立命館大学 経営学部

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金森 絵里教授

Eri Kanamori

研究分野
エネルギー問題と会計
主な担当科目
企業と会計、連結会計論
Q1
現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。
美しい自然を子供たちに引き継ぐために何ができるかを会計学から考えています。
具体的には,原発の会計を研究しています。きっかけは,2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故でした。原発事故による自然破壊を目の当たりにし,それまでほとんど正面から取り上げられることのなかった原発の会計を研究し始めました。原発事業は他の事業とは異なり,事故を起こした場合の自然破壊の程度や放射性廃棄物の自然に還る年数が,けた外れに大きいという特徴をもっています。誰にもその影響を確実に計算することはできません。他方で,原発事業は経済活動ですから,何らかのかたちでコストを数値化し,毎年,会計処理しなくてはいけません。この難題に,過去の会計担当者がどのような答えを与えたのか,それはどう評価できるのか,今後ふたたび原発事故を起こさないためにどのようなことが必要なのかを会計学の観点から見極めたいと思っています。
Q2
どんな学生時代を送っていましたか。
学生時代は,感受性の強い,想像力の豊かな子どもだったと思います。たとえば「あした戦争が始まって,この世界が焼け野原になってしまったらどうしよう」とか,ベッドのなかで本気で考える子でした。また,たとえば誰かにそっけない態度をとられたときは,「忙しいのかな?」「考え事でもしてるのかな?」とは考えず,「私はきらわれてるのかな?」「何か悪いことをしたのかな?」と考えてしまう傾向があったので,不安感の強い子でもありました。自分を追い詰めるようなところもありました。そんなときに,癒しとなったのが夕焼けや湖岸などの身近な自然でした。幼いころから豊かな自然に囲まれて育ち,その美しさにいつも癒されてきたので,いつの頃からか,美しい自然を守る活動に携わりたいと考えるようになりました。
Q3
現在の専門分野を志した理由・研究者になったきっかけを教えてください。
研究者になったのは,「なぜ自然破壊が起きるのか,どうすれば自然を保全できるのか」を学びたかったからです。勉強を始めたころ,「なぜ自然破壊が起きるのか」という問いに対して,主流だった回答は企業=犯人説です。公害問題に代表される自然破壊は企業の経済活動や利益追求によってもたらされたものだ,という図式です。それでは,「なぜ企業は自然破壊を起こしてまで利益を追求するのか」ということを疑問に思い,企業の利益追求について勉強するうちに,この問題に回答を与えるためには,会計の知識が欠かせないということに気付きました。これが会計学を専門分野として志した理由です。会計学は非常に奥の深い学問で,いったんは自然保全とは無関係の研究にも携わることになりましたが,そのおかげで会計学における哲学や歴史について深く学ぶことができました。その後,2011年の東日本大震災をきっかけとして,原発会計の研究を開始したのは前述のとおりです。
Q4
高校生へメッセージをお願いします。
高校生の皆さんは,今,どんなことを考えていますか。家族や友人との人間関係に悩んでいたり,受験や将来に不安を抱いていたり,重苦しい日々を過ごしているかもしれません。私はそうでした。そのなかで,皆さんが思う,自分にとって大切なものは何ですか。学生時代の私にとってそれは,身近な自然でした。学生時代から25年経った今も,「美しい自然を保全するためにどうすればよいのか」という問いに完全な答えは見つけられていません。自分にとって大切なものを守っていく,ということは,実は,人生をかけなければならないくらい難しいことなのかもしれない,と最近思います。けれども,他方で,そうやって自分にとって大切なものを守っていくと,同じものを大切に思う人との出会いがあり,その人たちと共有する喜びが生まれます。そんなところに人生の意味があるのかなとも思うようになりました。みなさんにとって,大切なものは何ですか。

■おすすめの書籍や映画

森永卓郎『グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』インターナショナル新書,2020年。


■関連リンク

研究者学術情報データベース (ritsumei.ac.jp)