2002/05/24
 
 
 
 
 
顧客満足論
−第7回 顧客満足の今日的課題(1)
 
 
 
 
 
 
0.前回講義についての質問などから
(1)サービス経済化と顧客満足
@「同時性」について理解しにくかった。
 サービスの特徴である「同時性」とは、サービスは対象がないとなりたたないし、対象は提供する側が準備することができない。またサービスは、必要なその場でそのときに行われなくてはならないことが多い、ということ。受け手がそのときその場にいなければ、仮にサービス活動が行われても無駄。例:乗客のいないバス
A『経済全体に占めるサービス・セクターの比重が相対的に高まっている』とあるが、これはサービスに対する考え方が、機能の提供を含めより幅広く、より柔軟になったことを意味しているのではないか。
 まさにそのとおりです。
 
(2)二つのサービス運営スキル
@科学的運営方法には限界があり、マニュアル化、システム化が行き届いた上でさらにアート的なサービスが必要になると思うのですが。
 科学的運営法を前提として、人間的運営法をいわば「科学化」していくことが必要になります。
A人間的運営法より科学的運営法を採用したほうが企業は成功するということですか。
 そうは言っていません。規模の拡大のためには科学的運営法を基礎とした方法に転換する必要があるということです。
B人間的運営法を採用して成功した例はあるのですか。
 ぜひプレゼンで探し出して紹介してください。
Cアルバイト社員に対する接客マニュアルは人間的運営法か科学的運営法のどちらに分類されるのですか。
Dやはり「マニュアル」は、必要なものなのでしょうか。
E「マニュアル」を持たない企業はどのようにしてサービスの一定化を図っているのだろうか。
 マニュアルは、人間的運営法で
F人間的運営法で顧客に高い満足を提供し、従業員の意識レベルも高いうちは良いが、規模の拡大にともない科学的運営法をとり接客等がマニュアル化されすぎたために、顧客満足の低下を引き起こした例はたくさんあると思う。このような場合、どのような点に注意して運営方法を移行させればよいのだろうか。
Gサービス経済化とサービス工業化の関係について詳細に説明してください。従来のように工業が国を引っ張る時代は終わったと認識しても良いのだろうか。
Hスターバックスコーヒーはサービスに関するマニュアルが無いと聞きましたが、これはアート的であるといえますか。
I科学的運営法が「愚か者の方法」であるというのは、どのような意味ですか。
 
(3)ハンバーガー業界にみるサイエンスとアートの運営
@科学的運営法を採用するマクドナルドと人間的運営法を採用するモスフードサービスではターゲットとしている顧客にも違いがあるのだろうか。
Aマクドナルドは科学的運営法の成功が現在の成功を導いたのだろうか。
B同じ運営法同士だと、淘汰や合併などにより市場が独占(寡占)化してゆくのではないか。
C直営店でなくフランチャイズだと科学的運営法は難しいのではないか。
D「モスフードサービスは人間的運営法であり、いくつかの問題点があるため拡大は困難」とおっしゃっていましたが、私には現在モスフードサービスがうまくいっているように感じられます。これは、『運営の未来戦略方法』の項に書かれていた中間型の戦略をとったからではないでしょうか。
 
(4)サービス満足追求の課題
@科学的運営法と人間的運営法は同時に両方を追及することができないとあるが、スターバックスコーヒーは同時に二つが追求されている気がするが。
Aモスフードサービスが全国展開できているのは科学的運営法と人間的運営法を同時に追及しているからではないか。
 
(5)運営の未来戦略方向
@中間型は、相互不可侵性の観点から捉えると失敗が多いように思われるが。
 
(6)その他
@のれん分けとフランチャイズの違いをおしえてください。
A科学的運営法と人間的運営法は同時に両方を追及できないのに、中間型があるというのは矛盾があるのではないか。
B知名度の低い企業は顧客の期待を得にくいし高い満足を提供するのも難しいということですか。
 
 
※今後の予定を若干変更します。
5/24 第7回 顧客満足の今日的課題(1)関係性マーケティングとソリューション満足
5/31 第8回     〃     (2)CRM
6/ 7 第9回 顧客満足の実践 顧客満足度調査、組織のあり方、非営利組織と顧客満足
6/14以降:グループ・プレゼンテーション
       ※同じ日に、まったく同じケースが重複しないようにしてください。
 
1.関係性マーケティングと顧客満足
(1)なぜ関係性マーケティングか
@環境の複雑化、不透明化→信頼に基づく長期的関係づくりが重要になる
A安定的な長期顧客との継続的な取引からこそ利益が上がる ※80対20の法則
B商品が高度化しシステム化することで、メンテナンスやアフターサービスの重要性が高まる
C関係性構築のための技術的基盤の発展(POS、会員カードなど)
D商品のライフサイクルが短くなり、顧客との関係を安定させた上で次々と新製品やモデルチェンジの対応をしていくことが求められる
Eサービス商品が拡大し、個客への対応が必要となる
F売り手と買い手の関係が変化している
 
(2)関係性マーケティングの意味
コトラー+グルンルースの定義
「マーケティングとは、顧客やその他の利害関係者集団との関係を、その全集団の目的が自社の収益を満足させ得るように、確立・維持・発展させるビジネス・タスクである」
つまり、関係者それぞれが自己の目的を追求することが、自社の利益になるようにし向けること。
   具体的には、取引の当事者双方の満足を達成することになる。
    例)いきつけの店
      カード会員
      メーカーと流通業者 セブンイレブンの例
 
2.ソリューション満足のマーケティング
(1)ソリューション満足とは
 「二者の相互行為を通じ、買い手の認知した問題を売り手の解決策で充足すること」
   もちろん、買い手のニーズなどに適合した商品を売ればそれだけでもそうなのだが、
   問題の建て方としてこのように考えると、まったく異なってくる
    例)ドリルか穴か
   売り手が、買い手の問題の探索、発見から最終的な解決まで一連の対応で行うことが   課題。
    ※時に買い手は自分の問題がわかっていない
 
(2)ソリューション満足のマーケティング類型
   @行動重視型:双方が問題を知っている。単に距離などをうめて解決すればよい
           例)のどが渇いている買い手、ジュースを売りたい売り手
   A提案型:買い手が問題をわかっていない。売り手から問題認識と解決方法を提供
           例)どうやって事務経費を減らしていいかわからない買い手
   B奉仕型:買い手はわかっているが、売り手がわかっていない
           例)株の投資家と証券会社
   Cワークショップ型:両方ともわかってない
              例)セブンイレブン