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HOME 研究プロジェクト 2009年度 中国IT企業家の諸類型とビジネスモデルの社会的形成条件
中国IT企業家の諸類型とビジネスモデルの社会的形成条件
研究代表者:国際関係学部教授 中川 涼司
 企業家(ないし企業者entrepreneur)はシュムペーターのいう「イノベーション」ないし「創造的破壊」の担い手として規定される。では、驚異的な発展を遂げる中国のIT産業の企業家達はどのように類型化され、特徴付けられるのだろうか。また、企業家達の類型はビジネスモデルに如何に反映しているのだろうか。  申請者は中川涼司[2001]で、中国のIT企業家を3つの世代にわけて分類した。すなわち、第1世代は国有企業の中であるいは事実上民間化した国公有企業で計画経済的な経営スタイルから市場経済的な経営スタイルへの転換を主導しつつ、政治協商会議委員等として政府の政策に深くコミットした層である。第2世代は、技術力を背景に小企業を立ち上げ、既存大企業との対抗で漸進的に成長を遂げてきた層である。第3世代は、技術力というよりもビジネスモデルで優位に立つことを志向する層であり、設立当初からベンチャーキャピタルの支援を得て、急成長を遂げるとともに、創業者が巨大な創業者利得を獲得していった層である。第3世代には多くの海外帰国者(海亀族)が存在する。中川涼司[2008]は中国の主要IT企業28社の経営者のプロファイリングを行い、中川涼司[2001]による3つの世代区分と国内キャリア組、海外帰国組、(台湾を含む)外国人という経歴とを組み合わせた9つのセル、企業家型、内部昇進マネジメント型、プロフェッショナル経営者型の3類型を作り、その中に類型化した。  今回の研究は、そのプロファイリングの数と範囲を大幅に拡大し、類型化を精緻に行うことである。


2009年度研究計画
①文献によるIT企業家のプロファイリング  
 工業和信息化部が発表している「中国電子信息百強」その他から、主要IT企業を200社程度ピックアップする。そして、単行本、年鑑、雑誌、新聞、インターネットサイト等からこれら200社の企業家についてのプロファイリングを行う。これらによるプロファイリングから、とりあえずは、中川涼司[2001]による3つの世代区分と国内キャリア組、海外帰国組、(台湾を含む)外国人という経歴とを組み合わせた9つのセルへの分類を行う。さらに別の基準による類型化も試みる。 また、200社のサンプルから定量化も試みる。

②訪問調査  
 中国IT企業家自身および中国IT企業家に関わる雑誌社・新聞社、研究者への訪問調査

③海外共同研究者との議論  
 北京大学光華管理学院・李東教授、中国社会科学院工業経済研究所・謝暁霞研究員は長年における共同研究者であり、彼らとの議論を積み重ねる。

2009年度研究報告
 本研究はサクセニアン等の研究に触発されたIT産業発展を人的側面から捉えようとするものである。申請者はすでに、中国のIT産業の各業界の企業家たちのプロファイリング作業を行い、その分類作業を行ってきた。すなわち、中国のIT企業家を3つの世代区分と国内キャリア組、海外帰国組、(台湾を含む)外国人という経歴とを組み合わせた9つのセルへ分類し、さらに所有者型(0型)、内 部経営者型(M型)、職業経営者型(P型)の区分を行う、という方法である。

 この方法により、以下の業績を公表した(一部近刊)。  

「中国電気通信コモンキャリアにおける『官僚企業家』―中国におけるIT企業家と社会的形成モデル2―」『立命館国際研究』第22巻第2号、2009年10月、1-23ページ
   
「中国オンライン・デジタルコンテンツ・ビジネス企業家と社会的形成モデル」
『国際地域研究』第30号、2010年3月
 
「中国フラット・テレビ、フラット・パネル・ディスプレイ製造企業と企業家―中国のIT企業家と社会的形成モデルその3―」『立命館経済学』第58巻第5・6号、2010年3月
   
「中国IT企業家の世代交代とビジネス・モデル―頭脳循環モデルの妥当性―」(夏目啓二編『アジアICT企業の競争力―ICT人材の形成と国際移動―』ミネルヴァ書房、所収)、2010年4月
   
「中国におけるオンライン・デジタルコンテンツ・ビジネスと『頭脳還流』・『クリエイティブ・クラス』」(関下稔・中川涼司編『知識資本の国際政治経済学―知財・情報・ビジネスモデルのグローバルダイナミズム-』同友館、所収)、[近刊]
   
中川涼司・夏目啓二・羽渕貴司・陸雲江「中関村科技園区海淀園創業服務中心調査記録」『経営学論集』(龍谷大学)、第49巻第2号、84-92ページ、2009年10月。
   
 この方法で得られた結論は海外帰国者が直接にあるいは参照モデルとして影響を行使し、ビジネス・モデルの変化を主導していることなど、サクセニアンの「頭脳還流モデル」に適合的な諸側面がある一方で、有力経営者においてすら海外帰国者が多数とはいえないことなどサクセニアンモデルに適合的でない側面も多く、海外帰国者の人的移動とビジネス・モデルとは区別して考える必要があるということであった。


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