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2012年度研究会報告

「グローバル化とアジアの観光」研究会(2012.4.28)

テーマ 復興支援ツーリズムの可能性
報告者 池本 幸生(東京大学東洋文化研究所教授)
報告の要旨

ツーリズムがどのように復興支援に貢献するかについて、次の二つの点から考えてみたい。①ツーリズムによって経済活動を活性化させること。ボランティアや物的な支援は、その意図に反して現地の経済に悪影響を及ぼすことがある。例えば、仮設住宅に散髪のボランティアに行けば、そこで営業している散髪屋の商売の邪魔をすることになる。パンを東京から送れば、そこで営業しているパン屋の商売の邪魔をすることになる。現地でお金が循環し、仕事が生まれることが重要なのであり、ツーリズムはこの点で貢献できる。②現地の情報が広く伝わること。我々は福島の住民の暮らしに何が起こっているのかを知らない。逃げ出す人たちと故郷に戻ろうとする人たちの間に対立が生じ、コミュニティや家族の間にさえ亀裂が入っているという話をどのくらいの人が知っているのだろうか。現地の様子を知るため、そして共感を抱くためには現地に行くことは有効な手段であり、この点でもツーリズムは貢献しうる。この点で、研究者も現地に行って研究すべきだろう。不正義を取り除くためには、広く情報を共有することが大事である。

【参考】
 アマルティア・セン 『正義のアイデア』 明石書店 2011年
 ASNET活動報告

池本 幸生

テーマ 汶川(ウェンチョアン)大地震を利用したダークツーリズムと「愛国心=愛党心」
報告者 雨森 直也(立命館大学大学院文学研究科後期課程)
報告の要旨

2008年5月11日、四川省阿壩(アバ)チベット族チャン族自治州汶川県をM8.0の大地震が襲った。その直後から、国内では救援活動が始まり、積極的に義捐金を集める活動が共産党、公的機関を中心に展開された。メディアは連日、被害の状況を伝えるだけではなく、共産党幹部の活躍や人民解放軍、武装警察などの救援活動を積極的に報じた。それらの結果、当初から中国国民だけではなく、海外メディアの記者にも現地取材を初めて認め、世界から注目された地震であった。

現在、汶川大地震を利用した観光地は、成都市の郊外や汶川県に散在している。2か所3つの博物館では、地震の規模などの科学的なことはあまり伝えられず、倒壊した建物の写真を中心に被害を伝えたのちに、団結や奇跡的な救援をクローズアップし、その多くが共産党の功績による復興を紹介し、参観者の感情に訴えるものとなっていた。

震源地に最も近く被害が甚大であった汶川県の映(イン)秀(シュウ)鎮は、汶川大地震によるダークツーリズムの中心である。映秀鎮唯一の中学校であった漩口(シュエンコウ)中学は、完成から1年で地震によって倒壊し、多くの学生が校舎の手抜き工事のため犠牲となった。共産党は、死亡した父母による国家賠償を求めた訴訟を彼らのリーダーを拘束するなどして、負の面が表面化することを強制的に防ぐ一方で、現在、その建物は保存され、参観者を受け入れている。

このように汶川大地震を利用したダークツーリズムは、人民解放軍や党による救援活動が積極的に紹介されるとともに愛国主義教育にも利用されようとしている。つまり、汶川大地震を利用した観光地は「愛国心=愛党心」教育の場と化していると言えよう。

雨森 直也

テーマ 宇都宮大学と震災(仮)
報告者 古村 学(宇都宮大学国際学部講師)
報告の要旨

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