員らは、戦後の人口過剰問題への対応としての産児調節の容認が、「逆淘汰」への恐れ、すなわち「優秀な子孫」の出生率が減少し人口の質が低下する事態を惹起するという危機感を募らせた。その結果、優生保護法において戦前よりも断種規定を強化されることにつながったことが明らかになった。(pp.116〜136)
11.戦時期日本の断種政策 単著 平成10年7月 『年報 科学・技術・社会』7巻 戦時中の厚生省による断種政策の立案実施について、精神病対策を中心に歴史資料を調査した。1938年創立の厚生省には予防局優生課が設置され、日本民族衛生協会からブレーンを迎えて優生政策、とくに断種法の立案作業を開始した。政策立案過程では有識者による民族衛生研究会を設ける一方、全国の精神科医を動員して精神病者遺伝家系調査を実施したりした。精神科医の国民優生法批判キャンペーンもあり、国民優生法は強制断種規定を凍結したまま実施されることになった。戦時中は戦況の悪化もあって断種件数はナチスドイツやアメリカなど諸外国と比べると非常にわずかなものとなった。(pp.87〜109)
12.The Enactment of Japan’s Sterilization Laws in the 1940s: A Prelude to Postwar Eugenic Policy 単著 平成10年12月 Historia Scientiarum vol.8, no.2 本稿は日本の優生学史研究が海外にほとんど発信されていない現状を打破するために、日本の優生法の歴史について英文で発表したもの。日本語による優生学史は戦前が中心で戦後に関する研究に乏しいことを指摘し、戦後優生学史の出発点として優生保護法における優生政策の強化を研究することの重要性を強調し、その問題、特に戦後の断種規定の強化と中絶合法化との関連を中心に戦前の優生政策と比較しながら論述した。さらに、戦後の家族計画運動や精神衛生法の制定と優生思想の関連を指摘した。(pp.187〜201)
13.Fujikawa Y_, Pioneer of History of Medicine in Japan 共著 平成10年12月 Historia Scientiarum vol.8, no.2 日本の近代的医学史研究の確立者であり、医療ジャーナリストとして医学・科学思想の普及に寄与した富士川游(1865-1940)の研究と社会的活動の詳細な検討を通して、近代日本における西欧科学の受容の一端を明らかにした。ドイツ医学史に範をとった富士川の日本医学史研究は、遡及主義的方法によるものだが、その包括性、体系性においていまだこれを越える研究が出ていないほどの完成度をもつ。また人間を扱う諸学問をすべて生物学医学によって基礎付けられるという科学主義的信念は、ドイツの自然一元論思想に裏付けられていたことを指摘した。松村、廣野は医学史部分の執筆を担当し、松原が富士川の一元論思想と科学思想啓蒙活動の関係の部分の執筆を行って、全体の調整を3人で行った。
共著者:松村紀明、廣野喜幸
本人担当部分:pp.160〜162、165〜167(pp.157-171)
class="st10px"14.メンデル遺伝学の受容 単著 平成12年10月 『生物学史研究』66号 メンデル遺伝学の初期の受容について調査、検討した。諸外国と違い日本ではメンデル遺伝学の是非について大きな論争もなく、農学系分野を中心にスムーズに受容されたことを指摘した。外山亀太郎はメンデル遺伝法則をカイコで確認した先駆的研究で当時国際的に高く評価されたが、この実験の背景には師の石川千代松の発生学とワイズマン主義の影響および重要な外貨獲得産業であった蚕業における品種改良への強い要請が存在した。また農業試験場における稲、麦の品種改良研究でメンデル遺伝学が追試され、その方法は一部の農民にも浸透したことを示した。(pp.89〜94)
(その他)
1.展望:優生学史研究の動向(I) 共著 平成4年2月 『科学史研究』第2期30巻 イギリス優生学史研究を通して、優生学史のヒストリオグラフィーのあり方を検討した。D.マッケンジーの「優生学=専門中流階級イデオロギー」説によって、優生学/優生思想批判という重要な契機が優生学史研究に復活したが、優生学批判の左翼は優生主義者から除外されていた。しかし、英米優生学史を比較したケヴルズの「本流優生学」「改良優生学」という分類枠の導入により、優生学批判の左翼は改良優生学に分類可能になった。穏健な優生思想の主題化により現代の遺伝子医療における優生思想を、歴史的パースペクティブで検討することを可能にしたケブルスの功績は大きい。
