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2014年度研究会報告

「グローバル化とアジアの観光」研究会(2014.10.4)

テーマ 海外孤児院ボランティアツアー参加者の経験と開発途上国に対する印象
報告者 薬師寺 浩之(立命館大学文学部)
報告の要旨

 近年、開発途上国の孤児院で孤児の世話や交流を行うことを目的とするボランティアツアーは、モラトリアムの期間にいる大学生など若者を中心に関心を集めている。参加者の多くは、自覚する/しない、にかかわらず、「国際貢献」という利他的な行動の結果得られる自己発見や自己成長(つまり、利己的な満足)を期待しているものと思われる。こうした動向に対して、このようなツーリズムは「孤児の商品化」をともなうものであり、倫理的問題をはらんでいるとの指摘がなされている。そして、商品化された貧困と不幸という「他者の負の現実」をツアー参加者が消費し(表向きは利他的なボランティア活動ではあるが)、そうすることによって自己発見や自己成長という形で満足を得る、という海外ボランティアツアーは、これまで批判的観光研究によって論じられてきた「新植民地主義」(ネオコロニアリズム)的性格を帯びていると言わざるを得ない。
 他方、ボランティアツーリズムの現場においては、ツアー参加者が安心・安全・快適かつ手軽に満足な活動ができるように、巧みな演出が施されていると見て取れる実態がある。
 本報告では、タイ・カンボジア・ベトナム・フィリピン・インドネシアなど東南アジア諸国での海外孤児院ボランティアツアーに参加した日本人大学生の体験記を分析し、新帝国主義的仕掛け人によって演出された空間である孤児院でのツアー参加者の経験の本質と、経験を通して得られた開発途上国に対する印象について考察を試みる。

テーマ 世界自然遺産と地域社会-知床羅臼と小笠原を事例として-
報告者 古村 学(宇都宮大学国際学部)
報告の要旨

本報告は、人びとの日常生活から、世界自然遺産の意味を考えるものである。
 2012年、知床ではヒグマが人里に多数出没した。ヒグマは知床を象徴する貴重な生物のひとつであり、観光資源でもあるが、同時に地域の生活や生業を脅かすものとしてもある。そのため、住民・研究者・観光客との間にヒグマ駆除にたいする価値観の相違があらわれている。小笠原諸島では、外来種であるグリーン・アノールの駆除作業が進められている。貴重な固有種を守るための駆除作業であるが、アノールを殺すことへの違和感を持っている住民は多い。
 世界自然遺産は、人類共通の「普遍的価値」をもつものとして認められる。それは知床でも小笠原諸島でも共通する価値としてある。しかし、そこで暮らす人々は自然にたいして、その地域ごとに異なる別の価値を感じている。この地域ごとの価値と、その社会的背景を明らかにすることにより、当該社会にとっての世界自然遺産の意味を考察する。

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