顧客満足論
-第9回 顧客満足の実践、その他-
Ⅷ 顧客満足活動の実践
1.顧客満足向上のプロセス
(1)システム構築段階
①理念の制定:初めての場合、いままでのあれこれの全社運動とは違うという理解が重要
②トライアル:小さな規模で試行錯誤を行い、組織の風土、状況に適合したやり方を検討
※最初は対象を限定し、完結したサイクルでテストする
a)調査手法の確立:顧客の言いたいことを聞く
b)分析手法の確立:いろいろな分析ツールを試す
※顧客満足度と売り上げのミスマッチをどう見るか
c)アクションプランニング手法の確立
(2)実践段階
①ベンチマーク調査:自社だけでなく広範な顧客について調査し、自社の問題点を解明する
②アクションプランニング:ベンチマーク調査で解明された問題点から課題を明確化し、
さらに実行の戦術を策定する。
(3)発展段階
①システムの微調整
②サブシステムの開発:新たな評価制度や成果の普及のための仕組みづくり
2.CS調査
CS調査は問題発見型調査・・・「問題点」が何かが表面的にわかる
→調査結果を分析して初めて解決の課題が明らかになる
(1)調査対象
①エンドユーザー調査が優先する
流通段階では卸売りや小売りもある種の顧客としてとらえることができるが、まず重要なのはエンドユーザー(最終消費者、その製品やサービスを実際に利用するもの)の満足度調査が重要。
例)テレビ・・・エンドユーザーの評価基準は本質的な機能が重視される
販売店にとっては「売りやすさ」が重要
マンション・・・建設会社にとっての直接の顧客は建築主
しかし、最終消費者は建築主ではないことのほうが圧倒的に多い。
②意思決定者
しかし、購入者と使用者が異なる場合には、購入意思決定者を調査対象とする必要
例)子どもの使うものは親を調査する必要
注文住宅に組み込むシステムキッチンはどうする?
③タイミング
買ったばかりの人と、購入後何年も経過した人では評価が異なる
例)自動車の調査では時期ごとに異なったテーマで調査を行っている
購入後3ヶ月 :販売時満足度、初期品質→販売店、商品の完成度
1年~1年半:ディーラーサービスについてのCSI調査
4~5年 :信頼性調査
(2)調査項目
①評価項目と実態項目
・評価を問うだけでなく事実関係を明らかにする項目を含めること
・網羅的であること
・簡単に答えられるものであること
・自由回答欄が必要
②評価スケール
・4段階評価の必要性
(3)調査手法
調査対象、目的、コスト、どの程度の回収率を期待するか、によって異なる
(4)サンプル数
求める精度により決まる
例)1000サンプルでCSIを算出すると、プラスマイナス1.6程度の誤差があるので、2以上の
開きがないと変化があるとは判断できない。が、サンプル数を二倍にしても精度は二倍
にはならない。
3.アクションプランニング
アクションプラン=顧客満足を獲得するための実行計画
アクションプランの役割:全社的な戦略目標に対して、
①それを具体的な活動に置き換える戦術の立案
②その戦術の実践
(1)アクションプランを推進するための留意点
①ラーニングオーガニゼーション
組織が、各単位ごとで自律的に思考し、実践する組織のあり方がラーニングオーガニゼーション。顧客満足を実現するのに求められる組織のあり方=現場単位で独自のアクションプランを考える
・自分たちで考えたアクションプランのほうが実行可能性が高い(押しつけはダメ)
・アクションプランを考えるためのディスカッションを通じて問題が共有できる
※雀の学校か、めだかの学校か
②アクションプランの条件
全社的な方針は戦略として提示されているから、その範囲内で考えられることが前提
a)特定の意味を持つこと(Specific)
それを実行することで一定の成果が達成できることが明示的に明らかであること
b)測定可能なこと(Measuable)
どれだけできたかを数値で表現し、達成度をチェックすることができること
※指標は、測定がタイムリーにできる、わかりやすい、プラス評価、であること
c)遂行可能なこと(Achievable)
過大な労力を必要としない、かつ達成感がある(=比較的すぐに成果がでる)
d)現実的なこと(Realistic)
日常活動のなかに組み入れて違和感のないもの
※特別なキャンペーン、ではかえってダメ。持続的なものが必要
e)タイムリーなこと(Timely)
「今それをやらないといけない」ことが納得できるものでないと後回しになる
③小さく始める
いきなり大規模に始めず、試行錯誤する
※参考文献 佐野良夫『CS「顧客満足」の実際』日経文庫、1996年。