共著者:鈴木善次、坂野徹
本人担当部分:「イギリス優生学史研究」(pp.225〜233)
2.展望:優生学史研究の動向(III) 共著 平成7年7月 『科学史研究』第2期34巻 日本の優生学史研究の動向について、ヒストリオグラフィーに注目しながら概説した。英米独の優生学史研究は1980年代以降、大きく飛躍し研究も蓄積されたのに比べて、日本では1980年代後半になり様々な分野の研究者が優生学にまつわる歴史上の諸問題を検討する作業を個別的に開始し、ようやく英米の70年代の水準に達したところである。優生学とファシズムの関係を論じた藤野豊のハンセン病政策研究、またフーコーのアプローチを取り入れた新しい研究も登場しており、成長が期待できる分野である。現在個別に発表されている成果の情報を流通させ、共通の議論の場を形成すること、および英文による成果の発信の必要性を主張した。
共著者:鈴木善次、坂野徹
本人担当部分:「日本の優生学史研究の動向」(pp.101〜106)
3.性への否定的態度と性的自立への過程 単著 平成2年4月 『現代性教育研究月報』4巻4号 短期大学における「人間の性」に関する授業(女子学生のみ)において、妊娠・出産・中絶に関するVTR教材を視聴させ、その結果得られた学生の反応について分析した。反応には予想以上に「女性の性」に対する否定的態度が見出された。教師はこれを主体性の欠如であるとして性教育による克服の対象とみなすのではなく、個人のアイデンティティと切実に結合したセクシュアリティとの格闘にこそ意義があるという視点から、個性的な性的自立の可能性を探ることの重要性を指摘した。(pp.8〜11)
4.優生問題を考える(1)クローン羊が意味するもの 単著 平成9年8月 『婦人通信』463号 遺伝子操作技術と生殖技術の結合の科学技術社会論的意味について解説した。体細胞クローン羊の誕生は、生物学・医療・産業が制度・学問・技術の面で密接に関係していることを象徴しているとともに、クローン人間の誕生について哲学・倫理からだけでなく科学技術社会論からも現実的に議論する必要性を提示している。われわれは生命倫理に抵触する技術の歯止めを具体的にデザインする必要があり、この側面を欧米諸国並みに強化することが日本の緊急課題であることを主張した。(pp.36〜38)
5.優生問題を考える(2)優生保護法の『消滅』 単著 平成9年9月 『婦人通信』464号 1996年に優生保護法があわただしく母体保護法に改正された背景には、1994年に国連人口会議のNGO会議で優生保護法の優生思想が非難されたこと、1996年のらい予防法廃止にともないハンセン病患者に対する優生手術を人権侵害として厚生大臣が正式に謝罪したこと、ノーマライゼーション推進の障害者基本法が1993年に公布され、優生保護法の優生思想との矛盾が決定的になり、厚生省の優生保護法の所管が母子保健担当部署に移転したことがあることを解説した。優生保護法下の人権侵害の実態を解明するために、改正時に欠如していた優生政策の批判的総括を行う必要があることを主張した。(pp.38〜39)
6.優生問題を考える(3)障害者と優生保護法 単著 平成9年10月 『婦人通信』465号 男性障害者以上に、女性障害者は性的主体・生殖の主体であることから疎外され性差別的構造の中で人権を侵害されてきたことを強調し、ジェンダーの視点から優生政策を検証する重要性を主張した。障害者福祉施設における女性障害者の子宮摘出問題は、90年代前半に政府が実態調査に着手するほど問題になった。月経時の介助負担の軽減という不当な理由による女性障害者の子宮摘出手術が正当化された背景には、優生保護法による障害者の生殖能力を公共の利益を優先して奪うことが合法化があったことを指摘した。(pp.42〜43)
7.優生問題を考える(4)国民優生法と優生保護法 単著 平成9年11月 『婦人通信』466号 国民優生法では不妊手術の対象疾患が「遺伝病」に限定されていたが、優生保護法では感染症にまで拡大された背景について説明した。大正期以来の優生運動の影響を受けた産児制限運動家や産婦人科医は、狭義の遺伝概念に限定されない拡張的な優生思想を、戦後の優生保護法制定に反映させた。らい予防法と精神衛生法とともに終戦直後の社会防衛と予防医学の強力な結合が、生殖の医療化としての優生政策の支持基盤を強化したことを主張した。(pp.42〜43)
