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2018年度・第2回FDフォーラム報告

2018年11月27日(火)15:50〜16:50
202教室
出席者 15名
テーマ 共通到達度確認試験を含む短答式問題との関わり
報告者
① 趣旨説明  島田志帆教授・FD委員長
② 和田吉弘教授 (民事訴訟法)
③ 中山布紗教授 (民法)
④ 坂田隆介准教授 (憲法)
⑤ 松宮孝明教授 (刑法)

 本年度の第2回FDフォーラムのテーマは、「共通到達度確認試験を含む短答式問題との関わり」である。  平成26年度から開始された共通到達度確認試行試験を経て、2019年度より共通度確認試験が本格実施されることが決定されている。試行試験の段階では、商法・行政法・民事訴訟法・刑事訴訟法といった科目も含めて実施された年度もあったところ、本格実施においては、憲法・民法・刑法のみが対象とされることが決定され、また、共通到達度確認試験が進級に当たっての質保証の仕組みとして導入されるとの方針も明らかにされている。そこで、本フォーラムでは、主に憲法・民法・刑法の担当者から、授業内における短答式問題への取組みや、共通到達度確認試験へ対応するための方策等について報告していただいた。また、短答式問題の授業への活用という観点から、民事訴訟法の分野からも報告をお願いした。

 まず、和田吉弘教授からは、民事訴訟法の授業における短答式問題の利用例が紹介された。短答式試験の過去問から、理解の基本を試す問題を選び出して正誤問題にアレンジし、授業内の時間を区切って、区切った時点までのプリントを配布して実施するものである。事前配布しないのは、初見で限定された時間内で取り組ませる訓練が有益との観点に基づくものとされる。また、正誤問題の解答方法として、全員に挙手させるなどの興味深い実践方法も紹介された。

 中山布紗教授からは、出題範囲も広い民法分野では、Legal Intuitionを磨くことに注力すべきことが報告された。具体的には、L1配当科目(民法Ⅰ)では、条文の音読をさせて原則と例外を理解させる、百選の要約を予習として行わせる、小テスト(〇×問題)に司法試験過去問の肢を混ぜる、といった内容で授業が実施されているとのことである。特にL1の間に判例をおさえておくことで、次年度は判例について二巡目となる教育効果があると述べられる。また、個人面談の見直しとして、各人に具体的な数値としての達成目標を設定することが提案された。

 坂田隆介准教授からは、法学検定の過去問を組み合わせた「到達度確認テスト」(短答式10問、20分)が、憲法Aで4回、憲法Bで1回実施されていることが報告された。過去問はmanaba+Rの授業コンテンツに添付し、その中から出題している。これは、予習に向かわせるという意味と、また、復習の範囲を絞ることで、確実な知識の定着を促す意味があるとされる。なお、本フォーラムの参加者からは、統治機構の分野については、別途エクステンションセンターに提供されている坂田准教授作成の問題集が存在しており、これが授業でも活用されるべきとの意見も述べられた。

 松宮孝明教授からは、近年の共通到達度確認試験試行試験の問題分析を踏まえた出題傾向、また、授業における短答式問題の利用例が報告された。刑法の出題の7割程度は判例百選クラスの判例から、残り3割程度は学説(理論)問題であり、理論問題はコンスタントに出題されると考えてよいこと、出題対象はおおむね刑法A・刑法B・刑法Cの受講でカバーできていること、同授業内では、小テストや確認テストで過去問が利用されていることが報告された。課題としては、初学者が理論的な対立を理解し覚えることの難しさや、自主ゼミ開催、あるいは弁護士ゼミの活用への期待などが挙げられた。

 以上に加え、本フォーラム参観者からも短答式問題活用のメソッドが紹介された。

 松岡久和教授からは、L1配当科目の民法Ⅲ(担保物権と債権総論の責任財産保全・債権担保)について、TKCの基礎力確認テストを用いた利用例が紹介された。TKCの基礎力確認テストは、学生が繰り返し自習できるようになっているが、それだけでは十分なインセンティブにはならない。毎回の授業のテーマについて最低10問以上の実践結果をスクリーンショットの画像ファイルとして提出させ、平常点としている。次第に、全問正解まで解説をみて何度か試みることや、再復習を含めて10問以上できればやるようにと受領確認メールで勧奨している。最近では意欲的に50問以上を何度か実行してくる者が増えてきている。また、TKCの問題は少し古くて民法改正には対応していない。そこで、民法改正対応については、毎回、自作の正誤問題を10問作成して解答を提出させ、解説をmanaba+Rに掲載することにしている。

 また、多田一路教授からは、manaba+Rを利用したドリル問題の実施方法が紹介された。manaba+Rにおいては、担当者が小テストやドリル問題を設定できるようになっている。担当者がこれを設定することで、学生は授業時間外にこれを行い、担当者はその結果を平常点評価に加えるというものである。manaba+Rのドリル問題は、何度取り組んでもよいとされており、満点を取るまで繰り返し行うというインセンティブが学生に与えられる。

 他方、弁護士ゼミの活用という問題提起を受けて、渕野貴生教授からは、エクステンションセンターにおける取組みとその状況が紹介された。具体的には、2018年9月から始められた「朝錬」と称する短答式問題を取り扱うゼミである。これは、平日の朝8時20分から50分まで毎日、司法試験合格者をチューターとして短答式試験の過去問に取り組むものであり、受講生から好評を博していることが紹介された。合格者から直接指導を受けられるほか、グループ化によるモチベーションの向上、短答式問題への取組みの習慣化、朝の時間帯の有効活用などがメリットになっている。これに対し、共通到達度確認試験に向けたL1対象の講座として(秋学期に)同種の講座を開設するなどできないかといった意見が出された。また、弁護士ゼミをL1の授業と連動させた内容とすることは可能か、などの質問も出された。

 以上のように、本フォーラムにおいては、非常に活発な意見交換が行われた。各報告と質疑応答を通じて、授業内外における短答式問題の利用方法が情報共有され、また、共通到達度確認試験の本格実施に向けての課題も明らかになったといえる。今後は、各教員において、そのノウハウを自身の教育・指導において活用し、課題に取り組んでいく旨が確認された。