FDフォーラム

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2009年度・第2回FDフォーラム報告

2009年10月20日(火)
朱雀キャンパス・中川会館205号教室
出席者 18名
テーマ 法科大学院における『実務教育』のあり方
  2009年度第2回目のFDフォーラムは、「法科大学院における『実務教育』のあり方」をテーマに開催された。法科大学院では各種の実務系科目が開講されている。これは一方では、「理論と実務の架橋」という法科大学院設立の理念に基づくものだが、他方では、司法修習期間の短縮とも関係している。今回のフォーラムでは、設立以来取り組んできた実務系科目の現状と今後の課題について議論した。
まず、裁判官教員として派遣され、今年度でその任を終えられる野田教授から、2年半を振り返り、実務家教員として感じたことや、多くの学生と接する中で思ったこととして、以下のような報告があった。
 
第1報告 報告者:野田 恵司 教授

「法科大学院での教育について-3年間の実務基礎科目の担当を踏まえて-」

Ⅰ.法科大学院修了生の力
 法曹実務家にとって必要な力とは、①基礎知識、②法的思考力・法解釈能力、③事案解決能力、④交渉説得能力である。最低限仕事に必要であるこれらの力を養うことが法科大学院教育であると考える。合格者については、中には若干不安な者もいないわけではないが、基本的に、実務家としての最低限の力がついており、法科大学院教育が果たされているといえるだろう。一方で、不合格となった者は上記①~④のひとつあるいは複数が欠けていたのではないかと考える。

Ⅱ.法科大学院がなすべきことは何か
学生が自ら勉強することが大前提である。その上で、法科大学院の授業において上述の①~④の力を養うことが有益である。試行錯誤の3年間であったが、その経験から言えるのは、以下のような点である。1)「①基礎知識」定着の鍵は「理由」を教えることであること、2)「繰り返し」と「暗記」の大切さ、3)その他必要な力と効果的な手法として、「②法的思考力」を身につけるためには、論点の内容そのものとは別に、思考のパターン自体を教える必要があること、この「法的思考力・思考パターン」をもとに行うのが「③事案解決能力」であり、時系列や当事者関係図の作成を丁寧に行うことが重要であること、「④説得能力」については、どこが足りないかを具体的に指摘することが効果的である。答えや理由だけではなく、「どこから考えるのか」という「考え方の順序」や「説明の順序」を意識させることが大切である。
若干の質疑の後、以下のように、具体的な科目である、「民事法実務総合演習」と「刑事法実務総合演習」について、和田・松宮両教授から現状が紹介された。

 

第2報告 報告者:和田 真一 教授

「実務基礎科目『民事法実務総合演習』について」

 

 

第3報告 報告者:松宮 孝明 教授 

「この間の『刑事法実務総合演習』の取り組みについて」  

その後の質疑においては、何をもって「実務」というのか、法科大学院と司法修習の役割分担、実務系科目と法律基本科目の関係、新司法試験の出題傾向と実務系科目の役割といった点が議論されたが、その中では、「理論と実務の架橋」という場合でも、それぞれにおいて必要とされる法律家としての基本的な力には、野田報告が指摘したように本質的な違いはないことを踏まえつつ、法科大学院の修了者が実務法曹になっていくということを意識した教育が必要であるという点、そしてそのことが新司法試験への対応にも結びつくのではないかといった点が強調された。今後、このフォーラムでの議論を踏まえつつ、実務系科目を含めた法科大学院での教育のあり方を検討していくことになる。