リゾート経営論
−第8回 リゾート・ビジネスの現状−
お知らせ:11月16日の講義は「グループ学習日」です。
近藤は11時までは教室にいますので、必要なら相談に来てください。
講義の最後に、教室で報告書を集めますので誰かが提出に来てください。
0.前回のコメントカードから
(1)エコ・ツーリズム一般について
○エコツーリズム、グリーンツーリズムを行うにあたってそのターゲットとする顧客はしぼった方が良いのだろうか。かりにしぼるとすれば、どの年代にすればこのツーリズムは広がりを見せるだろうか教えてほしいです。
○エコリゾートは環境の破壊を起こしずらく、理想的なリゾートのように思われますが田舎に行って自然とふれあったり農業をするのが本当にリゾートとしておもしろいか?すぐにすたれてしまうように思われるが?
○自然をビジネスと結びつけることはとても難しいと思います。しかし、私のように自然を感じて感動する人間がたくさんいると思うと、エコツーリズムやグリーンツーリズムの必要性も深く感じます。
年代ではなく、「余暇」「レジャー」というものにどのようなニーズをもった人たちを対象とするのか、です。その点でいえば、後者のコメントは「自分」を基準に判断してしまっているのが問題です。あなた個人はおもしろくないかもしれないが、都会生活の厳しさの中でそういう自然とのふれあいが求められるようになったのは一時的な現象ではないことを第2,3回の講義で強調してきたつもりです。現に3番目のようなコメントを寄せた人もいるわけです。
みなさんがこれからもつべき視点はサービスを提供する側の視点です。自分の好みだけで判断するのは一消費者の視点であり、それでは仕事はできません。何度か述べていますが同じようなコメントが来ます。よく考えてください。
○エコリゾートは季節が左右されたり気候や気温なども影響してくるから結構厳しい状況だと思う。特に雪の降る地域などは逆に雪を生かした内容を考えたりするのものでしょうか?
(2)日本のエコ・ツーリズム、エコ・リゾートに関して
○エコリゾートで採算が取れている所はあるのですか?でないと地域社会への貢献ができないのではないでしょうか。理念の共有も大切だと思いますけど。
○エコリゾートの自治体主導型によく見られる“農業公園”などは本当に地域復興に役立っているのですか?前に行ったらガラガラだったので、不安です。それでも農業公園自体エコツーリズムではない単なるテーマパークなのですか?
地域全体への外部経済効果も含めて考える必要があるので、ある施設やプロジェクトそれぞれの採算だけで評価するばかりが能ではありません。しかし、「リゾート経営の実際」で述べたような綿密な計画や活動がないと成功しません。農業公園を単なるテーマパークとしてつくってもよほどでないとうまくいかないでしょうね。
○日本のエコツーリズムの歴史のところで「自然保護運動を原点とする宿泊施設などができはじめる」とありますが、自然保護を原点とする宿泊施設とは建設の際に環境を無駄に破壊しないよう配慮された施設を指すのでしょうか。
説明不足だったかもしれませんが、自然保護「運動」というところに力点があります。つまり、自然保護運動の拠点として人が集まるようになったところや、「自然保護」と「地域の活性化」を両立させるための方法として宿泊施設による収益をめざしたところなどがあります。建物のことをいっているのではありません。
(3)具体的なエコ・リゾートについて
○赤目に行ったことがあるが、滝までの道にはほとんど観光地というものはなかった。
滝を見るためにガタガタの細い道を歩き人の手が加えられていないという印象をうけた。
しかし、ある程度の施設・設備がなければリゾートとしては栄えないのではないか・・・?
○グリーンツーリズムの高知県の例など、本格的に農作業体験を行うのは長期的なものになってしまい、利益は見込めるのでしょうか?
○最近グリーンツーリズムでの農村体験型テーマパーク「OOの村」などというのが、いろんな所に存在しているのもエコリゾートの影響と思いました。この様な所にとってリピーターの確保というのが話題になると思います。また、いろんな地域の育成会などが行う体験学習などもグリーンツーリズムの一環なのでしょうか?
リピーターの確保は非常に重要です。というか、正否はそれにかかっているといってよいでしょう。リゾートというのは、一過性の観光地ではなく、いわば「別荘」のように過ごす場であることが多いので、リピーターを確保することが決定的です。
農業体験学習などは、それ自体は社会教育などとして行われるものですが、結果としてある種のグリーンツーリズムとして取り扱うことができます。そうした多様なニーズをむしろ積極的に仕掛けていくことも必要でしょう。
1.もう一つの新しい潮流〜アーバン・リゾート
(1)なぜ「都市」がリゾートになるのか
@積極的要因
いごこちのよさ
利便性
多様性
刺激
日常の中の非日常性
→結果としての「エンタテインメント性」「物語性」、「解放感」「安らぎ」
A消極的要因
多忙さ、「貧しさ」、「消費型」生活への埋没
(2)アーバン・リゾートとしてのTDL
@東京ディズニーランドの成功
a)なにが「テーマ・パーク」なのか
・アメリカにおけるディズニーランドのテーマ性
・東京ディズニーランドの意味
b)成功要因は何か
・開発計画〜特に土地戦略との関係で
・ターゲットとコンセプトの設定
・コンセプトを徹底するデリバリー・システムの構築
・多様な収入源の確保〜巨額のロイヤリティの裏返しとして
・常に「新しさ」を演出する
A「ディズニーランド」から「ディズニーリゾート」へ
・ディズニーランド「経験」をより多様化、深化させるものとして
・「パーク」から「都市」へ
BTDLの今後
・自己完結した「パーク」と広がりを持つ「都市」の矛盾
〜「成功の要因こそが成功を掘り崩す」
(3)ハウステンボスの苦闘
@テーマ・パークの条件
・環境の演出
・アミューズメント
・エンターテインメント
・知的欲求の充足
・スポーツ
・観光動線
・宿泊キャパシティ
・後背地人口
・情報発信機能
・歴史、文化、自然景観
・サービス
Aハウステンボスの経営
・「まちづくり」としての開発
・日本興業銀行を中心とする銀行団のバックアップ
・直営のホテル
・環境への配慮
B条件に照らしてどうだったのか
・立地の限界
・「まちづくり」の失敗
・過剰投資
(4)アーバン・リゾートの今後
@多様な可能性
A現実的には非常に難しいことを自覚する必要
ex)大阪「集客都市」戦略
2.リゾート経営の今後
(1)バブル後のリゾート経営
もともとルスツリゾート(札幌とニセコのあいだにある)を中心に各地に展開していた。
破綻後の「トマム」の経営権を獲得したことで注目された。
なぜ「バブルを乗り切った」のか
・地元客指向
・慎重かつ確実な投資
・海外と日本のバランス
A寂れた熱海と生き残った箱根
宿泊から日帰りへ
団体から個人へ
B新たなレジャー施設の展開
スーパー銭湯
御殿場アウトレットモール
(2)今後のリゾート経営のあり方は
@土地依存からの脱却
A特色のあるリゾートづくり
結局はセグメントとコンセプト
新しい「余暇」の創造への挑戦
B消費に対応した価格設定
・アーバン・リゾート型:「消費」そのものを楽しむ
・長期滞在型:低価格化 ex)「フォルクローロ」(JR東日本)
○リゾート・ビジネスプラン・プレゼンテーションへむけて
@受講生全体でともに「これからのリゾート」を考えます。
プレゼン側も、受講生をまきこむ「仕掛け」を考えてください。
聞く側も、積極的に講義に「参加」してください。
A相互評価します
プレゼンを内容と形式の両面から学生自身で評価します。
従って、遅刻などしないようにしてください。