2001/06/04
顧客満足論Q&A(第7回−5/28−分)
一 顧客満足のマーケティングについて
(0)超一般的質問について
具体的な条件を抜きにして「必ず・・・なるのか」、「どのくらい・・・すればいいのか」などという超一般的質問は、経営学の世界ではほとんど無意味です。もちろん、多数の変数をモデルに投入して戦略的意思決定をコンピューターで行おうとすることもありますが、この講義で理解してほしいことは様々な具体的ケースに対してどのように考えるべきか、という基本的な考え方です。たとえば、以下のような質問については「ケース・バイ・ケース」だとしか答えようがないことを理解してください
1 競争戦略のコスト・リーダーシップ、差別化、集中化のどれが有効とかあるのだろうか? 多くの企業はどの戦略をとっていることが多いのだろうか?
2 経営資源には人、もの、金とがあるけど、企業にとって一番必要なものは何?
3 現在マーケティングをしないで商品を出すことはあるのだろうか?
4 目的ターゲットを転換する際のタイミングとはどのようになっているのだろうか? 市場拡大の何%だろうか? また次世代を先どりしようとしている企業はこういった市場拡大なども計算してその拡大していくであろうところを攻めるのだろうか?
(1)考え方について
1 コスト・リーダーシップや差別化についても、そうしたからって、競争に勝てるとは限らないと思えるし、だから「ニーズ」を加えると強いということ?
どのようにして他の競争相手との関係で優位性をつくっていくかという場合に、優位性を獲得できる一般的条件として、コスト・リーダーシップ、差別化、集中化の三つがあるということです。それさえやれば競争に勝てるなどとは言っていませんが、これらどれかのやり方をとらないと優位性を獲得することは通常困難なのです。これはやり方であり、そのやり方でなにを市場で売っていくのか、ということを考えるときに「ニーズ」が重要なのです。
2 市場がコンセプト拡大と相互作用の話が出てるけど、可能か、期間はどのくらいかかるの?
常識的に考えてほしいのですが、「絶対」はありえません。こうした可能性は潜在的に存在し、それを具体的に獲得したことによって富士フイルムは使い捨てカメラ市場で引き続き競争優位を保つための条件をつくることができたのです。期間も、製品の性格などによって相対的なものであることは自明です。
3 競争優位などは企業として活動することであり、伝統的経営の方法に顧客満足のサイドからの見方を加えたものと理解したが、正しい?
4 経営資源との統合化のところで経営資源とその実例すべてにマーケティング機能が前提されるとレジュメには載っているがいまいちわからない。たとえば人材開発にどのようなマーケティング機能が前提とされるのだろうか?
成長の仕組みがマーケティング戦略として首尾一貫的に作られたときに、それに応じた経営資源戦略が必要になります。人材についても、そうした成長の仕組みを支える人材が必要となるのです。テキストp126、5行目以降を参照のこと。
5 マーケット・アウト時に、消費者のニーズに応じるためにコンセプトを変える場合もあるのか?
6 競争優位の実現の要素として、「集中化」=狭いところでお山の大将となるとあったが、「狭いところ」とは何が当てはめられているのだろうか?インスタントカメラ市場と考えてよい?
7 成長の仕組みのところの持続的競争優位とは自分の会社が持続的に競争優位を保てるかというこというの?
8 「写るんです」の開発、特許などの申請はしなかったのか? そうすることで差別化がうまくいったのではないか? マーケティングの戦略課題においてキリンも富士フィルムも顧客の要求があってから新しいものをプロダクト・アウトさせているが、先手をとって顧客に新しいものを打ち出した例はある?
ここでは、あくまでマーケティングの実例として富士フイルムの例をあげたので、特許がどうしたということについてはふれていません。ただ、当然差別的優位を維持するために特許をとるということはあります。
後半の質問については、少し認識がちがっています。「顧客の要求があってから」というのは正しくありません。というのは、今日の講義でも述べますが、顧客は自分たちの要求を必ずしも具体的なイメージで理解していません。そうした潜在的なニーズやウォンツを製品というかたちにして提示することで顕在化させることで、顧客満足、ひいては競争優位を実現できるのです。
9 集中化とは一つの商品に力を注ぐということ?
10 市場が勝手に製品の持つ可能性を拡大していっているということは、市場と企業の相互関係が密接になり、両者にとって都合がよいということ?
11 企業は顧客に頭の片隅に常にあるように思わせるまで、市場に浸透した製品になって、目的を達成したといえるの? 製品の最終的な達成とは何?
「製品の最終的な達成」という問題の建て方自体に意味がありません。製品は、顧客のニーズに応えて市場で競争優位を獲得するための手段にすぎません。市場の変化に応じて製品は常にその意味や姿を変えていきますし、対応できなくなれば廃止されます。
12 「狭いところでお山の大将になる」という意味では「集中化」と「ニッチ戦略」は同じような気がするのだが、両者の相違点は何?
13 競争優位の実現について、コストリーダーシップを発揮するためにはある程度の企業規模の大きさが必要になってくるのか? 小さな企業やできたばかりの企業が大きな市場に対して、挑むためにはかなり大きな努力を必要とするか?
