立命館土曜講座 開催講座一覧


2013年10月12日 講師:佐藤春吉

ウエーバーを読む

 私は、マルクスの社会理論の研究から研究者としての歩みをはじめました。やがて、彼の理論や方法には特有の社会存在論の構想があることに気づくようになりました。社会科学において「社会存在論」を明確に自覚することの意義に目覚め、研究するなかで、M.ヴェーバー、N.ハルトマン、K.R.ポパーの思想に出合い、彼らに「多元主義的存在論」(世界を多元的な存在次元の複合体と考える思想です)ともいえる構想が共通して展開されていることに気づきました。マルクスの思想とは、通常まったく異質で時に敵対的とも思われているこれらの思想が、存在論のレベルまで遡及すれば、まったく同じ世界観的な構図理解が読み取れます。その研究過程で、類似した理論を展開している現代の思想家、R.バスカーの「批判的実在論」を知りました。今では、それらの思想を批判的に総合して私なりの「多元主義的存在論」を再構成し、新たな批判的社会科学の基礎を示すことが私の研究目標となっています。M.ヴェーバーの研究も、彼のなかに、実在論的な多元主義的存在論の構図が読み取れます。ヴェーバーについては、彼の科学論の「価値自由論」や、「因果性論」、「理念型論」について、その構図を跡づける仕事に取り組んでいます。講座では、まずはヴェーバーの人物像や彼の政治思想や主な社会学上の主張を外観しようと思いますが、特に彼の社会科学論に焦点をあてて、上記のような観点から見えてくるその科学論のねらい、何を問題にし、何を明らかにしようとしていたのか、一緒に考えてみたいと思います。この点が明らかになると、彼が人間や世界について、人間の行為や価値や倫理について非常に深い思索のもとに思考していたことが分かります。その思索と主張の意味を理解することは、きっと現代社会で生きる私たちの実践的な態度についても学ぶことが多いのではないかと思っています。  

前のページに戻る

このページのトップへ