顧客満足論
-第7回 関係性マーケティングの展開-
 
 
 
Ⅰ 流通取引と関係性マーケティング(テキスト第4章)
 
1.流通におけるパワー(支配力)の問題(p.109~)
 流通取引におけるパワーの源泉については、従来三つの理解があったが、それぞれ限界がある。
  ①取引の非対称的依存性に基づく制裁と報酬
一方の他方に対する取引依存性に基づく。
例)卸・小売業者とナショナル・ブランドをもつメーカー
メーカーはナショナル・ブランドの力を背景に卸・小売業者に対し
制裁やリベート・報奨金によって支配する。
メーカーの寡占崩壊と小売の力の増大で、このバランスは崩れる。
  ②情報や専門性の偏在
主にメーカーの側が製品について情報や技術力、製品知識を独占していることに基づく。
しかし、メーカーと流通事業者または消費者の情報格差は大幅に縮小している。
  ③一方の他方に対する「一体化感覚」やシステムに帰属することによる「正当性の認識」
これは、①②によって取引依存性が強まることの結果でしかない。
「一体化」や「正当化」に関しては、関係性マーケティングの枠組みで論じるべき。
 
2.関係性マーケティングを求める現場(p.113~)
 「一体化」や「正当性」は、「信頼と融合」に近い
 しかし、流通取引における「信頼と融合」は、長期継続的な取引の結果としてしか生まれない。
例)P&Gの日本進出・・・最初は広告露出の最大化と流通業者への好条件提示
しかし、それでは限界に達し「戦略同盟」へ
 他方で、「戦略同盟」は「信頼と融合」には至らない(p115~)
例)相鉄ローゼンと菱食のEDI
 
3.焼きたてパン事業の「戦略同盟」は関係性マーケティングになりうるか(p.119~)
(1)セブンイレブン-味の素の提携
山崎製パンがセブンイレブンとの提携を断る・・・これ自体は合理的
それまでの二社の関係は密接だったが、製品開発を含む製販同盟には至って
いなかったといえる
結果としてセブンイレブンと味の素が、いわば「ワークショップ型」戦略同盟を結ぶ
二社間に極端なパワーの非対称性がない
相互の経営資源が相互補完的、相互創造的である
(2)この提携は「関係性マーケティング」たりうるか
双方に既存の取引から生まれる信頼関係はあったが、新規分野でもそれが生きるのか?
対等の協力関係としての「チームMD」の可能性
しかし、「チームMD」は明確な役割分担に基づく協業
→「両者の役割のあいまいさ」まで発展してこそ真の関係性マーケティングか
 
Ⅱ.ツー・ステージド・コミュニケーション(第6章)
 
劇団四季を例に、ツー・ステージド・コミュニケーションの実例から示唆を導く。
 
1.第一段階としてのトライアル誘導(p.185~)
製品ならサンプルを配って「使ってもらう」ことができる
しかし、サービスは実際に消費してもらわないとはじまらない→「誘客装置」の必要性
(無料ご招待は可能だが、いろいろ問題も多い)
  ①話題性づくり:劇団四季の場合は、「専用仮設劇場」
  ②製品へのアクセスを容易にする:チケットぴあとの連携
  ③その他  企業提携の促進
団体客への営業活動に注意する
テレビ広告
パブリシティ
コアなファンによる口コミ活動「シアター・アドバイザー」
男性客への販促
 
2.第二段階としてのリピート誘導(p.196~)
「市場シェア」より「顧客シェア」
「多様化」だけでない「バラエティ化」
→この二つの点から、「一人の顧客に何回も使ってもらう」ことが重要
(いわゆる「ブランド・ロイヤルティ」)
(1)高いコミットメントの重要性(pp.197-198)
サービスの提供者と顧客が同一空間内で「場」を共有することの重要性
劇場やレジャーランドで顕著だが、たとえば飲み屋、ブティックなどにも存在
 ↓
「場」においてその空間が「閉ざされたもの」であることの意義
心理的に「閉ざされる」=そこへのコミットメントが高い(集中している)状態
 
(2)「インタラクティブ・コミュニケーション」によるリピート客拡大(p.198~)
①消費プロセスによけるインタラクティブ性
物理的に「閉ざされた」空間をつくることと、高い品質のサービスの提供
→高いコミットメントと高い品質の循環をつくりだす
③顧客維持プロセスの管理
「四季の会」による顧客維持
 
 
Ⅲ 関係性マーケティングのまとめ(p.228~)
 
流通取引においては、パワー支配とパワー対立から「信頼」による関係構築へ
消費者への対応では「生活の場でのインタラクション」へ
消費前の生活から消費プロセスを含め消費後の生活に至る全過程を対象に