研究会の目的

ものづくりとソリューション

本研究会は、「ものづくり能力をビジネスモデルレベルで捉える」発想で、研究を進めていきます。

BtoBであれ、BtoCであれ、顧客のニーズを満たすこと、つまり、顧客が必要とする商品を提供することが、ものづくりに求められる社会的役割です。この視点に立てば、ものづくり企業の社会貢献は以下のような広義の文脈で捉えることになります。

ものづくり活動は、顧客に変わって、顧客が必要とする多様な問題解決策を提供することにあります。顧客に変わって、問題解決手段を提供することが、ものづくり企業が生み出す付加価値と考えるならば、ものづくりとは、顧客にソリューションを提供することに他なりません。

顧客がどのような問題を持ち、それを解決しようとしているのかを吸い上げ、それをもとに設計情報を創造します。この設計情報が顧客に届くことで、ものづくりがソリューションとしての社会的意味を持ちます。ものづくり能力構築のターゲットは、ソリューション提供を目指し、顧客にはじまり、顧客で完結する設計情報のスムーズな流れを生み出し、かつ、それを絶え間ないサイクルとしで確立することにあります。

 

・ものづくり能力をビジネスモデル化する

ところが、近年、「ものづくり」のコンテクストで語られる世界は、開発現場、生産現場の革新や進歩など、工学的な技術論に偏重しがちです。

「技術」がものづくりと同義になり、類い希な技能者、熟練者や、製品・生産技術が「付加価値」を生み出す全てと理解されるケースも多くあります。日本企業の開発・生産現場能力は、世界的に見ても高いレベルにあり、強みを持っていると評価できます。しかしながら、設計情報の流れにかかる全ての機能(例えば、企画、開発、生産、販売)をトータルな事業システムとしてデザインすることなしに、強みを収益化することは、難しいと考えます。ものづくり能力をビジネスモデル化することが、現代企業の今目的課題です。

 

・「販売機能」を包括したビジネスモデルの検討

本研究会のターゲットの一つは、「販売機能」を包括したビジネスモデルの検討にあります。ものづくり研究をトータルな事業システムで考える場合、「販売機能」のありようが欠けてしまうケースが多くあります。

持続的な競争優位、また、勝ちパターンを構築する企業は、顧客が期待し、かつ満足させる製品・サー ビスを設計するとともに、販売のありようも同時に設計しています。優れた製品・サービスは、顧客満足の必要条件であっても、それだけで十分条件をも満たすことにはなりません。競争市場を直視すれば、ソリューションに必要とされる「良い設計情報」と「付加価値」は、販売機能よって善し悪しが左右され、また、販売機能による新たな設計情報(サービス)が付加され、商品の魅力度が増しているケースが多くあります。

つまり、生産・開発・販売がそれぞれ設計情報をソリューション化する機能を担っていると考えることができます。

このような視点に立てば、例えばアーキテクチャの違いによるビジネスモデルの組み替え、技術標準の収益化、販売網・営業改革、など多様な課題が研究対象として考えます。従来、開発から販売までの事業システムであるビジネスモデルは、サプライチェーン・マネジメント、あるいは製販統合など、企業の個別部門の密接な連携を考察した研究によって進められてきました。しかしながら、こうした先行研究の主眼は、効率的な生産システム、あるいは販売システムの構築や実態解明に力点が置かれています。

本研究は、その成果等も活用しながら、ソリューション提供力、及び顧客グリップカを高めるトータルシステムの姿を描くことを目的に、以上で述べた課題に取り組んでいきます。