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2006年2月18日 講師:姫岡 とし子

近代化過程における織物業とジェンダー
― 日独比較の観点から ―

 皆さん、「鶴の恩返し」という物語をご存じですね。すばらしい反物を織った、あの鶴は女性でした。
 日本では、織物は女性の仕事と考えられ、自家消費用のものも、市場に出すものも、農家の嫁や娘を中心に女性たちが織っていたのです。ただし、最高級品を手がけていた京都の西陣だけは例外的に男性が織っていましたが、日本全体では織り手の90%以上が女性だったのです。
 ところが、ヨーロッパでは、市場に出荷する織物は主に男性の労働でした。この講演でとりあげるドイツでは、1880年頃に製織部門での女性比率は30%を下回っていました。
今でこそ、多くの女性と男性が同じ種類の労働をしていますが、昔は「女の労働」と「男の労働」が区別され、男/女にふさわしい労働だからこそ、その労働を男が、また女が担当すると考えられていました。
 「男にふさわしい労働」とは、体力、指導力、知力を要する仕事、「女にふさわしい労働」とは、忍耐、器用さ、優しさなどが必要とされる労働だったのです。
 ところが、製織労働の担い手は、ドイツでは男、日本では女でした。同じ労働で担い手のジェンダーが違うと、その労働や労働者に対する評価はどうなるのでしょうか。
 織物労働の価値、社会的評価、労働の組織化、織り手の社会的地位、アイデンティティなどについて日本とドイツを比較しながら考察します。
 また昔の労働の多くが自宅を作業場としていました。ドイツでも日本でも製織労働は家内工業の形態をとって自宅で行われていたのです。
 労働と家族がどのように関連していたのか、また家内工業が力織機の導入によって工場労働に移行したとき、その労働や家族はどう変化したのかについてもみていきます。  

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