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2006年度研究会報告

第7回(2007.3.10)

テーマ 「観光都市ポカラの発展と貧困地域母親会の経済的自立運動」
報告者 山本 勇次(大阪国際大学法政経学部教授)
報告の要旨

ネパールのポカラは国際観光都市化が進み、とくに社会的弱者は生活費の高騰により借金生活する状況が顕著になりつつある。ポカラ市内に多くあるスクンバシ集落(不法占拠者の集落)の一つ(Tutunga:総世帯数25)に焦点を当て、女性によるマイクロファイナンス(FMF)の実態を調査した。ネパールでの四層の金融構造とFMFの関係を詳しく説明し、ネパール版グラミン銀行の仕組みと実際にそれを利用するTutungaの女性たちの個々の世帯のプロフィルを紹介し、彼女たちの家計を分析した結果を提示した。暫定的結論は次の通りである。①グラミン銀行方式のFMFローンは当初の主旨が歪められ、ポカラの貧困女性は利子収奪への集団力学に踊らされている。②ポカラのFMFを利用する女性たちの貧困脱却の有効な手段として活用させるためには、夫たちの『社会教育』と『家計コンサルタント』的実践教育が必要か。③「ラフレ」の伝統があり、借金が重なると外国へ出稼ぎに出て、借金を返済する方法を理想化している。外国での就労ビザの獲得困難性のゆえに、それを手配するブローカーが暗躍し、荒稼ぎをしている現状にどういった対策をすべきか。今後、25世帯の女性のFMFの完璧なデータの収集とFMFに関する実態調査を実施し、社会的弱者にとってのマイクロファイナンスの意味を明らかにする。

江口信清

テーマ 「インド社会の変化と宗教的芸能集団の適応戦略」
報告者 村瀬 智(大手前大学社会文化学部)
報告の要旨

報告者はバウル研究では一人者である。今回の報告では、インドの世捨て人、バウルに焦点を当て、大きく変容するインド社会の中で彼らの生き方がどのように変化してきたかを、観光化に関連させながら議論した。耐え難い現実から自由になり、世捨て人になったバウルはインドの歴史2800年を通じて存在してきた。世を捨てても食っていかなければならないが、門付けをすることで食べ物や現金の喜捨を受けてきた。乞食や物売り、あるいはバウルのような人たちは車賃なしで汽車に乗ることも黙認されていた。しかし、近年、こういったことも認められなくなり、バウルの多くは生活戦略を新たに練り直すことが余儀なくされてきた。1980年代以降、プロの音楽家になるバウルも出てくる一方で、地方ではやはり門付けで現物を喜捨してもらう人もなくはいない。他方、インドでの新中間層の成長とともに、別荘建設ブームやリゾート・ホテルの建設ラッシュが続いてきた。多くの新中間層が観光客としてリゾート・ホテルや別荘に滞在し始めたが、一部のバウルは観光客である新中間層の人たちに招かれ、歌を披露することで現金を手にし始めた。仲のいい友人同士で組んでホテルなどを訪れ、歌を披露するのだ。名刺を持つバウルも現れている。これは新しい生活戦略であるが、今後、顧客とバウルの関係についての詳細を調べ、バウルの適応戦略の実態と意味を明らかにしたい。

江口信清

テーマ 江口信清2006年度のまとめと2007年度の計画
報告者 江口 信清(文学部教授)

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