14 顧客コンセプトの受け止め方がどんどん拡大し変化していくのはどのように見つけ出すの?市場調査などをやるの?
15 ユニクロの話だが、一番大切なことは価格設定ではないか?後の3つは付随的な価値しかないと思うが・・・
あとの三つとは、競争優位をつくる条件としてあげた三つのことだという前提で答えます。値段が安いだけであそこまで流行るでしょうか? 現に、「安いだけ」だと思われていて、実際に製品の魅力度も高くなかった数年前までは、ユニクロはこんなにメジャーではなかったのです。
(2)具体例について
具体例は、あくまでこの問題を理解するための「例」です。したがって、講義内容に関係のない具体例の内容についての質問は、特に興味深いもの以外は割愛しました。「富士フイルムについて」を講義したわけではないのです。
<富士フィルム>
1 市場がコンセプトを超えた使い方をしたとき、実際にコンセプトの見直しをしたの? またどのように?
2 フィルムの一種として売られたといっていたが、今は完璧、カメラとして売れている。これも顧客がコンセプトを変えてったとか?
テキストp130〜131にふれられているように、その通りです。ただ正確に言えば、今日では「使い切りカメラ」という独自の市場が形成されていると見るべきでしょう。なぜなら、流通ルート、販売形態などは依然として従来の「カメラ」とは全く別なのですから。
3 もしカメラとして発売していたら、売れなかったのだろうか?
4 使い捨てカメラは今まで以上に差別化を図らないと生き延びていけないのだろうか? 富士はほかの企業に真似されても強いのはなぜ?
前半の質問については、「なに」と差別化を図るのか、というのが不明瞭なので答えられません。つまり、「使い捨てカメラ」と他の製品(デジカメなど)なのか、それとも富士フイルムと競争他社なのか、です。後者はぜひ自分で調べてみてください。これは、一つのおもしろいテーマです。
5 市場のニーズに合わせてコンセプトを変えていくというのは、以前製品サービスの表層と本質の部分というところとほとんど同じと考えていいのだろうか? 同じく行き過ぎたコンセプトの改新はコスト面に大きなダメージを与えるのでは?
6 テレビデオは「写るんです」と同じような考えで開発されたものなの?
7 レンズなどのカメラの部分を回収するためときいたことがあるが、これは発売後に生まれたことなのか?
当初「使い捨てカメラ」という通称をメーカーは容認していたのですが、その後環境意識の高まりなどから「使い捨て」に批判が強まり、メーカーは「使い捨て」のイメージ払拭につとめました。回収はもともとやっていなかったわけではないようですが、そうした批判が強まった後に意識的に「回収・再利用している」ことをアピールするようになりました。これは、「社会的責任」のところとも関わる話です。
8 「写るんです」は製品から顧客を作ったと会ったが、年代的にもう製品があったのでよくわからない例であった、現在で言うと携帯電話のIモードと同じなのか?
<スーパードライ>
1 競争でいつでも勝てる一般的状況においての矛盾? コストリーダーシップ、差別化、集中化の3つはキリンにもいえたこと。ラガーの固執は集中化とも取れるし、コストリーダーシップも確実にいえたこと。そんなに単純なものではないのならば、単純でない分も説明すべきでは? 変化する環境への対応は市場ニーズの対応に含まれていると考えてよいのか?
一般的条件すなわち「必要条件」であり、「十分条件」ではないです。また、キリンとアサヒについていえば、明らかにキリンはアサヒの差別化戦略に対抗することに失敗したのであって、差別化はできなかったのです。そのことから、キリンはアサヒがつくりだした市場の変化への対応で遅れをとったわけです。
2 キリンがラガーを出しているときにアサヒがスーパードライを出して、ラガーよりも売れたが、それまで一番売れていたラガーを見直して味を変えるということはファンを裏切る行為になるかもしれないから、大変難しかったのではないだろうか?
3 スーパードライが出たときもコスト・リーダーシップ、差別化、集中化をアサヒは強化したの? 出たときは安く売ったりしていたの?
二 顧客満足の今日的課題について
(1)企業の社会的責任に関して
1 デマーケティングを行われていた具体的な例があれば教えて。
2 企業の社会的責任のところで、赤字であっても社会貢献を続ける企業が増え、それが社内の意識を高めることにつながるということだったが、それは逆に株主の不満や従業員の不満を引き起こしてしまうことにはならないのか?
3 企業論で現在企業が社会的貢献を促進していると聞いたがこれもCSのためなのか?
4 ゆがみを生んでいるとあるが、どのようなゆがみなのか?
地球温暖化の危険がほぼ間違いないものといわれ、その主要な原因物質の一つが二酸化炭素であるといわれていますが、いま現在、個別の企業について二酸化炭素の排出量は規制されていません。ある業界で多くの企業が排出量の自主的削減のため設備投資をし、そのコストを製品価格に転嫁しているときに、そうした設備投資をせずに相対的低コスト=低価格で製品を販売して市場支配をねらっても、違法ではないわけです。すると、企業の行動に「利潤」というドライブがかかっている以上、そうした企業行動をとろうとする誘惑は常にあるのです。以上の例に類するような企業の行動は実際には残念ながら時折見られるのが実情です。
5 企業の社会貢献は明様に、目に見えるものなのか?そのほうがイメージがいいから?
