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加藤周一文庫


2016.04.01
   

 加藤周一を理解するための推薦図書

 平井嘉一郎記念図書館の開館に合わせて「加藤周一文庫」が開設された。加藤周一(1919―2008)は戦後日本を代表する国際的な知識人である。「国際的」という意味は、国際的問題に通じているということではなく、加藤の言説が国際的にも高く評価されたという意味である。加藤は日本文学史や日本美術史を国際的比較の下に研究したが、もう一方では、たえず政治的問題にも関心を示した。それはみずからの自由を守るための方法であり、晩年は「九条の会」の呼びかけ人のひとりとして、憲法第九条の堅持を訴えつづけた。
 長らく本学国際関係学部の客員教授を務め、国際平和ミュージアムの初代館長に就き、本学との縁が深いことを尊重された御遺族は、蔵書、手稿ノート、資料類を本学に寄贈された。これら蔵書や手稿ノートの整理作業を本学図書館は続けてきたが、このたび「加藤周一文庫」として開設する運びとなった。
 「加藤周一文庫」開設を機に、加藤周一を理解するための図書を推薦することを図書館から求められたが、図書の選定にあたって本学の加藤周一研究会の客員研究員半田侑子氏の意見も参考にした。加藤の自著を9冊と加藤に関する論著を6冊選んだが、そのなかに拙著も含まれる結果となり、拙著をみずから紹介する愚を避けるために、その紹介文は半田氏にお願いした。
  二〇一六年四月一日

鷲巣 力 

略歴
鷲巣 力(わしず つとむ)1944年東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、平凡社入社。「加藤周一著作集」や「林達夫著作集」などの書籍編集、『太陽』編集長を経て、取締役となる。平凡社を退社し、フリージャーナリストとなる。東京大学、明治学院大学、立教大学、跡見学園女子大学で非常勤講師。かわさき市民アカデミー運営委員兼講師。現在、立命館大学招聘研究教員兼文学部非常勤講師。ジャーナリズム論、戦後思想史。著書に『自動販売機の文化史』(集英社新書)、『公共空間としてのコンビニ』(朝日新聞出版)、『加藤周一を読む』(岩波書店)、『「加藤周一」という生き方』(筑摩選書)など。

加藤周一文庫
加藤周一文庫開設記念講演会
【立命館土曜講座 2016年5月】いま「加藤周一」を再考する 



『日本文学史序説』
 加藤 周一 著 (筑摩書房 , 1999)

 加藤の主著というべき日本文学通史。文学の概念を広くとり、小説や詩歌にとどまらず、思想・宗教書から農民一揆の檄文までを文学として捉える。また、日本文学は、外来思想と土着的世界観との接触が繰りかえされ、そのなかで変化を遂げ、あるいは持続を保ってきたことを論ずる。本書が精神史、文化史とされる所以である。本書は7ヵ国語に翻訳され、海外の日本文化研究者にとって必読文献である。『『日本文学史序説』補講』(ちくま学芸文庫)もあり、併読を薦める。


『日本その心とかたち』
 加藤 周一 著 ; スタジオジブリ 編 (スタジオジブリ , 2005)

 「かたちは外在化された精神である」という美術に関する基本的な考え方に立つ。『日本文学史序説』と同じく、日本精神史、日本文化史として読むことができる。しかし、通史にはなっておらず、日本美術史から10の主題を選んで、その主題について論じられる。本書にはいくつかの版があり、それぞれ叙述が若干異なるが、スタジオジブリ版は最終稿をもとに編集され、あらたに「アニメーション」の章を加え、図版も多用されるので、スタジオジブリ版を薦める。


『日本文化における時間と空間』
 加藤 周一 著 (岩波書店 , 2007)

 『日本文学史序説』や『日本 その心とかたち』に連なる加藤の日本精神史、日本文化史の集大成として書きおろされた。文学や美術にとどまらず、建築や宗教から日常の生活習慣までを視野に収めつつ、海外、ことに西欧の文化と比較しながら、日本人の時間意識と空間意識の特徴を明らかにする。加藤に従えば、日本人の時間・空間意識は、「いま・ここ」主義に収斂される。日本社会を理解しようとするとき、本書はきわめて刺激的である。


