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2016年11月5日 講師:仲間 裕子

ロマン主義的アイロニーの風景画─風景は風景を超える?ー

 19世紀前半のドイツ・ロマン主義の風景画は、自然風景を近代人の視点から追求した西洋美術のなかでも特殊な風景表象です。有限である人間にとっては無限の存在は辿りつくことができないのですが、しかしその無限への憧憬がロマン的アイロニーを生じさせます。ロマン主義的アイロニー─「逆説の形式」─とはこのような憧憬と反省の葛藤を通して精神の高みを求める創造的行為と言えるでしょう。ドイツ・ロマン主義の代表的な画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(1774-1840)の風景画を、アイロニーや崇高論といった当時の思想、またドイツ統一を求める政治的な願望や北の風景(対極としてイタリアを主とする南の風景)への優越的意識が交差した「たくらみ」として紹介します。なかでも《海辺の修道士》、《氷海》は戦後の欧米の美術にも時代を超えて影響を与え、東山魁夷もドイツ留学中にフリードリヒに傾倒し、彼の山岳画にその形跡を残します。ドイツ・ロマン主義の風景画を通して、文化・時代のイメージの越境と接点を考えたいと思います。

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