顧客満足論 質問への回答
(第6回)
 
 
0 関係性マーケティングについて
関係性マーケティングとは、要するに企業と顧客が相互作用して一緒につくっていくということですか。
 簡単にいえばそうですが、一言でまとめようとするとどうしてもいろいろな重要な要素をそぎ落とすことになります。なぜ関係性マーケティングが必要になったのか、をよく理解してください。
 
1 「関係性」をどうとらえるか
今は従来のマネジリアル・マーケティングから関係性マーケティングへ変換している途中ということですか。
 変換というよりも、新しい考え方でないと対応できない部分が拡大してきたということです。たとえば前回も説明したとおり、生活基盤形成部分に対しては従来のマーケティング・パラダイムがじゅうぶん有効です。
 
業種によっては関係性を重視していくことが求められるのですか。
 業種ではなくて、それが必要な内容をもつ場合ということになります。
 
「相互作用による創造」によって、製品・サービスのコストが上がるということはないのですか。
 一般的にはコストがかかることが多いのは事実です。しかし、第二回の講義で説明したように「明日の糧のための」「投資発想」が必要なのです。また、そのことによって顧客に対してより効果的に製品・サービスを提供できるようになれば、顧客にうけいれられない製品を作ってしまったり、顧客のニーズを探索し続けることによるコストを削減できる可能性も強く、結果的にはより低コストを実現できる場合もあります。実証的に検証はされていませんが、経験的には80:20の法則(利益の8割は顧客の2割程度にすぎない常連顧客から得られる)があるといわれています。
 
「相互作用による創造」とはどういうことですか。またこれは長期継続的取引の必要性がある以上、嗜好の変化しやすい若者は顧客になりにくいのですか。
 違います。長期継続的取引を図るために顧客の嗜好の変化に対応し、また顧客とともに新しい指向性を作り出していくことが求められるのです。
 
旅行者と旅行業者との相互作用で作られたツアーは長期継続的な取引にならないと思うのですが、関係性マーケティングと言うのですか。
 みなさん自身の旅行の感覚ではそう思うかもしれませんが、実際にはパッケージ・ツァーはリピーターが多い分野です。リピート率の高い顧客層とともに新しいツァー・プログラムを開発しているような企業が、現在の状況の下でも成長しています。
 
長期継続的な取引は、1人の顧客との取引ということに限られるのですか。
 次回あたりでお話しますが、one to oneマーケティングというキーワードが21世紀に入ってから注目されています。これは、「マイ・カスタマー、マイ・ブランド」と同様の意味で、多くの顧客ひとりひとりを「マス」としての「顧客」ではなく「個客」としてとらえる必要があるといえます。
 
 
 
4 関係性マーケティングの枠組みと内実
「自ら需要を作り上げる」 の具体例を教えてください。
 
 
情報処理アプローチが娯楽やレジャーなどで適切な場合とはどんな場合ですか。
 差別化がほとんど図れないような分野、たとえばカラオケボックスなどが考えられます。
 
ブライダル業界のようなリピーターのない市場はどのように関係性を築けばよいのですか。
 個々の顧客で見た場合にはリピート性がない場合は当然あり得ます。しかし、すでに述べたように顧客は完全にばらばらではなく一定の共通性をもった層として存在している側面があり、そう考えるならば一件一件の取り扱いを通じて関係性マーケティングの発想に基づく相互関係の中からの創造を行っていけば、それは次の顧客に対しても生かせるでしょう。
 
消費者の中にも、自分の嗜好がはっきりしないために説得的コミュニケーションを使って商品アプローチを求めることはないのですか。
 「説得に応じる」という行動は自分の中に指向性、価値観や判断基準などがある程度明確になっていることではじめてとれる行動です。自分の嗜好がはっきりしない場合には単に流されることはあっても積極的に「説得に応じる」ことはないといえます。だとすると、消費に必需性がない場合は流されることをおそれて購買そのものを控えることになってしまうでしょう。
 
トライアルを誘導する際、なぜ「あいまいさ」などが必要なのですか。
 上記のように、消費に必需性がないもとでの「説得」は、具体的な価値観や判断基準に訴えると言うよりも、まさに「ちょっと試してみてもいいかな」と思わせることが重要であり、だとするとあいまいな期待をもたせるほうが購買の可能性が高いという考え方です。
 
リピーターを作ることが、関係性マーケティングにおいて重要な課題だということでしょうか。
 それだけではありませんが、それも重要な課題であることはたしかです。
 
説得的コミュニケーションとは、どのようなアプローチで消費者を説得するのですか。
 通常のマーケティング・プロモーションの手段を効果的に組み合わせることになります。
 
リピーターの調査方法を教えてください。
 リピーターのなにを調査するか次第です。購買傾向ならポイントカードなどの会員システムとPOSを連動させれば把握できます。
 
「信頼と融合」という点で、ブランド化もその手段の一つになり得るのですか。
 ブランド化ではなく、ブランドの形成と浸透が「信頼と融合」の面で役割を果たしうるといえます。
 
「信頼」と「感情的信頼」はどの程度違うのでしょうか。
 客観的論理的知性的認識にもとづく信頼と、非理性的情緒的でいわば「理由を説明できない」信頼との違いです。
 
「信頼」による関係性構築は、芸術的な要素ではあり得ると思いますが、それ以外では難しいのではないでしょうか。
 そんなことはありません。たとえばコカ・コーラの最近のキャッチフレーズ「No reason」など、まさに感情的信頼が広くもたれていることを前提にしていると思われます。