『羊の歌 : わが回想』
 加藤 周一 著 (岩波書店 , 1968)

 1000冊余の岩波新書のなかで、売上ベスト3を誇る超ロング&ベストセラーである。加藤の40歳までの半生記。「平均的日本人」の自分がいかに時代のなかでつくられたかを綴ったと加藤は記すが、本書に描かれるのは、日本人に稀なる自立した精神をいかに保持しつづけたかが述べられる。歴史が一回転したことを痛感させられ、今日、歴史の岐路に立つ現代日本人にとって示唆に富む書。40歳以降の人生は『『羊の歌』余聞』(ちくま文庫)に述べられる。


『私にとっての20世紀』
 加藤 周一 著 (岩波書店 , 2000)

 1919年に生まれ2008年に亡くなった加藤は、人生の9割を20世紀に生きた。20世紀とは、戦争の世紀であり、科学技術の世紀であり、社会主義の世紀であり、大衆の世紀である。20世紀が提起した諸問題を加藤はどのように考えたかが語られる。20世紀を語ることは、とりもなおさず加藤自身を語ることである。したがって、加藤のもうひとつの半生記であると同時に、20世紀の問題を引きついで21世紀を生きる人びとに対する問題提起の書である。


『加藤周一が書いた加藤周一 : 91の「あとがき」と11の「まえがき」』
 加藤 周一 著 ; 鷲巣 力 編 (平凡社 , 2009)

 加藤の自著の「あとがき」91点と「まえがき」11点からなる書である。加藤の著書は170冊を超えるが、その大半に「あとがき」もしくは「まえがき」がつけられる。それらには共通する特徴がある。その著書が書かれた時代について述べ、なぜそのような著書を書いたかに触れ、加藤自身がその頃にどこで何をしていたかに及ぶ。それゆえに「あとがき」と「まえがき」を集めて、これを読めば、おのずともうひとつの『羊の歌』になるのである。


『歴史・科学・現代 : 加藤周一対談集』
 加藤 周一 著者代表 (筑摩書房, 2010)

 もともとは1973年に加藤の初めての対談集として刊行された書である。対談の相手は丸山眞男、湯川秀樹、久野収、渡辺一夫、西嶋定生、笠原芳光、ジャン=ポール・サルトルらである。戦後知識人たちの丁々発止の対談集であるが、加藤の考え方が色濃く映し出される。加藤の思考法は科学的な論理実証主義を基本とし、歴史のなかに現代を認識し、現代のなかに歴史を発見するという方法に貫かれる。その意味では、加藤の基本的方法を把握するのに適した書である。


『夕陽妄語』
 加藤 周一 著 (筑摩書房 , 2016)

 朝日新聞紙上に24年にわたって書きつづけられたコラム集である。文学、美術、映画、演劇、国内政治、国際政治、交友録……コラムが対象とする範囲はきわめて広い。しかし、対象が広いことだけが特徴ではない。さまざまな問題が全体的に捉えられ、問題が重層的に論じられることも特徴である。いずれも原稿用紙6枚から7枚ほどの短文であるが、短文であるがゆえに「芸」を尽した文章を綴る。加藤の文章芸を愉しみ、かつ学ぶのに相応しい書である。


『加藤周一セレクション』

『科学の方法と文学の擁護』
 加藤 周一 著 ; 鷲巣 力 編 (平凡社 , 1999-2000)
『日本文学の変化と持続』
 加藤 周一 著 ; 鷲巣 力 編 (平凡社 , 1999-2000)
『日本美術の心とかたち』
 加藤 周一 著 ; 鷲巣 力 編 (平凡社 , 1999-2000)
『藝術の個性と社会の個性』
 加藤 周一 著 ; 鷲巣 力 編 (平凡社 , 1999-2000)
『現代日本の文化と社会』
 加藤 周一 著 ; 鷲巣 力 編 (平凡社 , 1999-2000)

