2003年10月16日
 
マーケティング論
−第三回 市場の選択(1)事業機会の選択(1章)−
 
 
<質問に答えて>
(1)先週の講義内容に関して
☆企業は消費者のニーズに答えるために新製品の開発・開拓をしていくわけですが、ドコモは、AUやボーダフォンが開発した機能を1年〜2年おくれて販売しています。これは、ドコモが新しい機能を付けなくてもブランド力だけで勝負できると思っているからだと思います。このように、消費者のニーズに反することをすることもマーケティングと呼べるのでしょうか。
 原則的に言えば、これは消費者のニーズに反しているとはいえません。説明しましょう。
 
☆フォードが売れなくなった理由は、後々考えれば理解できるかもしれないが、その時々で理解するのは、無理があり、ある程度売り上げなどの影響が変化しない限りわかりえないと思いますが、見極めるのがマーケティングなのでしょうか。ニーズ志向とはどんなものですか。
☆T型フォードは潜在的ニーズを分かっていたが次のステップで失敗してGMが勝ったわけだが、GMはその次のステップは分かっていたのか。偶然か。
☆フォードはGMが売れ始めてT型が売れなくなりだしたのにもかかわらず、それでもなお10年間も同じT型を作り続けたのがなぜかわかりません。
☆マーケティング戦略の概念が現在の形に完成されてのはいつ頃でしょうか。
 この事例の教訓が一つのきっかけとなって、「マーケティング」という発想の必要性が社会に定着したと考えてください。概念的に確立されるのは第二次大戦後のことになります。
 
☆マーケティングコンセプトの部分で、コンセプトの変遷として、社会指向に変遷していると言っていましたが、今の市場ではどちらかというと顧客指向の方が重視されているように思いますが、どうでしょうか。
☆マーケティングコンセプトについてだが、プロダクト志向・シーズ志向→販売指向→ニーズ志向・顧客志向→社会志向というように変遷しているが、社会志向である中にも、そこで製品やサービスが売れなかったら、“とにかく売り込め”の販売志向が入っているのではないか、という意見を持ったが、実際どうなのだろうか。
☆現在でも小売業界などでは販売指向が強いのはなぜでしょうか。
☆会社を始めたばかりの時点から、もしくは始める前から社会志向の理念を持っていなければならないでしょうか。
 現場で多数をしめている現象が、現在の傾向を示しているとは限りません。
 
☆潜在的ニーズとありましたが、それはどうやってみつけているのか。また、必要な二つのフィットは現在どのくらい適合しているのか。
 これは具体的に事例を検討しないといちがいにはいえません。
 
☆ニーズ志向と顧客志向は似ているようで、ニーズの方が具体性があると思いますが、一般的にはどっちが優先されるのでしょうか。2つで1つのものなのですか。
 ニーズとは顧客の直接的な欲求ですから、ニーズ志向という場合にはかなり直接的です。ぽう顧客志向という場合には顧客の生活なら生活全体を捉えて考えるということになります。
 
☆4Pの組合せがマーケティングミックスでいいのでしょうか。
 そのとおりです。
 
☆マネジリアルとはどのような意味があるのか。
 「経営者の」という意味。つまり、現場の販売担当者の問題でないということです。
 
☆「穴をあけるサービス」以外に他にもっとあるのでしょうか。他にはどのようなパターンがあるでしょうか。
 あると思います。考えてみませんか?
 
☆売れる仕組みを作るには、営業のスキルや人柄が必要と思うのですが、ここではまた別なのですか。
 それも入ってきます。詳しくは第10章へ。
 
(2)これからの講義でお話しします。
○市場開拓ができた後のマーケティングは市場開拓時とどう違うのか? 手法は同じなのか。
テキスト第T部および、第8章の3、のところでお話しします。
 
○ゼミでは農業を研究していますが、農業物のように製品の不確定の要素が多いマーケティング、また取引先や市場が限定されているマーケティングにはどのような特徴がありますか。
 第8章、第11章あたりでの話をふまえて考えてみて、また質問をしてみてください。
 
○企業はどのようにニーズを発見、開拓するのかがわかりません。また、ニーズはあるのに購買力につながらないのはなぜでしょうか。マッサージチェアを多くの人が欲しがっているのに、高級品と敬遠しがちであるが、企業の戦略次第で多くの家庭にマッサージチェア置かれるようになるのか疑問に思いました。
 第3章でこうした点についてもお話しすることになるでしょう。
 
