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2012年度研究会報告

「グローバル化とアジアの観光」研究会(2013.1.19)

テーマ 観光客の津波に対する防災意識 -タイ・ピピ島でのアンケート調査結果から-
報告者 薬師寺 浩之(立命館大学)
報告の要旨
 

本研究は、2004年12月26日のスマトラ島沖地震後の津波によって壊滅的被害を受けたタイ南部・ピピ島(Koh Phi Phi)で行ったアンケート調査結果をもとに、観光者の津波に対する認識や防災意識の程度について考察する。

 

津波災害から身を守るためには、ハード面の整備のみならず、津波に対する正しい認識と防災意識、また非常時を想定した行動確認(避難訓練)などのソフト面も重要であることは明らかである。しかしながら、観光者は、津波は恐ろしいものと認識をしているにもかかわらず、それに対する防災意識は総じて低いことがわかった。津波が襲来した場合、自分自身にも被害の可能性があるにもかかわらず、短期間のみ滞在することから生じる慢心からか、その危険性はあくまでも他人事、「自分には起こり得ないこと」との認識があった。さらに、非日常のパラダイスを求めてビーチにやってくる観光者の本音は、津波災害という負の現実については考えたくないというものであった。これらの好ましくない傾向は、Two Stepクラスター分析を用いて3種類に類型化された観光者(1・パーティーボーイ、2・ビーチガール、3・子供がいないカップル)に共通して見られた。復旧・復興後も改善されていないピピ島の津波防災に対するハード面の不備(避難路の狭さや複雑さ、避難ルートを示すサインの少なさや観光業従事者の観光者を適切に避難させる能力の低さなど)も相まって、今後もし2004年と同様の津波が襲来した場合、それと同規模の破滅的な被害を観光者は受ける可能性がある。

テーマ 韓国におけるダークツーリズム第三の波-「タルトンネ」の価値転換を事例に-
報告者 轟 博志((立命館アジア 太平洋大学)
報告の要旨

21世紀に入ったころより、韓国においてもダークツーリズムへの関心が高まり、関連する観光商品が提供され、また学界の研究も盛んになってきた。しかしコンテンツを見ると、「日本の朝鮮統治に関する遺産」か「南北分断と朝鮮戦争」のどちらかに関連するものに集中し、韓国のダークツーリズムといえばこれらの二つのみを連想するという、ステレオタイプの固着化が指摘される。

しかし朝鮮戦争の休戦後においても、韓国が歩んできた道は非常にドラスティックであり、G20の一員にまでなった現在の繁栄を勝ち取るまで、多くの「負の遺産」も生産されてきた。これらを本発表では上記の二つと対比させて「第三の波」と呼ぶ。その中では光州事件など軍事政権による民衆弾圧の歴史に関しては、ダークツーリズムのコンテンツ化の萌芽も見せているが、その他の「負の遺産」に関しては手つかずと言っていい。

本発表はそれらのうち、都市のスラム街を指す「タルトンネ」を題材に、高度成長期における経済的矛盾の観光資源化の兆候について調査し、もって韓国における「近く、暗い過去」のダークツーリズム化の可能性と必要なプロセスについて仮説を提示することを目的とする。

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