2001/07/16
顧客満足論
−第14回 顧客満足活動の実践−
まとめ
[ 顧客満足活動の実践
1.顧客満足向上のプロセス
(1)システム構築段階
@理念の制定:初めての場合、いままでのあれこれの全社運動とは違うという理解が重要
Aトライアル:小さな規模で試行錯誤を行い、組織の風土、状況に適合したやり方を検討
※最初は対象を限定し、完結したサイクルでテストする
a)調査手法の確立:顧客の言いたいことを聞く
b)分析手法の確立:いろいろな分析ツールを試す
※顧客満足度と売り上げのミスマッチをどう見るか
c)アクションプランニング手法の確立
(2)実践段階
@ベンチマーク調査:自社だけでなく広範な顧客について調査し、自社の問題点を解明する
Aアクションプランニング:ベンチマーク調査で解明された問題点から課題を明確化し、
さらに実行の戦術を策定する。
(3)発展段階
@システムの微調整
Aサブシステムの開発:新たな評価制度や成果の普及のための仕組みづくり
2.CS調査
CS調査は問題発見型調査・・・「問題点」が何かが表面的にわかる
→調査結果を分析して初めて解決の課題が明らかになる
(1)調査対象
@エンドユーザー調査が優先する
例)テレビ・・・エンドユーザーの評価基準は本質的な機能が重視される
販売店にとっては「売りやすさ」が重要
マンション・・・建設会社にとっての直接の顧客は建築主
しかし、最終消費者は建築主ではないことのほうが圧倒的に多い。
A意思決定者
しかし、購入者と使用者が異なる場合には、購入意思決定者を調査対象とする必要
例)子どもの使うものは親を調査する必要
注文住宅に組み込むシステムキッチンはどうする?
Bタイミング
買ったばかりの人と、購入後何年も経過した人では評価が異なる
例)自動車の調査では時期ごとに異なったテーマで調査を行っている
購入後3ヶ月 :販売時満足度、初期品質→販売店、商品の完成度
1年〜1年半:ディーラーサービスについてのCSI調査
4〜5年 :信頼性調査
(2)調査項目
@評価項目と実態項目
・評価を問うだけでなく事実関係を明らかにする項目を含めること
・網羅的であること
・簡単に答えられるものであること
・自由回答欄が必要
A評価スケール
・4段階評価の必要性
・言葉使い
(3)調査手法
調査対象、目的、コスト、どの程度の回収率を期待するか、によって異なる
(4)サンプル数
求める精度により決まる
例)1000サンプルでCSIを算出すると、プラスマイナス1.6程度の誤差があるので、2以上の
開きがないと変化があるとは判断できない。が、サンプル数を二倍にしても精度は二倍
にはならない。
3.アクションプランニング
アクションプラン=顧客満足を獲得するための実行計画
アクションプランの役割:全社的な戦略目標に対して、
@それを具体的な活動に置き換える戦術の立案
Aその戦術の実践
(1)アクションプランを推進するための留意点
@ラーニングオーガニゼーション
組織が、各単位ごとで自律的に思考し、実践する組織のあり方がラーニングオーガニゼーション。顧客満足を実現するのに求められる組織のあり方=現場単位で独自のアクションプランを考える
・自分たちで考えたアクションプランのほうが実行可能性が高い(押しつけはダメ)
・アクションプランを考えるためのディスカッションを通じて問題が共有できる
※雀の学校か、めだかの学校か
Aアクションプランの条件
全社的な方針は戦略として提示されているから、その範囲内で考えられることが前提
a)特定の意味を持つこと(Specific)
それを実行することで一定の成果が達成できることが明示的に明らかであること
b)測定可能なこと(Measuable)
どれだけできたかを数値で表現し、達成度をチェックすることができること
※指標は、測定がタイムリーにできる、わかりやすい、プラス評価、であること
c)遂行可能なこと(Achievable)
過大な労力を必要としない、かつ達成感がある(=比較的すぐに成果がでる)
d)現実的なこと(Realistic)
日常活動のなかに組み入れて違和感のないもの
※特別なキャンペーン、ではかえってダメ。持続的なものが必要
e)タイムリーなこと(Timely)
「今それをやらないといけない」ことが納得できるものでないと後回しになる
B小さく始める
いきなり大規模に始めず、試行錯誤する
(2)アクションプランの手順
@問題発見 :通常CS調査によって解明
↓
A課題の抽出 :問題の原因を究明する(仮説の抽出→仮説の検証→仮説の集約)
↓
B実行計画の作成 :アクションプランをたてる
(多くのアイデアの優先順位を決める必要)
↓ 目的、目標、手段、達成度の指標が必要
C実行計画の実践
↓
D実行計画の見直し :1ヶ月くらいしたら微調整をはかる
※参考文献 佐野良夫『CS「顧客満足」の実際』日経文庫、1996年。
\ まとめ
1.この講義の狙いと、理解しておいてほしいこと
※基本的理解を、具体的にイメージできればよい。細かい知識の記憶に意味はない。
(1)なぜいま「顧客満足」なのか
・「顧客満足」が重視されるようになった経済的背景
・1970年代の「dissatisfaction」状況から90年代の「unsastisfaction」状況への変化
「不満への対応」から「新たな顧客満足の創造」へ
(2)顧客満足経営の追求
・表層機能・サービスと本質機能・サービスでの顧客満足充実のあり方の違い
・顧客の「知覚」のずれをどうとらえるか
・現状に対する評価と、どの方向へ進むべきかによって戦略的対応のあり方が異なる
・顧客満足を実現する組織のあり方
・サイエンス型経営とアート型経営における顧客満足のあり方の違い
・顧客満足を意識した商品開発のあり方
(3)90年代型顧客満足のキーワード
・関係性マーケティング
・ソリューション満足
2.顧客満足についてさらに学習を深めるために
(1)顧客満足重視の時代における経営のあり方
奥住正道『顧客社会−生活者中心の流通戦略』中公新書、1997年。
小売業を中心に、顧客と事業者との関係の変化を背景にした経営の転換方向を示す。
(2)顧客満足の個別的な課題について
ダイヤモンド・ハーバードビジネス編集部編『顧客サービス戦略』ダイヤモンド社、2000年
〃 『「顧客学習」のマーケティング』同、1998年。
Harvard Business Review掲載の関連論文を集めて翻訳したもの。レベルが高い。
後者は特に「個客」戦略に焦点を当てている。
アンダーセン・コンサルティング『CRM 顧客はそこにいる』1999年、東洋経済新報社
話題のCustomer Relationship Managementについてのよくできたテキスト。
和田充夫『関係性マーケティングの構図』有斐閣、1998年。
関係性マーケティングについての詳論。
(3)How toを深める
佐野良夫『CS「顧客満足」の実際』日経文庫、1996年
コンパクトにまとめてある。
岡本正耿『ビジネスマンのためのCS入門』ブレインキャスト、1999年
〃 『顧客満足創発のプロセス』ブレインキャスト、2000年
前者は基本的考え方を、後者は具体的な展開を詳述。
浅野紀夫『顧客満足度調査のノウハウ』かんき出版、1999年。
テキストはいろいろあるが、この本は「データのウソ」から話しが始まるのがおもしろい。