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2016年9月17日 講師:篠田 博之

心理物理学による視覚の基礎研究とその産業応用
−物理と心理のはざまから生まれる新しいマーケット −

  「見る」という行為は外界をそっくりそのまま網膜に映し取ることではありません。むしろ私たち人が行動する上で必要な外界の情報を得るために適した知覚世界を脳内に構築する行為に他なりません。そしてその知覚世界は外界とは同一ではありません。たとえ左右眼2つの網膜像でも、三次元の外界が二次元の網膜に投影された時点で一定の空間情報は失われます。また暗所視では1種類の桿体視細胞が、明所視では3種類の錐体視細胞が光を検知するため、波長情報も一次元または三次元の情報に減らされます。にもかかわらず人が行動するためには外界の状況を瞬時に判断しなければなりません。つまり視覚系は厳しい時間的制約の中、不十分な情報を用いて知覚世界を構築するという「不良設定問題」を扱っているのです。
 このような視覚の特徴と、視覚研究の主な手法である「心理物理学」について、いくつかのデモを体験していただきながらご説明します。また視覚研究の知見や成果が、わたしたちの日常生活にいかに密接に関係するか、そして産業においてどのように活用されているかについて、これまでに生み出された製品や産学連携の取り組みの例を取り上げながらご説明します。

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