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2014年度研究会報告

「グローバル市民社会」研究会(2015.3.14)

テーマ セキュリティ・ガバナンス論の新地平
共催 人文科学研究所グローバル市民社会研究会・R-GIRO(理論研究グループ)
開催趣旨

 立命館大学人文社会科学研究所による助成を受けている「グローバル市民社会研究会」は、これまでグローバル・ガバナンスにおける市民社会の役割の多面的検討を進めてまいりました。中でも、2014年2月に開催したワークショップ「非西洋社会におけるセキュリティ・ガバナンスの展開と課題」では、非西欧諸国においては、きわめて多様な形で、市民社会などの非国家主体が、安全保障の分野において役割を担っていることが明らかとなりました。
従来、グローバル・ガバナンスの中でも、安全保障分野においては国家の影響力が支配的である状態が継続していると考えられがちでした。一部、西欧諸国では、国際機関や民間会社など多様な主体と、国家が安全保障上の役割を分担する動きが見られ、こうした動きを「セキュリティ・ガバナンス」という概念を用いて、捕捉しようとする研究が存在しています。しかし、それらの研究は、確固たる近代国家が形成された西欧諸国のみを念頭に置き発展してきたがゆえに、大きなゆがみがあります。たとえば、国家が安全保障上の役割を独占していた状態から、徐々に非国家主体へと安全保障上の役割を分有・共有するようになりつつあるという流れを当然視し、そうした状況を捉えるため「セキュリティ・ガバナンス」という概念が用いられています。
しかし、非西欧社会においては、より多様な形で、国家と非国家主体が安全保障上の役割を分有/対立している現実が、上記研究会で浮き彫りになりました。非西欧においては、そもそも国家が暴力を独占するに至ることなく、多様なアクター間の均衡と協調(あるいは対立)の上で安全保障確保が行われている事例も少なくありません。実際、これまでの「セキュリティ・ガバナンス」の議論が射程に捉えていた国際機関や、NGO、民間軍事会社のようなものだけではなく、自警団、準軍事組織、マフィア、民兵なども、安全保障上一定の役割を担ったり、あるいはセキュリティ・ガバナンスに大きな影響を与えていることが明らかになりました。また、国家が暴力を独占していないからこそ発生する、西欧諸国が直面するのとは異質な安全保障上の課題も存在することがわかってきました。
多様なアクターが、安全保障に関わることを捉える「セキュリティ・ガバナンス」という概念は、特殊西欧的な国家や安全保障概念を前提にするのではなく、こうした非西欧社会の事例をも取り込みつつ、発展させていく必要があると考えられます。むしろ、そうした非西欧社会の事例を分析することにこそ、「セキュリティ・ガバナンス」という概念は強みを発揮するとすら言えるかもしれません。
そこで、「グローバル市民社会研究会」では、昨年度明らかになった上記の課題への理解をさらに深め、「セキュリティ・ガバナンス」論の新地平を切り開くため、R-GIROにおける理論研究グループ、地域研究グループの知見も取り込み、対象地域をさらに拡大したワークショップを、開催したいと考えております。


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