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2008年度研究会報告

第2回(2008.7.12)

テーマ 「観光地における都市貧困層の営業権獲得運動:フィリピン・マニラにおける露店商人の事例から」
報告者 四本幸夫(文学部非常勤講師)
報告の要旨

マニラの観光スポット、リサール公園の都市貧困層である露店商人を事例に、この人たちが組合を結成し、公園管理局、政府観光省との交渉により公園内で営業許可の権利を獲得していく過程を紹介された。現在、公園内で活動している露天商人の生活は大きく分けて3つの時期に分けることができる。第1期は、組合が結成される以前、第2期は組合が結成されて、営業権獲得闘争を行い、その権利を手に入れる時期、第3期は営業権獲得後の安定した時期に分けられる。本報告では、第1期の闘争以前と第2期の営業権獲得までを報告された。これまで、フィリピンの都市貧困層(ホームレスを含む)が組合を結成して政府と渡り合って様々な権利を獲得していく過程に関してはほとんど外部には知られていなかった。この点で、本研究はたいへん意義あるものだが、この人たちが組合結成に際して支援を受けた「カダマイ」がいかなる組織なのかは、報告者にも分かっていない。今後の課題として、この組織の全貌を明らかにし、かつ第3期までの過程を明らかにしていくことが期待されている。活発な議論がなされた。

江口 信清

テーマ 「社会的弱者の自立(自律)とツーリズムに関する研究」
報告者 江口信清(文学部教授)
報告の要旨

文化人類学だけでなく、多様な分野での社会的弱者、とくに少数民族と観光に関する研究動向を整理し、社会的弱者の立場に立った研究はつい最近になってはじめられるようになったことが紹介された。その上で、報告者の調査してきたガイアナ国の少数民族、アラワク人の村落で起こってきた観光化と住民、観光客(リゾート客)、リゾート会社、そして国家の関係が紹介された。アラワク人住民の自治に任されている村落の一部が2ヶ所のリゾートに貸し出され、リゾートはエコツーリズムを売りに客を集めてきた。静かで手付かずの自然はリゾート会社、国、そして観光客によって「地上のパラダイス」との表現されてきた。先住民の女性はクラフトを観光客向けに生産し、経済的利益だけでなく、アラワク人としてのプライドも獲得してきた。しかし、男性は領域内の木々を伐採し、収益を上げてきたが、今日、限界にまで到達し始めている。このままいけば、リゾートはエコツーリズムでは売り物にならず、おそらく他の内陸部へ転居することにもなろう。文明化することがいいことだと考えることに慣れてしまった人たちは、言語を含む伝統文化を捨て、農業や川での漁すら捨て始めている。どっぷりと資本主義的生産と消費のシステムに使ってしまいつつあるアラワク人が、エコツーリズムで自律するためには、いつくかの条件を整えていかなければならない。こういった条件について紹介し、活発な質疑応答が行われた。 

江口 信清

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