立命館大学人文科学研究所は、グローバリズムが、政治や経済、文化や社会の諸領域に生み出している諸問題を理論的に解明し続けています。

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2011年度 人文科学研究所 助成プログラム

「戦後沖縄の基地・都市」研究会

研究課題 戦後沖縄の基地周辺における都市化の歴史地理
代表者 加藤政洋(文学部・准教授)
研究計画の概要

本研究の目的は、戦後の沖縄島を事例として、米軍の占領下そして軍政府の統治下という特異な条件のもとで、いかにして都市の再建ないし建設が成し遂げられたのか、その過程に米軍がどのように介在したのか、さらには広大な土地を占有し多くの軍属人口を抱える「例外空間」とでもいうべき基地が都市形成にいかなる影響を及ぼしたのかを分析し、戦後期の都市建設に固有の理念や空間的な論理を地理学的な観点から明らかにすることである。

具体的には、占領下で米軍が直接/間接に介入し、強度の差こそあれ諸アクター(米軍政府、民政府、自治体、地主…)のネゴシエーションを経て市街地の形成を見た4つの都市――那覇市(旧真和志市を含む)・宜野湾市・コザ市(当時)・金武町――を事例に、以下の3点について調査・研究を進める予定である。

1)米軍統治下にあって、琉球政府の首都として再建された那覇市について、周辺市村(真和志市・首里市・豊見城村)との関わりもふまえながら、都市計画の理念と実際の過程を追究する。

2)「歓楽都市」と称されたこともあるコザ市を中心に、米軍基地の周辺に形成された歓楽街の成り立ちと現況を、歴史地理学的に跡付ける。

3)地上戦と戦後の都市化過程で改変された景観について、戦前・戦後の地形図をベースに復原する。

米軍との関わりのなかで、あるいは基地周辺に形成された都市の地理を歴史的過程に照らして明らかにすることは、今後の再開発・土地利用の方策を探る上でも重要であろう。また、現在の研究状況とその論点を考えるならば、基地それ自体に照準する事例は多く見られるものの、隣接する都市空間は単に「市街地」と表現されるか、主要な施設をもって説明されるばかりで、その多様な構成要素と現状までをも含めて捉えられていないきらいがあることも否めない。そうした点において、コンタクトゾーンとしての役割を果たしてきた「空間」として基地周辺地域を捉え返し、その物的性格のみならず、社会性の次元をも明らかにしたいと考えている。

研究成果の詳細

助成プログラム初年度における主な成果は、① 戦後那覇における都市空間形成の歴史地理に関する概要の把握と問題点の析出、これと関わって②那覇市の公報『市民の友』(第1~第3集)の見出しのデータベース化、そして③ 旧越来村(コザ市)における都市化の初期局面に関する概要の把握を挙げることができる。

まず①であるが、第1回目の研究会において、研究代表者の研究成果である『那覇 戦後の都市復興と歓楽街の形成』(2011年)を合評し、戦後那覇の都市形成に関する詳細な検討を加えた。そこでは、米軍による総体的な領有状態から部分的かつ段階的に土地の開放が進むとともに、1950年を前後するころから急激な市街地化を経験したことが確認された。とりわけ注目すべきは、従来、「自然発生的」とされてきた市街地の形成には、ある程度の計画性が含まれていたことが明らかにされたことである。また、随所に勃興した商業中心の盛衰と移動についても検討が加えられた。ただし、戦後の市町村合併――なかんずく先行して小禄村と首里市を合併した那覇市と(当初は合併を拒否した)真和志市との合併に――にまつわる空間の政治(ゲリマンダリング)に関する分析は、今後の課題として残されている。

同じく那覇に関しては、基礎的な資料を整理すべく、『市民の友』(第1~第3集)の見出しをデータベース化した。記事を瞥見すると、都市計画その他にまつわる貴重な情報が含まれており、今後の活用に資するものと考えられる。

次いで③の旧コザ市の都市形成についてであるが、第2回目の研究会で軍政府主導の「ビジネスセンター」構想、ならびに当時秘密裏に建設の進められた歓楽街「八重島」を素材にして、都市計画の初期局面に関する検討がなされた。①の議論(研究会における討論)において、公的文書を用いた分析の必要性が指摘されたため、沖縄市役所総務部総務課市史編集担当者の協力を得て、地図・写真その他の資料ならびに情報を提供してもらい、地図化の作業と合わせて歴史地理学的な分析に着手している。その成果の一端は、研究代表者の論考として『KOZA BUNKA BOX』第8号に掲載されているが、本件に関わる成果の要旨をかいつまんで述べるならば、空間の総体的領有状態から、部分的に開放された土地を基盤に都市が形成される過程において、占領者との社会政治的な折衝を通じ、〈表〉と〈裏〉、あるいは〈光〉と〈影〉の空間とでも呼ぶべき、商業地区としての「ビジネスセンター」ならびに歓楽街としての《八重島》が生産されたのである。両者は表裏一体、まさにコインの両面というべき双生の空間であった。そして、〈表〉と〈裏〉をなす二つの地区開発が、「都市計画」の骨格をなしたということ自体のうちに、基地周辺地域に固有の「空間の生産」の論理をはっきりと読み取ることができた、ということになる。

開催日時 2012年3月3日(土) 15:00- 創思館 405教室
テーマ ①「フランス語」という空間形成―植民地帝国の変遷とフランコフォニーの創設-
②米軍統治下の沖縄における奄美出身者の境位
報告者(所属) ①平野千果子(武蔵大学)
②加藤政洋(立命館大学)

開催日時 2012年2月29日(水) 15:00-18:00 学而館第3研究会室
テーマ 戦後沖縄の基地周辺における都市化の歴史地理
―コザのビジネスセンター構想をめぐって―
報告者(所属) 加藤政洋(立命館大学文学部准教授)