○大人がフィギュアを買う時に、おもちゃ売り場よりコンビ二で買うほうがいきやすいという話でしたが、ここでマーケティング論と心理学は密接なかかわりがあると思いますが、どうでしょうか。戦略や政策が心理と関係があるのか、教えてください。
 第4章、第5章で関連します。
 
○売れる商品に一番必要な要素はなんですか。
○マーケティングマイオピアの今がよく分かりにくかったので、もう一度説明してください。
○価格政策では、値段の設定で、どのくらいが高いとか安いとか、そういうのは何を参照して決めるのですか。私達が高いとか安いとか感じる基準みたいなものがどうやってできているのでしょうか。
○価格政策の面で経済状況や時代背景は関係ないのか。
○値段も製品の一部であると考えますが、なぜ安さだけで勝負しようとするのでしょうか。
○4Pのプライスも商品のうち、とはどういうことでしょうか。
○商品開発と宣伝活動のどちらに力を入れるへきなのですか。企業は同じ位にしているのですか。
○チャネル政策というものはなんでしょうか。
○マーケティングミックスの組合の具体的な例を教えてください。
 以上については、テキスト第V部を通してお話しすることになるでしょう。
 
○現在の日本のマーケティング戦略はどのようなものになっていますか。
 第W部で講義します。
 
(3)その他興味深い質問
※常にニーズを保つために、生産・開発をある程度のところで止めることはないでしょうか。たとえば、完全に水虫が治る薬を開発できたが、市場にわざと出さないとか。
 ありますね。有名なのは蛍光灯の逸話です。
 
※僕は折りたたみ携帯が嫌いで、そうじゃないものを求めたがありませんでした。仕方なく折りたたみを使っておりますが、これはやはり社会の少数派のニーズだからでしょうか。少数派のニーズはやはりもみ消されるのでしょうか。
 必ずしもそうとはいえません。auの新製品をご覧あれ。
 
※レストラン経営にマーケティングはどのように生かされているのでしょうか。自分のこだわりだけでは成り立たないですか。
 こだわりにも顧客志向が必要でしょう。
 
※一つの売り方がうまいこといったからといって、それがずっと続くわけではないということが分かりました。現在、不況の中、ブランド品はよく売れていると聞いていますが、大部分に普及するとやはり政策を変えていくのでしょうか。
 これは一概にはいえません。
 
※実際にマーケティング調査を一般市民にむけてやっている企業はありますか。
 あります。「プレゼント!」の応募でいろいろ書かされたことはないですか?
 
 
0.市場の選択とは
 「市場との関わり」を考える前に、「どのような市場」と関わりをもつのか? を考える必要。
 単一の製品から、複数の製品を包摂した「事業」単位のマーケティングへ
   例)単一のビール製品から複数の製品群、発泡酒、ソフトドリンクへ・・・
 さらに、事業単位をこえた「企業戦略」へ
   →このなかで、いったい自分たちはどのような事業(市場)領域と関わっていくのか?
 
 
1.事業創造への道
(1)市場需要の開拓
  何か事業を起こそうとすれば、それを受け入れる市場を考えないわけはない。
    →ここに「需要」の創造と開拓の必然性がある。
  市場が拡大する時代から市場が成熟した時代へ・・・既存需要開拓から新規需要創造へ
 
(2)新事業探索のポイント
  @基本価値への回帰
  Aコンセプト転換
  B矛盾結合
  ※キーワードとしての情報
 
2.企業成長のベクトルづくり
  単一の製品、単一の事業だけでは「企業」の成長はむつかしい(例外はあるが)
○企業成長の図式
  アンゾフ「製品・市場マトリックス」 (p29)
@市場浸透戦略
A新製品開発戦略
B市場拡大戦略
C多角化戦略
   →この4つの組み合わせによる成長ベクトルで企業の持続的成長をはかる
 
3.事業戦略のポートフォリオ
  では、どのように組みあわせるのか? 成長戦略の使い分け方
(1)製品・事業の分類
  ボストン・コンサルティング・グループの「製品ポートフォリオ・マトリックス」 (p34)
    市場の成長性と事業・製品の「相対市場シェア」とから導く
相対市場シェアが高ければ、競合他社よりも低コストであるという前提
※規模効果
         経験効果
 
(2)ポートフォリオの投資配分
@問題児(戦略的製品)
A花形
B金のなる木
    C負け犬(低迷製品)