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2012年度研究会報告

回復研究会(2012.6.18)

テーマ 「“反”啓蒙の弁証法 ――過激派のスケープゴートにされたフランクフルト学派」
Dialectic of Counter-Enlightenment:
The Frankfurt School as Scapegoat of the Lunatic Fringe.
報告者 マーティン・ジェイ Martin Jay(カリフォルニア大学バークレー校)
報告の要旨

20世紀以降、ドイツのフランクフルトを拠点にして、ホルクハイマーやアドルノら、ユダヤ系知識人たちが中心となって、哲学思想をはじめ、多方面にわたる共同研究をおこなっていた。彼らはフランクフルト学派と呼ばれ、マルクスやフロイトを批判的に受容しながら、現代における社会思想の代表的なグループとなった。第二次大戦期にはアメリカへの亡命を余儀なくされたが、この新天地でもさらに活躍を続けた。今日まで彼らは、ヨーロッパやアメリカだけでなく、さらに日本にも大きな影響を与えている。

講演の冒頭では、このフランクフルト学派が、大衆文化を捏造して、人々を支配しようとする政治的陰謀の首謀者だとされる事例が紹介された。ジェイ氏によれば、フランクフルト学派は、その本来の主張に反して、スケープゴートにされてきたのである。さらに、ジェイ氏は、とりわけ近年、フランクフルト学派がアメリカの保守系団体・人物から「文化的マルクス主義」としてやり玉に挙げられ、非難を受けていると指摘した。いずれの非難も、フランクフルト学派の見解を曲解し、単純化・平板化して広めるものだということが明らかにされた。

また講演では、ジェイ氏自身が保守系のテレビ番組に出演したエピソードにも触れられた。放映内容が多くのインターネットサイトで頻繁に再生されたことで、根拠の乏しい憶測が広まり、増幅されるようになった。これによってジェイ氏もその著作も、保守派がフランクフルト学派を非難するための道具として、都合よく利用されてしまっていた。ジェイ氏はこうした事態にたいして批判的な見解を提示した。

さらに補足として、2011年7月に発生したノルウェー連続テロ事件についても取り上げ、犯人が残した主張の中に、ジェイ氏への言及があったことも明らかにした。ジェイ氏は、現在さまざまに流布されている理論が誤解・曲解され、それにもとづいて実際の行動がとられてしまっていること、そしてそれが世界的規模で起きうることにたいして、強い危惧の念を抱いていた。

青柳 雅文

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