立命館大学図書館
Ask a Librarian(利用相談) よむりす
区切り線
蔵書検索(RUNNERS)
サイト内検索
 
展示・イベント
TOPページ > 図書館へ行こう! > 先生のお薦め本

佐藤 善治先生(スポーツ健康科学部)

佐藤 善治先生の研究概要
   
今回のテーマ:「生涯スポーツの時代における、スポーツ学習・指導のあり方を考える」ための推薦図書
  
『スポーツ指導の基礎 : 諸スポーツ科学からの発信』
   永島惇正編著(北樹出版、2000年)
『生涯学習生活とスポーツ指導』
   永島惇正編著(北樹出版、2000年)
『地域スポーツの指導』
   永島惇正編著 (北樹出版、2000年)

 日本のスポーツ指導は、学校体育や学校運動部あるいはチャンピオンシップ・スポーツのなかで生まれ、深められてきた。だが、生涯スポーツにおける指導のあり方を考えるには、今日のスポーツの姿をもっと広い視野からとらえ直すことやスポーツ科学諸分野の進んだ知見を総合的に取り入れることが必須である。この3巻のシリーズは、そのことを端的に示している。第1巻では、個別の研究分野から、最近の研究成果を生涯スポーツの指導にいかに活かすかの提言が述べられる。第2巻では、ライフステージごとの中心的な課題について、実践に携わる研究者たちが執筆している。第3巻では、生涯スポーツの中心的な場である地域スポーツについて、経済学、社会学、経営学からのスポーツへのアプローチと知見を参考に、スポーツ教育学からの視点をより強く打ち出してスポーツの健全な発展方向を提言している。3巻でより大きな1冊だと考えて読むことを勧める。


『アメリカスポーツの文化史 : 現代スポーツの底流』
   小田切毅一著(不昧堂出版、1982年)

 生涯スポーツを考えるときの、大きなテーマの1つは文化である。無力な存在としてこの世に生を受け、家庭(家族)、学校、社会の環境との相互作用を経て、私たちは真の意味で人間となる。自然に対する適応とともに文化的適応は人間らしさを形成する基礎である。
 どちらの側面からも、いまやスポーツ文化は私たちに影響を与えている。そしてスポーツもそれが生まれ育った社会の影響を強く受けている。
 本書は、新大陸に移入したスポーツ文化が、アメリカの社会形成とともにアメリカ型スポーツ様式としてのナショナルゲームの展開に結びつき、後の競技志向だけでなく大衆文化としての普及過程をいかに可能にしたか等々、アメリカ社会の発展とスポーツ文化の関わりについての研究成果を展開している。今日、日本の文化がアメリカ文化に多く影響を受けるのと同じように、スポーツ文化を通じてそれがあてはまる。
 プレイやゲーム・マッチの背後にある、スポーツに対する見方・考え方にこそ、人びとが追い求める文化的価値がある。生涯スポーツは、このことに貫かれた、人びとの思想信条、謝意的立場・地位を横断した営みであると、私たちは強く考えさせられるだろう。


『フロー体験喜びの現象学』
   M. チクセントミハイ [著](世界思想社、1996年)

 生活、仕事、文化活動など、どのようなことであれ長年継続し、自分なりに挑戦し続けている人は、実現するための1つの能力を獲得している。それと同時に、共通の意識の体験をもっている。物事を行っているとき、注意が自由に個人の目標達成のために投射されている状態で、行為者は流れているような感じの最適あるいは至高の経験をもつ。著者はこれをフローと呼んだ。正反対なのが、苦痛、恐れ、激怒、不安、あせり、いらだち、たいくつなど、不安定の状態である。フロー体験、つまり喜びや楽しさをもたらす現象場面には、8つの構成要素の複数が存在していることを論じている。
 スポーツ活動は、多くがこの構成要素を含んでおり、実践者がどのようなレベルであれこの共通体験を提供する仕組みをもっているのではないか、と仮定できよう。一般向けに書かれた書物というだけでなく、訳者がスポーツ社会学の研究者であり、原著者との交流も深いと紹介されているので、翻訳文もこの種の書物としては読みやすくなっているのかもしれない。


『運動行動の学習と制御 : 動作制御へのインターディシプリナリー・アプローチ 』
   麓信義編(杏林書院、2006年)

 運動行動、学習、制御という語から推察されるように、本書は、心理学、運動生理学、工学、神経生理学、教育学、等々の分野の研究者が、運動行動に関する研究の方向と最近の知見について論述したものである。スポーツ指導の過程では、理論と実践の関わりや往復が重要だとよく言われるが、これと並行する学習過程には本当に未解明のことがらが数多く介在していることが、本書を通じて分かるだろう。
 心理学や科学的知見が重要だと指摘される反面、つじつまを合わせた主観的な判断や思い込みでことがらを進めていくことが指導過程には本当に多くある。スポーツ教育を勉強する人には是非読んでもらいたいものである。


『エコロジカル・マインド : 知性と環境をつなぐ心理学』
   三嶋博之著(日本放送出版協会、2000年)

 スポーツという形式的な文化型への運動適応は、誕生してからずっと後のことである。自然の重力環境に対する姿勢制御や移動運動、あるいは四肢と道具の操作を通じた対象物への働きかけなどでは、とくに人間は乳幼児の段階から著しい柔軟性と適応性を示す。本書は、それを「ダイナミカルな身体」「自己組織化する身体」と呼び、人びとが周囲環境の何を知覚あるいは認識し、行為との結びつきを作りあげているかを紹介している。生態心理学とダイナミカル・システムズ・アプローチという工学分野の手法とを基盤にして、スポーツ活動のもう一段階基底的部分にあたるヒトの身体運動について考える道筋を、本書は平易に教えてくれる。


