顧客満足論 質問への回答
第3回
 
1.顧客満足論の発展と系譜
(1)認識の時代
・効率効果主義についてようやくわかりましたが、ドラッカーの限界のところがよくわかりませんでした。
・「顧客創造」とは具体的にどういうものですか?
・ドラッカーが「顧客創造」するために、何か特別な方法がありますか?
 ドラッカーの「顧客創造」の考え方は、企業はその存続・発展のためには利益ではなく「顧客創造」をその活動の目的・目標としなければならないというものです。未来へむけて顧客を創造し続けることなしに、持続的に企業を維持・発展させることはできないと考えたのです。これは、財務諸表上の「利益」こそが企業活動の目的であると考えていた当時の人々に大きな衝撃を与えました。しかし、ドラッカー自身「利益」の必要性を否定していなかったにもかかわらず、こうした定義の仕方は、「企業活動の目的は利益ではない」という理解を生み、一方では利益を軽視する傾向、一方では企業活動を過度に美化する傾向を生み出しました。これをドラッカーの「限界」と説明した訳です。
 
(2)理念定着と体系化の時代
・戦略的顧客満足の一要素として、現在に至っても、60年代に提唱されている「マネジリアル・マーケティング」すなわち、トップマネジメントの重要性というのは、軽視できないものですか?マネジリアル・マーケティングの発想自体は、古いものではないということですか?
 トップマネジメントの重要性は今日でも当然大きなものです。
 
・4PのPlaceは「場所」ではないのですか?チャネルって何ですか?
 Placeは場所です。ただ、マーケティングにおいて「場所」とは結局商品やサービスを流通させ販売する「場所」のこと、すなわり流通経路のことです。流通経路は単一ではない(たとえば、スーパーもコンビニもあるように)ので、その選択が必要であるという観点から、これを一般的にはチャネルと呼びます。
 
(3)社会価値導入の時代
 
(4)競争の結果としての顧客満足
・市場シェア・利潤で優位にたっているのは顧客満足を達成しているから・・・がいまいちピンと来ません。満足していなくても、それしかないなら、シェア・利潤はどうやっても優位にたつと思うのですが。(例えばキューピーのマヨネーズとか)
 みなさんが指摘しているとおり、市場シェアや利益の面で優位にたっているからといって顧客満足が達成できているとはいえません。最初の方のように、unsatisfactionの状態でも市場を占有してしまっていれば競争優位が達成されてしまいます。
 
・1980年代は顧客満足があまり重視されていないが、この競争優位の絶対化の中で、顧客満足を重視した企業はほとんど出てこなかったのだろうか?
 そんなことはありません。ぜひ調べてみてください。
 
・1980年代の競争結果としての顧客満足のところで、市場のシェアが限界に達し、競争性の優位が強く現れてきたため、それを満たすことが顧客満足として理解(誤解?)されるようになったということですか?
 一言で言えば、「競争で優位にたつことができているのは、顧客が満足しているからに違いない」と考えられたと言うことです。
 
(5)関係性を通じての顧客満足
・戦略的提携はコラボレーションと似ていると感じたのですが、違いがあれば教えてください。
 コラボレーションを含みますが、それだけではありません。
 
・食品小売業、特にスーパーマーケットなどでは、関係性マーケティングを行うことが非常に困難だと思う。それがあるとしたら、よくあるポイントカードや会員価格だと思う。でもそれでは関係性がほとんどないと言ってもいい。スーパーマーケットで関係性マーケティングをしている事例を調べたら面白そうだと思った。カードデータの蓄積による、各顧客のニーズ分析をして、個別にアプローチをするとか。
 困難ですが、不可能ではありません。たとえば、『日経流通新聞』4/8付一面参照。
 
2.現代の顧客満足
・unsatisfactionのところで、「これしかないから仕方なく」ってありますが、もう変わってきていると思う。小包にしても郵政公社の全国どこでも500円の小包も始まりましたし、「迷う」ことが多くなってきている気がします。
・表3−1は、マイナスをゼロにと、ゼロをプラスにとありましたが、マイナスをプラスにということもありですよね。
・大手の企業がunsatisfactionばかりに目を向けて顧客の創造ばかりしたら、それはよいことだと言えるのですか?dissatisfactionとunsatisfactionはどちらが重要だとかないのですか?
 変化しつつあるのは確かですね。しかし、今日の講義のところにも関わりますが、「不満」と「満足でない」を正確に区別して把握することは現在でも重要です。二番目、三番目の質問は、この辺が十分理解できていないような気がしますが、どうでしょうか。
 