8.優生問題を考える(5)出生前診断と優生学 単著 平成9年12月 『婦人通信』467号 障害児の中絶による発生予防は自己決定であるかぎり優生学とは無関係と医療側は主張してきたが、われわれは、自己決定に社会の意向が反映している可能性に留意する必要があることを指摘した。たとえば戦後の子供2人の標準家庭も1950年代〜60年代の戦後の官民一体となった強力な家族計画運動に誘導されたものであり、同時に多くの中絶や不妊手術が強制的手術も含めて優生保護法のもとで大量に実施されてきた現実を歴史的に検証し、現在の自己決定の意味を問い直す必要があることを主張した。(pp.42〜43)
9.優生学 単著 平成12年2月 『現代思想』28巻3号 優生学という政治的概念の現代的変容の意味を認識しつつ、新優生学に隠された問題を批判する必要を論じた。優生学は「遺伝か環境か」という問題構成だけではとらえきれない。優生学はそれにかかわる人間の利害関心に依存してきたものであり、単純な遺伝決定論として捉えるのは問題である。優生学は生殖の自律性を抑圧するものとみなされ、70年代後半には危険な概念として表面上排除されてきたが、近年優生学が新たに擁護されるようになっている。新優生学と呼ばれるこの潮流は、医療サービスにおける消費者のニーズを最優先にする徹底的な個人主義を建前にし、生殖医療と遺伝子技術を介した子孫の選別改造を正当化することを指摘した。(pp.196〜199)
10.病と健康のテクノロジー 共著 平成12年9月 『現代思想』 28巻10号 医療社会学者の市野川との対談形式で、遺伝子技術・生殖技術と予防医学および優生学との結合をめぐる諸問題について検討した。生物医学的な病気/健康概念がゲノム医学の言説により強化されつつあるが、病気/健康概念は社会的構築物であり生活者にとっての医療の意義は科学/技術と社会的文化的条件で決定される。また移植医療・遺伝医療・生殖医療の再生医学における統合が進展している現在、身体が生体部品化され商品化される一方、個人本位の優生学である新優生学が容認されつつあることを批判的に吟味する必要がある。人体改造への欲望と人間身体のもつ生物としての限界の関係におけるダイナミックな変化を追跡することによって、現在の技術と倫理をめぐるアポリアを突破する可能性を検討した。(pp76〜96)
共著者:市野川容孝
11.解題・遺伝病スクリーニングのパラドクス―フェニルケトン尿症のスクリーニング 単著 平成12年9月 『現代思想』 28巻10号 原著者D.ポールによる標記文献(翻訳)の解題として、フェニルケトン尿症(PKU)のスクリーニングの政治的・社会的文脈における意味を論じた。PKUスクリーニングは遺伝病スクリーニングの先駆けであるが、生後の食餌療法で症状が改善する「治療可能な遺伝病」として扱われ、遺伝決定論反対論者による過度な期待のなかでPKUの治療の困難や患者家族が直面する困難が見過ごされる問題があった。また、PKU対策は、今後導入される可能性がある慢性疾患の遺伝子検査と生涯にわたる生活コントロールの先駆的事例としても重要であり、遺伝性疾患を持って生まれ生活することに「自己責任」が問われることの問題性を指摘した。(pp.128〜131)
12.異文化としての医療 共著 平成12年9月 『現代思想』 28巻10号 医学教育で医療面接の相手役をつとめる模擬患者(SP)の養成とSPの医学部教育への参加を通して見えてくる医者患者関係と病気・健康概念について、佐伯との対談形式で論じた。医師は病気と健康の概念を医学モデルで理解し、医療的言説を患者が内面化することを要求しがちであるが、医学の素人である生活者と医師は異文化の住人であり後者が前者に優越するわけではない。医師患者関係が一種の異文化交流であることを医療側が認識し、生活者に伝わるコミュニケーションを実践できるようになることが、患者本位のインフォームド・コンセントのシステム作りなど医療の改善に通じると主張した。(pp.170〜181) 
共著者:佐伯晴子
