2002/07/12
 
 
 
 
 
顧客満足論
−第14回 非営利組織と顧客満足−
                    まとめ
 
 
 
1.非営利・公共組織と顧客満足
(1)非営利・公共組織とは
  ・狭義の「非営利組織」
      公益法人:広く開かれた組織としてオープンな公共奉仕をめざすもの
            たとえば医療、福祉、文化、教育など
      共益法人:限られた会員のための組織として会員にのみ奉仕することをめざすもの
            たとえば労働組合、農協、趣味のサークルなど
  ・公的機関(国際機関、政府、地方自治体など)
 
(2)顧客満足の観点から見た非営利組織
  @事業は非営利だが、雇用された従業員が事業活動に従事するもの
    →基本的には一般の企業などと同じ考え方で、事業活動の対象の顧客満足を考える
       例)政府・自治体機関:国民、住民 病院:患者 学校:学生
  A事業活動は基本的に自発的に参加する構成員・協力者によって担われるもの(b)
    →事業活動の対象と、構成員・協力者の双方の顧客満足を考える必要がある。
       例)政党:有権者・国民と党員・後援会員
         ボランティア団体:援助される人と援助する人
         サークル:おもには構成員自体の満足だけ考えればよい
  B両方(@A)の側面を持つもの
    →考え方としてはAと同じ
       例)生協:組合員はお客さんであると同時に組織の主体者でもある
 
(3)非営利組織における顧客満足の重要性
  非営利組織こそ「顧客満足」を重視する必要がある
     〜「市場」の検証をうけない場合(行政など)
      自己満足にならないために(ボランティア組織など):出資者との関係でも
 
(4)非営利組織における顧客満足の注意点
  @顧客の表面的な要求にこたえるのがよいとは限らないことがある:学校など
    =顧客自身が自分たちのほんとうの要求がわかっていないことが少なくない
  A対価性がない場合、顧客の不満がいっそう潜在化しやすい:行政など
  B構成員・協力者の顧客満足は忘れられがちである:ボランティア組織など
  C提供される製品・サービスの「表層的」部分の重要性が忘れられがちである:行政など
  D短期的な成果だけでは正しく評価できない場合がある:労働組合など
 
(5)非営利組織の顧客満足活動の具体的動き
  @自治体における「行政評価」の導入
  A大学における「授業評価」→「改善」のサイクルづくり
 
 
まとめ
 
1.この講義の狙いと、理解しておいてほしいこと
    ※基本的理解を、具体的にイメージできればよい。細かい知識の記憶に意味はない。
 
(1)なぜいま「顧客満足」なのか
 ・「顧客満足」が重視されるようになった経済的背景
 ・1970年代の「dissatisfaction」状況から90年代の「unsastisfaction」状況への変化
    「不満への対応」から「新たな顧客満足の創造」へ
 
(2)顧客満足経営の追求
 ・表層機能・サービスと本質機能・サービスでの顧客満足充実のあり方の違い
 ・顧客の「知覚」のずれをどうとらえるか
 ・現状に対する評価と、どの方向へ進むべきかによって戦略的対応のあり方が異なる
 ・顧客満足を実現する組織のあり方
 ・サイエンス型経営とアート型経営における顧客満足のあり方の違い
 ・顧客満足を意識した商品開発のあり方
 
(3)90年代型顧客満足のキーワード
 ・関係性マーケティング
 ・ソリューション満足
 
2.顧客満足についてさらに学習を深めるために
 
(1)顧客満足重視の時代における経営のあり方
奥住正道『顧客社会−生活者中心の流通戦略』中公新書、1997年。
  小売業を中心に、顧客と事業者との関係の変化を背景にした経営の転換方向を示す。
佐藤知恭『顧客ロイヤリティの経営−CSを超えるサービス・マネジメント』日本経済新聞社、2000年
  実践的な展開では第一人者がCSで失敗しないための基本的な考え方を力説。必読。
 
(2)顧客満足の個別的な課題について
ダイヤモンド・ハーバードビジネス編集部編『顧客サービス戦略』ダイヤモンド社、2000年
       〃            『「顧客学習」のマーケティング』同、1998年。
  Harvard Business Review掲載の関連論文を集めて翻訳したもの。レベルが高い。
  後者は特に「個客」戦略に焦点を当てている。
アクセンチュア『CRM 顧客はそこにいる』東洋経済新報社、2001年
  Customer Relationship Managementについてのよくできたテキスト。
和田充夫『関係性マーケティングの構図』有斐閣、1998年。
  関係性マーケティングについての詳論。
 
(3)How toを深める
佐野良夫『CS「顧客満足」の実際』日経文庫、1996年
  コンパクトにまとめてある。
浅野紀夫『顧客満足度調査のノウハウ』かんき出版、1999年。
  テキストはいろいろあるが、この本は「データのウソ」から話しが始まるのがおもしろい。
 
(4)その他
『DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー』(月刊、ダイヤモンド社刊)
 2001年11月号「T.レビットのマーケティング論」
  「ドリルと穴」の話のもと、「マーケティング近視眼」新訳を掲載
 2002年7月号「顧客戦略の本質」
  CS経営の最新の課題を提示。けーす・スタディーも勉強になる