2002/4/24
 
 
 
 
 
サービス・マネジメント論
−第3回 サービスの基本的特徴−
 
 
 
 
0.前回講義への質問や要望など
(1)講義内容への質問
@「スウェーデン人に世界を」というところがわかりませんでした。次週教えてほしいです。
 以前のスカンジナビア航空のCMなどでのキャッチフレーズが「スウェーデン人に世界を」という、観光客へ向けたといってもなんのことかよくわからないものであったの対して、「列に並ぶ必要はありません」という具体的なメッセージに変更することで、スカンジナビア航空を利用することで何が期待できるのかを明確に示した、というわけです。
 
A日本だと、どこの企業が「NO」と言わないサービスをしているのですか。
B日本ではどういう百貨店がノードストロームのまねをしているのですか。
 以前東武百貨店の社長だった山中氏が、ノードストロームを高く評価して日本の百貨店にもそのやり方の導入を勧めてきました。ノードストロームのやり方のいくつかは取り入れられてきています。ユニクロで返品いつでもOKになっているのもこの影響でしょう。
 
C腐った会社が日本においてスカンジナビア航空のように立ち直ることは可能なのですか。
 一般論で言えば、意味のある事業を展開しており、かつ財務的に破綻していない限り企業が立ち直ることは不可能ではありません。ただし、そのためにはさまざまな条件を満たす必要があります。
 
Dカールソンはリーダーとしてワンマンタイプだったのか、部下の意見を聞く方だったのか。
 ワンマンタイプではないのはもちろんですが、部下の意見を「聞く」というのとも違います。先週話したように、リーダーとしては大きな方向性を定めてそれを推進するのであり、そのための具体的な活動については基本的に現場で顧客と直接接している部門の判断に任せていたのです。その判断が方向性と矛盾している場合に介入することはあっても、基本的には「任せる」ことが重要です。
 
E資生堂のサービスも知りたい。なぜ日本一なのか。
 自分で調べてプレゼンしてみませんか? おもしろいですよ。
 
(2)講義やプレゼンの方法への質問・意見
・プレゼンを個人レポートにするのは特別な理由がないとだめですか。
原則としてはそのつもりです。具体的に相談してください。
 
 
1.サービスの基本的特徴(テキストp56〜
 
(1)サービスの定義
 
サービスの定義にはいろいろあるが、サービス・マネジメント論においては、
 
ある主体が、他の主体にとって有用な、人、「もの」、およびシステムの機能または活動のみを提供すること。(わたし近藤のオリジナルの定義なので、テキストとは違う)
 
具体的にはどういうことか?
  提供する主体       提供される内容             提供される主体
 散髪屋さん(理髪業)  整髪という「人」の活動            個人
 レンタカー会社     人を乗せて移動できるという「もの」の機能   個人や組織
 コンサルタント会社   都市計画などを作るという「システム」の機能  企業や自治体
 
(2)サービスの基本的特徴
 
@基本の基本:無形性(形がない)
  活動や機能は物的なかたちをとらない
  無形であるために、次のような問題が生じる
   ・在庫ができない
   ・品質が事前に確認できない(例:美容師の腕はやってみてもらわないとわからない)
 
A無形性から派生する特徴
 a)同時性(または不可分性 テキストp60
   サービスは対象がないとなりたたないし、対象は提供する側が準備することができない。
   またサービスは、必要なその場でそのときに行われなくてはならないことが多い
     ※受け手がそのときその場にいなければ、仮にサービス活動が行われても無駄。         例:乗客のいないバス
 
 b)結果と過程の等価的重要性
   サービスにおいては結果として有用であったというだけでなく、活動や機能の提供過程
   の質も問われることが多い
        例:歯医者
  
 c)顧客との共同生産
   しばしばサービスはその活動の一部をサービスの受け手の側が自ら行うことによって成   り立つ。
        例:コンサルタント業
          レストランでのお客さん自身の役割
 
 
2.サービスの構成要素 
 
(1)全体像
 
サービスは、複数のサービス要素を含んだパッケージとして提供されることが多い。
 
    :交通サービスの場合、サービスはこういう構造になっている。
 










 
   サブ・サービス  







 






 
 





 



 
  コア・サービス  


 
安全性、確実性、平等性
連続性
 
 @:快適性、利便性、迅速性
 
A:接客態度、情報サービス、予約、
  大量性、機動性、飲食物
 

 



 

 
         事故の際の対応など
  コンティジェント・サービス  
 
(2)コア・サービス
 
 それが提供されないと、そもそもサービスとして成り立たないサービスの内容。
 
(3)サブ・サービス
 
コア・サービスに付随する副次的なサービス。
しかし、重要性は高い(コア・サービスはあるのが当たり前なので、サービスの提供をうける側は、実際にはサブ・サービスでサービスの評価を決めることが多い)。
 サブ・サービスは二段階となることも多い。
  @サービス内容それ自体は必ず必要だが、程度が異なるもの(上の例では快適性など)
  Aサービスが必要とされる目的によってあったりなかったりするもの
    (上の例では乗務員などの接客態度や、予約ができるかできないかなど)
 
(4)コンティジェント・サービ
 
通常の状態以外に対する状況適応的なサービス。
主に、通常のサービス活動が攪乱されたときにそれに対応・処理することを内容とする。
  例)事故、停電など外部の攪乱要因:SASの雪の日のコーヒー
    顧客・利用者などサービスの受け手からの「特別な」要求
               :超高級レストランで「チリ」を注文する刑事コロンボ
 
(5)「潜在的サービス要素」
 
構成要素というとやや違うが、こんなことも視野に入れておく必要があるという類のもの
@イメージ消費
   例)新幹線のスピードは速くつくためのものだが、実際には「スピード感」も消費され     ている
A顧客がほんらいそのサービスが意図していたものとはまったく違った効用をみつけてしまう
   例)汚職事件の捜査を逃れるために入院してしまう
   例)親が暇をつくるために子どもを林間学校に送る
 
(6)態度はサービスか(テキストp54)
 
人に対するサービスにおいて、態度が重要であるのは確かだが・・・
  例1)温泉旅館で、愛想のない仲居さん
  例2)ヤブだが、愛想のいい医者
つまり、サービスの目的との関係でそれが求められているときに、求められている態度がサー
ビスである(愛想がよければサービスがよいわけではない)。
  →サービスには「機能的側面」と「情緒的側面」がある、と理解すべき
 
 
3.「もの」とサービスの関係(テキスト第5章
         形のある「もの」とサービスの関係では、次の点を理解しておく必要がある。
 
(1)「もの」を媒介としたサービス活動がある
 
例)レストランでは食べ物が出てくるが、単に食べたいだけなら中食でも家で作ってもよい。
 
(2)「もの」とサービスが相互に代替性がある場合がある
 
   例)大学へ行くために自転車を買うか、定期券を買うか
 
(3)「もの」の機能を発揮するためにサービスが必要なことがある
 
   例)ユーザーサポートのないパソコンを買うと・・・