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大坂博幸先生(理工学部) お薦め本

  大坂博幸先生の研究概要
   

「 πの歴史」
   ペートル・ベックマン著、田尾陽一・清水韶光訳(ちくま学芸文庫)

 一時期小学校で円周率(=円周/直径)πを3と教えるかどうかで問題となったが、円周率の存在は紀元前2000年頃のバビロニアやエジプトで知られており、3+1/3 を近似値として利用していた。その後アルキメデスは円に内接する多角形の周の長さで近似値を求めており、この方法は19世紀後半の無限乗積・無限連分数がイギリスで発見されるまで乗り越えられなかった。その後発見された微積分を用いて導かれたグレゴリー・ライプニッツ級数(232ページ参照)arctanχ=χ-+...(χ=1のとき、 +... )は現在でもπの近似値を導くアルゴリズムに登場する。 πは、有理数ではなく、超越数(整数を係数とする代数方程式α01χ+α2χ23χ3+...+αnχn=0 の解にならない複素数をいう。ランベルト、ルジャンドル、オイラー、リウヴィル、エルミートの研究を踏まえて1882年にリンデマンにより πの超越性が証明された)と呼ばれる数であり、しかも機械工学、電気工学では避けられない重要な数である。となると、 πを3として使うのは失礼である。この本により πを巡る科学史を知るであろう。


「京都人は日本一薄情か」
   倉部きよたか著(文春新書)

 表題は京都人にとってはどっきりすることかもしれないが、日々京都人に振り回されている門外人にとって少しは役に立つ本である。中身は表題と異なり大部分は小坊主として大徳寺に入り二年で追い出された著者の京都今昔案内である。「3代続いてようやく京都人として認められる」、「前の戦争は応仁の乱」といろいろ京都にまつわる言葉はあるが、さすが1200年の首都として歴史のある人々との付き合いは難しく日々私は面を食らっている。  しかし、この本に書かれてあるように(121ページ参照)京都人同士の会話でもその軟らかい表現に刃をちらつかせているのを知り少しは安心する。


「すごい製造業」
   中沢孝夫著(朝日新書)

 日本の「モノづくり」の力が弱まってきていると昨今取り上げられているが、著者は杞憂にすぎないと強調している。
以下、箇条書きで本の要点を書くと:

  • 大切なのはキーパーソン。機械はお金を出せば手にはいるが、その機械を扱う技術者・技能者は「半年待ちでは手に入らない」。
  • 言葉の「壁」が関係ない分野は日本が圧勝。例えば、「モノ」作りの技術、ゲームソフト、数学等。
  • 技術とは「アイデアをモノに変換する力」であり、絶えざる革新を遂げる「知力の総合」を意味する。
  • ブランドとは物語をもっている。
  • 絶えず「新しい仕事」を構想しないと「いつもある仕事」も細ってしまう。忙しいときこそ、新規の仕事・取引先を開拓する。
  • 「良い会社」とは自らを語る(説明をする)中身と言葉を持っている。
  • 仕事上で大事なことは、マル、バツで判断を即断しないこと。明瞭でない領域をどのように扱うかが大切。
  • 大切なのはあくまでも付加価値の高いモノを作る「技術」と「開発力」。


「インテリジェンス 武器なき戦争」
   佐藤優、手嶋龍一著(幻冬舎)

 インテリジェンスとは、精査し、裏をとり、周到な分析を加えた情報らしい。 ただ単に収集したものは情報の素材であり、それを分析し国家の舵取りに役立つ形で報告されなければインテリジェンスとしての価値はない。そのような分析をするためには国際的な人脈が必要となる。著者の二人はそれぞれ豊富な人脈をもっており、特に佐藤氏は外務省のラスプーチンといわれ鈴木宗男氏と同時に逮捕され今は外務省休職中の身。両者とも現在の日本にないインテリジェンス・スクールを作りかつて日本に存在していたインテリジェンス・オフィサーの養成を強調している。最近佐藤氏は新聞、文壇で活躍をしており注目しては如何!?


「意識とはなにか」
   茂木健一郎著(ちくま新書)

 最近テレビや雑誌で活躍をしている脳科学者である茂木さんの提唱する「クオリア」に関する易しい入門書である。「クオリア」とは、「様々な関係性、文脈が反映された認識の結果をユニークな質感として把握する脳意識の働き」(78ページ)である。普段は何となく、言葉や物に付随する各個人の感じる色、質感と思って良い。日々肉体的に変化している「私」が昨日から明日へ時が流れても正確的に同じ「私」であると認識する。何故であろうか?本を通じて提唱される「あるもの」が「あるもの」としてあることを感じる不思議ワールドに読者を誘うであろう。


「東洋的な見方」
    鈴木大拙著(岩波文庫)

 日々我々が勉強している科学的な学問(数学、物理、化学など)で東洋的なものはあるであろうか?日本は、明治維新以来、西洋に追いつけ追い越せで「和」的なものを多く捨て、「西洋」的なものを効率的に受け入れてきた。その学問に共通する方法は、「細かく分けて調べ全体を理解する」という二元的である。例えば、生物を理解するのに、その生物のDNAを解析し遺伝子の仕組みを解読することにより、その生物全体が理解できると信じている。果たしてこれは正しいのであろうか?著者は日本的禅思想を世界に伝えた第一人者であるが、読者はこの本を通して著者の思想の断片を知ることができるであろう。関連する著者の本で取り上げられているように、1=∞ である「色即是空」の教えが21世紀の科学に必要なのではないであろうか?


「理系白書」
   毎日新聞科学環境部著(講談社文庫)

 巷において大学について書かれている本が多いが、大抵は文社系の視点からであり、理系について触れられているのはあまりない。この本は社会で正当に評価されない日本における理系の現状について解説されている貴重な本であり、日々理系的な仕事に携わっている人々の声を集めている。「理科離れ」、「モノづくり教育」の重要性が叫ばれている中、果たして社会は魅力ある未来を若い世代に提示できるのか?早急に社会を支える技術者に正当な富を分けていただきたい。


「数学の創造者」
   B. アルトマン著、大矢建正訳(シュプリンガー東京)

 聖書と同じくらい世界で読まれているユークリッド原論の入門書である。「幾何学に王道無し」という言葉で知られているが、原論は初等平面幾何、数論、無理数論、立体幾何という構成になっている。分数表示を用いなかった古代ギリシアでは線分比で数量を量っていたが、整数比で表せない数、無理数を発見するに至り、無理数論の世界に入っていくことになった。その後、19世紀にカントールから始まる無限理論において再検討される。社会に出て直接役に立たないが、この本を読み進んでいく内に自然に数学的論理が身についていく。また、高校時代に学んだであろう二次方程式の解と係数の関係が、ディオファントスにより触れられていることに驚くであろう。ディオファントスの著書「算術」の愛読家であったフェルマーの最終定理( , n>3 を満たす自然数の組(x, y, z)は存在しない。)が解決されたのが1996年であったように、現代数学に古代ギリシアの思想の陰が未だに存在していることを知るであろう。


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