2011 Special Content OB Interview 裁判官、検察、弁護士が語る 法科大学院での学び  #1
法と正義のもと、 正しいと信じる判断を下す 裁判官の仕事にやりがい
判事補 ※2011年3月まで 東根 正憲  Masanori Higashine さいたま地方裁判所(2011年3月現在。2011年4月から行政庁に出向予定)
2003年3月 立命館大学法学部卒業 2006年3月 立命館大学法科大学院 既修コース修了 同年新司法試験合格
悩んだ末に正しいと信じる結論を 導き出せた時に感じるやりがい

2008年1月に初めての赴任地、さいたま地方裁判所に来て以来3年間、判事補としてさまざまな裁判に携わってきました。主には、3人の裁判官の合議体で審理・判決を行う合議審の左陪席裁判官を務める他、勾留請求や逮捕状の請求などを認めるか否かの判断を下す令状事件や、民事執行・保全事件の一部も担当しました。2009年から裁判員裁判が始まり、事実認定や法律の解釈の難しい事件も増えており、この3年間は、新人判事補としてそうした難題に挑む毎日でした。

裁判官という仕事の一番のやりがいは、一方の当事者の立場になる弁護士や検察官とは異なり、両当事者の間に立ち、「法と正義に基づいて、自らが正しいと信じる判断を下せる」ところです。裁判の独立が保障されている司法制度のもとでは、私の担当する事件は他の誰にも干渉されません。合議事件を扱う場合でも、経験豊富な裁判長や右陪席裁判官と同等に議論し、自分の意見を述べることができます。もちろん職責の大きさは、はかりしれません。私の判断が、当事者の人生をも左右することになるのですから。時には難しい判断を迫られ、立ちすくむこともあります。けれど悩みに悩んだ末に、正しいと信じられる一つの結論を導き出せた時、「この仕事を選んで良かった」という思いを改めて強くします。

 
教授、学生同士と議論する環境で 法曹に不可欠な洞察力が養われた

もともと立命館大学法学部に進学したのは、学問としての「法学」に興味を抱いたからでした。けれど学ぶうちに、法を現実社会に適用し、紛争を解決するという「目に見える形」で活用することに魅力を感じるようになりました。母校の法科大学院を選んだ理由は、一つには4年間慣れ親しんだ環境で勉強に専念したかったからですが、決め手になったのは、教授と学生の距離が近い大学の雰囲気です。教授であっても気軽に疑問をぶつけることができ、また教授も真剣に応えてくださる。法科大学院でもきっと、そうした学びを得られると思ったからでした。期待は裏切られませんでした。法科大学院にも、授業やオフィスアワー、またキャンパスのさまざまな場所で、教授を相手に、あるいは学生同士で、議論する機会が実に豊富にありました。法曹の仕事は、人間や社会に対する深い洞察力が求められます。人と議論する、自分の意見をわかりやすく相手に伝える、あるいは他の人の意見に耳を傾け、理解するといった経験を通して、法曹に不可欠な力の基礎が鍛えられました。

 
調査・検討、レポート作成の機会が 論述問題突破のトレーニングになった

授業でおもしろかったのは、「リーガルリサーチ&ライティング(LR&W)」です。毎回、教授が出題するテーマについて、学生が法的な問題点を調査・検討し、レポートにまとめて提出。その後の授業で解説が行われます。テーマは、「人の死の定義について」など、簡単には答えの出ない難解なものばかり。判例や法律雑誌、テーマに関連する文献を調べ、自分なりに検討結果をまとめることで、多様な知識や思考力が身につきました。それに加えて良かったのは、授業の後、一度提出した課題をまとめ直し、再度添削を受けられたことです。足りなかったところを気づき、より完成度の高いレポートに仕上げる中で、文献の調査や情報収集、法的な書面を作成する力は格段に上がりました。この他にも、判例をさまざまな角度から丹念に検討する授業など、法科大学院の授業は、常に具体的事例を意識しなければならないものばかりでした。とりわけ新司法試験では、長文の論文問題から法的論点になる事実を的確に拾い出し、解釈する力が求められます。情報収集や文章作成の他、一審、二審の判決文をもじっくりと読み解き、判例の意義を検討する授業が、論述問題を突破するトレーニングになりました。

裁判官としての道はまだ始まったばかりです。日々の事件を解決することを通じて、社会正義の実現に近づく一助となることが目標。2011年4月からは、行政庁で新たな仕事に携わる予定です。さまざまな経験を積んで、いっそう成長したいと思っています。