応用人間科学研究科の教員紹介
人間形成・臨床教育クラスター
中川 吉晴教授
Yoshiharu Nakagawa
ホリスティック・アプローチ

研究テーマ
ホリスティック/インテグラル教育、スピリチュアリティ、人間性/トランスパーソナル心理学、気づきの技法、
観想的実践家
コメント
ホリスティック・アプローチとは、ホーリズム(全体論)の観点にもとづいて対人援助にかかわることを意味しています。このようなアプローチは、すでに教育、医療、看護、健康、心理療法、社会福祉などの分野で展開されています。ホリスティックな観点は、近代の機械論的で物質還元主義的な視点とは異なり、生きた有機的全体性を志向し、人間と世界を広く深くとらえようとするものです。それは全体としての人間を、身体、感情、思考だけでなく魂やスピリットなどの多次元性においてとらえ、また全体としての世界を、自己、他者、共同体、社会、国家といった従来の視点においてだけでなく、自然、地球、宇宙といった広がりのうちにも見てゆきます。ホリスティックな世界観は、ディープエコロジー、システム論、トランスパーソナル心理学、東洋思想などの見方と重なる部分も多くあります。最近では国連やユネスコでもホリスティック・アプローチという概念が用いられています。対人援助の実践においては、スキル面だけでなくホリスティックな見方やあり方を身につけることが重要だと思います。
スピリチュアリティは1990年頃から対人援助領域のなかで重要なテーマとなっています。日本ではスピリチュアルケアの取り組みが知られていますが、海外では多くの分野(臨床心理、社会福祉、看護、医療、教育など)で研究と実践がすすめられています。その背景として、現代人が制度的な宗教から距離を置き、内的な自己探究や自己変容を個人レベルで展開するようになり、しかも宗教的多様性の浸透によって、それを支える多様なリソース(東洋思想からシャーマニズムまで)が利用可能になっていることがあげられます。それと同時に、現代人は成長・病気・老い・死などに自分ひとりで直面せざるをえない状況が広がっており、またこれらが対人援助の主要領域であることから、必然的にスピリチュアリティへの関心が高まっています。たとえば、医療では、スピリチュアルな要素をふくむ各地の伝統的な治療体系が統合医療という形で研究されており、看護ではホリスティック看護やトランスパーソナル看護のなかでスピリチュアルな見方が取り入れられています。社会福祉では1990年にSociety for Spirituality and Social Workが組織され、代表的理論家のカンダ(本研究科元客員教授)は「スピリチュアリィ・センシティブ・ソーシャルワーク」を提唱しています。「教育におけるスピリチュアリティ」にかかわる議論は1990年代半ば以降顕著で、カリキュラムや教師教育に加えて子どものスピリチュアリティに関する研究がすすんでいます。
私は実践的アプローチとして観想的な「気づき」(アウェアネス)を重視しています。それは自分の内部や外でいま起こっていることに、細かな注意を向けることです。このような気づきの訓練をすると、自己の中心が定まり、落ち着きがまし、精神が静かになり、自己の存在感が高まります。このような技法はすでに各種の身体技法(ソマティクス)、心理療法、心理健康プログラムなどで用いられていますが、もっと広く、対人援助の実践者にとって必要な資質となるものだと考えています。
推薦図書
・中川吉晴『ホリスティック臨床教育学』せせらぎ出版
ホリスティック・アプローチの観点から、心理療法とスピリチュアリティを統合した教育のあり方を理論的に探究したものです。とくに教育におけるスピリチュアリティの最近の議論をとりあげ、また対人援助者の観想的な自己教育について論じています。
・中川吉晴『気づきのホリスティック・アプローチ』駿河台出版社
気づきという視点から、ホリスティックな生の経験について述べたものです。気づきのはたらきとは何か、心身への気づき、気づきと心理療法、覚醒、創造などについて述べでいます。


