多軸応力下における低サイクル疲労寿命およびき裂進展挙動に関する研究

澤田 正英

本論文は,多軸低サイクル疲労寿命およびき裂進展挙動研究として2編5章から構成されている.第1編では,SUS304ステンレス鋼および1Cr-1Mo-1/4V鋼の破損モードと高温2軸低サイクル疲労寿命の関係について,第2編では,SUS304ステンレス鋼の低サイクル破損モードがひずみ範囲によって変化する点について研究を行った.

第1編第3章においては,923K大気中のSUS304ステンレス鋼の薄肉中空円筒試験片を用いて,引張・圧縮-繰返しねじりの多軸低サイクル疲労におけるき裂挙動と寿命評価パラメータについて考察した.また,第4章において,823K大気中のlCr lMo 1/4V鋼の非時効材および時効材について第3章と同様の研究を行った.

SUS304ステンレス鋼およびlCr lMo 1/4V鋼の主き裂および副き裂は,主ひずみ比の増加に伴ってモードT型からモードU型へと遷移することを明らかにした.また,微小き裂は表面の酸化の影響を受けて,すべてモードT型であることを明らかにした.

一方,多軸低サイクル疲労寿命評価のためのひずみ基準パラメータとしては,ひずみ基準では,Γ plane パラメータ, Γ* plane パラメータ,CODに基づく相当ひずみ,最大主ひずみが,応力基準では, CODに基づく相当応力が,SUS304ステンレス鋼およびlCr lMo 1/4V鋼の非時効材については適していることを明らかにした.ただし,lCr lMo 1/4V鋼の時効材については,応力基準のパラメータを用いた場合には,破損繰返し数が非時効材から大きく低寿命側に整理される結果となり,応力基準のパラメータを用いる場合には,時効の影響を適切に考慮する必要があることを指摘した.

第2編第5章では,SUS304同ステンレス鋼の中空円筒試験片を用いて,室温下で繰返しねじりの低サイクル疲労試験を実施し,き裂方向のひずみ範囲依存性を考察した.主き裂のひずみ範囲の低下に伴う,最大せん断ひずみ方向から主ひずみ方向への遷移は,微小き裂がモードUからモードTに分岐する際の臨界き裂長さと密接に関係していることを実験的に示した.さらに,モードT型き裂とモードU型き裂では,き裂のアスペクト比が異なっていることを示すとともに,エネルギー解放量の点から,き裂進展方向の優先的な方向を考察した.