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2016年10月15日 講師:田邉 正俊

ニーチェ『善悪の彼岸』を読む

 『善悪の彼岸』は、後期のニーチェを代表する著作のひとつです。テーマごとに章立てされているため、ニーチェの著作のなかでは比較的読みやすいものです。 今回の講座では、この『善悪の彼岸』について、受講者のみなさんにご紹介します。『善悪の彼岸』は、西洋の近代性を批判するとともに、既存の道徳(西洋において主流になってきたキリスト教にもとづく道徳)を批判する著作です。
 他方で、『善悪の彼岸』の第8章は、「民族と祖国」と題されています。近代国民国家が確立したヨーロッパでは、19世紀になるとナショナリズムが台頭してきました。しかし、ニーチェは偏狭なナショナリズムから距離をとり、「よきヨーロッパ人」の立場に立ちました。そして、特定の地に定住することのない「渡り鳥」として後半生を過ごしました。だからこそ、「民族」や「祖国」の枠組みにとらわれることなく、ニーチェは「文化」の問題を考察することができたのでしょう。
  「間文化現象学研究センター」の企画による今回の講座では、このような文脈を踏まえて、「間文化性」について考察した先駆的な哲学者としてニーチェを位置づけることをあえて試みてみたいと、講師としては考えています。

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