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2017年11月4日 講師:高橋 秀寿

ポピュリズムと国民国家――ドイツからの考察


 ドイツで9月に行われた連邦議会選挙(日本でいう総選挙)で、移民や難民の排斥を訴えるポピュリズム政党「ドイツのための選択肢」が5%条項のハードルをこえて連邦議会(日本でいう国会)で議席を獲得しました。隣国のフランスやオーストリアでは早くからこのような政党が台頭し、それはヨーロッパ的現象となっていましたが、その波はついにナチズムを経験しているドイツにまで及んでしまいました。この現象は、グローバル化のなかで難民や移民が国境をこえて定住したために、職を奪われ、あるいは福祉が削減されていると感じた「プア・ホワイト」のプロテスト行動として理解されています。しかし、ポピュリズム政党の支持者はけっして「プア」とはいえない経済状況の者が多く、この現象を理解するためには構造的なアプローチが必要です。つまり、産業構造がポスト・フォーディズムへと移行し、少子高齢化と多文化社会のなかで人口構造が変動していったために、ドイツ国民が再編成されなければならなくなったのです。このような国民国家の変化のなかでポピュリズムを捉えるとき、この政治現象が現代社会の根本的な問題とかかわっていることが理解できるでしょう。




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