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所長のあいさつ

 国際地域研究所は、1988年の国際関係学部創設に対応して翌1989年に設立され、爾来、世界経済の持続的な経済発展や国際社会の恒久的な平和構築を図るうえで重要な諸問題を、学際的な地域研究の視点から考察し、研究成果を広く発信することにより本学の国際化に努めてきた。

 設立直後の1990年代は米国アメリカン大学国際関係大学院(SIS)との連携による日米研究やアジア太平洋経済圏の形成に焦点を当てた研究を推進するとともに、平和・軍縮研究を本研究所の基本課題として位置づけるため、1992年に設立された立命館平和ミュージアムとも連携を図り今日に至っている。

 また、21 世紀に入ってからは世界的にも目覚ましい成長を続ける東アジアと、冷戦終焉後も紛争の火種が絶えず和解への道筋が不透明な朝鮮半島の分析に的を絞り、2期10年にわたる「東アジア専門家会議」の開催や、20冊近くに及ぶアジア研究に関する書籍の公刊、および昨年10月には上海社会科学院部門経済研究所と学術協力協定を締結するなど積極的な研究活動を展開してきた。この結果、本研究所は今や日本におけるアジア研究の拠点として内外から高い評価を受けている。

  しかし、世界の注目と本研究所の研究テーマがアジアに集中する一方で、日本のプレゼンスは20世紀最後の失われたディケッド(10年)によって後退し、新しい世紀における最初のディケッドを経ても、なお再生の展望を描けない状況が続いている。

 図らずも、この4月より研究所長を務めることになった私の専門はアジアでもなく、欧米でもなく、また途上国でもなく日本である。改めて指摘するまでもなく、欧米にキャッチアップしてから久しい日本の課題を見つめ直すなら、欧米の背中を眺めて走りつづけていた1960年代から70年代前半にかけての高度成長期とは大きく変わっている。

 もし日本が大震災後の復興ヴィジョンを描く中で、近代以降欧米が先導してきた成長中心的な「発展」モデルを超えて、新しくアジア発の持続的な「発展」モデルを提示できるなら、日本にとって脱「成長信仰」の画期となるだけではなく、世界経済にとっても「発展」のパラダイムチェンジをもたらす画期となるのではないだろうか。そうした「芽」が現在構想されている復興ヴィジョンに胚胎しているとするならば、それは日本政府だけの使命ではなく、日本の、否、世界中の研究者が協力して取り組むべきミッションだと言える。

 設立以来、広く世界に視野を向けて、地域研究の視点からグローバルな問題を探求してきた本研究所には、グローバルな視点から大震災後の日本を地域研究の対象として考察するために相応しい専門知識や人的ネットワークなどの研究資源が十分に蓄積されている。2011年度においては前年度から継続の各研究プロジェクトとの連携も図りながら、日本が求め世界が期待する新しい課題にも果敢に挑戦していきたいと考えている。

 風呂敷を広げすぎているのではないかというご批判には、新所長のフライングということでご寛恕賜り、関係各位におかれては国際地域研究所の研究活動に対し、ますますのご支援とご協力のほど心からお願い申し上げる次第である。  

 立命館大学国際地域研究所 所長  
 高橋 伸彰


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