 ひとりの作家・思想家を究めるには全集を読むにしくはない。しかし、入門者が最初に読むときには選集でもよい。本選集は加藤の著作のうち入手しにくい著作を中心に収録することを編集方針に掲げており、上掲の諸著書のうちでダブるのは、全5巻のうち第3巻「日本美術の心とかたち」のみである。全5巻という小編成ながら、加藤の全体を理解するのに有効であり、廉価でもある。本選集をきっかけにして、さらに先に進むことを望む。


『加藤周一 : 二十世紀を問う』
 海老坂武著 (岩波書店 , 2013)

 言葉を大事にした加藤にとって「生きる」こととは「言葉で表現する」ことだった。加藤が20世紀をいかに生きたかを辿りながら、加藤が「表現した言葉」を再読することが本書の主題である。加藤は「考え得る限りのことを考え、書き得るかぎりのことを書き、おのが志を明確に伝えたのである」と著者はいう。加藤こそ知識人の名に値する知識人であり、知識人として生きようとする者は、加藤の考えた問題を避けて通ることができない。


『加藤周一と丸山眞男 : 日本近代の「知」と「個人」』
 樋口 陽一 著 (平凡社 , 2014)

 憲法学者である著者が、戦後日本の代表的知識人である加藤周一と丸山眞男の著作から「憲法論」を析出させる。加藤の「雑種文化論」や丸山の「弁証法的な全体主義」を題材にして、これらが「憲法学」上に示唆する問題を探りだす。そして「憲法制定権力」という、今日の政治的争点である改憲論議の基本をなす問題について考える。さらに憲法を国家の基本法として捉えるのではなく、個人の尊厳の基本法として捉える考え方を導きだす。


『加藤周一を記憶する』
 成田 龍一 著 (講談社 , 2015)

 加藤の全活動の原点は戦争体験にある。戦争体験はふたつあり、ひとつは戦時下に軍国主義的イデオロギーの軍門に次々と下って行った知識人の行動である。もうひとつは敗戦直後の日本人が知識人も大衆も「鬼畜米英」から一夜にして「米国万歳」に変貌した行動である。加藤が「敗戦後」に問題としたことを主題に据えて、加藤が何を考え、何を問題としたかを「記憶」にとどめることによって「戦後日本」を再検討しようとする書である。


『丸山眞男集別集』第3巻: 1963-1996
 丸山 眞男 著 ; 東京女子大学丸山眞男文庫編 (岩波書店 , 2014)

 39年にわたり編集者として、また若い友人として、加藤を支えた鷲巣力氏と「歴史意識の『古層』」論などで加藤に多くの示唆を与えた丸山眞男との対談「『加藤周一著作集』をめぐって」を収録。加藤の仕事、加藤が置かれていた状況や時代背景、加藤批判についての丸山の貴重な肉声が記録されている。加藤を「文学者」と捉え『序説』におけるその文体の特徴や魅力を津田左右吉との対比において鮮やかに浮き彫りにする。(半田侑子)


『加藤周一を読む : 「理」の人にして「情」の人』
 鷲巣 力 著 (岩波書店 , 2011)

 「自選集」の各巻巻末には編者である鷲巣氏の解説が付され、そこに大幅に加筆して著されたのが本書である。「自選集」が編年体であるため、本書も時代を追って書かれる。加藤の生涯を大きく三つの時期に分け、多領域にわたって執筆した加藤の著述活動を整理しているが、そこに貫かれているのは、詩人の魂と科学者の明晰さを持ち合わせた稀有な作家の姿である。加藤を知らない読者には加藤入門として最良の一書である。(半田侑子)


『「加藤周一」という生き方』
 鷲巣 力 著 (筑摩書房 , 2012)

 『加藤周一を読む』は加藤の生涯の執筆活動の大きな枠組みと全体像が描かれ、公的な側面が主題であったが、本書は加藤のより私的な側面に踏み込み加藤の人生と加藤の思想および行動の有機的な結合を解明しようと試みる。ふんだんに紹介される未発表資料は加藤の死後、立命館大学に寄贈されたものであるが、そこにはパートナーの矢島翠氏へ送った情熱的な漢詩なども含まれ、加藤の豊かな愛情や感性を知ることができる。(半田侑子)


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