2002/05/31
 
 
 
 
 
顧客満足論
−第8回 顧客満足の今日的課題(2)CRM−
 
 
 
 
 
 
0.前回講義への質問などから
 
(1)関係性マーケティングと顧客満足に関して
@双方が「満足」を得ようとするとき、主導権は「売り手」にあるのですか。
 現実的にはその場合が多いですが、あとのセブンイレブンの例にように、「買い手」側に主導権がある場合もあります。
A関係性マーケティングについて、理解しにくかった。
 具体的にどこがでしょう。
 
(2)ソリューション満足のマーケティング
@そもそも、「ソリューション」とは、どのような意味を持つ言葉なのですか。
 「解決」です。
A多くのビジネスは買い手が何を欲しがっているかを考えることから始まると思うが、これは提案型のソリューション満足か。
 ドリルと穴の話で説明したように、買い手が具体的にほしいと思っている「何か」のことを考えるだけでは不十分で、買い手が明確に意識できていないものであっても、買い手のところにある問題や課題をどうやって解決するのかを提案するのが「提案型」です。
B「結婚相談所」や、「生協でたまに行われているプロテインや新製品の試食会」は、提案型の例と考えられるか。
 提案型マーケティングとなる可能性はもっています。
C奉仕型で、「満足」は発生するのか。(例からは解決されているように思えないが・・・)
 例はあえて極端な事例を出しましたが、解決すれば「満足」は達成されます。
Dワークショップ型の例で取り上げられたセブンイレブンについて
・漬物メーカーとセブンイレブンの関係の例は関係性マーケティングにあたるのですか。
 継続的な製品開発の共同活動を続けているということが、関係性マーケティングの例といえるでしょう。
・もう少しセブンイレブンの成功例が聞きたい。
 どのような話を知りたいかによりますが、今回の事例は参考文献の『顧客満足型マーケティングの構図』からとっています。
・この例では、売り手が係わってないのではないか。売り手と買い手両方係わっていないワークショップ型はこれでいいのか。これでは、「ソリューション満足のマーケティング」理論が成り立たないのではないか。
 売り手は「漬け物メーカー」で、買い手はセブンイレブンです。売り手が技術を、買い手が顧客情報をもっていて、それを組み合わせたときに何ができるかは双方明確にはわかっていない(なんか商品が開発できる、ことはわかっているにしても、具体的な商品のイメージはない)ので、ワークショップ的に議論して考えるということです。
E互いに大切な情報を提供しあってまで商品開発はすべきなのか。
 もちろんです。
F情報の共有によって得られるソリューション満足はどのような業種であっても提供できるものなのか。
 どこでもかしこでもできるわけではありません。
Gソリューション満足のマーケティングでは、馴れ合いにより緊張感の無い関係に陥ってしまうことがあるのではないか。また、なぜ「気心の知れた仲間」である必要があるのか。「組織」ではいけないのか。
 なれ合いの危険はあります。ただ、ワークショップ型では、双方がそれぞれのもつ情報や技術などをもちより、取引相手双方が「交渉」するというより、共同でわいわい議論しながらなにかをつくりだすというところに焦点があります。だから、取引先同士の関係というよりもっと親密さが求められるということです。
Hソリューション満足のマーケティングにメリットが多いならば、ほとんどの企業はこの手法を採用しているのか。
 必ずしもそうはなっていないですね。ぜひ、ソリューション満足の事例をグループプレゼンテーションでとりあげてみてくだださい。
I双方満足とは、従業員と顧客の満足ですか。企業と顧客の満足ですか。
 企業(組織)と顧客の関係です。
Jすべてのソリューション満足のマーケティングはレジュメにあがっている4つに分類できるのか。
 そのとおりです。
K買い手に問題意識が無くニーズの感知が難しい分野はどの類型に当てはまるのか。
 提案型です。
L図23を引用した文献の名前をおしえてください。
 上と同じく『顧客満足型マーケティングの構図』です。
M「コスト削減のためにアウトソーシングをする」とは良くきくが、なぜアウトソーシングするとコストは下がるのか。
 口頭で説明します。
 
(3)その他
@最近、新入社員の早期退職が増えていることが問題になっているが、これは企業が従業員満足を満たしていないことが1つの要因になっているのではないか。
 関係があるでしょう。これは、前回の講義で雑談で出した話題とからんでいます。
A関係性マーケティングとソリューション満足は、セットで考えるのが好ましいのですか。
 そのとおりです。
 
 
 
1.顧客満足をこえて
(1)CS活動の教訓
@顧客は一律ではない
A顧客には儲かる顧客と儲からない顧客がいる
B顧客ごとの異なる扱いの実現には、企業に高い能力が必要とされる。
 
(2)何が求められているのか
●「顧客の側に立つ」〜必要な三つの能力
 @顧客の思いを理解する
 A高度な専門知識に基づいて商品・サービスを理解する能力
 B顧客の思いを商品・サービスへと「翻訳」する能力
   →「購買のエージェント」へと、顧客と供給者の関係性(relationship)が変化している。
 
●顧客の「需要」をどのようにとらえる必要があるのか〜図1−2
 @顧客の思いは単一の商品やサービスでは満たされない
 Aその購買は顧客にとって買い換えかもしれない
 B来店していない顧客にも収益機会がある
 C顧客の購買と購買の間にも収益機会がある〜アフター・マーケット
 D「紹介利益」「学習利益」
 
(3)「個客」という考え方〜「One to One マーケティング」
 ※Many to One ではない
 
(4)CRMモデル(図1−6)
 
 
2.CRM戦略
(1)「セグメント」の変化への対応
  @顧客は曖昧化している・・・自分自身で何がほしいのか、必要なのか、わかってない。
                (選択肢が拡大したあまり、関心の分散と情報過多がおきる)
  A顧客セグメントが錯綜している・・・図2−5
  B顧客がバーチャル化している・・・通販、ネット
 
(2)CRM基本戦略
  @企業を「個客エージェント」型へ
    ・カスタマイゼーション:商品・サービスを顧客のニーズにあわせて作る、組みあわせる
    ・ワンストップ:あるニーズに関連する商品やサービスを一カ所で提供
    ・マッチング:顧客のニーズにあった商品・サービスを探す
    ・ジャストタイミング:顧客にふさわしいタイミングでの提供
    ・レコメンデーション:顧客の嗜好・消費パターンに応じてピンポイントで提供
    ・メタプロダクト:顧客の目的実現のためにセットで提供
  A収益基盤を「顧客生涯価値」におく
    「顧客生涯価値(LTV)」〜図2−10
       1.個客シェア(それぞれの個客の消費にどれだけ食い込んでいるか)
       2.商品範囲(品揃え)
       3.顧客時間(タイミングと継続性)
       4.顧客範囲(誰に売れたかの把握と潜在顧客の掌握)
         この4つの軸を組みあわせて、企業の成長のチャンスをつかむ
  Bセグメンテーションを需要に直結させる
    どうせ顧客は押しても買わない
      →買う気になっている客を効率よくみつけよう
         →タイミングをうまく計る
         →その客の情報収集をてつだう
 
 
より深く学びたい人のための参考文献
  アクセンチュア『CRM 顧客はそこにいる 増補改訂版』東洋経済新報社、2001年。
    (図表はすべて本書から)