『コーチングの思考技術』
   Diamondハーバード・ビジネス・レビュー編集部編訳(ダイヤモンド社、2001年)

 スポーツ指導(者)といえばコーチング(コーチ)が言葉に発せられ、イメージされる。それほどスポーツの分野ではポピュラーである。だが、プレイや身体づくりに対する効果的指導に関するか、もしくはスポーツを通じた人生の師弟関係のような研究構想やとらえ方が概して多いと言える。本書はハーバード・ビジネススクールの機関誌のなかに掲載された論文をいくつか集めたものである。組織を構成するメンバーの自己変革を求め、そのための手段・内容として「コーチング」という用語が経営の分野でも開発されている。
 とくに、総合型地域スポーツクラブでは、スポーツのプレイやトレーニング科学の内容を「できる」「分かる」だけでなく、「支える・方向づける」人材こそが今や求められる必要があるのではないか。その考え方の枠組みを、本書は平易に提供してくれる。


『ジュニアスポーツの心理学』
   フランク・スモール, ロナルド・スミス編著(大修館書店、2008年)

 本書のタイトルにジュニアという語が含まれるが、原著タイトルにはない。色々な契機でスポーツに導かれる子どもたちは、質的に異なった複数の種目に触れる経験を積めるか、どの種目で何歳ごろから、どこのクラブに所属して、どのようなコーチングをうけるか。スポーツがもっている積極的な価値の恩恵をどの程度受け取れるかには、周囲環境の影響が多様に及んでいる。我が国の状況でいえば、高校卒業時ぐらいまでを想定して本書の内容を把握することが求められる。スポーツから十分な恩恵を被っている子どもがいる反面、身体的な無理あるいは対人的な不安に晒され、最悪の場合はスポーツから遠ざかることになっている子どもたちも少なからずいる。競技スポーツのもつ大きな価値に、一面的、一直線的にアプローチすることの危うさを認識し、かつスポーツに取り組む子どもたちを多面的に理解することは、ジュニア期を通じて多様にかかわる「大人たち」の責任であろう。本書はこのことを理論的にも実践的にも教えてくれる。


『体育・スポーツ指導のための動きの質的分析入門』
   Duane V.Knudson, Craig S.Morrison著(ナップ、2007年)

 質的分析とは、計測で得た数値情報に基づくのではなく、運動の質について主観的に判断する、という意味である。スポーツ科学に基づく指導という場合には、観察・計測で得た量的分析の結果を基にすることをいう。しかし、実際の指導場面では、多くの言葉が指導者と学習者の間で交わされている。指導者からは見本、注意、矯正、評価、称賛など、学習者からは確認、感想、疑問、困難、調子やリズム等々、に関係した言葉が発せられる。
 これらは多くが、動作の質に関係した、その人の認識レベルにふさわしい形での言語表現である。言葉の問題ではなく、運動・動作を量的な側面とともに質的な側面から見ていくことの価値について、指導だけでなく学習という側面からも一層深く考えることができる書物である。


『生涯スポーツの心理学 : 生涯発達の視点からみたスポーツの世界』
   杉原隆編著 ; 高橋正則 [ほか] 執筆(福村出版、2011年)

 本書の編集内容と方針を、副題が的確に言い表している。生涯学習社会をともに生き抜いていく個々人の発達をとらえる場合、スポーツ諸科学は、従来、青年男子の行う競技スポーツを中心に、幼年から青年中期に至る発育期の身体および運動機能の向上、ならびに文化活動に参加する意欲と知識・技能の発達に多く焦点をあてていた。乳幼児から高齢期まで生涯発達のなかでの各ステージで、スポーツ健康は、人生をよりよく生き抜こうとする人びとの基底面を形成し、地盤を堅固にする。
 従来から重視されている成長期の心身の発達課題に加え、競技スポーツ、レクレーショナルスポーツ、リハビリテーション等々、人びとは生涯を通してスポーツと多様な関わりをもつ。スポーツに関する自然科学的な知見と社会問題への科学的アプローチが具体的課題に対してどのように統合されるのか、本書はその視点の形成におおいに参考となる書物である。


『生涯学習の基礎』
   鈴木眞理, 永井健夫, 梨本雄太郎編著(学文社、2011年)

 生涯学習社会の到来と言われて久しい。それと並行して生涯スポーツという使われ方が一般に定着している。①生涯にわたるスポーツ活動(の総体)と②それらを形成するのに必要となる環境整備の推進、の二側面をさす用語として使われる。①は個人行為をさし示し、②は社会的な目標や支援のシステムのことをさす。この2つの側面から生涯学習社会と生涯スポーツを理解することが重要である。
 家庭、学校、社会を通じて個人が生涯にわたって学習することを求める社会の到来はいかなる文脈で生じたか。学習課題や内容、機会については、いかに問題整理できるか。本書は、教育学の分野からテキストとして発行されたもので、直接スポーツと関係ないように感じられるかもしれない。だが、生涯スポーツの背景にある現代社会のスポーツ文化「領域教育学」の問題として先の①と②の側面から大きくとらえるには、本書で基礎を固めておく必要があると思われる。



区切り線