13.優生学の歴史と現在 単著 平成12年10月 『生物の科学 遺伝』54巻10号 優生学の歴史の概略を述べたうえで、近年の優生学史研究の成果を紹介し優生学と遺伝学の関係について検討した。具体的には現在、ハーディ-ワインベルグの法則は優生政策の無意味さの証拠とみなされているが、1910-30年代の遺伝学者たちは、この法則の生物学的意味を理解していたにもからわらず優生学を支持していた。この事実は優生学に対する態度が、人権意識など遺伝学以外の要素に大きく影響されていたことを示唆していることを指摘した。(pp.31〜35)
14.生命倫理学―遺伝子操作が生む良い子・悪い子 単著 平成13年3月 『諸君!』 遺伝子操作技術の進展と子孫改造思想の関係およびその問題点を論じた。21世紀は人体という内なる自然は知的探求の対象であると同時に、商業的技術開発の対象となっている。人体の部品化・医療資源化、子孫の身体的質の改善の追求が進行しており、新優生学の実現に向かっている。新優生学は生殖の自律性という原則によって正当化されるという主張があるが、人々の自発的選択の結果の集積が優生学的効果をもたらし、障害者や病者ら弱者にこそ尊重すべき権利である生殖の自律性が弱者から奪われる可能性があることを指摘し、新優生学の問題点を明らかにした。(pp.202〜205)
15.生殖技術と新優生学 単著 平成13年2月 『女たちの21世紀』25号 優生学の核心を抽出する作業と日本の優生学史の細部と現代の動向の細部を照合させ、今後の生命科学技術に向かい合う戦略を模索する必要性について論じた。生命倫理学や科学技術社会論では遺伝子差別や生殖技術の利用について、優生学という概念をあえて用いずに検討する研究を蓄積している。しかし、優生学の名の下に科学的知識、医療技術、社会的諸制度が連携して生殖に介入し人権侵害を惹起してきた事実が歴史上存在しており、自主的優生学のように現在新優生学として危惧されている要素と関連の深い問題もまだ十分分析されずにいる。(pp.57〜58)
16.グローバリゼーションとフェミニズム 共著 平成13年5月 『現代思想』 29巻6号 江原、足立との鼎談形式でグローバリゼーションの経済的社会的進行と女性の生活および身体の現況と今後について論じた。江原は社会学、足立は経済学、松原は科学技術論の立場から検討した。資本主義が身体に浸透した結果、身体が商業主義的科学技術開発の対象となっている。不妊治療についても商業主義が進み患者のニーズにあわせて借り腹、ドナー提供の配偶子による体外受精など、各種生殖機能に対応した身体部品の組み合わせによる生殖がすでに実現しており、こうした問題をフェミニズムと科学技術社会論の統合により検討する必要があると主張した。(pp.62〜82)
共著者:江原由美子、足立眞理子
17.進化心理学・行動遺伝学と優生学史研究の架橋に向けて 単著 平成13年7月 『生物科学』 53巻1号 進化心理学・行動遺伝学と優生学史研究の間には、社会ダーウィニズム、遺伝決定論、優生学の評価のありかたをめぐって、緊張や対立が存在する。しかし両者の忍耐強い対話は、遺伝学と社会の相互関係が緊密化し、優生学再考の可能性が注目されている現在、きわめて重要であることを主張した。特に「優生学=悪」という図式の変容過程を英米系の議論を中心に概観し、優生学の是非は時代や社会の文脈と切り離して超越的に論じることはできないことを明らかにした。(pp.19〜26)
18.卵質移植と「遺伝子改変ベビー」 単著 平成13年12月 『生物学史研究』68号 不妊治療の一環として実施されたドナーの卵質移植によって、子孫の「遺伝子改変」が初めて実現したと発表した産婦人科医に対して、国際的批判が生命倫理の立場から相次いだ2001年春の事例について、科学技術社会論的に検討した。その結果、原著論文の子孫の遺伝子改変の有無に関する科学的論証が不十分なまま、「生殖系列細部の遺伝的改良の結果、子供が生まれた」という原著論文の拙速な表現を真に受けて、「遺伝的な遺伝子改良」が既成事実になったかのような報道がなされたことがわかった。科学技術について、その社会的倫理的問題性にとりわけ注目して論じたり報道したりするとき、技術を過大評価することにより、その技術が招来すると予想される歓迎できない事態をむしろ前倒しに実現させる危険があることを指摘した。(pp.75〜78)
