FDフォーラム

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2006年度・第6回FDフォーラムを開催

2007年3月27日(火)午後5時30分から午後7時
朱雀キャンパス・中川会館202教室
参加者 20名
テーマ 理論と実務を意識した教育(1)
コーディネーター・司会:松本克美法科大学院教授(法科大学院FD委員会委員長)
報告:行政法・安本典夫教授、民事訴訟法・佐上善和教授、刑事訴訟法・藤田正隆弁護士・教授
 

今回は、法科大学院における教育理念の柱の一つである「理論と実務の架橋」が、法律基本科目の教育内容・方法にどのように反映しているのか、また反映させるべきなのかを検討しました。松本FD委員会委員長から、立命館大学法科大学院のカリキュラムが、どのような点において理論と実務の架橋を意識して設計されているのかという総論的な報告がなされた後、行政法、民事訴訟法、刑事訴訟法の各分野からの報告がなされました。報告・質疑を通じて浮き彫りになったのは以下の点です。

 

(1)各分野ごとの特徴

理論と実務の架橋といっても、各分野ごとに特徴があり、また、基本知識に関する学生の学習度の差異もあり、それらを考慮することが必要である。

① 行政法 
行政法は、膨大な個別法規があるが、実務で重要なのは、その個別法規の具体的解釈問題である。ところが、学生は行政法の基礎知識が足りないので、まず、行政法の通則的な基礎知識を習得させる必要がある。かといって、具体的事実への個別法規の適用の問題を抜きにすることはできないので、その二つの課題の調整が難しい。この点は、公法実務総合演習の準備過程でも研究会を重ねて検討していく。

② 民事訴訟法 
民事訴訟法学者は<実務で使える理論>を念頭において研究し、実務家は、<実務の理論化>を進めてきたと考えている。法科大学院でも裁判所や弁護士の実務を念頭において授業をすすめたいが、演習段階でも基礎知識が不十分な学生も多く、その点のフォローが課題となっている。また、学生は要件事実論を学習するが、それを民事訴訟法の学習とどのようにマッチさせるのかも課題である。

③ 刑事訴訟法 
刑事法は、理論と実務の対立が激しい分野である。実務家としては、実務の経験を積んでいく中で、その場しのぎの法的主張を組み立てる側面が強くなってしまうが、理論、体系をしっかり身につけておくことが裁判の見通しを立てる上でも重要だ。

 

(2)理論と実務の架橋という点からみた教育上の重点

① <受験マインド>から<リーガル・マインド>へ 
法科大学院生の中には受験勉強に汚染され、書きやすい答案を書く、正解を探す、自分の理屈にあわせて事実を歪曲するタイプの学生がまだいる。重要なことは、事実を正確に分析し、そこから妥当な結論に向けて法的主張を組み立てていくという姿勢である。

② 実務に批判的な視点 
また現在の実務を前提にするのではなく、それが妥当でないのなら、それを乗り越える法的主張を考えていくという姿勢が重要である。正解はひとつではなく、法的主張を工夫して実務を乗り越えていくという観点を持つことが重要である。

③ 新司法試験で試される法曹の資質・能力も、以上のような基本姿勢を前提にした事実の分析力、法的構成力であり、そのことに確信をもって教育を進めていく必要がある。