もちろん、明確にイメージ戦略と位置づけて社会貢献をしている企業もありますが、むしろそういう直接的効果をねらうというよりは、まさに企業の社会的責任としてそうした活動を行うことから来る間接的な効果を期待していると言えるでしょう。詳しくは、『立命館経営学』学生論集2000年度版の岡本綾論文を参照してください(この春卒業したうちのゼミ生の卒論です)。
6 企業の社会貢献はたとえ赤字でもコストを切り下げてもすることは、リストラをしてまでやっているのだろうか?リストラを生んでしまうと、経済的に社会を暗くしているので、社会貢献とはいえないのではないか?社会貢献とはいったいどういうものなのか?
7 企業は大体どんな社会貢献をするの?
(2)関係性マーケティングと顧客満足に関して
1 関係性マーケティングとはCRMとは違うもの?
2 「顧客」から「個客」ということは、四季の場合、四季クラブのような、チケットの優先などのサービスにつながるものなのか? 人間的運営法と流れは似ていると思うがそのように捉えてよいのか? そのようなファンクラブのようなものは会費を払っているからわかるが、レストランなどの場合、どのような対応が「個客」であるのか? マクドナルドの場合はどのようなことになるのか?
「個客」対応というのは、日常的に一人一人の顧客を非人格的な「顧客」集団としてではなく、一人一人ことなった属性をもつ存在として認識し、個別性の高いサービスや製品の提供活動を行うことです。データベースなどを用いれば、必ずしも人間的運営法を必要としません。もちろん、あらゆるものがこの方向へ動くわけではなく、マクドナルドなどはいまのところ「個客」対応はしていないと考えてよいでしょう。
3 「個客」への対応というのは具体的にどういったものがあるの?
上の質問もかねて。例えばレストランなら、あらかじめお客さんの誕生日を登録しておいて、近づくとDMを出して、当日来店してもらえればプレゼントをしたりとか、同じ料理でも味付けの好みなどを個別レシピ化しておくことがあります。後者は人間的運営法が必要になる場合が多いと言えますが、前者ならシステム化できます。
4 相互性を考える時代になってきているということは運営スキル自体もアートになるべきだということ?
5 コンビニ業界へ、ATMが進出しているので、銀行とコンビニにも関係性マーケティングの例を言えるのだろうか?
三 前回以前の内容について
1 マクドナルドとモスバーガーの話でモスが抜本的な経営改革が必要といったが、立地条件などでモスがマクドを抜いている店舗もあると思うが、マクドにも抜本的な経営改革が必要といえるのではないのだろうか?
四 一般的内容についての質問
1 もし、何らかの理由で、顧客が離れてしまったとき、その企業はどういう活動をして、再び顧客に満足を与え、取り戻すことができるのか?
2 消費者としては、安くてよいものを望んでいるはずだが、この消費者のニーズにメーカーはブランド力以外で満足させることはできるのだろうか?
単純に「安くてよいもの」とだけはいえないのがブランド消費の特徴です。そもそも「ニーズ」を満たすのが「ブランド力」って??? テキストを最初からよく読んでください。質問者の理解のままでは単位はおぼつかないです。
3 顧客満足の独自的は概念は何?
五 その他
1 立命館教務センターで学生が質問した場合、顧客である学生に対する対応がまったくできない職員やパートが多すぎる、また、顧客である学生の声がなかなか現実化されない、結果が目に見える形で表せない立命館大学はCSを理解していないのか、または、CSとは理想論なのではないかとさえ思ってしまうのが現状である、どうお考えだろうか?
本学の従業員としてでなく、一研究者個人としてみた場合に、本学のCSに問題があるのは事実です。ただ、講義でも述べてきたように顧客満足というのはシステム全体としての取り組みの結果作り出され向上していくものなので、個々の従業員の問題に問題を矮小化するべきではありません。そういう視点からみてどのような改善が必要か、みなさんも考えてみてください。
2 ローソンとセブンイレブンとの間にある差は企業的に何が違うのだろうか?セブンイレブンなどのコンビニは飽和状態にあると思うが、セブンイレブンはさらに店舗を増やす計画をしているが、どう思われるのだろうか?
3 最近よくポカリスエットを飲む、ふと思ったことだが、昔幼いころ、風邪を引いたときに母が飲ませてくれたころのポカリスエットの味が変わった気がする。それは昔はスポーツドリンクとしてのポカリスエットではなかったからだろうか?
4 雪印は以前のようにお客さんの信頼を取り戻せるのか?
六 その他の意見、要望
1 和田さんの演劇のほうの本の題名をもう一度教えてください。
2 最近黒板の字が読みにくくなってきたと思う。もう少しわかりやすく書いてください。