開催日時 2012年1月18日(水) 15:00-18:00 学而館第3研究会室
テーマ 戦後那覇における都市形成の歴史地理
コメンテータ
(所属)
①桜澤誠(学振PD)
②本岡拓哉(同志社大学)

「大学の自治の制度構想」研究会

研究課題 知識基盤社会における大学の自治の制度構想に関する国際的な公法学的比較研究
代表者 中島茂樹(衣笠総合研究機構・教授)
研究計画の概要

本研究の全体構想・計画は、国家による大学への立法的・行財政的関与の関係構造と大学ガヴァナンスに関する日本的応答の普遍性と特殊性を解明するために、国際的比較の側面からは、アメリカ・フランス・ドイツ・イギリス・カナダ・スウェーデン・オーストラリア・中国・台湾・韓国・ヴェトナムの高等教育政策(法制)と大学ガヴァナンスを、また、わが国の代表的な国立大学法人や私立大学における大学ガヴァナンスを、それぞれ検討することとし、その場合に求められる共通の分析視角につき、①大学ガヴァナンスと「大学の自治」の関係、②大学ガヴァナンスと大学評価の位置づけ、③大学ガヴァナンスと財政的基盤、④「学問の自由」の今日的意義と構造、といった論点を設定し、それぞれの国や大学が抱える問題点と今後の課題を解明することとしている。

研究成果の詳細

本研究所の助成プログラムに基づく研究は、上記全体構想・計画のうち、主として新自由主義と大学改革という観点から共通の分析視角の確立をめざすこととし、そのために第1回研究会(2011年7月22日)では、佐分晴夫名古屋大学理事・副総長(「国立大学法人における大学の自治の現状と諸課題――名古屋大学の事例に即して」;括弧内は報告テーマ、以下同じ)を、第2回研究会(9月30日)では、細井克彦大阪市立大学名誉教授(「新自由主義と大学改革――ガヴァナンス問題を中心に」)を、第3回研究会(10月14日)では、鈴木満スウェーデン・ベクショウ(Växjö)大学経済学部教授(「スウェーデンの大学ガヴァナンスへの労組の影響力」)を招いての議論により、種々有益な知見を得ることができ、また、今後の研究についてそれぞれ全面的な研究協力を得ることができることとなった。

開催日時 2011年12月16日(金) 16:00-18:30 学而館第2研究会室
テーマ 「大学ガバナンス論の過去・現在・未来」
報告者(所属) 堀雅晴(立命館大学法学部教授)

開催日時 2011年10月14日(金) 15:00-16:30 学而館第2研究会室
テーマ 「スウェーデンにおける大学の自治の制度設計」
報告者(所属) 鈴木満 (スウェーデン、ベクショウ大学経済学部教授、ベクショウ大学専門職労働組合委員長)

開催日時 2011年9月30日(金) 16:00-18:30 学而館第1研究会室
テーマ 「新自由主義と大学改革――科研報告書の到達点をふまえて」

※上記の科研報告書のテーマは「大学法制の構造的変容の比較法的、法制史的、立法過程的、および解釈論的研究――政府・大学間の契約関係と「学問の自由」との"組合せ問題"への日本的応答の普遍性と特殊性の究明」です。
報告者(所属) 細井 克彦 (大阪市立大学名誉教授,教育行政学)

開催日時 2011年7月22日(金) 15:00~18:00 学而館第3研究会室
テーマ 「国立大学法人における大学の自治の諸問題―名古屋大学の事例に則して」
報告者(所属) 佐分 晴夫 (名古屋大学理事,副総長)

「人文科学方法論」研究会

研究課題 人文学・社会科学における質的研究と量的研究の連携の可能性
代表者 筒井淳也(産業社会学部・准教授)
研究計画の概要

(2011年度の研究計画)主に計量分析手法がいかにして知識の妥当性を保障しているのかについて、質的・概念分析的なアプローチから解明する。研究方法は会話分析や概念分析でしばしば行われるいわゆる「データセッション」というかたちをとる。計量分析の一つ一つの手順について、そこでどのように知識が提示され、何が前提とされているのかを、研究会に参加した各方面の研究者による討議によって段階的に明らかにしていく。これによって、特定の研究アプローチ法を採用する研究者がその限りの視点から他のアプローチを位置づけるという旧来の調査法テキストでみられる知見を乗り越えることを目指す。

研究成果の詳細

(1)第一回研究会開催:「計量分析手法はどのようになされているのか:回帰分析を中心に」(筒井淳也)および「科学的説明に関わる基本的な語彙についてのおさらい」(酒井泰斗)の2つの報告およびその内容の検討を行った。参加者は約30名であった。討議の内容についてはブログの記事を参照。

(2)第二回研究会開催:「行為の記述・経験の記述:質的研究とエスノメソドロジー」(前田泰樹)および「多変量解析は何をしているのか:量的・質的の垣根を越えたデータの科学へ」(小杉考司)の2つの報告があった。参加者は約20名であった。討議の内容についてはブログの記事を参照。

開催日時 2012年2月25日(土) 学而館
テーマ ①行為の記述・経験の記述:質的研究とエスノメソドロジー
②多変量解析は何をしているのか:量的・質的の垣根を越えたデータの科学へ
報告者(所属) ①前田泰樹(東海大学)
②小杉考司(山口大学)
開催日時 2011年9月19日(月) 末川記念会館
テーマ ①計量分析手法はどのようになされているのか:回帰分析を中心に
②科学的説明に関わる基本的な語彙についてのおさらい
報告者(所属) ①筒井淳也(立命館大学)
②酒井泰斗

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