2002年10月24日
マーケティング論
第3回 経営戦略とマーケティング(つづき)
第4回 市場と消費者行動
V経営戦略とマーケティング(つづき)
2.マーケティング戦略の特徴と構成(p94)
(1)マーケティング戦略の階層性
経営戦略の階層性:全社戦略−事業戦略−機能分野別戦略
マーケティング戦略の階層性:
戦略的マーケティング−マーケティング・マネジメント戦略−マーケティング機能要素戦略
※具体的に考えるのは事業戦略としてのマーケティング戦略
(2)マーケティング・ミックス戦略
マーケティングの4P(マッカーシー)をどう組みあわせるのか
@製品(Product):品質、特徴、スタイル、ブランド、パッケージなど、内容そのもの
A価格(Price):表示価格、割引、値引き、分割払いなど
B場所(Place):チャネル、配送、在庫など流通に関わること
Cプロモーション(Promotion):宣伝、販売促進
(3)差別化戦略
差別といってもここでは悪いことではない。言葉を選ぶ人は「差異化」という。
「ほかと違う、うちのいいところ」をうちだすこと。
低価格戦略で価格競争の泥沼にはまるのでなく、品質で勝負しようということ。
(4)市場細分化戦略
消費者を、そのニーズ*1やウォンツ*2に即した市場*3に区分けして考え、それぞれの市場に応じたマーケティング・ミックスを展開しようというもの。区分けすることをセグメンテーションというが、その方法は大きく二つある。
@人口統計的方法
年齢、性別、職業、教育水準、所得階層、家族構成など基本的なデータに基づく区分
Aサイコグラフィック(心理性向的、psycographic)な方法(こちらがより重要)
共通するニーズやウォンツを有するグループをみつけること
人の形式的な属性よりも、やりたい「こと」、必要な「こと」の属性に注目する
例)ウィスキーを飲むのは年寄りだけか・・・キムタクのCM
男は美容院に行かないか
(5)プロダクト・ライフサイクル戦略
・プロダクト・ライフサイクルとは?
「製品の人生」すなわち、
新製品の登場→市場への導入→市場の成熟→廃棄(廃止)のサイクル
・こうした製品の「発展段階」を意識したマーケティング戦略が必要
→プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントとも共通する発想
3.戦略的マーケティングと事業ドメイン
(1)マーケティング近視眼
事業ドメイン=「自分たちは何をする会社(組織)」か
事業ドメインを明確にすることは、マーケティング戦略を策定する上でも前提となる。
しかし、「うちは薬品会社」「うちはスーパー」という考え方でよいのか?
「自社の事業は顧客のニーズに照らして定義されなければならない」(レヴィット、1960)
(2)事業ドメインの決め方
エイベル(エーベル)によるドメイン策定の三つの視点
・顧客層(誰が対象となる顧客なのか)
・顧客ニーズ(満たすべきニーズはなにか)
・技術(どのような方法でそのニーズを満たすか)
W 市場と消費者行動
※今回はテキストにはないところです。
1.消費者市場と消費者行動のモデル
(1)市場のとらえかた
@市場とは(再掲)
「ある特定のニード(need)やウォント(want)を共有する潜在的な顧客の集合体」
A市場の種類
・消費者市場:製品(サービス)を直接消費してしまう人や組織によって構成される。
・ビジネス市場:製品(サービス)を他の購買者に再販売したり、別な製品(サービス)を
生産するための材料として用いる購買者。
B市場をどのようにとらえるか〜6W1H
・Who(誰がその市場を構成しているのか)
・What(購買者は何を買っているのか)
・Why(購買者はなぜそれを買っているのか)
・Who(誰が購買に関与しているのか)
・How(どのように購買は行われているのか)
・When(いつ購買が行われているのか)
・Where(どこで購買が行われているのか)
(2)購買に影響を与える要因
コトラーによる。@→Cの順に実際の購買を直接作用する度合いが強まる。
@文化的要因(文化、サブカルチャー*1、社会階級)
A社会的要因(準拠集団*2、役割と地位)
B個人的要因(年齢と人生の段階、職業、経済状況、ライフスタイル、性格、自己イメージ)
C心理的要因(動機、認識、学習、信念と態度)
特に、心理的要因は漠然としたニーズを具体的なウォンツにむけた行動に移すうえで、
重要な動機となる。動機については次のような説が有名。ただしそれぞれに批判もある。
・フロイトの深層心理学
・マズローの欲求階層説
・ハーズバーグの2要因理論
(3)購買のプロセス
@誰が使うのか、誰が支払うのか
発案者
影響者
決定者
購買者
使用者
評価者
全部同じ場合も多いが、全部ばらばらなこともある
Aよくわかって決めているのか、適当に決めているのか
<質疑応答>
@ヨーロッパは産業革命で大量生産が可能になって、製品を海外輸出するという販売ルートがあったが、アメリカには全くなかったのだろうか。商業の不備というのは、このことなのでしょうか。
ヨーロッパでは早くから地域内の流通が盛んに行われていましたが、アメリカ大陸では基本的にヨーロッパ系白人による「開拓」の進展に流通システムと輸送が追いつかず、自給自足的な消費のあり方が多くの地域で長く続きました。今日でも、そうした歴史を反映して通信販売の占める割合が多いなどの特徴があります。
A「マーケティングをうまく行うこと」=「会社経営がうまくいく」なのか。なぜ不況という流れができるのだろうか。なぜ不況から抜け出せないのか。
不況のマクロ的(経済全体を見渡した視点から見た場合の)原因としては、消費者の不安心理や雇用の低迷などがありますが、個々の企業がうまくいっていないという場合にマーケティングの失敗または不十分があることは少なくないと言えるでしょう。たとえば、この春のマクドナルドの価格をめぐる混乱など。
B体系的なマーケティング活動をする主体・・・というところで「体系的」とはどういうことでしょうか。「体系的」の意味を具体的に説明してください。
戦略から始まって4Pのミックス、さらに個別具体的な活動までを全体としてコーディネートして展開することです。中小企業などで体系的に行うことが難しいと述べたのも、たとえば人手が足りなくてこうした活動を全体として企画し実行することが一元的に行うことが難しいとか、資金が足りなくて広告などプロモーション活動が十分に展開できないなどの制約があるからです。ただし、不可能というわけではありません。
*1ニード(need):人間の基本的な満足に関する欲求。「おなかがすいている」「勉強したい」など。複数形ニーズ(needs)と表現されることが多い。
*2ウォント(want):ニードを充たす具体的な要求。上に対応させれば、「ラーメンが食べたい」「大学に行きたい」など。複数形ウォンツ(wants)と表現されることも多い。
*3市場:ある特定のニード(need)やウォント(want)を共有する潜在的な顧客の集合体。
*1サブカルチャー:下位文化ともいう。人種、民族、宗教など、人々の意識に深層で影響する区分。
*2準拠集団:それに所属する個人の態度や行動に影響を与えるような集団。家族、友人、同僚など