・企業側から見て客のdissatisfactionは相談窓口や意見を聞く機会をアンケートなどで取れば、見つけることができるが、客のunsatisfactionはどのようにして気づけばよいのだろうか?気がつきにくいポイントであるし、客としても意見しにくい主張だと思う。「満足ではない」を見つけるポイント・機会はどのように得ればよいのだろうか?
・dissatisfactionとunsatisfactionという表現の仕方が面白いと思いましたが、「unsatisfaction=仕掛けていくことが可能」とありますが、人間というのは、思い込み(洗脳)に弱い!だからdissatisfaction=不満な点があるものに対して、少し手を加え、仕掛けることで、多大な顧客満足を得た気にさせることは可能だと思うのですが、これは顧客満足にはならないですか?
・根本的に「欲望」とdissatisfactionは違うのですか?潜在的な欲望をくすぐるのは、unsatisfactionの状態から上へ引き上げることによると考えるのですが。
 今日の講義を聞いて考えてみてください。
 
・顧客の満足度がdissatisfactionからunsatisfactionに変わったのは理解できた。では、具体的にどうすれば、自社の経営の満足度がわかるのか?
 顧客満足度調査についていずれ取り上げます。
 
・現在の企業がこぞってデザインに力を入れている流れはunsatisfactionへの対応と見ていいのでしょうか?
 それだけが理由ではないでしょうが、一つの契機とはいえるでしょう。
 
・満足度0以下のdissatisfactionの状態からunsatisfactionの状態にするのは容易だと言えるのはどうしてか?授業の中であった例では、余り容易に感じませんが。
 実行の難易度は別として、理解し改善の方法を考えることは難しくないからです。
 
3.戦略的顧客満足の必要性
・現在ある市場にさらに投資する別の市場へ今ある商品を投資する。別の市場へ別の商品を投資するのが戦略だと思います。
 これは違います。戦略について整理して学んだ機会がなければ、きちんと勉強してください。「ベーシック経営学Q&A」のレベルでけっこうです。経営学部の方でなければ、経営学部生に聞いてみてください。
 
・「選択性」のところで、最適と考えられえるひとつの代替案に「かける」とありますが、「かける」というのは何か根拠0があって決まるものなのでしょうか?もちろん勘とかではないと思いますが、何か基準でもあるのですか?
 「かける」というのは、いくつかの案のなかからどれかを選択する以上、「他のほうがよかった」という可能性があり、そういうリスクを伴っているという意味の表現です。
 
・常にライバル企業との相対的な競争優位のための顧客満足として考えるとは、具体的にどういうことですか?
 第一に、自社が仮に現時点で顧客の満足を満たしていても、他社がより以上の満足度を達成してくることはありうるということ、第二に、代替的な製品やサービスによって顧客がより満足を得る可能性があるということから、常に競争上の優位性を意識しなければいけないということです。
 
・すべての顧客を満足させることは不可能だと私も思う。しかしより多くの顧客を満足させることは可能であると思うし、必要であると思う。そうすると選択性という戦略は間違いであると私は思うのですが?
 ラーメンの嫌いな人にラーメン屋さんが満足を与えることはできるでしょうか? ラーメン屋を出すことを決めた時点で、すでに「ラーメンを好きな人」という市場が戦略的に選択されているのです。
 
4.その他
・ヤマトのように新しい手法を用いて新たに満足度を上げて成功した例もあるが、新しいことをして、逆に失敗した例もあるのですか?
 一般的に言えばあります。しかし、失敗をおそれていては何もできません。
 
・顧客満足に関して、投資発想の例で出ているスカンジナビア航空やヤマト運輸のほかに具体的な企業のモデルはありますか?
 ぜひ調べてみてください。
 
・人がある事柄について、不満と思うかどうかについては個人差があると思うが、そういうときに不満であるかそうでないかはどのようにして決めるのか?
 その人が決めます。今日の講義を聞いて考えてみてください。
 
・ディズニーは全ての企業をライバルと考えていると書かれていましたが、ディズニーのように多方面で企業や会社を立ち上げなければ大きな成功はありえないのですか?
 違います。ディズニーが自社の製品をどう捉えたのか、ということの関わりで説明したわけです。映画ではなく、エンターテインメントとして考えたときには、テーマパークもその他のレジャー産業も競争相手になるということです。しかしだからといってすべての競争相手と同じ事業を展開しなければならないと言うことではありません。
 
・飲食業界にしろ、映画にしろ、今消費者が求めているものは食物でも映画そのものでもなく、その過ごしている時間空間そのものにお金を払っているような人に焦点を当てるべきはないのか?
 一般的にその通りです。しかし、飲食業界で言えば「食べ物」そのものを求めている人もまた市場です。ですから「中食」市場が拡大しているのです。流行の議論に一面化して理解してはいけません。
 
・現在グリーンマーケティングやエコマーケティングがだんだん主流になってきているのですが、これらのマーケティング概念が生まれた当時のCSとの関係性がわかりません。
 これは、70年代の社会価値の考え方が今日的に具体化されてきたものといえるでしょう。