19.生体モデルと人体の部品化 単著 平成14年2月 『現代思想』 30巻2号 人体の部品化、医療資源化の背景にある生体の現代生物学モデルを参照しながら、人間の尊厳を確保するための身体観を検討したもの。生体の現代生物学モデルでは生体部品はそれ自体ではアイデンティティをもたず、システムの中でそれらが媒介する作用により特徴づけられることから、人体の生体部品をモノや動物の生体部品と交換/融合することに原理的問題はないという発想が先端医療には存在する。これは、日常的常識に照らせば問題であり、人体の尊厳の根拠のひとつとして生まれながらの「ネーティブな身体」の意義を再検討する必要があると主張した。(pp.112〜115)
<翻訳>
1.多文化的フィールドのバイオポリティクス 共訳 平成4年10月 『現代思想』20巻10号 フェミニズム科学論・科学史の代表作であるダナ・ハラウェイ『霊長類の視覚』の一章である標記の論文について、全体を共訳者と共同で翻訳し解題をつけた。この論文は今西錦司をはじめとする日本の霊長類学者の研究アプローチについて、西欧男性中心的な近代科学の典型からの逸脱例としての「非西欧・男性」による科学を、フェミニズム科学批評の観点から比較文化的に論じたものである。原著は科学論だけでなく霊長類学の研究アプローチにも影響を与えたことで知られる重要な著作であるが、この共訳が最初の日本語訳である。(pp.108〜147)
共訳者:高橋さきの
(共同執筆につき本人担当部分抽出不可能)
2.優生学と左翼 共訳 平成5年2月 『現代思想』21巻2号 政治学者D.ポールの標記の論文について、全体を共訳者と協力して翻訳した。従来の優生学史研究で優生学の批判者として位置づけられてきたイギリスのマルクス主義生物学者らが、資本主義内部での優生学の実施に反対したものの、優生学的原理は積極的に支持し、社会主義革命が実現して機会均等が補償された社会ではじめて遺伝的能力の差が明らかになると想定していたことを明らかにし、古典的優生学とは別の優生学が戦中戦後を通じて存続していたことを指摘した、優生学史研究および生命倫理上重要な論文。(pp.224〜246)
共訳者:斎藤光
(共同執筆につき本人担当部分抽出不可能)
<報告書>
1.児童の養育責任の系譜に関する研究―少子化問題の根本原因を探る平成11年度 共著 平成12年3月 厚生科学研究費補助金子ども家庭総合研究事業研究報告書 現代の少子化傾向を、親が児童の養育責任を果たしにくい状況の反映としてとらえ、今日の養育責任に関する一般認識が形成するに至った歴史的経緯の一側面を明らかにしたもの。20世紀前半期、日本の知識人たちは出生率低下が文明化による必然的帰結であり放置すれば民族の衰退を来たすという認識から、国民の子産み子育てに向かう意欲を人為的に構築しようと試みていた。そうした試みの代表である優生論(逆淘汰防止論)を出生率低下原因論との関係において検討し、その結果優生論が女性の親としての地位を再構築したことを主張した。
分担執筆者:田澤薫、内藤知美、渋谷真樹
本人担当部分:「20世紀前半の出生率低下原因論と優生論の関係の分析」(pp.850〜856)
2.「健康」と「ジェンダー」―「ジェンダーと健康」研究プロジェクト(平成8年度〜11年度)報告書 共著 平成12年3月 お茶の水女子大学ジェンダー研究センター刊行 健康とジェンダーの関係を検討する一環として、生殖への人為的介入を通じて健康で優秀な子孫の出生を奨励し、病気や障害をもつ子孫の出生を防止することを目指した優生学概念の変容について、1930年代から現代までの「優生学批判の枠組みの変化」という観点から検討したもの。1960年代まで公然と科学者たちが優生学を支持していたこと、70年代以降、疑似科学および生殖の自律性の侵害であるとして優生学が全否定されたこと、出生前診断の普及と遺伝医療の進展を背景に、90年代以降、自己決定にもとづく新優生学を容認する風潮が生じてきたことを述べ、先端医療の推進において、優生学概念が恣意的に利用されることを指摘した。
編者:原ひろ子・根村直美
共同執筆者:根村直美、宮原忍、大井玄、松原洋子、柘植あづみ、芦野由利子、兵藤智佳、中山まき子、高橋都、浮ケ谷幸代、戈木クレイグヒル滋子、東優子、田澤薫
本人担当部分:「優生学批判の枠組みの検討」(pp.37〜47)



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