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HOME 研究プロジェクト 2008年度 英国学派と国際関係理論研究会
英国学派と国際関係理論研究会
研究代表者:国際関係学部教授 安藤 次男

 21世紀の世界のあり方を基本的に規定してきた2つの要因、つまり、冷戦の終焉とグローバル化が、世界の構造をどう変化させたのかという問題が、国際関係理論研究者に共通する重大な関心事となってきている。

 世界各国の学会でアメリカを本拠とする理論潮流が大きな影響力をもっており、日本もその例外ではないが、アメリカの国際関係論分野の研究は現実の政府レベルの政策形成とその執行に深く関わっていることもあって、覇権安定論、覇権循環論、国際レジーム論、相互依存論など国家政策の展開に密着した問題意識と結びついていて、国際社会の現実を客観的に把握し将来の方向を見極めるうえでその有効性に疑問が投げかけられてきた。

 そのような学会の動向の中で、1980年代以降、とりわけ冷戦終焉以降の混迷した時代状況を踏まえて、アメリカ的なバイアスの強い国際関係論とは異なる方法論を展開してきた「英国学派」(English School またはBritish School)への関心が高まってきた。 英国学派と呼ばれる潮流は、特定の研究集団を構成するものではなく、論者によってその範囲には多少の違いがあるが、E・H・カーに始まり、ブル、ワイト、マニング、バターフィールド、ブザン、ダン、ジャクソンなどが代表的な理論家であり、ブルの「アナーキカル・ソサイアティ」概念に典型的に見られるように、主権国家中心の国際社会は分権的でアナーキーであるにも関わらず、国家間の相互関係を規定する規則が存在することによって実質的な秩序が形成されていることを重視する。

 人道的介入論など主権国家への介入の是非と可否をめぐる論議には、英国学派も関心をもっており、多元主義(プルーラリズム)と連帯主義(ソリダリズム)との理論論争が厳しく行われている。 本研究会は、第1に、この英国学派の理論的特質を検証し、さらに第2に、彼らの業績の到達点をふまえて政治、国際法、倫理、福祉・医療、地域主義、安全保障などの視点から現代国際社会を実証的に分析する新たな方法を見出そうとするものである。その意味で本研究会は、「国際社会の研究」であるといえる。  日本の学会においても英国学派への関心は高まってきているが、多くは個人的で孤立した取り組みにとどまっている。本研究会は、多様な専門分野の研究者から構成される、その意味で先進的な「共同研究」であり、英国学派研究に集団的に取り組む日本で唯一の拠点となることを目指している。


2008年度研究実施報告
 2008度は、2007年度の成果を踏まえて、①英国学派に関するより高度な分析と、②それが有している西洋中心的な視点の検討、という二点を重点的に取り扱ってきた。その上で本年度の成果は、プロジェクトメンバーの参加する定期的な研究会の開催とそこでの報告、成果の公表からなっている。

1.研究会の開催 
 今年度は、計5回の研究会を開催した。うち2回は、学外より研究者を招いての報告であった。第1,2,5回では英国学派についてのより踏み込んだ分析を行い、第3,4回では英国学派が持つ西洋中心主義に対する批判と代替的視点の提示可能性とに関わる報告を扱った。これで、前年度より続く、(1)国際関係理論全体における英国学派の位置づけ、(2)英国学派が提起してきた議論についてのトピック毎(国際社会、国際秩序、国際正義、外交等)の検討、(3)英国学派が持つ限界の指摘と、それを乗り越える国際関係理論の展開可能性に関する検討を一通り終えたことになり、プロジェクトが目指してきた英国学派の包括的な検討作業が完了した。

2.研究成果の公表 
 今年度も成果の公表が相次いだが、特にプロジェクトに関連した論文・報告は14本であった(そのうち2本は外部招へい者によるコントリビューション。また、うち8本は外国語)。内容は、英国学派自身に関する分析のものが1本、英国学派が扱うトピックに関連したものが8本、英国学派の持つ西洋中心性への批判ならびに代替的位置からの国際関係論に関するものが5本であった。


2008年度研究会
第1回 2008年6月27日
英国学派とは何かーそのアプローチ方法をめぐって
池田 丈佑(立命館大学)
第2回 2008年7月30日
国際社会と慈善社会ーヘドリー・ブル『国際社会論』の発展的考察
上野 友也(日本学術振興会)
第3回 2008年9月26日
Andrew Linklater, The Transformation of Political Community を読む
-10年目の再評価
池田 丈佑(立命館大学)
第4回 2008年10月31日
Provincializing Critical Theory
Giorgiandrea Shani(立命館大学国際関係学部)
第5回 2008年11月28日
国際社会への日本の参入
森田吉彦(帝京大学文学部)

2007年度研究会
 2006年度後期に開始された本研究会は、第2年度の2007年度に次のような研究会を開催した。

第1回研究会 2007年5月25日
「英国学派における多元主義と連帯主義をめぐる問題」
市川 美南子(東京福祉大学)

第2回研究会 2007年6月25日
「Beyond US Hegemony : Critical Reflections on the English School」
Mustapha Kamal Pasha(University of Aberdeen)

第3回研究会 2007年7月27日
「ユートピアン・リアリズムの『消極的安全保障』論」
佐藤 史郎(龍谷大学シュラシア平和開発研究センター)

第4回研究会 2007年10月12日
「賢慮・正義・解放-英国学派の倫理観と現代社会へのインプリケーション」
池田 丈佑(東北大学ジェンダー法・政策研究センター)

 なお、英国学派の業績の翻訳出版としては、カーの『危機の二十年』とブルの『アナーキカル・ソサイアティ』しかなかったが、この2人と並ぶ英国学派の中心たるワイトの訳書が、本研究会のメンバーによって刊行された。「現実主義、合理主義、革命主義」という3つの範疇で国際理論を歴史的構造的に整理分類したワイトの業績については、日本でも強い関心がよせられていたところであり、日本における国際理論研究の発展におおいに寄与するものと期待される。
マーティン・ワイト著、佐藤誠・安藤次男・龍澤邦彦・大中真・佐藤千鶴子訳、『国際理論―3つの伝統』日本経済評論社、437ページ、2007年7月15日刊行



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