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2008年度研究会報告

第3回(2008.10.11)

テーマ 「開発人類学―これまでの論争とメキシコでの私的実践-」
報告者 鈴木 紀(民博准教授)
報告の要旨

1. 14:30~16:30
① 会員全員の夏季調査の簡単な報告
② 2009年度新科研プロジェクト「少数民族の観光開発に関する地域間比較研究」についての議論
③ 11月1,2日開催の国際シンポジウム「観光を通しての社会的弱者の自立と自律」の最終打ち合わせ

2. 16:00~18:00
「開発人類学:これまでの論争と私的実践」 報告者:鈴木 紀(国立民族学博物館・准教授)

 鈴木紀さんは、日本における開発人類学の一人者である。開発人類学は開発援助活動を促進するための実践的人類学だが、少なくとも次のような3つの課題を克服する必要がある。それらは、①開発が人類学の研究テーマとしてふさわしいか,②研究成果を開発援助の実践に活用すべきか、③開発実務者・管理者 とどのようにつきあっていくべきか。これらの3点の問題に関して、人類学の先行研究を援用しながら、次のような答えを導き出された。①人類学も時代とともに変化する。反開発の態度を本質化する必要はない。②研究と実践の分業、または往復運動。他者表象の権力性という人類学全体の問題に積極的に挑戦する意義。③開発援助実務者・管理者と協働方法を学ぶ必要。そして、鈴木さんは自らの取り組みと立場について次のように表明された。1)方法論としての「文化相対主義」は捨てない。途上国の人々の開発観によって我々(先進国の開発政策)の常識を批判するような「文化批判」が必要である。2)ポスト・デヴェロップメントの実践=批判的開発人類学を実践する。3)応用人類学者として、開発援助実務者向けの研究を実施。開発援助評価法について学び(実務者の文法を知る)と民族誌的評価を試行する。対話のトピックとして開発援助プロイジェクトの教訓を設定する。

続いて、鈴木さんはフィールドの一つであるメキシコ、チアパス州ソコヌスコ地域で実施された国際協力機構(JICA)メキシコ事務所による技術協力プロジェクトである小規模生産者支援計画(PAPROSOC=パプロソック)に関する調査結果を詳細に紹介された。研究会参加者の関わってきた研究が間接的・直接的に開発と関係しており、熱い議論が繰り広げられた。

 

江口 信清

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