年配の方はご存知だろうが、今は昔、「デカンショ節」が流行ったことがある。コンパの席で学生たちが歌ったものだ。「デカンショ、デカンショで半年暮らす。あとの半年寝て暮らす」という、現代のように忙しい時代には信じられないほどにのんきな歌だ。当時の学生たちにとって、デカンショ(デカルト、カント、ショーペンハウエル)の本は必読書であった。学生のゆっくりと流れる時間は、哲学的な思索とともにあった。
今日、人々の関心は経済の問題へと傾く。学生たちは、一様に「忙しい、忙しい」を口にし、早い時期からキャリア意識を植えつけられて動き回る。「哲学」の居場所は少なくなり、お金につながらない悠長な思索は敬遠される。
しかし、経済優先の時代にあっても、哲学の森を散策することは楽しい。考えることの喜びが味わえるのだ。デカルトのやさしい日常語で書かれた『方法序説』(方法についてのお話)は、とりわけ読んで楽しい本である。
受講者の皆さんとともに、デカルトの思索の魅力を味わってみたい。
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