2002/05/17
顧客満足論
−第6回 戦略としての顧客満足(2) 顧客満足と組織(つづき)−
0.前回講義への質問などから
(1)知覚矯正仮説と対応
@「顧客が自分の期待に自分の評価を近づけたい」という心理は理解できるが、そうすると、前回の「多少不満」の効果や「低期待=高評価」が成り立たない場合もあるのか。
A期待を高める方法には、メディアを使った広告・宣伝以外に何かありますか。
B知名度の低い企業は顧客の期待を得にくいのではないか。
C主観的評価は、顧客の心情や外部(友人、家族など)に影響されるのか。
D知的矯正をねらい通りに行うのは微妙すぎて難しいのではないか。また、成功させるにはどのような方法があるのか。
(2)顧客満足の方法と統合戦略
@「無関心戦略」をとった時点で、顧客からの評価を下げてしまう可能性は無いのか。また、「やめてしまう」というのは、日本人が苦手とすることではないのだろうか。
A不満足空間に対して改善戦略をとる場合、広告などを使ってそのことを宣伝したりするのだろうか。
B潜在的満足空間の低プライオリティ戦略に関して、
・「価値をおかない」とは、どういったことか。
・どのような基準で「将来必要ない」と判断するのか。
・この戦略と、「潜在的満足の過剰削減戦略」は似ているように思うが、どのように違うのか。
C図11の矢印は何を意味しているのですか。
(3)顧客満足の実行と日常活動
@ 権限の委譲をなぜサービス業以外は今までほとんど無視してきたのか。
A 実際に逆ピラミッド型の組織で成功している企業は日本にはどれくらいあるのか。スターバックスはこれに当てはまるのではないかと思うが。
B 「ピラミッド型組織から逆ピラミッド型組織」より、トップと現場が同等の組織のほうが良いのではないか。
C 顧客を満足させるには、トップと現場のどちらが重要とされているのか。
D 現場にいる従業員が権限を持つ場合、同時に責任も担うことになると思うのだが、そのためにはかなりの職務遂行力が必要となってくると思う。そうすると、企業側には人材を育成する能力が問われると思う。これからは、人材育成能力の低い企業は成功しないのではないか。
E ファミリーレストランやコンビニエンスストアなどは、ほとんどの仕事をアルバイトの従業員が行っていると思うが、彼らの意見も現場の声としてトップが取り入れている例はあるのか。
F 顧客の反応をトップに伝えるのは難しいことであると思うが、このことに対し企業はどのような工夫をしているのだろうか。
G 一般的に、現場の声はどの程度重要視されているのか。
H 「従業員満足を高めることが顧客満足に直接つながる」とあるが、本当にそういいきれるのか。
I 従業員満足をはかる基準はあるのか。
J ディズニーランドは入社する際の新入社員に対して自覚を十分に促す教育を行うという話を聞いたことがあるが、これもESの一環だろうか。
K ディズニーランドのリピーターは大人が多いのに、「子供の視線」というサービスの満足追求はなされていると言えるのか。
この質問をした人は、講義を聞いてないのかもしれない。
L 先生が思われる組織マネージメントの成功している例(トップの考えを従業員が十分理解し、独自の判断で一人一人が行動している)はどのような企業がありますか。
他には・・・
@ 顧客満足度はどのように調べることができるのですか。
A FM・AMがなぜ本質機能にならないのか理解できなかった。
B 表層サービスは、企業がどこに力を入れるかによって違うと思うが、同じ業種でも異なりますか。また、表層サービスは無限にあるのでしょうか。
C dissatisfactionとunsatisfactionの違いをもう一度おしえてください。
X 顧客満足と組織対応
1.はじめに−サービス経済化と顧客満足
(1)経済全体に占めるサービス・セクターの比重が相対的に高まっている
→事業運営のあり方もサービスを軸とした考え方への転換が迫られる
(2)サービスの特徴
基本的には無形性
派生的に同時性、顧客との共同活動など
(3)現場のオペレーションの重要性と戦略的方向付けの意義
2.二つのサービス運営スキル
(1)二つの運営スキル
・人間的運営法(アート)〜属人的
・科学的運営法(サイエンス)〜一般的、普遍的。「愚か者の方法」
(2)アートからサイエンスへ
伝統的サービス・・・人間的運営方法が主
→特定個人の能力が及ばない規模になると、これでは対応できなくなる
近代的・大規模サービス・・・科学的運営法へ
(3)「サービスの工業化」
@ハードのテクノロジーの導入(機械・設備):自動販売機など
Aソフトなテクノロジーの導入(マニュアル化、システム化)
B混合テクノロジーの導入:設備とシステムの結合
3.ハンバーガー業界にみるサイエンスとアートの運営
※現在のマクド、モスの手法は必ずしもテキストの通りではない。
あくまで一つのケースとして理解すること。
(1)マクドナルド〜科学的運営法
システムとマニュアルを通じた店舗運営の標準化、単純化、画一化
(2)モスフードサービス〜人間的運営法
フランチャイズ方式による属人性を重視した運営
→いくつかの困難点:規模追求、サービス水準の維持・安定など
4.サービス満足追求の課題
(1)対象となる顧客ターゲットに高い満足を提供することの重要性
ディズニーランド〜経験の蓄積に裏打ちされた「子どもの目線」
(2)二つの運営方法の相互不可侵性(要するに、同時に両方は追求できないということ)
一般的には、もっとも優れた業界内の科学的運営法の実行者がリーダー
小さいながらも独特のサービスで狭い市場の疑似独占を達成するニッチャー
→いずれもが対象となる顧客ターゲットに高い満足を提供する
(3)人間的運営をやってきた企業が規模拡大をする際の困難性
これはベンチャーのステップアップなどでもおなじ問題がある
5.運営の未来戦略方向
三つの新しいサービス業成長の条件と方向
(1)従来通りの小規模な人間的運営方式の維持
小市場、高付加価値、高価格
(2)大規模化をねらい事業の運営全体を徹底してシステム化・マニュアル化〜科学的運営方法の導入
大市場(マス・マーケット)へむけたサービスの工業化
(3)中間型:人間的運営を基盤にしながらサービス水準を落とさずに規模拡大をめざす折衷方式
@伝承型拡大:たとえば「のれん分け」
A理念による価値ベクトルあわせ:CI、企業文化の再構築など
※松下のような「理念の唱和」は今日ではあまり意味がないと近藤は考えている
むしろ今日では、自らの仕事の社会的意義を実感できることなどが重要
Bハイタッチ・ハイテック:裏方を技術で合理化し、人材を表へ回す
C事業分権制:拡大した事業を細分化し、それぞれに優れた人材を配置し属人化する
6.顧客満足の実行と日常活動、再論
戦略と実行活動の連動のために・・・適切な組織対応、コントロール(管理)システム
評価システム、などが必要
(1)権限委譲
「真実の瞬間」を充実させるために、顧客との接点に事業全体の主軸をおく
※サービス業に強く現れるが、メーカーにとっても他人事ではない
〜@メーカーでもサービスが重要になっている
A商品を送り出す「現場」の判断の重視
(2)組織対応
逆ピラミッド型組織作り・・・権限委譲を形にあらわす
(3)管理・評価システム
顧客満足、に焦点をあわせてこれらのシステム(さらには組織風土)を作る
例)ノードストローム百貨店
(4)組織ビジョン
「従業員満足(ES)」を高めることが顧客満足にも通じる
→従業員が自ら納得・満足できる高い社会的価値・意義付けを与えることの重要性
※トップはなにをすべきか